円形脱毛症を早く治す方法とは?原因・種類・AGAとの違いについても解説
円形脱毛症は性別・年齢にかかわりなく多くの人が悩まされている症状です。前触れもなく突然まとめて髪が抜けるので、ショックを受けてしまうでしょう。
精神的なストレスによるものというイメージがありますが、実際のところ円形脱毛症はなぜ発症するのでしょうか?
この記事では円形脱毛症の原因・種類・予防法について詳しく解説します。似ている症状のAGAと何が違うのかもまとめているので参考にしてみてください。
監修医師:
山下 真理子(医師)
目次 -INDEX-
円形脱毛症を早く治す方法とは?
一般的によく耳にする円形脱毛症は、後天性脱毛症の中でも皮膚科外来で特に相談を受ける頻度が高い疾患です。
男性だけでなく女性も発症し、15歳以下の子どもにも多く見られます。世界的に見られる疾患で、日本では人口の1〜2割が経験しているといわれています。
性別・年齢・国籍も関係なく発症するということは、誰もがいつなってもおかしくない疾患であることは明らかです。
では円形脱毛症になってしまった場合、少しでも早く治すにはどうすればいいのでしょうか?円形脱毛症について知っておきたい情報をまとめました。
円形脱毛症の原因
実は円形脱毛症は医学的にも原因がはっきりとは分かっていません。生活スタイル・家庭環境・持病などの共通点がない患者さんが多くいます。
とはいえ自分や親しい人が経験すると、できるだけ原因を知りたいと思うものです。考えられる4つの原因をチェックしていきましょう。
自己免疫疾患
現代医学が進歩する中、近年円形脱毛症の原因として有力視されているのが「自己免疫疾患」の一種であるという説です。
生き物の体には細菌・ウイルスといった異物を排除し自分自身を守るために、免疫という防御システムが働いています。
しかし免疫が何らかの理由で正常に機能しなくなり、正常な細胞・組織に対して過剰に反応し攻撃を加えてしまうことがあります。これが自己免疫疾患です。
この免疫異常は毛髪にまで及び、リンパ球が毛根を生成・保護している毛包(もうほう)を攻撃し破壊してしまいます。
本来毛髪の生成には細胞死を起こして毛包が小さくなる退行期と、次の成長に備えて活動を休止する休止期のサイクルが重要です。
ところがリンパ球に攻撃された毛包は強制的に休止期へと移行します。毛髪を維持することも生成することもできなくなるため、円形脱毛症が発症すると推察できます。
加えて円形脱毛症の患者さんの中にはほかの自己免疫疾患を合併する例も見られているので、免疫異常を大きな原因と考えることができるでしょう。
ストレス
円形脱毛症はストレスによるものというのが多くの人のイメージかもしれません。そのイメージ通り、確かにストレスも関係しているといえます。
自己免疫疾患そのものも精神的なストレスによって発症しやすいものです。そのため直接的な原因とはならなくとも発症のきっかけにはなるでしょう。
ストレスを受ける時、体はストレスと闘うために心肺を速く動かしたり体温を上げたりする働きを担う交感神経が活発になります。
ここまでは正常な反応ですが、強いストレスを受けたり長くストレスにさらされたりすると交感神経は異常をきたし、自律神経が乱れて血流が悪化します。
血流は毛髪の生成・保護に必要な栄養を行き渡らせる運搬係です。血流の悪化によって健康な髪の毛を作れずに抜け落ちてしまうと考えられます。
アトピー素因
アトピー素因は以下の4つのアトピー性疾患のいずれか、もしくは複数を自分自身か家族が持っている人のことです。
- 気管支ぜんそく
- アトピー性鼻炎
- 結膜炎
- アトピー性皮膚炎
円形脱毛症の患者さんの中にこのアトピー素因を持っている方が一定数いることから、因果関係があるのではないかと見られています。
またアトピー性疾患への治療によって円形脱毛症が軽減したケースもあるため、無関係ではないといえるでしょう。
アトピー素因はある程度遺伝するといわれています。自分がアトピー性疾患を持っていなくても、アトピー素因が円形脱毛症を引き起こす可能性があります。
女性ホルモンの減少
健康的な毛髪の育成には女性ホルモンが欠かせません。特にエストロゲン(卵胞ホルモン)は発毛を促進し維持する働きがある大切なホルモンです。
しかしエストロゲンは加齢とともに分泌量が大きく減少しやすい傾向にあります。それで女性にも脱毛症が発症してしまうようです。
さらに妊娠中は増加している女性ホルモンが出産後には急激に減少するため、産後の円形脱毛症に悩む若い女性も多く見受けられます。
女性ホルモンの減少
健康的な毛髪の育成には女性ホルモンが欠かせません。特にエストロゲン(卵胞ホルモン)は発毛を促進し維持する働きがある大切なホルモンです。
しかしエストロゲンは加齢とともに分泌量が大きく減少しやすい傾向にあります。それで女性にも脱毛症が発症してしまうようです。
さらに妊娠中は増加している女性ホルモンが出産後には急激に減少するため、産後の円形脱毛症に悩む若い女性も多く見受けられます。
円形脱毛症の種類
円形脱毛症というと文字通り円形に脱毛する疾患であることはよく知られています。とはいえ円形脱毛症にも種類があることはご存じでしょうか?
