大腸カメラは痛い?痛みの原因や対策方法を解説
「大腸内視鏡検査は痛くてつらい」「下剤を飲むのも大変」といった声を耳にすることがあります。この痛みがどの程度なのか、個人差はあるのでしょうか。
まだ検査をされたことがない方にとっては、不安に感じる方も多いでしょう。今回はこの痛みの原因・麻酔はできるのかなど、痛みを軽減するための対策についてお話しします。
痛みの要因となる大腸内に挿入するスコープ・検査方法が改良され、以前よりも楽な検査になっているため、具体的な検査・対策方法を解説していきます。
監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
目次 -INDEX-
大腸カメラは痛い?
大腸カメラの正式名称は下部消化管内視鏡検査です。胃カメラに比べ、やや太く長いカメラを肛門から大腸の奥へと挿入し、空気を送りながら腸内を観察する約30分ほどの検査になります。
このようにカメラが腸内に入ると想像するだけでも痛みが心配になりますが、実際にはお腹が張る感覚・腸が押されて痛いと感じる方が多いようです。
なるべく避けたい検査と思われるかもしれませんが、大腸がん・大腸ポリープ・クローン病・腫瘍性大腸炎など命に関わる病気を見つけるための、非常に有効な手段になります。
以前よりカメラの性能が向上し、痛みの少ない検査方法が取り入れられるようになりました。これから検査予定で不安な方、もう2度と受けたくないという方も、麻酔・内視鏡専門医の有無、環境の選択により楽に検査ができるようになる可能性が高くなります。
大腸カメラの痛みの原因
大腸カメラの検査はなぜ痛いのでしょう。主な理由は腸が伸ばされると痛むことです。検査の中でなぜ腸が伸ばされるのか、検査方法に理由がありますので詳しく解説していきます。
内視鏡スコープの挿入により大腸が伸ばされるため
内視鏡内検査で痛みが出る主な原因は、腸管が内視鏡スコープに押されて伸ばされるためです。S状結腸と横行結腸の2か所が特に伸びやすく、痛みを感じやすい部位です。
他の箇所と比べて曲がりくねっていること・遊離臓器といって自由に動くようになっており、内視鏡スコープを挿入した際にグニャグニャ動くため、腸管に圧がかかりやすくなります。
特にS状結腸は、とぐろを巻くことがあるため痛みが出やすい部位です。横行結腸は人によりますが下方に下垂しており、内視鏡スコープを挿入し押していくと下方に腸管が伸びてしまいループをつくりやすくなります。
その場合、腸管をスコープで引っ掛けて真っすぐにしながら施術を行う必要があります。
大腸内に空気が溜まるため
よく、お腹が張って苦しいといわれますが原因は腸管内に空気が入り、大腸が拡張することで痛みが起こります。観察しやすくするために大腸内に空気を送り込み膨らませるのですが、これにより大腸が伸びるため痛みが出るのです。
大腸カメラで痛みを感じやすい方の特徴
痛みの感じ方には多少個人差があるものです。人によっては鈍感で痛みを感じにくい方もいらっしゃるでしょう。特に痛みを感じやすい傾向がある方は以下の通りです。
- 痩せている方
- 腸の曲がりが強い方
- お腹の手術を受けたことがある方
- 女性
- 小柄な方
また腸が長い・癒着や憩室がある・腸の形が他人と違う場合、大腸内視鏡が奥まで入らないことがあり、検査が困難になる方もいます。
このような場合は、カプセルの形をした小型カメラを飲み検査が可能です。
過去にお腹の手術を受けたことがある方
過去に帝王切開や婦人科系の手術でお腹を切開したことがある方は、腸が他の臓器と癒着することがあり、大腸が変形したり腸をたたむのが難しくなったりします。
癒着があると内視鏡スコープがスムーズに進んでいかないため、多少押し込む必要があり痛みを感じやすくなります。
また、腸に炎症がある場合も注意が必要です。潰瘍性大腸炎・感染性胃腸炎など炎症があると、内視鏡スコープが通過する際に痛みが出やすくなります。
痩せている方
体型によっても痛みに差があるといわれており、特に女性では瘦せ型・小柄な方も多く、通常の方に比べてお腹の中のスペースが狭くなります。
骨盤の中に大腸が折りたたまれているため、お腹の中のスペースが狭い分腸管の曲がりが強くなっていることが多く、内視鏡挿入の際に引き伸ばされて痛みが出るようになります。
