胃カメラ検査後の食事について|前日の食事・注意点・避けるべきものについても解説
会社の健康診断や人間ドックで、胃カメラ検査を定期的に行う方は多いのではないでしょうか。
何度か検査をしたことがあれば、検査前後の食事制限を聞いたことはあるかと思いますが、初めての方は注意点がわからず不安な状況でしょう。
そこでこの記事では、胃カメラ検査前後の食事について注意点を詳しく解説します。
また、避けるべきものについても解説するので、胃カメラ検査をする際の参考にしてみてください。
一度聞いたことがある方も、忘れている注意点があるかもしれませんので、参考にして検査に臨みましょう。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
目次 -INDEX-
胃カメラ検査後の食事について
胃カメラ検査後の食事について注意点があることをご存知でしょうか。
検査のために前日や当日の注意点をしっかり守って、検査が終われば好きな食事をしても問題ないと思われがちですが、そうではありません。
身体に急な負担をかけないための注意点がいくつかあるので、詳しく解説します。
検査後1時間は食事をしない
胃カメラは上部消化管内視鏡検査とも呼ばれています。
内視鏡を口から入れる経口内視鏡と、内視鏡を鼻から入れる経鼻内視鏡があり、どちらも細いスコープを挿入して胃の中を検査します。
その際、患者さんが苦しくならないようにするため、麻酔スプレーをかけて検査するのが一般的です。麻酔の効果が切れるまでには1時間ほどかかります。
麻酔の効果が切れてから水を一口飲んで、むせずに飲み込めたら、水分や食事をとっていただいて問題ありません。
麻酔が切れたら食事を開始できる
口からカメラを入れる場合、喉を通る際に「おえっ」となってしまう方が多いのではないでしょうか。原因は咽頭反射によるものです。
咽頭反射を防ぐのは難しいため、検査をする前に咽頭麻酔のスプレーをかけて軽減します。
咽頭麻酔をかけると麻酔が切れるまでは、喉の感覚が鈍くなった状態になるでしょう。
そのため、水やお茶などの水分であってもうまく飲み込めず、むせてしまう場合もあります。
麻酔が効いた状態で食事をすると誤って気管に入ってしまい、肺炎になるリスクもあるので、必ず麻酔が切れたことを確認しましょう。
少しずつ様子を見ながら食事量を調整する
食事をする際は、ご自身の体調に応じて食事量を調整しましょう。一度に普段通りの量を食べてしまうと、食後に嘔吐する場合もあります。
まずは、少量の食事で様子を見ながら身体を慣らしていき、問題がなければ元の食事量に戻しましょう。
調整中にお腹がすいた場合は、間食にバナナやヨーグルトなど消化の良いものを食べましょう。
また、よく噛むことで消化液が絡み、消化が進みやすくなります。食べすぎてしまうことがないように、焦らずゆっくり食べてください。
めまいや気持ち悪さが残っているようであれば、無理に食事をとらない方が良いでしょう。
油分の多いものは避ける
油分の多い食べ物は、胃の中での滞在時間が長く消化に時間がかかってしまいます。
そのため、空っぽの胃に油分の多いものが入ってしまうと、胸焼けや胃もたれなどトラブルが起きてしまうでしょう。
検査後は避けていただき、翌日以降の体調を見ながら食べるようにしてください。
胃カメラ検査前日の食事について
検査後の食事制限について理解できたところで、次に検査前日の食事について解説します。
カメラが胃の中に入るので、胃は空っぽにしておいた方が良いと聞いたことがある方も多いでしょう。
実際に検査前日は、何を注意すれば良いのか解説するので、前日の過ごし方の参考にしてください。
21時ごろまでには食事を済ませる
検査前日の食事は、21時までに済ませるようにしましょう。
「なぜ検査前日も食事制限が必要なのか?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
理由は検査の際に、胃の中に食物残渣と呼ばれる、内容物が残っていないようにするためです。
21時過ぎに食べてしまうと消化しきれず食物残渣がある状態で検査する可能性があります。
食物残渣があると検査の妨げになってしまい、時間がかかるだけではなく、検査ができない場合もあります。
さらに、病気の見落としに繋がる可能性もあるので、食事制限は必ず守りましょう。
きのこや海藻類など消化の悪いものを避ける
食物繊維の多い食べ物は、消化のスピードが遅いため、翌日まで残ってしまう可能性があります。