一見すると円形脱毛症には見えず、ほかの病気を疑って不安になる方もいるはずです。そこで円形脱毛症の5つの種類を詳しく見ていきましょう。
単発型円形脱毛症
一般的に円形脱毛症と聞いて思い浮かぶ症状のことを「単発型円形脱毛症」と呼び、これを基準にほかの種類へと派生していきます。
単発型円形脱毛症は“10円ハゲ”と称されるように、頭皮の1か所がコイン大に露出している状態です。髪が長ければ隠せる程度の大きさといえます。
軽度の単発型円形脱毛症の場合、抜けたり生えたりを繰り返しながら約6か月〜1年で症状が収まることが多いです。
この場合ほとんど治療の必要もありません。しばらく我慢が強いられますが、新しい髪の毛が生え切るのを待っていれば自然と綺麗に治るでしょう。
多発型円形脱毛症
単発型に続いて多く出現するのが「多発型円脱毛症」です。コイン大に脱毛している部分が一度に複数生じる状態のことを指します。
厳密にいえば病変している部分が2〜4か所ある場合が少数型、5か所以上ある場合が多数型という認識です。
単発型よりも症状が進行しており、完治までに2年ほどかかった症例もあります。脱毛斑が結合して大きくなったり、再発を繰り返したりする恐れがあります。
全頭型円形脱毛症
円形脱毛症は単発型から多数型までが通常型とされています。ここから挙げるのは変異型ともいえる円形脱毛症の種類です。
全頭型円形脱毛症は脱毛部が全頭に及ぶ症状です。通常型では一部の髪の毛が抜けるのに対し、全頭型では脱毛部が結合して髪全体が抜け落ちてしまいます。
全頭型の中には数週間のうちに急激に進行するケースと、通常型が徐々に進行して脱毛部が広がっていくケースがあります。
前者であれば自然治癒できる傾向が強いですが、後者は通常型が重症化した症状であるため自然治癒はかなり難しい状態です。
汎発型円形脱毛症
汎発型(はんぱつがた)円形脱毛症は髪の毛だけでなく、眉毛・まつ毛・ヒゲをはじめ全身の体毛に脱毛が及ぶ状態のことです。
円形脱毛症の種類の中では症状が重く、全頭型と並んで難治性といわれています。自然に体毛が生え揃うことはまずないでしょう。
早期に治療を始めるとともに数年がかりの根気強い治療が必要になります。完治した後に再発することもあるので、扱いが難しい症状です。
実は全頭型や汎発型のような重度の円形脱毛症は、大人よりも15歳以下の子どもによく発症する傾向にあります。
しかし脱毛症の子どもの中には自分で髪の毛を引き抜く衝動を抑えられずに目立つほど抜いてしまう抜毛症の子もいるので、その見極めが大切です。
蛇行型円形脱毛症
蛇行型(だこうがた)円形脱毛症は、側頭部から後頭部にかけて生え際に帯状の脱毛斑が見られる症状を定義しています。
ほとんど単発型から進行し、脱毛斑が結合してまさに蛇が這ったようないびつな形状に広がるのが特徴。円形脱毛症の種類の中では症例が少ないケースです。
以前は不治とされていたものの、治療に数年を要するとはいえ完治したケースも増えてきています。早めに適切な治療を始めることが大切です。
円形脱毛症とAGAの違い
脱毛という症状が発現する疾患では、円形脱毛症以外に「AGA」と呼ばれる疾患も広く聞かれるようになってきました。
自分の症状が円形脱毛症かAGAか分からず悩んでいる方もいるでしょう。ここでは両者を見分けるための大きな2つの違いを取り上げます。
発症対象が異なる
AGAはAndrogenetic Alopecia(アンドロジェネティック アロペシア)の略称で、「男性型脱毛症」という意味があります。
名称にもある通り、AGAは主に男性に発現する症状です。円形脱毛症が女性にも発症することを考えると、明らかに異なる疾患といえます。
さらにAGAは男性ホルモンが主な要因とされ、思春期以降の成人男性が多く発症し、年齢が上がるにつれて発症率も上がる傾向にあります。
子どもから高齢者まで幅広い年齢層が発症する円形脱毛症とは、発症対象が大きく異なるという違いがあることが分かるでしょう。
進行方法が異なる
円形脱毛症とAGAではどのように進行するかも異なります。円形脱毛症は一部の髪の毛がまとめて抜け落ち頭皮が露出する症状であることはすでに挙げました。
一方、AGAは毛髪が生え変わる周期によって抜けるのが特徴です。それで抜ける前に髪の毛が細く弱ってコシがなくなっていきます。
また少しずつ抜けていくため、毎朝起きる度に抜け毛が気になるという人もいるでしょう。このような進行の予兆があり、ゆっくり進行するのがAGAです。
つまり簡単にいえば円形脱毛症は脱毛、AGAは薄毛の疾患ということです。脱毛であれば完治の可能性がありますが、薄毛は進行を抑えるに留まります。
円形脱毛症の予防方法とは?
