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白内障の治療方法は?治療法の種類やメリット・デメリット、合併症のリスクなどを解説

 公開日:2025/08/18
白内障の治療方法は?治療法の種類やメリット・デメリット、合併症のリスクなどを解説

加齢などにより生じる目の病気の一つに、白内障があります。白内障は進行すると視界が白く濁って見えなくなってしまい、治療には手術が必要となりますが、進行前の段階であれば点眼薬による治療なども行われます。
この記事は、白内障の治療について、治療法別のメリットやデメリットなどを含めて紹介します。

栗原 大智

監修医師
栗原 大智(医師)

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2017年、横浜市立大学医学部卒業。済生会横浜市南部病院にて初期研修修了。2019年、横浜市立大学眼科学教室に入局。日々の診察の傍らライターとしても活動しており、m3や日経メディカルなどでも連載中。「視界の質=Quality of vision(QOV)」を下げないため、診察はもちろん、SNSなどを通じて眼科関連の情報発信の重要性を感じ、日々情報発信にも努めている。日本眼科学会専門医。

白内障の基礎知識

白内障の基礎知識
白内障(はくないしょう)は眼球内に入ってくる光を屈折してピント調節をする役割を果たす水晶体という部分が白く濁ることで生じる病気で、視界が白くぼやけて見えるようになり、進行すると大きく視力を下げてしまう可能性があります。

白内障の原因

白内障の直接の原因は、眼のピント調節の役割を担う水晶体が、さまざまな原因で白く濁ってしまうことです。水晶体は健康な状態であれば無色透明ですが、細胞の酸化などにより変質してしまうと、透明な卵白が熱を加えて白くなるように、白い濁りが生じます。
細胞を酸化させる要因はさまざまで、紫外線や熱などによるダメージ、物理的な刺激、薬や病気の影響なども影響を及ぼします。また、そもそも細胞が活動する際に作られる活性酸素は細胞を酸化させる要因であるため、普通に生活をしているだけでも、細胞は少しずつダメージを受けていきます。
若いころは代謝が活発に行われているため、ダメージを受けた細胞は分解されて新しい細胞に入れ替わりますが、加齢により代謝が低下すると、白く濁った細胞が残り続けるようになってしまい、白内障として進行しやすくなります。

なお、白内障には生まれつき何らかの原因で水晶体が白く濁っている先天性白内障と、加齢や糖尿病をはじめとした病気、外傷などによって生じる後天性白内障があります。
先天性白内障の場合は症状が進行していくものではないため、日常生活に影響がない場合は治療をしない場合もあります。

白内障の進行

白内障は、濁り始める場所によっていくつかの種類にわけられます。
加齢性白内障に多いものが皮質白内障と呼ばれるもので、水晶体の外側部分から濁りはじめ、中央に向かって進行していきます。初期症状においては自覚症状が現れにくく、濁りが中央に到達してくると、まぶしさなどを感じるようになり、治療が必要となります。

一方で、水晶体の中央から濁り始める核白内障は、発生からすぐに視力に影響を及ぼしやすく、進行とともに視力の低下が進みます。核白内障は皮質白内障の次に多い症状です。

糖尿病などの病気による併発白内障や、ステロイド薬をはじめとした薬の影響で生じる白内障の場合、水晶体の後ろ側(網膜側)から濁り始める後嚢下白内障も引き起こされやすくなります。この場合も、核白内障と同様に視力への影響が現れやすく、進行によって視力低下が進みます。

高齢の場合は核白内障と後嚢下白内障が同時に生じ、進行が速い混合白内障となる場合もあります。

なお、白内障は放置していると視界が白く濁るだけではなく、水晶体が膨らんで緑内障を併発したり、水晶体を包む嚢が破損して中身が流出してしまうという可能性もあります。

白内障の検査

白内障の検査は、屈折検査によって視力の状態を調べるほか、細隙灯顕微鏡を使用して水晶体の濁りを調べる検査などが行われます。
また、白内障は緑内障などほかの眼科疾患と併発する場合もあるため、眼底検査や眼圧検査などでほかの疾患が生じていないかという検査も行われます。

それに加えて、白内障の手術を行う際には、挿入するレンズを選択するため、角膜形状解析検査なども実施されます。

白内障をセルフチェックする方法

白内障は、視界が白く濁ってまぶしさや見えにくさを感じる病気です。ものが見えにくくなってきたと感じたら白内障になっている場合がありますが、特に下記の項目に当てはまるような場合は、白内障の可能性が高いといえます。

