高血圧の初期症状は?原因や治療方法も解説
日本では成人の2人ないし3人に1人が高血圧であったり、もしくはほかの病気とともに高血圧を発症していたりするといわれています。
しかし、高血圧はサイレントキラーと呼ばれる自覚症状がほとんどない病気です。気づいたときにはほかの病気を併発しているといったことも少なくありません。
一方で、段の健康診断などで数値を追うことで捉えることができます。
そのため、自分自身の症状ではなく、検査結果の数値によって自分が高血圧であることを自覚することが可能です。
ここでは、高血圧の初期症状や原因、治療方法について説明します。
監修医師:
小鷹 悠二(おだかクリニック)
目次 -INDEX-
高血圧の初期症状は?
高血圧の中でも初期の段階の軽症高血圧は、収縮期血圧が130 (mmHg) から139 (mmHg) あるいは、拡張期血圧が90 (mmHg) から99 (mmHg) の場合になります。
また、血圧以外のリスク要因も低く、糖尿病・臓器障害・心血管病であることへのリスクは高いものの、糖尿病以外のリスクは中程度です。
初期の症状はほとんどなく、生活に支障をきたすことはほとんどありません。仮に症状があったとしても高血圧が原因である認識がないため放置されてしまう場合が多いです。
高血圧は早めの対策で改善できるものなので、まずは、初期症状について理解を深めていきましょう。
自覚症状がない場合が多い
高血圧は自覚症状がない場合が多いため、サイレントキラーと呼ばれています。
普段から血圧が高いと思っていても、高血圧が原因だと考える方は多くはないからです。
初期症状に気づくためには、家庭血圧を活用し、自身の血圧の状態を常に把握することが重要です。
健康診断などで血圧値が高めの場合には、家庭血圧を測る習慣をつけることをおすすめします。 朝と夜の1日2回、座位で測定し、血圧手帳などで数値を記録しましょう。
少し体がだるいときやストレスを感じたときなどに血圧を測ることもおすすめです。ちょっとした体調の変化がなぜ起きているかを検討する際に、まずは血圧を測ってみましょう。
血圧値を見ることで、原因が血圧の上昇であることを確認できる可能性があります。この習慣があると、高血圧に対する意識を高め、高血圧に気づくことにつながります。
頭痛やめまい・肩こりなどの症状が出る場合も
血圧が普段よりも高いときは、頭痛・めまい・肩こりといった症状を起こす場合があります。
このような症状があるからといってすぐに高血圧によるものであると認識する方は多くありません。
逆に、高血圧とは無関係の場合もあり得るからです。しかし、高血圧の症状として頭痛・めまい・肩こりなどが起こることは常に意識するようにしましょう。
高血圧の原因
日本人の高血圧の最大の原因は、食塩のとりすぎと言われています。
また、若年・中年の男性では、生活習慣病・肥満・飲酒・運動不足が原因の高血圧も増えています。
高齢者になると加齢が原因で高血圧になる可能性もあります。
これら高血圧の原因について以下で詳しく説明します。
遺伝
高血圧には遺伝的な要因もあります。
両親共に高血圧の場合に子供が高血圧を発症する確率は50%、片親のみが高血圧の場合は30%と言われています。
ですが、遺伝的な要因による高血圧の発症リスクを増加させる可能性がありますが、必ずしも高血圧になるとは限りません。
高血圧と関連する遺伝子変異は特定されていて、これらの変異が高血圧の発症に関与していると考えられています。
生活習慣の乱れ
高血圧の発症や進行には生活習慣の乱れが影響していることがあります。
特に食生活の乱れの影響は大きく、高血圧を発症する方の食事は塩分が多く高カロリーである場合が多いです。
塩分過多、高カロリーな食事は高血圧の原因となるので、注意が必要です。
また、生活習慣の乱れによる運動不足や過度なストレスも原因になります。特に長期間のストレスは、ホルモンバランスを崩し神経系が影響を受けるので、血圧の上昇を引き起こす要因です。
さらに、過度な飲酒や喫煙は血管を収縮させたり、心臓機能の低下を引き起こすため、高血圧が発症するリスクを増やします。
加齢
加齢に伴い、血管の弾力性が失われ、血流の流れが悪くなる場合があります。
特に心臓への影響が大きく、血流の流れが鈍化することで、収縮期血圧が上昇します。
また、血圧調整に関わるホルモンであるアドレナリン・ノルアドレナリンは、血管を収縮させるものです。交感神経が刺激されることでこのホルモンが血液中に多く出て血圧を上昇させます。
