眼瞼下垂は片目だけ症状が出る場合もある?片目だけまぶたが下がる理由や治療方法・手術するなら両目がおすすめな理由も解説
まぶたが下がり見えにくくなる眼瞼下垂は、片目だけに症状が現れる場合もあります。
眼瞼下垂が片目だけに出る場合は、左右で見え方が変わってしまうため日常生活の中でも違和感を強く感じてしまいます。
また、左右で目の開き方が異なることで見た目にも影響してしまうため、早めに治療したいと考えている方は多いのではないでしょうか。
ここでは片目だけに眼瞼下垂の症状が出る理由や治療方法などを解説します。
監修医師:
郷 正憲(徳島赤十字病院)
目次 -INDEX-
眼瞼下垂は片目だけ症状が出る場合もある?
眼瞼下垂は何らかの原因によりまぶたが上がりにくく、下がったままになってしまう疾患です。
眼瞼下垂の症状としては下記のようなものがあります。
- ものが見にくくなる
- 肩こり・頭痛
- 常に眠そうに見える
- 疲れやすくなる
眼瞼下垂は大きく先天性・後天性と実際は眼瞼下垂ではないけれど眼瞼下垂のような症状があらわれる偽性の3つに分かれ、後天性の場合は特に加齢によって発症する疾患です。
両目に症状が現れる場合もありますが、原因によっては片目だけに症状が出る場合もあります。
片目だけに症状が出た場合、左右で見え方が異なってしまうために見えにくい以外にもさまざまな不調を引き起こします。
また、片目のまぶただけが下がって目が開ききっていない状態になるため、見た目が気になるという方もいることでしょう。
もしも片目だけまぶたが上がりにくく感じるようになったのであれば、早めに医師へ相談しましょう。
片目だけまぶたが下がる理由
片目だけに眼瞼下垂の症状が出る理由はさまざまです。まずは片目だけまぶたが下がる理由を解説します。
先天性
片目だけまぶたが下がっている理由の1つに生まれつきであることが挙げられます。
生まれつきまぶたが下がっている眼瞼下垂を、先天性眼瞼下垂といいます。
先天性眼瞼下垂は、約80%が片目だけに症状があらわれるといわれている疾患です。
まぶたを上げる働きを持っている眼瞼挙筋の働きが生まれつき低下していることで、まぶたが下がっている状態になります。
さらに眼瞼挙筋の筋力の低下のために、まぶたを下げる働きも十分ではなく、まぶたを閉じた際に白目が見えることもあります。
先天性眼瞼下垂の場合、多くの場合は視覚機能には問題はありません。
しかし、目が十分に開けられないためにあごをあげた姿勢が多くなったり、眉毛をあげてものを見たりする癖がつく場合があります。
また、片側のまぶたが下がっており左右で見え方が異なるため、下がっていない方の目だけで物を見ようとすることで視力の発達の妨げになる可能性があります。
また、斜視や弱視の原因となる可能性もあるため、眼科での診察や経過観察がおすすめです。
眼瞼下垂の手術は生後6ヶ月を越えればいつでも手術が可能となるため、気になる場合は医師と相談してみましょう。
コンタクトレンズの不適切な使用
コンタクトレンズの不適切な使用も片目だけまぶたが下がる理由の1つです。
大人になってから発症する眼瞼下垂は加齢による影響のほかに、コンタクトレンズの長期使用などでまぶたを支える腱が弱くなることが原因で発症します。
眼瞼挙筋の端には眼瞼腱膜があり、これはまぶたを正常に動かすための働きをしています。
コンタクトレンズの使用が不適切だった場合、この眼瞼腱膜が弱くなったりはがれたりしてしまい、うまく機能しなくなってしまうことがあるのです。
特にハードタイプのコンタクトレンズを使用しているケースに多くみられます。
