不妊治療の体外受精とは?不妊の主な原因・不妊治療の種類・治療の流れをご紹介します
「子どもが欲しいけれども、なかなかできない」と悩む方にとって、希望となるのが不妊治療です。
よく知られている不妊治療の一つに、体外受精があります。体外受精は妊娠率を上げられる治療方法ですが、女性の負担も大きく、事前に考えておくべき点もあるでしょう。
本記事では、不妊治療の体外受精とはどのような治療方法なのか詳しく解説します。
また、不妊の主な原因・不妊治療の種類・治療の流れなどもご紹介しますので、不妊治療について知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
監修医師:
柏崎 祐士(医療法人かしわ会 かしわざき産婦人科)
医学博士。日本生殖医学会生殖医療専門医、日本受精着床学会評議員、母体保護法指定医、日本卵子学会代議員等。
目次 -INDEX-
不妊治療の体外受精とは?
体外受精は、体外で男性の精子と女性の卵子を受精させてから、子宮に戻す治療法です。採卵手術によって排卵直前の卵子を体内から取り出し、精子と同じ容器に入れて受精するのを待ちます。
たいていの場合は、排卵誘発剤を使用して複数の卵子を育てる方法がとられるでしょう。受精卵は専用の培養液によって培養し、受精から2~5日後に子宮に戻されます。体外受精は早期に妊娠しやすいメリットがある一方で、排卵誘発剤の使用・採卵時の麻酔など体への負担や通院回数が多くなるなどデメリットもある治療法です。
不妊の主な原因は?
そもそも、なぜ不妊が生じるのでしょうか。不妊の主な原因としては、次のようなものが考えられます。
- 排卵因子(女性)
- 卵管因子(女性)
- 造精機能障害(男性)
それぞれの原因を詳しく解説します。
排卵因子(女性)
不妊の原因の一つは、女性側に原因がある排卵因子です。通常、女性は月経の2週間ほど前に排卵が起こり、妊娠の準備を始めます。妊娠が成立しない場合は、やがて子宮内膜が剥がれ、月経が起こる仕組みです。
しかしながら、月経不順の方の場合、出血するだけで排卵が生じないケースがあります。排卵が起きなければ妊娠もありません。排卵が起きない原因としては、次のようなものが考えられるでしょう。
- 女性ホルモンを出す仕組みに影響がある病気
- 極度の肥満・体重減少
- 男性ホルモンが多いホルモンのバランス異常(多嚢胞性卵巣症候群)
- 精神的ストレス
それぞれの原因に応じた不妊治療が必要です。
卵管因子(女性)
不妊の別のケースは、卵管因子で、こちらも女性側に原因があります。卵管は子宮と卵巣をつなげている管で、卵子と精子が通って出会い、受精する場所です。何らかの原因で卵管が詰まると精子と卵子は出会えず、妊娠も起きません。
卵管が詰まる原因としては、次のようなものが考えられます。
- クラミジア感染症
- 虫垂炎など骨盤の手術
- 子宮内膜症
クラミジア感染症などの場合、無症状で卵管が詰まるケースもあるため、自分では気が付かないうちに卵管が詰まっていることもあります。
造精機能障害(男性)
男性側に原因がある不妊の一つには、造精機能障害があります。
造精機能障害は、精子を作る機能に障害のある状態です。そのため、次のような症状が発生します。
- 精液中の精子の濃度が低下(乏精子症)
- 精液中に精子が存在しない(無精子症)
- 精子の運動率が低下(精子無力症)
上記のような症状があると受精率が低下し、妊娠しにくくなります。造精機能障害が発生する原因は、精巣の周りに静脈のこぶができて精巣の温度が上昇し、精子が作られにくくなる(精索静脈瘤)などが考えられるでしょう。ただし、多くの場合は原因が不明です。
主な不妊治療の種類
不妊治療にはさまざまな種類があります。具体的には、次のような治療が挙げられるでしょう。
- タイミング療法
- 人工授精(AIH)
- 顕微授精(ICSI)
- アシステッドハッチング
- 腹腔鏡手術
それぞれの治療方法についてご紹介します。
タイミング療法
タイミング療法は、妊娠しやすいと考えられる排卵日を検査により計算し、その日にタイミングを合わせて性交渉する方法です。クリニックなどで超音波検査やホルモン検査を行い、正確に排卵日を計算したうえで実施します。
超音波検査では卵胞の大きさ・子宮内膜の状態をチェックし、ホルモン検査では尿中や血中の排卵を促すホルモン(LH)の値を測定する流れです。男女ともとくに問題がない場合に有効な方法といえます。排卵日に性交渉するよりも、排卵日2日前~排卵日にかけての性交渉の方が妊娠率が高いでしょう。
人工授精(AIH)
人工授精(AIH)は、男性から採取して調整した精子を直接子宮内に注入して妊娠を促す治療法です。精子の数が少ない・精子の運動率が低い・勃起や射精がうまくいかないなど、男性側に不妊の原因がある場合に行います。
採取した精液から運動性の良い精子を選んで洗浄・回収し、排卵日に合わせて子宮内に注入する流れです。人工授精と聞くと抵抗がある方もいますが、実際には精液が子宮に入る方法が違うだけで、受精からのプロセスは自然妊娠やタイミング法と違いはありません。
顕微授精(ICSI)
顕微授精(ICSI)は名前の通り、顕微鏡を使って精子と卵子を受精する方法です。卵細胞質内精子注入法とも言われます。活発に動く精子が少ない場合や、体外受精では受精しなかった場合に適応になる方法です。
顕微鏡を使って精子を選び、直径6~8μmほどの極細のガラス管で直接卵細胞に注入します。人工授精のようにたくさんの精子は必要なく、生きている精子であれば受精が可能なことがメリットです。一方で、精子が人為的に選択される倫理的な問題や、ガラス管を卵細胞に差し入れることが原因で変性する可能性があります。