高血圧の危険性
高血圧は、それ自体が大きなリスクとなりますが、ほかの病気を併発させる可能性が大きい病気です。
高血圧によって血管の状態が悪くなったり、血流に問題が発生したりすることが要因となります。
動脈硬化が起こりやすい
動脈硬化は、血管内壁にコレステロールや脂質が蓄積して血管が炎症することで起こる病気です。
高血圧によって血管内の圧力が上昇すると、血管の壁に対する負担が増加します。この状態が続くと、血管壁が損傷し炎症が生じる可能性があります。
炎症で傷ついた血管内壁にはコレステロールや脂質がつきやすくなり、血管内腔を狭め、その結果起きるのが動脈硬化です。
高血圧と動脈硬化は相互関係を持っています。高血圧によって血管が狭くなることで、血液の流れが悪くなり動脈硬化が進行します。
また動脈硬化により血管が硬くなり血管の弾力性が低下すると、高血圧が発症しやすくなるという悪循環です。
脳卒中や心筋梗塞などの合併症を引き起こす場合がある
高血圧は脳卒中や心筋梗塞などの合併症を引き起こす場合があります。
高血圧は、血管に対する負担を増やしますが、これは脳の血管に対しても同様です。
長期間にわたって高血圧が続くと、動脈硬化・血管狭窄が進行し、脳血管の血流が阻害されます。これによって、脳卒中が発生する可能性があります。
また、心筋梗塞の場合は、高血圧によって心臓への負担が増えることで、心臓の冠動脈に異常をきたすことで発症します。
心臓の酸素や栄養供給が不十分になり、心筋梗塞が引き起こされる可能性があることに注意が必要です。
高血圧になりやすい人の特徴は?
高血圧には大きく分けて2つの種類があります。1つは明らかに原因がわかっている二次性高血圧です。もう1つは、原因を1つに定めることのできない本態性高血圧です。
二次性高血圧の場合は、腎臓の働きの悪化が原因で塩分が排出できなくなる場合・副腎など内分泌腺の病気によって血圧を上げるホルモンが体内に増えた場合・血管の病気の場合などがあります。
一方、本態性高血圧は、体質によるもの・塩分の過剰摂取・肥満・生活習慣などさまざまな要因が考えられます。また加齢によるものや遺伝によるものの可能性があります。
これらは早めに生活習慣を改善することで予防や治療をすることが重要です。
高血圧の治療方法
高血圧の中でも二次性高血圧の場合は、原因となった病気を治療することで高血圧自体も改善することが考えられます。
しかし、本態性高血圧の場合は、原因が特定できないため、現在の生活環境を改善することで少しずつ治療をしていくことになります。
では、どのようなことを改善すればよいのでしょうか。
食塩の摂取を1日6g未満に制限する
一般的に日本人は、他国に比べ食塩摂取量が多い。しかし、少し工夫をするだけで塩分の量を減らすことができます。
摂取する塩分の量を減らすことは、血圧を下げるだけでなく、ほかの病気、例えば脳卒中・心疾患・腎臓病にもよい影響を及ぼす可能性があります。
減塩による降圧効果を期待するのであれば、1日6g未満を目標にしてみることをおすすめします。
普段減塩を気にせずに食事を摂っている方にとっては、この数値は厳しいと感じるでしょう。いきなり急激な減塩をしてしまうと必要な栄養バランスが取れなくなることもあります。
減塩をする場合は、少しずつ摂取量を落としていくなどの工夫が重要です。
何かの病気が原因の高血圧でない場合、食塩摂取量を1日1g減らすと、平均で1mmHg強の収縮期血圧の低下を期待できるという統計が出ています。
また、最近では減塩の醤油・味噌・うどん玉といった普段料理をするときに利用する食材や調味料の減塩タイプが簡単に手に入るようになりました。これらをうまく利用することで、食塩の摂取量の目標である1日6g未満を達成してみましょう。
野菜や果物を積極的に食べる
健康的でバランスのよい食事をとることは、高血圧に限らず健康な体づくりには不可欠です。
特に、日頃から野菜・果物・魚を摂る食事を心がけることは高血圧の予防には非常に有効です。これらの食物は偏らせることなく上手に組み合わせることが重要になります。
また、塩分コントロールをする場合でも有効です。野菜や魚から取れる出汁を使った食事であれば、塩分を控えても味がしっかりとしていますので、美味しく食べることができます。
また、カリウムを意識して摂取することもおすすめです。カリウムは、腎臓から塩分を排泄しやすくする働きがありますので、体から塩分を取り除くという観点から効果的です。
