ホルモン補充療法に使われる薬の種類を紹介|ホルモン補充療法の効果・リスク・副作用の期間も解説
ホルモン補充療法(HRT)は、体内で不足しているホルモンを補うことで、ホルモンバランスを改善・維持して心身の不調の改善に効果が期待できる治療法です。
「更年期障害で悩んでいる」「エイジングケアをしたい」「心身ともに健康で若々しくいたい」などの理由から、ホルモン補充療法(HRT)を選ばれる方は少なくないでしょう。
そのためどのような薬が使われているのか、その効果・副作用・リスクなども詳しく知っておきたい方もいるのではないでしょうか。
この記事では、ホルモン補充療法(HRT)を始めてみたい方のために、使われている薬を紹介します。その効果・副作用も解説するので、ぜひ参考にしてください。
監修医師:
山下 真理子(医師)
目次 -INDEX-
ホルモン補充療法に使われる薬の種類
ホルモン補充療法(HRT)で使われる薬は、主に更年期症状の原因となる女性ホルモンのエストロゲン・プロゲステロンで、この2種類を単体または組みあわせて使用するのが一般的です。
ホルモン補充療法(HRT)で使われる薬のタイプには内服薬・塗り薬・貼り薬があり、ホルモンの状態・症状・生活スタイルなどを考慮して選択します。
それでは、それぞれのタイプの特徴を説明しましょう。
内服薬
内服薬は、成分が胃腸で吸収されて肝臓へと運ばれ、肝臓から血液中に入って身体の組織へと作用します。
携帯するのに便利で、場所を選ばずに使用できるため、使用方法として初めに選ばれることが多いかもしれません。
しかし、内服薬は胃腸・肝臓に負担がかかることもあるので、指示された用法・用量をきちんと守りながら使うことが大切です。
もともと胃腸が弱い方は、使用前に医師に相談しておくとよいでしょう。また、内服中に異常がみられた場合にはすぐに受診してください。
塗り薬
塗り薬は、皮膚に塗ることで、薬の成分が皮膚の表面から直接吸収されて効果を発揮するものです。
内服薬と比べて、効きめが穏やかで胃腸への負担もないために、胃腸が弱いなどの心配がある方にはよいでしょう。
しかし、場所を気にして塗らなければならなかったり、塗ること自体が手間であったりと内服薬と比べると面倒に感じる場合も多いかもしれません。
使用中はかゆみ・かぶれなどの皮膚トラブルに注意が必要です。これらの症状が出た場合は、すぐに受診してください。
貼り薬
貼り薬は、皮膚に直接貼ることで、薬の成分が皮膚から直接吸収されて浸透し効果を発揮します。
血中濃度を長時間にわたり維持できるので、安定した効果が期待できる特徴があります。
しかし、貼る場所によっては目立つこともあり、見た目が悪いと感じる方もいるかもしれません。
貼布中はかぶれ・かゆみ・発赤などが起こる場合があり、その場合は医師の指示のもとで貼る場所を変えたり、使用を中止したりする場合もあります。
ホルモン補充療法の効果
ホルモン補充療法は、ホルモンのバランスが崩れることによって起きる更年期障害に効果を発揮します。
その他にも、心身の健康や骨粗しょう症の予防など、更年期障害の軽減以外の効果が期待できることも見逃せません。
実際にどのような効果があるのか、ホルモン補充療法(HRT)の効果について、もう少し詳しくみていきましょう。
ホルモンバランスを整えて更年期障害を軽減する
更年期障害の症状には、のぼせ・ほてり・頭痛・肩こり・不正出血・不眠・イライラ・うつなどがあり、この症状に悩んでいる女性も少なくないでしょう。
更年期障害とホルモンバランスは密接な関係があり、多すぎても少なすぎても心身に影響を及ぼします。
ホルモンとは臓器から細胞の遺伝子に働きかけてそれぞれの働きを調整する物質で、ビタミンのように外から栄養として摂るものではなく、体内のさまざまな器官で作られるものです。
ホルモン補充療法(HRT)は不足しているホルモンを補うことで、年齢とともに減少していく更年期障害の症状を緩和・改善する効果があるとされている治療法です。
全体的なホルモンバランスを整えることで、更年期障害の軽減が期待できます。
心身を若々しく健やかに保てる
更年期障害とまではいかないけれど、毎日のイライラ・気分の落ち込みなどは誰もが経験していることではないでしょうか。
また年齢を重ねていくにつれて、免疫力・体力の低下を感じたり、しわ・くすみ・ハリなどの肌の老化を感じたりする場合もあります。
不足しているホルモンを補い、ホルモンバランスを整えてよりよい状態にするホルモン補充療法(HRT)は、更年期障害を軽減するだけではなくこうした状態にも効果が見込めるでしょう。
現れている症状だけでなく全体的なバランスを取りながら治療を進めていくことで、心身の健康を保ちながら若々しく活き活きと過ごすことが目指せるのです。
骨粗しょう症リスクが軽減される
ホルモン補充療法は骨粗しょう症の予防にも効果が期待できます。
女性ホルモンのエストロゲンは骨の代謝を調節する役割を担っているため、エストロゲンが減少すると、骨粗しょう症になりやすくなってしまうからです。
骨粗しょう症の発見が遅れると、背骨が曲がったり骨折しやすくなったりしますが、早期発見・予防をすることで健康的な骨を維持できます。
ホルモン補充療法でエストロゲンを補い、骨の代謝が活発になると骨密度が上がりますので、おのずと骨粗しょう症の予防につながります。
ホルモン補充療法薬のリスク
ホルモン補充療法(HRT)の効果をお伝えしてきましたが、メリットばかりではなく、副作用などのリスクがみられる場合もあります。