痩せ型の方は内臓脂肪も少ないため腸が固定されにくく、検査で痛みなく内視鏡スコープを挿入することが難しいのも理由のひとつです。
大腸カメラの痛みへの対策
苦しい・痛いといったイメージの強い大腸カメラですが、医療の世界は進歩が早くカメラの性能向上と痛みへの対策が進み、かなり楽に検査を受けられるようになりました。
患者さん自身があまりにも苦しんでしまうと、時間がかかったり検査の質も低下してしまいます。
空気を送り込まない無送気軸保持短縮法や炭酸ガスを使用するクリニックもあり、痛みに対する対策が進められているのです。
また最新の機器では受動湾曲というスコープが腸壁に当たると自動で曲がっていく設計で、S状結腸のようにカーブが強い部位もスムーズに通過できるスコープも採用されてきています。
医療の進歩のおかげで検査へのハードルが低くなりました。
体に合うサイズの内視鏡スコープを使用する
大腸内視鏡スコープは日々進化しています。数年前より画像の質も上がり、細く柔らかいスコープが使用されるようになり、以前に比べ痛みが軽減されるようになりました。
大腸カメラは太さ約12〜13mmで、先端に小型のカメラが付いています。この内視鏡スコープにも様々な種類があります。
例えば日本人に多い痩せ型の女性・過去の手術で臓器が癒着してしまい腸管が狭窄している場合にも、スムーズに挿入が可能なスコープなども開発されており患者さんのお体状態に合わせて硬度も選べるようになりました。
難しい症例にも対応がしやすくなり、患者さん自身の痛み軽減はもちろん、施術をする医師にとっても負担が軽くなってきています。
軸保持短縮法でスコープを挿入する
軸保持短縮法は、できるだけ大腸に負担をかけずに挿入が可能です。S状結腸の軸を保持して腸管をアコーディオンのように、少しずつ手繰り寄せて短縮しながらスコープを直線的に進めていく挿入方法です。
内視鏡スコープを押して腸管を伸ばされると痛みが出たり、腸管穿孔が起きたりするケースもあるため、腸管を折りたたんで挿入する軸保持短縮法は腸管・患者さんへの負担がともに軽減できる方法になります。
通常、盲腸までの大腸の長さは約150cmほどですが、軸保持短縮法は直線距離で約70~80cmで到達が可能です。
空気の代わりに水を使用してスコープを挿入する
空気を入れて行う大腸カメラの検査が一般的ですが、水を注入する方法として水浸法・ウォーター・イクスチェンジ・コロノスコピーという2つの方法があります。
水浸法は空気の代わりに水を入れて腸管を膨らませるのですが、空気と違い腸管が伸びることなく内視鏡スコープを挿入できるため、痛みも軽減できお腹が張って苦しくなることもありません。
次にウォーター・イクスチェンジ・コロノスコピーは水浸法が進化した方法で、水浸法との違いは大腸内の便汁やカスを吸引・洗浄することで、大腸粘膜の観察ができ病変の見落としをする可能性が低くなります。
大腸カメラを楽に受けるコツは?
現在は麻酔を使用することで楽に受けられるようになりました。また、麻酔を使用せずに受ける方もいらっしゃいますので、検査を少しでも楽に受けられる工夫について参考にしてみてください。
特に女性の場合、痛み以外にもデリケートな部分を見られるという恥ずかしさやムダ毛の処理に気を遣う方も少なくないでしょう。
通常は下腹部をタオルなどで隠してくれますし、女性の看護師がサポートしてくれることが多いです。
特に初めての検査は緊張する方も多く心配な面が多くあるかと思いますが、女性が罹患するがんの中で死亡原因の第1位は大腸がんですので、検査のため・体のためと割り切ることも大切です。
どうしても心配な方は、例えば女性医師が担当など、ご自身が安心して検査を受けられそうなクリニックを探してみるのも良いでしょう。
リラックスして体の力を抜く
精神状態によっても痛みが増すことがあります。体に力が入ることでお腹にも余計な力が入り、内視鏡スコープが入りにくくなりますので腸管が伸びて痛みを感じやすくなります。
検査を受ける際は深呼吸をして、意識的に体の力を抜くようにしてみましょう。また検査中は、カメラから空気が送り込まれるとお腹が張っておならを我慢することもありますが、余分な空気が抜けた方が検査がしやすくなることもありますので、遠慮せずにガスを出してください。