さらに、カルシウムにも血圧を安定させる効果があることがわかっていますので、積極的に摂るようにしましょう。
過度な飲酒を控える
アルコールは、継続して一定量以上を飲むと高血圧のリスクを上げます。多量の飲酒は高血圧だけでなく、脳卒中・心筋症 ・心房細動・ 睡眠時無呼吸症候群といったほかの病気を併発する可能性があります。
飲酒をする場合は過度な量を避け、適度な量を楽しむのがいいでしょう。では、どれくらいがよいのでしょうか。
一般男性でいえば、1日に日本酒1合・ビール中瓶1本・焼酎半合・ウィスキーやブラディーはダブルで1杯・ワイン2杯が適量といわれています。
また、短時間で飲むのもよくありません。ほかの食事と一緒に楽しんだり、会話を楽しみにながらリラックスして飲酒をするようにしましょう。
飲み始めると多量になってしまうという方であれば、休肝日を決めるなどして、飲酒の機会を減らすのもよいでしょう。
適正体重を維持する
適正体重とは、身長(m)の2乗に22をかけたものです。
一般的にいわれるBMIは、体重(kg)を身長(m)の2乗で割ります。つまり適正体重とは、BMIでいうところの22になる値です。
BMIの正常範囲は18.5から25.0の間とされており、肥満といわれるのはBMIが25.0以上です。ですので、この範囲で体重を維持できるようにしましょう。
肥満は高血圧の大きな原因の1つです。適正体重を維持することは、高血圧の初期症状の段階では非常に有効な対策になります。
個人差はあるものの体重が3kgから4kg減少すると血圧の低下が期待できるといわれていますので、肥満対策は効果的だと考えられます。
肥満の原因の多くは、過食と運動不足ですので、健康的な食事と適度な運動からまずは始めることをおすすめします。
しかし、高血圧が気になるからといって、急激に体重を落とすことはよくありません。リバウンドを起こしてしまい、逆に悪影響を及ぼします。
また、逆にやせすぎにも注意をしましょう。時間をかけて少しずつ適性体重に近づけていくことが重要です。
適度に運動する
普段から体を動かして適度に運動をすることは高血圧の初期段階では大変有効な方法です。高血圧が進むと激しい運動はできなくなります。
普段から運動を行うことで、血流をよくしますし、ストレスの解消にもつながります。
また、高血圧と密接な関係にある生活習慣病の予防にも効果的です。おすすめの運動は、速歩・ステップ運動・スロージョギング・ランニングといった有酸素運動です。
運動の強さは人によってまちまちですが、初めは軽い運動からスタートし、徐々に難易度を上げていきましょう。
重要なことは、毎日あるいは定期的に適度な運動を継続することです。1回に行う時間は毎日30分以上、または週180分以上を目安にしましょう。
しかし、継続を意識して無理に運動を行う必要はありません。体調が悪い時や天候が悪い中で無理に行うのではなく、自分のペースを見つけていきます。
また、初期症状の高血圧であれば、有酸素運動に加え、筋力トレーニングやストレッチを取り入れるのも有効です。体づくりとしての運動は肥満の防止にもなります。
禁煙する
喫煙が引き起こす症状として、高血圧に関連するものは、血管の収縮です。
血管が収縮すると血流を圧迫し、血管の壁を傷つけます。これは、高血圧のリスクとして考えられる動脈硬化のリスクへとつながりますので注意が必要です。
高血圧は初期の状態であっても、今後の合併症リスクを抱えている音を意識しなければなりません。そのために、まずは禁煙をすることで少しでもリスクを減らすことを考えてみましょう。
高血圧の治療は自覚症状がない段階から始めることが大切
高血圧の多くは原因を特定できず症状もありません。そのため、どの段階から治療をすればよいのかが分かりづらいことが問題です。
しかし、定期的な健康診断を受けたり、普段から家庭血圧を測ることで自分の血圧を把握しておくことはできます。
これらを記録しておくことで、血圧の上昇が長く続く場合は、高血圧の兆候としてとらえ、生活改善や食事の工夫などをすることが大切です。
高血圧は早めの対処をすることでほかのリスクを抑えることができます。
編集部まとめ
初期の症状を理解すると自分自身がどのような状態にあるかを把握することができます。単なる頭痛と考えていたことが高血圧によるものだった場合もあります。
普段の血圧測定で高い値を示した場合などは、早めの治療が必要となりますので、かかりつけ医に相談してみましょう。
参考文献