アシステッドハッチング
アシステッドハッチングは、透明帯と呼ばれる膜に包まれた胚が着床しやすくなるように透明帯の一部を薄くしたり、穴を開けたりする治療法です。凍結融解胚移植を行う場合は透明帯が硬くなることがあり、着床率・妊娠率が低下する可能性があります。そのため、アシステッドハッチングを行い、着床を促す必要があるでしょう。
ほかにも、透明帯が通常より厚い場合や硬い場合に向いている治療法です。アシステッドハッチングには、機械法・化学的方法・レーザー法があります。
腹腔鏡手術
腹腔鏡手術は、子宮内膜症・子宮筋腫・卵巣嚢腫などの婦人科疾患により不妊の場合に行われる治療です。全身麻酔をしながら、3~12mmほどの小さな傷をお腹に数箇所あけて、腹腔鏡と呼ばれるカメラを使用して手術を行います。
腹腔鏡手術は開腹手術よりも傷が目立たない・癒着や痛みが少ない・少ない入院日数で済むなどのメリットがあるでしょう。一方で、モニターを見ながら遠隔操作で電気メスや針を使って手術を行うため、高度な技術や経験が求められる治療法です。
不妊治療の流れ
不妊治療を受ける場合、どのような流れで治療を受けることになるかをご紹介します。主な流れは次の3つです。
- 初診・カウンセリング
- 検査
- 治療開始
それぞれの流れを詳しく解説します。
初診・カウンセリング
最初にクリニックで初診・カウンセリングがあります。医師による問診や受付スタッフによるカウンセリングなどが主な内容です。不妊治療の流れ・内容・料金などを確認できるでしょう。
ただし、実際の不妊治療の内容や料金は検査をしてから決まりますので、一般的な内容の話になります。
検査
次に、検査をして不妊の原因を確認します。男性と女性で異なる検査も多くあるでしょう。女性の場合、次のような検査を受けます。
男性の方は次のような検査を受けます。
- 精子検査
- 感染症検査
実施される検査は、クリニックや疑われる不妊の原因によっても異なります。どのような検査を行うかはクリニックに確認しましょう。
治療開始
検査をして原因が分かったら、治療開始です。検査結果・問診の内容・夫婦の希望に基づいて治療方針を決めてから治療を始めます。
精液中に精子がほとんどない場合は顕微授精、卵管が詰まっている場合には体外受精や腹腔鏡手術などが行われるでしょう。検査をしても原因が分からない場合は、タイミング療法から始めて他の治療法にステップアップしたり、不妊の期間によっては体外受精がすすめられたりするケースもあります。
不妊治療のことならかしわざき産婦人科にご相談を
不妊治療について解説してきましたが、治療のことをさらに詳しく知りたい方は、かしわざき産婦人科に相談できます。
こちらの産婦人科は、埼玉県さいたま市大宮区にあり、不妊治療をはじめ、産科・婦人科の治療に対応しているクリニックです。患者さんとパートナーが不妊治療について正しい知識を得たうえで治療を選択できるようにするため、カウンセリングを重視しています。
不妊治療は周囲からのプレッシャーなどから精神的に不安定になりやすいため、精神的なサポートも行っていることが特徴です。不妊治療では赤ちゃんを授かることだけでなく、出産までトータルにサポートしています。
女性医師も在籍しているため、男性には不妊の悩みを相談しにくい方も安心して受診できるでしょう。かしわざき産婦人科の不妊治療におけるその他の特徴やおすすめポイントをご紹介します。
生殖補助技術が必要な体外受精や顕微受精まで新しい設備が整っている
かしわざき産婦人科は、生殖補助技術が必要な体外受精や顕微受精まで、新しい設備が整っているクリニックです。たとえば、顕微授精では顕微鏡で確認しながら、ピペットを使用して卵子の中に精子を注入します。
こちらのクリニックでは、電動マニピレーターを導入しており、より正確に精子を注入可能です。また、高度不妊治療として、アシステッドハッチングにも対応しています。
胚移植を行う際に透明帯の一部に穴を開けて着床率の向上を図る治療です。胚盤胞移植などでレーザーによるアシステッドハッチングができない場合は、酸性タイロードの使用が可能です。
精子や卵子の第3者提供や代理母はアメリカのクリニックと連携
かしわざき産婦人科は、精子や卵子の第3者提供や代理母の紹介をアメリカのクリニックと連携しながら行っていることも特徴です。
不妊治療では、精子や卵子の第3者提供・代理母などの選択肢もありますが、現在の日本の法律では禁止されています。こちらのクリニックでは、安心してお任せできるアメリカのクリニックを紹介してくれるほか、通訳も含めてコーディネートするエージェントの紹介も行っています。
第3者提供や代理母には問題もありますが、子どもを強く望むカップルの選択肢を少しでも広げたいとの願いを持っているクリニックです。すべての選択肢について具体的な内容を知ったうえで、ふさわしい不妊治療が選択できます。
かしわざき産婦人科の基本情報
アクセス・住所・診療時間
JR各線 大宮駅 西口 徒歩15分
バス:上小町 徒歩1分
診療時間 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 | 祝 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
9:00~12:00 | ● | ● | ● | ● | ● | ● | - | - |
16:00~18:30 | ● | ● | ● | - | ● | - | - | - |
※初診の受付時間は17:30まで、土曜日は11:30までです。
※木曜日は10:00で受付終了となります。
参考文献