どのような副作用があるのか、治療を続けていくと考えられる問題は何か、そのリスクをこれから説明します。
吐き気・不正性器出血などの副作用
副作用として、主に吐き気・不正出血が挙げられます。吐き気は治療後に出現してくる方がいますが、有無・程度には個人差がみられます。
一般的に症状はそれ程重いものではなく、治療を継続しながら様子をみていくと1〜3ヵ月程度で治まってくるでしょう。
不正出血は、月経以外で性器から出血があることをいい、エストロゲンが多くなると出てきやすい副作用です。その他にも乳房の張り・痛みなどが出る場合もあります。
いずれの副作用の場合も出方には個人差があるので、副作用が起こらない方もいらっしゃれば、強い副作用に悩まされる方もいらっしゃいます。
一般的には徐々に軽快していくものがほとんどですが、状態によっては医師の判断のもとで投与方法・用量などの変更を行うこともあるので、ひどい場合には医師に相談して確認することが大切です。
乳がんの危険性がある
特に乳がんの発生には女性ホルモンのエストロゲンが関係していると考えられ、ホルモン補充療法(HRT)での乳がんの危険性が心配な方も多いでしょう。
しかし「ホルモン補充療法ガイドライン(2017年度版)」では、「乳がんリスクに及ぼすHRTの影響は小さい」と記載がありました。
研究発表によるとHRTは乳がんを発症するリスクがそれ程高くないことがわかりつつあります。ただしこのリスクは、薬のタイプ・期間・年齢・健康状態などによって異なります。
ホルモン補充療法(HRT)を行う時に、すでに小さな乳がんが発生していた場合は、ホルモンが補充されることでがんを大きくさせてしまう可能性があるので注意が必要です。
したがって、すでに乳がんがある方・乳がんの既往がある方にはホルモン補充療法(HRT)を行えません。
内服薬は吸収の過程で胃腸・肝臓に負担がかかるおそれがある
どの内服薬であっても、使用すると胃腸・肝臓に負担がかかる恐れがあり、ホルモン補充療法も例外ではありません。
内服薬の成分は胃腸で吸収されて肝臓へと送られ、肝臓から血液中に送られて身体に行き渡る仕組みです。
ホルモンの投与方法によっては休薬期間を設ける場合もありますが、治療は連続的・断続的で数ヵ月の長期にわたって行われることが一般的ですので、胃腸・肝臓への負担の可能性もあります。
内服薬による副作用が不安な方は、事前に医師に相談しましょう。胃腸・肝臓にかかる負担が少ない薬を使用している病院もあります。
治療が始まっても定期的に通院し、医師と相談しながら適切な治療方法を続けていきましょう。
ホルモン補充療法薬の副作用の期間
一般的に、ホルモン補充療法(HRT)で起こる副作用の期間は1〜3ヵ月といわれています。1〜3ヵ月経ってくると徐々に軽減して、気にならない程度にまで落ち着くことが多いでしょう。
万が一、症状が落ち着かない・悪化していくなどの状態が続く場合は、医師に相談してください。現在使用中のホルモンの量を減らしたり、中止したりして副作用に対応してくれるので、我慢しないことが重要です。
ホルモン補充療法の内服薬と経皮薬の主な違い
ホルモン補充療法(HRT)にはその投与方法で内服薬・経皮薬と大きく2つにわかれます。
不足しているホルモンの種類・症状・生活スタイルによって、その方に合った方法が選択されます。
それぞれ作用機序・特徴が変わってくるので、違いを知って自分により合った方法で治療を受けられるように医師と相談することが大切です。では、2つの違いを紹介します。
内服薬は服用方法の心理的負担が少ない
一般的に薬といえば、内服薬をイメージする方が多いのではないでしょうか。内服薬は、私たちが慣れ親しんだ形といえるでしょう。内服薬は、成分が胃腸で吸収されて肝臓へと運ばれ、肝臓から血液中を渡り身体へと効果をもたらします。
ホルモン補充療法(HRT)で使用される内服薬は錠剤・カプセルなどが一般的で、これらは携帯にも便利なので外出先・旅行先などでも服用できます。
薬として一般的な形なので服用しやすく、その点でも心理的負担を軽減してくれるでしょう。ただし、胃腸・肝臓に負担がかかることもあるので注意が必要です。不快などの症状が出た場合には医師に相談しましょう。
経皮薬は吸収率が高く即効性が期待できる
経皮薬とは、貼り薬・塗り薬などの外用薬のことです。「経皮吸収」と呼ばれ、皮膚に直接塗ったり貼ったりして、その成分が皮膚から吸収されて血液中に入り血中濃度を上昇させて効果をもたらします。
どちらも内服薬と比べると、補充されたホルモンの血中濃度レベルを長時間に渡って一定に維持できるので、体内での吸収率が高いです。
また、内服薬より経皮薬の方が肝臓への負担が少なく、吸収経路で胃腸を通らないので胃腸への負担がかかりません。
ただし、人によっては貼ったり塗ったりした場所が赤くなってかゆみが出たり、かぶれたりする場合もあるので注意が必要です。
編集部まとめ
ホルモン補充療法に使われる薬の種類と効果を解説しました。
使用する薬の種類・量・期間は一人ひとり違いますので、気になる症状はしっかりと医師に相談しましょう。
また、効果だけではなく、副作用があることも忘れてはいけません。
ほとんどの副作用が一時的なもので、徐々に治まっていきますが、長引く場合は早めに病院に行きましょう。治療が始まってからも定期的に通院することが大切です。
ホルモン補充療法での更年期障害の治療を検討している方は、1度婦人科を受診してみてください。更年期障害を改善し、いくつになっても健康で若々しい毎日を送りましょう。