その中でもきのこ類や海藻類は消化しにくいので、高い確率で食物残渣として胃の中に残ったままになっているでしょう。
普段の生活においては、小腸の脂質吸収をゆるやかにしてくれるので、血糖の上昇を抑え糖尿病予防に繋がります。
また、腸内の発がん性物質などの有害物質を抑える、有効な菌を増やす役割を果たしてくれます。
必要な栄養ではありますが、検査では妨げになってしまうので、前日は食べないように注意しましょう。
胃カメラ検査の当日の食事の注意点
胃カメラ検査当日も食事の注意点があります。特に気をつけていただきたい注意点は下記の3点です。
- 当日の朝は食事をしない
- コーヒー・牛乳・ジュースなど色のついた飲み物は控える
- 検査1時間前から水分を控える
前日の注意点が守れていても、検査当日の注意点が守れないと、全てが無駄になってしまいます。
それぞれの項目の注意点をきちんと理解して、検査に臨みましょう。
当日の朝は食事をしない
胃カメラ検査の当日の朝も、前日の21時以降の食事制限と同様に、食事は控えるようにしてください。
万が一、当日の朝に誤って食事をとってしまった場合は、診察前に必ず医師に報告しましょう。
医師に伝えずに当日検査を実施してしまうと、食物残渣が妨げとなり、検査ができない場合もあります。
事前に伝えていただければ、医師が検査可能か判断できるので、忘れずに報告しましょう。
コーヒー・牛乳・ジュースなど色のついた飲み物は控える
日常的にコーヒーや牛乳を飲む方は、検査前に飲んでも問題ないか気になるのではないでしょうか。
結論として、コーヒー・牛乳・ジュースなど色のついた飲み物は、当日は控えるようにして下さい。
色がついた飲み物を飲んでしまうと胃粘膜が着色してしまい、検査の妨げとなってしまいます。
そのため、正確な診察ができず病気を見逃してしまう可能性もあるでしょう。前日に飲むのは問題ありませんが、21時以降は控えるようにして下さい。
どうしても水分をとりたい場合は、水・お茶・透明なスポーツドリンクを飲むようにしましょう。
検査1時間前から水分を控える
水・お茶・スポーツドリンクなどの水分は消化の助けになるため、当日もなるべく摂取していただくことを推奨しています。
ただし、検査の1時間前になったら水分を控えるようにしましょう。喉が渇く場合は、少量ずつを口に含み潤すように心がけましょう。
水分を控えすぎてしまうと脱水症状につながる可能性もあるので、無理のない範囲で控えるようにしてください。
胃カメラ検査前後の食事で避けるべきものは?
胃カメラ検査前の食事では、油の多い食べ物や、身体で溶けにくい不溶性食物繊維を避けましょう。
不溶性食物繊維は野菜類・果物類・海藻類・きのこ類・種実があげられます。
それぞれに、どのような食べ物が含まれるのか下記で解説します。
- 野菜類:葉野菜・トマト・茄子・胡瓜・玉ねぎ・ピーマン・パプリカ・ブロッコリー・アボカド・蓮根・ごぼう・もやし・いんげん・アスパラガス・とうもろこし
- 果物類:みかん・梨・パイナップル・キウイ・いちご・柿・すいか・メロン・ドライフルーツ・ジャム
- 海藻類:わかめ・昆布・海苔・佃煮・もずく・めかぶ・ひじき・寒天
- 種実:ごま・落花生・アーモンド・くるみ
きのこ類:椎茸・しめじ・えのき・まいたけ・エリンギ・松茸
普段から野菜類を食べる方は避けるべきものが多く、驚いているのではないでしょうか。
反対に、食べても良いものは皮を剥き、筋をとった大根・人参・南瓜などです。
避けるべきものを確認するのは大変なので、野菜類を食べたい場合は、大根・人参・南瓜メインの献立を考えると良いでしょう。
その他には、主食や、主菜でも避けるべきものがあります。
- 主食:玄米・雑穀米・胚芽米・もち麦・そば・ラーメン・パスタ・クルミ・ドライフルーツ入りのパン・全粒粉や胚芽パン・ジャムパン・コーンフレーク・グラノーラ
- 主菜:豆類、納豆
主食と主菜の中で食べても良いものは、下記の通りです。
- 主食:白米・お粥・うどん・素麺・冷麦・ビーフン・フォー・食パン・ロールパン・フランスパン
- 主菜:肉・魚・豆腐・卵
肉は脂の少ない鶏もも肉や胸肉を選びましょう。皮にも脂がついているので、調理するときは皮を取ると良いです。
魚は脂の多い赤身魚より淡白な白身魚を選びましょう。
また、胃カメラ検査後の食事では、胃に負担を与えてしまう刺激物や酒類は避けましょう。
胃カメラで組織を採取した場合の食事の注意点
胃カメラ検査でわかる病気は、下記の病気があげられます。
- 胃がん
- 食道がん
- 十二指腸がん
- 胃ポリープ
