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更年期にホルモンバランスが変化するのはなぜ?ホルモンバランスの乱れで起こる症状や整える方法・ホルモン補充療法もご紹介

 公開日:2024/05/15
更年期 ホルモンバランス

女性は加齢に伴って閉経が起こりますが、閉経の前後約10年の期間を「更年期」と呼びます。

一般的に更年期は45〜55歳とされており、この時期にはホルモンバランスの変化による気分の浮き沈み・イライラなど、さまざまな症状が現れます。

この記事ではホルモンバランスの変化に関する理由・症状・治療方法などを解説します。

更年期で悩んでいる方は最後まで読んでいただくことで、現在起こっている不調に対する対策を学ぶことができます。最後までお読みいただけると幸いです。

阿部 一也

監修医師
阿部 一也(医師)

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医師、日本産科婦人科学会専門医。東京慈恵会医科大学卒業。都内総合病院産婦人科医長として妊婦健診はもちろん、分娩の対応や新生児の対応、切迫流早産の管理などにも従事。婦人科では子宮筋腫、卵巣嚢腫、内膜症、骨盤内感染症などの良性疾患から、子宮癌や卵巣癌の手術や化学療法(抗癌剤治療)も行っている。PMS(月経前症候群)や更年期障害などのホルモン系の診療なども幅広く診療している。

更年期にホルモンバランスが変化するのはなぜ?

落ち込む女性
なぜ更年期にホルモンバランスが変化するのでしょうか?これにはエストロゲンの減少が関係しています。
冒頭にも述べたとおり、更年期に閉経に向かってホルモン変動が起こります。閉経が起こるとエストロゲンと呼ばれる女性ホルモンが減少するのです。
エストロゲンの減少は情報として脳に伝達されることで、脳から排卵を促す信号が卵巣に送られます。
そのため、エストロゲンが急に減少すると、脳は大量に排卵を促そうとして異常な信号を卵巣に送ります。これがホルモンバランスの変化の主な原因です。

ホルモンバランスの乱れによる症状

パソコンの前でうずくまる女性
冒頭でも述べたように、更年期ではホルモンバランスの変化により、さまざまな症状が現れます。
それぞれの症状は一見別々の症状として現れますが、うつ症状から不眠になるなど、それぞれの症状が関連しあって徐々に日常生活に支障をきたす場合もあるのです。
ここからはホルモンバランスの乱れで起こる症状について解説します。当てはまる症状があれば更年期障害かもしれませんので、適切に対処する必要があります。

体のほてり

まず体のほてりが更年期障害の症状として挙げられます。自律神経症状の一種で、ホットフラッシュとも呼ばれています。
ホットフラッシュは視床下部において温度を感じる部分が不調になることで起こるとされています。
そして視床下部の不調の原因となるのがエストロゲンの減少です。女性ホルモンであるエストロゲンの減少は更年期のあらゆる症状の根源となるのです。
なお、視床下部の不調は温度の感度に異常をきたすので、ほてりとは真逆に冷えを訴える場合もあります。

気分の浮き沈み

気分の浮き沈みが生じるのも更年期障害における代表的な症状で、精神神経症状の一種です。こちらもホルモンバランスの変化が主な原因となります。
場合によってはうつ症状に陥る方もいます。ここは判断が難しいところですが、心療内科・精神神経科などに相談しながら判断を仰ぐことが大切です。
ほかの病気に該当しなければ更年期障害である可能性が高いでしょう。

イライラ

頭を抱える女性
イライラは気分の浮き沈みと同じく、精神神経症状に該当します。更年期障害の症状として知られている症状です。
ただし、近年は20〜30代でもみられる症状となってきています。その原因として挙げられるのは、不規則な生活・過度なストレスによる自律神経の乱れなどです。
自律神経が乱れるとエストロゲンの分泌量が減少してしまうので、更年期障害のような症状が出ることがあるのです。

