「植毛」をすればすぐに髪の毛が生えてくる? 結果が現れるまでの期間を医師に聞く

薄毛治療の選択肢として注目を集める「植毛」ですが、具体的な内容や治療の流れなどが分からず、不安に感じる方も多いのではないでしょうか。特に近年では、自毛植毛と人工毛植毛の違いや術後に注意すべきポイントなど、知っておくべき情報が多くあります。そこで今回は、植毛治療の基本から効果が現れるまでの流れについて、紀尾井町クリニック東京本院院長の中島陽太先生に詳しく解説していただきました。

監修医師:
中島 陽太(紀尾井町クリニック東京本院)
植毛とは? 向いている人と向いていない人の違いを解説

編集部
はじめに植毛とはどのような治療か教えてください。
中島先生
植毛とは、後頭部などAGAの影響を受けにくい自分自身の毛根を採取し、薄毛が気になる部分に移植する治療法です。移植した毛根は元の性質を保って成長するため、再び抜け落ちる心配が少なく、生涯にわたって髪が生え続けることが期待できます。施術は医師がおこなう外科的手術で、自然な仕上がりを目指せる点が大きな特徴です。
編集部
植毛治療が適応になる基準はありますか?
中島先生
基本的にはどの部位でも適応可能ですが、まずはAGA治療薬を試し、それでも効果が不十分な場合に植毛が選択肢となります。また、やけどや外傷によって髪が生えなくなった部位など、毛根自体が存在しない場合にも有効です。医師とのカウンセリングを通じて適応の有無を見極めることが大切です。
編集部
植毛治療が向いていない人はどのような人ですか?
中島先生
大きな制限はありませんが、いくつか注意点があります。例えば、使用する薬剤に強いアレルギーがある場合は施術が難しくなります。また、施術時間が3〜4時間以上に及ぶため、長時間座っていられない方や手術に対する不安が強い方には向かない可能性もあります。
植毛治療の流れと人工毛植毛・自毛植毛

編集部
受診から植毛治療後までの一般的な流れについて教えてください。
中島先生
まずはカウンセリングで、医師から植毛のメリット・デメリットや副作用やリスク、注意点などの説明を受けます。状況や希望を確認して、治療の適応があるか、どの植毛方法(FUT法やFUE法など)が適しているのか、植毛が最善の選択肢かなどを判断します。このカウンセリングには1〜2時間程度かかることもあり、納得のいく治療方針を話し合う大切な時間です。
編集部
治療方針が決まったらどうするのでしょうか?
中島先生
手術を希望する場合は術前の採血検査を行い、後日、日帰り手術として植毛を実施します。術後は希望者に対して診察によるフォローもおこないます。移植した毛は1カ月ほどで一度全て抜け落ちるのと、また移植部に元々生えていた既存毛が一部抜けてしまう「ショックロス」という現象が見られることがありますが、半年〜1年で再びしっかりと生えそろってくるのが一般的です。
編集部
自毛植毛のメリットについて教えてください。
中島先生
自毛植毛のメリットは、自分の毛を使うことで拒絶反応が起きず、自然な仕上がりを実現できる点です。薬が効きにくい生え際や、もともと毛のない部位でも効果が得られ、美容目的(ヘアラインのデザイン修正、眉毛・髭など)にも対応可能です。また、メンテナンスの必要がなく、自分のほかの髪の毛と同様の管理で済みます。洗髪や染髪、パーマも可能で、伸びてきたら散髪するだけです。
編集部
自毛植毛のデメリットは、どのようなことがあるのですか?
中島先生
採取できる毛根には限りがあるため、短期的な効果だけでなく、将来的な変化を見据えて慎重にデザインを決める必要があります。また、植毛には大きくFUT法とFUE法という2つの方法がありますが、そのいずれにしても必ず移植毛を採取した部分には傷痕が残ります。さらに、植毛は自由診療にあたるため治療費が高額になりやすい点や、手術への心理的な抵抗がある方にはデメリットとなることもあります。
編集部
自毛ではない人工毛を植毛することもあるのでしょうか?
中島先生
人工毛植毛は、合成繊維などで作られた人工毛を頭皮に埋め込む方法です。かつては一定の需要がありましたが、感染症やアレルギー、拒絶反応などのリスクが高いことがわかり、現在ではほとんどおこなわれていません。実はアメリカでは安全性の観点から禁止されており、日本でも推奨されていないのが現状です。
植毛治療の効果と注意点

編集部
植毛はすぐに効果を実感できる治療ですか?
中島先生
植毛の効果を実感するまでには一定の期間が必要です。個人差はありますが、術後1カ月で一度は毛が抜け、その後4〜6カ月頃から再び毛が生え始めます。しっかりとした毛が確認できるのは術後おおよそ1年後となりますので、即効性を期待する治療ではありません。時間をかけて変化を実感していくものです。
編集部
植毛治療後に日常生活で注意すべき点はありますか?
中島先生
術後1週間ほどは、移植した毛根が安定するまで強くこすったり触れたりすることは避けましょう。洗髪も摩擦を避けた特別な方法でおこなう必要があります。術後1週間~10日ほどでかさぶたが自然に取れていき、通常の生活に戻れますが、激しい運動は術後1カ月ほど控えるのが望ましいでしょう。
編集部
植毛した髪は生涯生え続けるのでしょうか? 再治療が必要になる場合もあるのか気になります。
中島先生
移植した部分の髪は、基本的にAGAの影響を受けにくいため、生涯生え続けることが期待できます。ただし、周囲の「元々生えていた髪」がAGAの進行により抜けてしまう可能性はあり、見た目として薄毛が進行したように感じることもあります。そのため、状況に応じて再手術を希望される方もいますし、治療薬との併用で既存の毛を守ることも選択肢の一つです。
編集部まとめ
植毛は「髪を生やすための最後の手段」と考える方も多いかもしれませんが、仕組みや治療の流れを正しく理解することで、自分に合った治療法の一つとして前向きに検討できる選択肢です。効果を実感するまでには時間がかかり、メンテナンスも含めて医師との丁寧なコミュニケーションが重要です。信頼できるクリニックを選び、満足度の高い結果に繋がるのではないかと考えます。本稿が読者の皆様にとって、植毛治療への理解を深めるきっかけとなりましたら幸いです。
医院情報
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診療科目 | 形成外科、美容外科 |