- 十二指腸ポリープ
- ピロリ菌感染など
検査の過程で病変が見つかった場合、見た目だけでは良性・悪性を判断するのは難しいです。
そのため、病変を切り取り顕微鏡で細胞を調べる、組織検査(生検)を実施します。
組織の一部を採取するだけではありますが、採取後も食事の注意点があるので解説します。
当日は消化の良いものにする
組織を採取した場合、当日の食事制限は特にありませんが、消化の良いものを食べるようにしましょう。
肉類であればささみや赤身肉、魚類であればエイやヒラメなどの白身魚、野菜類であれば人参やジャガイモなどです。
油分が多いと消化と吸収に時間がかかるため、調理方法は揚げたものより、蒸したり茹でたりしたものが良いでしょう。
また消化しやすいように、細かく切るのもポイントです。
アルコールなどの刺激物は避ける
出血予防のため検査当日はアルコールを避けてください。
また、辛い食べ物などの刺激物も血行を良くしてしまうので、組織を採取した後は控えましょう。
香辛料も刺激を与えてしまうので、使用する際は香り付け程度の少量にしましょう。
酸味・塩味・甘味などの濃い味付けのものは、胃に負担をかけてしまうので注意が必要です。
ご自身で判断が難しいようであれば、受診した病院の医師に必ず相談してください。
ポリープを切除した場合の食事の注意点
胃にポリープができても、一般的には無症状なことが多いため、胃カメラ検査で気づくことがほとんどです。
胃のポリープは大きく分けて胃底腺ポリープ・過形成性ポリープ・特殊型(炎症性・症候性・家族性)に分類されます。
悪性の場合や大きさが1〜2cm以上ある場合は切除した方が良いでしょう。
良性で小さいものであれば経過観察することが多いですが、放置しておくと徐々に大きくなり、食べ物の通過の妨げになる場合もあります。
そのため、大きさによっては切除する場合もあるでしょう。内視鏡的切除は下記3点の方法です。
- ポリペクトミー
- 内視鏡的粘膜切除術(EMR)
- 内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)
いずれの方法も腹腔鏡手術をすることなく、ポリープ切除ができるので、身体への負担が少ないメリットがあります。
ポリープ切除後の食事についても注意点があるので解説します。
1週間程度は消化の良いものにする
上述で紹介した方法で内視鏡的切除を行った場合、切除した部位が傷付いて出血しないように縫合しています。
しかし、まれに食べ物により切除部位が傷付いて出血したり、穴が空いたりすることもあります。
そのため、ポリープ切除後は切除部位の状態が安定するまで、1週間程度は消化の良いものを食べるように心がけましょう。
ただし、1週間同じような食事ばかりしていると栄養バランスが崩れてしまい、体調を崩す原因になります。
そこで、消化の良いメニューを下記でいくつか紹介します。
- 主食:柔らかく炊いた白米・お粥・柔らかく煮たうどん
- 主菜:白身魚を使った煮魚・茶碗蒸し・しゃぶしゃぶ・蒸し鶏
- 副菜:野菜のポタージュ・煮浸し・大根や人参を使ったスープ
- 間食:りんご・バナナ・プリン・ヨーグルト
消化しやすい食べ物を選び、調理方法で柔らかくしたり、細かくしたり工夫するだけで胃の負担を軽減できるでしょう。
上記で紹介したメニューは一部なので、注意点を意識しながら栄養バランスのとれた食事を心がけてください。
刺激の強いものは摂取しない
組織を採取した場合と同様に、ポリープ切除後はアルコール・辛いもの・味付けが濃いものなど、刺激の強いものは控えましょう。
また、熱すぎるものや、冷たすぎるものも胃に負担をかけてしまいます。
適度な温度調整と、刺激の少ないものを摂取しましょう。
編集部まとめ
ここまで、胃カメラ検査を受けるためには、いくつか注意点があることを解説してきました。スムーズに検査をするためにも、前日や当日の注意点を必ず守るようにしましょう。
万が一、食事を摂取してしまった場合は必ず病院に連絡し、医師に相談しましょう。
胃カメラは苦しいというイメージを持っている方が多いかもしれません。しかし、昔に比べて内視鏡も進化しており、麻酔スプレーで苦しさは軽減されます。
検査時間も5〜10分で済み、身体の負担が少ないのもポイントです。
胃の中は自分では見られないので、病気の異変に気付きにくいでしょう。そのため、病気の早期発見や早期治療に、胃カメラ検査は重要な役割を担っています。
健康な身体を維持するためにも、注意点を守り、定期的な検診を心がけましょう。
参考文献