不眠

体調不良の女性
不眠は精神神経症状に該当します。イライラ・気分の浮き沈みなどが悪化してくると、夜も眠れなくなることがあります。
うつ病の症状とも類似しているため、不眠に関しては単に「更年期だから」と自分で判断せず、心療内科・精神神経科などを受診のうえ判断を仰ぎましょう。

肌荒れ

月経前の兆候と類似していますが、更年期障害においては肌荒れが起こるようになります。
更年期障害における肌荒れは、ホルモンバランスの変化により引き起こされます。ホルモンバランスの変化によって肌のバリアが弱くなり、ニキビ・乾燥・シミなどができやすくなるのです。
更年期障害によって引き起こされる症状ですが、ひどい場合には皮膚科の受診も検討しなければならないケースもあります。

更年期のホルモンバランスを整える方法

悩む女性
ここまで更年期障害における症状を解説しました。更年期障害ではホルモンバランスの変化により自律神経症状・精神神経症状などの症状がみられるようになります。
これらの症状を改善するためにはホルモンバランスを整える必要があります。以下、それぞれの方法を解説するので参考にしましょう。

規則正しい生活

規則正しい生活は睡眠の質を向上させ、ホルモンバランスを整えるために有効です。
前提として、ホルモンバランスを整えるためには良質な睡眠が大切です。しかし先述したように、ホルモンバランスが乱れた状態ではうつ症状などが顕著となり、睡眠の質を上げることが難しいのが難点です。
そこで規則正しい生活を心がけることにより日々の睡眠の習慣が安定し、結果としてホルモンバランスの調整に役立つのです。
女性における睡眠は諸症状の改善に重要な要素なので、規則正しい生活によってなるべく睡眠の質を安定させるよう心がけましょう。

バランスの取れた食事

大豆製品
バランスの取れた食事は万病に効く対策方法です。ただしここで特に意識したいのは、イソフラボンを多めに摂取するということです。
イソフラボンは主に大豆に含まれており、エストロゲンと似た働きをすることで知られています。
実は海外において日本人女性の骨粗鬆症・更年期障害は発生率が低いとされており、その要因として豆腐・きな粉をはじめとする、大豆製品を多く摂取していることなどが挙げられています。

適度な運動

適度な運動はあらゆる面において更年期障害に有効とされています。
まず、適度な運動を継続すると生活習慣が改善されます。生活習慣の改善は、先述した規則正しい生活につながるのです。
また、運動をすること自体がストレスの発散になるため、うつ症状などを緩和することにつながります。

更年期のホルモンバランスを整える治療方法

伸びをする女性
ここまでホルモンバランスを整える方法を解説しましたが、先述した改善方法でも症状の改善がみられない場合、ほかの選択肢を検討する必要があります。
更年期のホルモンバランスを整える方法には治療も存在します。主にサプリメント・漢方療法ホルモン補充療法などです。
ここではそれぞれの治療法について詳しく解説します。各治療法の特徴について理解のうえ、今後の治療を検討する際の参考にしましょう。

サプリメント

ホルモンバランスを整える薬物療法として、サプリメントが挙げられます。
先述したように、イソフラボンはエストロゲンと同じような働きをするため、ホルモンバランスの調整に有効です。そしてイソフラボンはサプリで補強することが可能です。
代表的なものとしてはエクオールサプリメントと呼ばれるものがあります。厳密にいうと、エクオールは大豆イソフラボンから生成されるものです。
しかし日本人女性の約半分はエクオールを生成できないとされています。そのような方には有効なサプリメントといえます。
ただし摂取量には上限があるので、医師と相談しながら摂取を検討しましょう。

漢方療法

漢方
漢方療法は東洋医学から生まれた治療法です。女性の冷え性などに用いられることも多く、更年期障害などの女性特有の症状と相性のよい治療方法といえます。
特に当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)・加味逍遥散(かみしょうようさん)・桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)は婦人科三大処方と呼ばれ、更年期障害の治療における主要な漢方薬です。
それぞれの特徴は以下のとおりです。