こうした腱膜の機能の低下による眼瞼下垂は腱膜性眼瞼下垂といい、後天性の眼瞼下垂の中で最も多い症例です。
過度なアイメイク
過度なアイメイクも片目だけまぶたが下がる理由の1つです。
眼瞼下垂の発症原因として、花粉症などで目を擦ることがあります。
目を擦るとまぶたへ刺激を与えてしまうため、それによって腱膜と瞼板のつながりが緩み、腱膜の働きが弱まってしまうのです。
こうした慢性的な刺激を与える習慣は花粉症のほかにも、アトピー性皮膚炎や逆さまつげの人などにも見られます。
それと同様に、過度にアイメイクを行い、メイクを落とす際にまぶたを擦る習慣があればそれが眼瞼下垂の原因となってしまうのです。
眼瞼下垂の治療方法
眼瞼下垂を治療するには手術が必要です。
腱膜の修復や眉毛の下の余分な皮膚や皮下脂肪を取り除くなど、手術方法は原因に応じて選択されます。
続いては代表的な3つの治療方法を解説します。
挙筋腱膜前転法
挙筋腱膜前転法はまぶたの動きを支えている挙筋腱膜を短縮する方法です。
コンタクトレンズや目を擦るなどの慢性的な刺激によって緩んだ挙筋腱膜を短縮することで、腱の機能を回復させます。この方法はまつ毛の上を切って行う手術です。
腱の機能に大きな問題がなければ改善が見込めますが、腱の機能が著しく低下している場合にはこの手術では改善が見られない場合もあります。
その場合に行われるのが代用組織の移植です。
代用組織には自身の太ももの筋膜を使用する場合と人工の組織を使用する場合がありますが、太ももの筋膜を使用するケースが多い手術です。
なお、筋膜の移植を行った場合、筋膜の状態によってはまぶたが開きすぎとなったり、うまく閉じられなくなったりすることがあります。この場合は調整のための再手術が必要です。
ミュラータッキング法
ミュラータッキング法も眼瞼下垂の手術方法の1つです。
ミュラー筋は上眼瞼挙筋と瞼板をつないでおり、挙筋腱膜と同じくまぶたの動きを支えている筋膜です。
ミュラー筋は主にまぶたの開き具合の調節を行う役割を担っています。
そのため、挙筋腱膜が伸びてしまい機能が低下した場合にはミュラー筋を収縮させることで眼瞼挙筋の動きを瞼板に伝え、まぶたの開きを調整します。
しかし眼瞼下垂の病態が進めばミュラー筋も伸びてしまい、まぶたが開けられなくなるのです。
ミュラータッキング法では、挙筋腱膜からこのミュラー筋をはがして折りたたみます。
これにより伸びてしまったミュラー筋の機能を回復するのです。この手術では、皮膚を切って行う場合は挙筋腱膜前転法と同じくまつ毛の上を切ります。
もう1つの方法としてまぶたの裏から結膜を切開または穴を開けて行う方法があります。
ただし切開では目を傷つけてしまう恐れがあるため、穴を開けてミュラー筋を捲る方法が一般化しました。
眉下切開法
眉下切開法は眉毛下の弛んだ皮膚や皮下脂肪を取り除くことで眼瞼下垂の症状を改善する手術方法です。
この手術は腱膜の機能の低下が主な眼瞼下垂の原因ではなく、まぶたの上の皮膚や皮下脂肪が弛み、視野の妨げになっている場合に選択されます。
名前の通り眉毛の下を切開する手術のため、場合によっては傷が見える可能性もあります。
通常は眉毛際の目立ちにくい傷となりますが、傷の見え方が気になる場合は事前に医師に相談しましょう。
なお、眉下切開法は保険が適用されず、自由診療となる場合もあります。
また、もしもまぶたの上の皮膚が過剰に弛緩している場合、眼瞼下垂ではなく眼瞼皮膚弛緩症という別の疾患の可能性があります。
まぶた上の皮膚の弛みが気になる場合は、自己判断するのではなく必ず専門医に相談しましょう。
片目だけの手術もできる?