誰もが発症するリスクを抱えているとはいっても、髪はその人の印象を大きく左右する大切なもの。可能であれば発症しないようにしたいと感じることでしょう。
円形脱毛症はどうすれば予防できるのでしょうか?毛髪の生成・維持のメカニズムに注目して、手軽にできる予防法をご紹介します。
頭皮マッサージを行う
健康な毛髪が生成・維持されるためには頭皮への血流が重要です。頭皮への血流は毛根に必要な酸素と栄養を届ける役目を果たしています。
円形脱毛症を発症する際には血流が悪い状態にあります。そのため、前もって頭皮マッサージを習慣にするなら抜けにくい強い髪を成長させられるでしょう。
一例として指の腹で頭皮を掴み、円を描くように3回程度動かしてみてください。頭皮全体を動かすために6〜8回ほど掴む位置を変えて繰り返します。
頭皮が硬くなっている方も、マッサージを続けると徐々に柔らかくなってきます。体が温まっているシャンプーの時に取り入れるのもおすすめです。
運動して血行促進
頭皮に直接働きかけるだけでなく、体の内側から血行を促進することによっても健康な毛髪を維持することができます。
特に有酸素運動がおすすめです。軽い負荷をかけ長時間継続して行う運動で、ウォーキング・ジョギング・サイクリング・水泳などが挙げられます。
有酸素運動をすると全身の血流が促進されるので、頭皮の毛細血管まで酸素と栄養を届けることができます。これが髪の毛によい影響を与えるのです。
また、運動は円形脱毛症の要因となり得るストレスを軽減するのにも効果的です。心をリフレッシュさせれば免疫を正常に整えられるでしょう。
アトピー素因を持つ方はこれらの予防法を取り入れても発症を防ぐのは難しいといえます。とはいえ軽度で済む可能性はあるので、まずは試してみてください。
円形脱毛症を早く治すためには医療機関に相談を
円形脱毛症は軽度であれば自然治癒が見込めますが、発症したら症状の程度にかかわりなくなるべく早く治したいというのが多くの人の気持ちでしょう。
しかし前述したように円形脱毛症ははっきりとした原因が分かっていません。ですから自己判断で原因を特定するのは非常に難しい疾患です。
もし判断を誤って間違った対策を講じてしまうと、反対に完治までの時間が余計に長くかかってしまう可能性があります。
円形脱毛症を発症している、もしくは円形脱毛症が疑われる場合はぜひ早めにクリニックに相談してみてください。
ご自身の脱毛の原因としてどのような点が考えられるのか、どのような治療を行っていくのがベストなのかを正しく判断し次の行動に移すことができるでしょう。
たとえば有効な治療法の1つとして局所免疫療法があります。これは試薬を脱毛部に塗ることで人工的にかぶれを引き起こして発毛を促す療法です。
ほかにも患者さんの年齢・持病などに応じて治療法をいくつか選択できるので、信頼できる医師と相談しながらよりよい治療法を選んでくださいね。
編集部まとめ
今回は円形脱毛症の原因・種類から日常で実践できる予防法まで詳しくご紹介しました。身近なようで意外と知らない情報もあったのではないでしょうか?
ふと髪の毛を触った時にまとめて抜け落ちる感覚はショックが大きいものです。頭皮が露出しているのも気になってしまうでしょう。
それでも過度に不安に思ってストレスを抱えると心身ともに弱い状態になるため、円形脱毛症を進行させてしまうことになりかねません。
気になる症状を見つけたり不安を抱えたりしているなら、そのままにせずぜひ早めに皮膚科を受診してください。