  • 当帰芍薬散:主に血流の改善に有効な漢方薬です。血流が改善されると冷え性の改善・生理痛の改善などに効果があります。また、当帰芍薬散はうつ症状・自律神経失調・不眠などの改善にも効果があることが研究でわかっています。
  • 加味逍遥散:主に精神症状の改善に用いられる漢方薬です。不安・抑うつなどの症状に加え、頭痛・冷え・めまいなどの諸症状が不定期に起こる状不定愁訴(ふていしゅうそ)の改善にも有効だとされています。加味逍遥散には気分のモヤモヤを取り除く作用があり、前向きにさせるような成分が調合されているのです。
  • 桂枝茯苓丸:当帰芍薬散と同じく、血流の改善を目的として用いられる漢方薬です。ただし比較的体力のある方が対象で、特に血流の滞りにより、ほてり・肌荒れ・むくみなどの症状がある方に処方します。不定愁訴の改善にも役立つ漢方薬とされています。

上記漢方薬はそれぞれ複数の効能があり作用の仕方には個人差がありますが、多様で診断の難しい女性特有の更年期障害に有効だとされています。
当帰芍薬散・加味逍遥散・桂枝茯苓丸の3種類でも効果が出ていない場合もあるでしょう。3種類以外にも、女性特有の疾患に対して処方される女神湯や温経湯などもあります。

ホルモン補充療法

ホルモン補充療法は文字通り、女性ホルモンを補充する治療法です。更年期障害の原因となるエストロゲンの減少に対する直接的な対症療法といえます。
先述した漢方薬のなかでも桂枝茯苓丸が対象とする、ほてり・のぼせなどに有効とされています。
ただしホルモン補充療法は単独で行うと子宮内膜が過剰に分厚くなり、子宮体がんにつながる可能性があります。そのため、子宮がある方は黄体ホルモンを併用してホルモン補充を行います。
また、ホルモン補充療法には飲み薬・貼り薬・塗り薬などのタイプがあります。それぞれの特徴や副作用などの影響を医師と相談しながら、服用を検討しましょう。

更年期のホルモンバランスが気になるときは

カウンセリングをする医師
ここまで更年期障害を改善するための方法などを解説しました。しかしながら、ホルモンバランスの変化による諸症状は多種多様です。
そのため適切な改善方法には個人差があります。日常生活に支障が出るほど悩む場合は、最寄りの産婦人科やクリニックを受診しましょう。
特にうつ症状は更年期によるものなのか、重大な精神疾患を抱えているのか判断が難しい症状です。1人で抱えず、まずは気軽に相談してみましょう。

編集部まとめ

青空と女性
この記事では更年期にホルモンバランスが変化する理由・症状・治療方法などを解説しました。

更年期にホルモンバランスが変化する理由はエストロゲンの減少と関係があります。閉経によって卵巣の機能が低下すると、エストロゲンと呼ばれる女性ホルモンが減少します。

エストロゲンの減少は脳から異常な排卵信号を卵巣に出すことで卵胞刺激が起こり、結果としてホルモンバランスが崩れてしまうのです。

ホルモンバランスが変化すると体のほてり・気分の浮き沈み・イライラ・不眠・肌荒れなどの症状が現れます。

これらの症状を改善する方法としては規則正しい生活・バランスの取れた食事・適度な運動などが有効です。

それでも改善がみられない場合は、治療を検討するのも1つです。主にサプリメント・漢方薬・ホルモン補充療法などが挙げられます。

更年期におけるホルモンバランスの変化は、女性の誰しもが経験する大きな悩みの1つです。

この記事を参考に少しでも日々の生活が快適になると幸いです。最後までお読みいただきありがとうございます。

この記事の監修医師