眼瞼下垂が片目だけにあらわれている場合、片目だけの手術を行うことも可能です。
眼瞼下垂の手術を行う際には、まずは両目の状態を確認した上で症状の程度を確認します。
見た目には片目だけの症状があらわれているとしても、実際には両目ともに眼瞼下垂を発症しているケースがあるからです。
片目だけの手術を行う場合は左右のバランスを調整しながら手術を行います。
通常は局所麻酔によって手術を行うため、手術方法によっては日帰りで手術を受けることもできます。
ただし切開を伴う手術であることから、安全のために1〜2泊の入院をすすめられる場合もあるため、事前に医師と相談しましょう。
手術をするなら両目がおすすめな理由
眼瞼下垂手術を行うのであれば、片目だけではなく両目の手術を行う方が良いとされています。続いては両目の手術がおすすめな理由を解説します。
手術しなかったまぶたが下がる可能性がある
片目だけの手術を行った場合、手術をしなかった方のまぶたが下がる可能性があります。
前述した通り、眼瞼下垂は見た目には片側しか症状が見られなくとも、実際には両目ともに発症しているケースが多くあります。
そのため、片目の術後にもう片方の目にも眼瞼下垂の症状があらわれることがあるのです。
症状があらわれている片目だけではなく、症状の出ていない方にも眼瞼下垂の兆候が見られるのであれば、医師に相談して両目ともに手術を行った方が良いでしょう。
左右非対称になる可能性がある
両目の手術をおすすめするもう1つの理由が、術後に左右非対称になる可能性があるためです。
眼瞼下垂の手術を行う際には、両目の開き方のバランスをみた上で、術後にもバランスが不自然にならないように手術を行います。
しかし、適切な形で手術を行ったとしても抜糸後に左右差が出てしまうことがあるのです。
この場合は両目のバランスを整えるための再手術を行います。再手術を行うのは片目の手術を行った後の2週間以内か半年以降です。
眼瞼下垂の術後には、通常半年後まで経過観察を行います。
そのため、抜糸後の左右差が明確になったタイミングか、経過観察が終わり、片目の状態が安定した半年後に再手術となるのです。
左右差があらわれるかどうかは手術を行ってからでなければ分からないため、左右非対称になる可能性を避けたいのであれば両目同時に手術する方が無難です。
眼瞼下垂の手術は何科で受ける?
ここまで眼瞼下垂の原因や手術方法を解説してきました。
では実際に手術を受けるとなった場合に、何科で受けられるのでしょうか。
続いては眼瞼下垂の手術を受けられる科をご紹介します。
眼科
眼瞼下垂の手術は主に眼科で受けられます。
眼瞼下垂が疑われる場合にまず確認するのが、眼瞼下垂以外の疾患が隠れていないかという点です。
眼瞼下垂と似た症状があらわれる疾患には、脳梗塞や重症筋無力症など複数あります。
これらの疾患が隠れている疑いがあれば、眼科での手術前に関連する別の科を受診します。
他の疾患ではなく眼瞼下垂であると診断されてから手術を行うのです。
後天性の眼瞼下垂の場合は先述した腱膜性の他にも、交感神経麻痺が起こるホルネル症候群や動眼神経麻痺、外眼筋ミオパチーなどが原因の場合もあります。
眼瞼下垂の原因を特定した上で、適切な手術方法を選択します。
手術は基本的に局所麻酔で行われ、日帰りか1〜2泊の入院で実施し、抜歯は1週間後に行うのが一般的です。
その後半年ほどをかけて術後の経過観察を行い、症状の改善状況や左右非対称になっていないかを確認します。
形成外科
眼瞼下垂の手術は形成外科でも可能な場合があります。
通常、眼科で手術を行う場合は機能の回復を主目的としていますが、美容外科の場合は審美面での理由からの手術が可能な場合もあります。
目の大きさや二重幅などの見た目部分も自然な仕上がりになることが重視されるのです。
また、傷が目立たないよう、切開を行う位置や皮膚の切除幅なども相談できます。
特に目は人の印象を左右する重要な部分でもあるため、手術前にどのような形にしたいのかを医師としっかりと話し合いましょう。
ただし美容外科で眼瞼下垂手術を行う場合は保険適用される場合と適用されない場合があるため注意しましょう。
眼瞼下垂の手術は実績が多いクリニックで受けよう
眼瞼下垂の手術を受けるのであれば、実績の多いクリニックで受けましょう。
眼瞼下垂の手術方法は複数あり、どの手術を行うかは症状の程度や発症した原因など複数の要素から決定します。
手術方法によっては見える場所の切開を行うものもありますが、患者さんの中には傷が目立たないようにしたいと考えている方もいることでしょう。
実績が豊富な医師であれば手術方法を相談した上で、患者さんの希望に合わせた手術ができる可能性が高くなります。
眼瞼下垂の手術を検討しているのであれば、事前にクリニックや医師の実績を確認しておきましょう。
編集部まとめ
眼瞼下垂は片目だけに症状があらわれる場合のある疾患です。
片目だけに症状があらわれていると、左右での見え方が異なって見えにくいと感じたり、視力にも影響したりします。
また、片目だけのまぶたが下がっていると人からの視線が気になる方もいるでしょう。
実際には両目ともに眼瞼下垂を発症している可能性もあるため、片目だけに症状が出ているとしても、手術を行うのであれば両目の同時手術がおすすめです。
片目だけの眼瞼下垂でお悩みの場合は、専門医に相談しましょう。
参考文献