検査への不安や、腸内へ空気が入ることで検査中・検査後に体調が悪くなった場合は速やかに担当医へ相談しましょう。
麻酔を使用する
痛みがなく楽に検査をするには、静脈麻酔をすることです。静脈麻酔は、腕の血管に鎮静剤を注射します。
この鎮静剤はセデーションとも呼ばれ、セデーションを実施すると中枢神経の機能が鈍くなり、うとうと眠りに落ちそうな状態になるのです。
これにより、痛みだけでなく嘔吐・恐怖心・不安感といったストレスが軽減されます。全身麻酔と比べて、自発呼吸ができる・回復が早く入院が不要といったメリットもあります。
ただし、呼吸・血圧への影響があった事例も確認されていることから、静脈麻酔をする場合は医師へしっかりと相談が必要です。
当日の車の運転予定・麻酔剤に対するアレルギーがないことが前提で、既往歴・服薬中の薬名をすべて事前に申告しておきましょう。
大腸カメラの痛みを軽減できる病院選びのポイント
内視鏡検査をどこの医療機関で受けるべきか、迷うこともあるかと思います。口コミなどで名医といわれている医師を探せば痛くないのか、と考えるのは間違いです。
麻酔なしで検査をすれば、どんなに腕の良い医師でもやはり痛みは伴います。大切なのは、ご自身の大切なお体を安心して任せられる環境かどうかです。
ここでは具体的に病院選びをする際のポイントを4つご紹介していきます。現在はインターネットの普及により、必要な情報をある程度ご自身で調べることが可能になりましたので、予約前に事前に確認をしていきましょう。
内視鏡専門医がいるか
内視鏡専門医は、学会が認めた一定水準の技術を持つ医師です。消化器内視鏡診療に関する豊富な知識と経験があり、内視鏡検査の治療数を一定水準満たしている必要があります。
この専門医は1度資格を取得したら終わりではなく、日頃から治療・検査に従事して症例数をこなしており定期的に資格の更新を行っています。
日本消化器内視鏡学会のホームぺ―ジ等でも、内視鏡専門医が滞在する施設を確認することが可能です。
大腸カメラの検査実績が豊富か
クリニック選びの基準として、内視鏡専門医の有無と同時に検査実績がどの程度あるのかも確認しておくと安心です。
診断・治療の実績が多い医療機関ほど、その治療の技術力もレベルが上がっていきます。大腸内視鏡検査の技術力とは、いかに痛みを軽減しつつ内視鏡ポリープを大腸の奥まで挿入し、小さな病変を見逃さないかが大切です。
大腸内視鏡検査を年間で2,000件以上行われているかを目安にすると良いでしょう。こちらもホームページ等で過去の治療実績・検査数を公表している医療機関が多くありますので、参考にしてみてください。
麻酔を使用できるか
静脈麻酔を使用すると、うとうとと眠っているようなリラックス状態で検査を受けられます。
通常、苦痛や不快感があるものですが麻酔を使用すると筋肉に余計な力が入らないため、よりスムーズに短時間で検査を進められるという点では、医師・患者ともにメリットがあるといえるでしょう。
痛みがない分、気軽に検査を受けられるため予防・早期発見に繋がりますので、麻酔の使用を選択できる医療機関を選ぶと安心でしょう。
院内の清潔感があるか
検査を受ける際はストレスがなるべくない状態が理想です。不安や緊張感は痛みを増長させる場合があり、清潔感のある施設は気持ちを穏やかに保つためにも大切なポイントです。
清潔感のない環境にいると気持ちがリラックスできず、イライラしたり無意識に体に力が入ったりすることがあります。
それは自律神経の作用によるもので、脳で感じた不快感から神経過敏になりやすくなるといえます。
編集部まとめ
日本では年間8万人以上が大腸がんになるといわれています。大腸カメラはバリウムや便検査に比べて検査の精度ははるかに高く、1mmほどの小さな病変も見つけられます。
現時点で大腸がん予防が可能な最善の検査方法ですので、痛みが嫌で検査をしない方がいらっしゃいましたら、痛みのない方法があることを是非知って頂き検査を受けて頂きたいです。
大腸内視鏡検査は痛い・苦しいといったマイナスなイメージが付きものでしたが、医療の進歩がさらに進み、さらに手軽にできるというようなプラスのイメージに変わる日が来るかもしれません。
少しでも痛みに対する不安の払拭・ご自身に合う環境を見つけるための参考になりましたら幸いです。
参考文献