  • 月の光や照明がにじんで見える
  • 画面に映る字幕や顔がぼやけて見える
  • 眼鏡が3年もたたずに合わなくなった
  • 天気によって見えにくさが異なる

これらのような症状がある場合、放置していると視力低下が進行していってしまいますので、このような症状があれば眼科の診療を受けましょう。また、年齢が50歳以上であったり、糖尿病を発症していたり、ステロイド剤を長期的に使用していたりする場合は、白内障が発症あるいは進行しやすい状態のため、眼科で定期的に白内障の検査を受けることをおすすめします。

白内障の治療方法

白内障の治療方法
白内障による見えにくさを解消する方法としては、現在のところ手術による治療が唯一の選択肢となっています。
ただし、白内障の進行度合いによっては、進行を遅らせ、視力を保つことを期待して点眼薬を処方する場合もあります。
それぞれの治療法について解説します。

点眼薬による治療

白内障が初期の段階であり、まだ十分な視力が保たれている状態であれば、点眼薬によって進行を遅らせる治療が有効な可能性があります。
具体的には、水晶体が白く濁ることを防ぐピレノキシン製剤や、白内障によって減少してしまう、グルタチオンという水晶体の透明性を保つ役割の抗酸化物質を使用します。
ただし、これらの製剤で白く濁ってしまった状態を透明に戻すことは難しく、あくまでも進行を遅くする目的で行われます。
また、点眼薬の使用で刺激を感じたり、結膜炎や眼瞼炎といった副作用が現れる場合があります。

手術による白内障治療

白内障を根本的に解消するためには、手術による治療が必要です。白内障の手術は、白く濁ってしまった水晶体を取り除き、代わりにピント調節の役割を果たす人工的な眼内レンズを挿入することで、視力を取り戻します。
手術は日帰り手術(※)での対応が可能な治療です。ただし、水晶体と異なり人工の眼内レンズにはピントを調節する機能がないため、手術後の視力は、挿入する眼内レンズの性質に依存します。

(※)術前の検査、術後の経過観察が必要です。

白内障を手術しないで治療することはできる?

白内障を手術しないで治療することはできる?
上述のとおり、白内障は点眼薬で進行を抑えることはできても、根本的な改善を目指すためには手術による治療が必須となる病気です。レーザーを用いた治療もありますが、この場合のレーザーは手術の精度を高めるために使用されるもので、レーザー照射のみで白内障を治療できるわけではありません。

一方で、白内障の手術後に生じることがある、後発白内障と呼ばれる症状については、レーザーのみで治療が行える場合がほとんどです。
後発白内障とは、白内障の手術後に、眼内に挿入したレンズを包むようにできた膜が混濁してくることで生じるものです。後発白内障については、YAGレーザーで混濁している組織を飛散させることで治療が可能であるため、手術を行わなくても治療が可能です。

白内障治療の基礎知識

白内障治療の基礎知識
白内障の根本的な治療は、現在のところ手術による方法が唯一の選択肢となっています。
この手術は、濁った水晶体を手術で除去し、代わりに人工の眼内レンズを挿入することで、視力を取り戻すというものです。
白内障手術のメリットやデメリット、具体的な流れや注意点などを解説します。

白内障手術のメリット

白内障は、手術によって根本的な改善が可能であり、視界を取り戻すことができます。人は日常生活における情報の多くを視力によって得ているため、視力の回復はそのまま生活の質向上に大きく影響します。

また、白内障があると、眼底の検査などが行いにくくなるため、目の病気が見つかりにくくなってしまうという影響もあります。白内障手術で白く濁った水晶体が取り除かれることでさまざまな検査が行いやすくなるため、ほかの目の疾患もしっかり診断できるようになる点も、大きなメリットといえます。

白内障手術のデメリット

人の目は、水晶体を伸ばしたり縮めたりすることで、遠くのものや近くのものにピントを合わせることができます。しかし、白内障手術で挿入するレンズはこうした機能を持たない眼内レンズもあるため、どこにピントが合うかは、レンズの性質に依存するようになります。
また、白内障手術は安全性の高い手術ではありますが、合併症の可能性がないわけではありません。場合によっては眼内炎などのトラブルが生じることもあり、そうしたリスクをデメリットと感じる方もいるでしょう。

白内障手術の具体的な流れ

白内障手術は、一般的には局所麻酔で行われます。
麻酔で痛みを抑えた後は、角膜を小さく切開し、さらに水晶体を覆う水晶体嚢と呼ばれる袋の前方を剥離して、手術を行うための器具を挿入するための窓を作ります。
作業用の窓ができたら、そこから超音波を出す器具を挿入し、超音波で水晶体を砕きながら、吸引して除去を行います。
水晶体の吸引が終わると中身がなくなった水晶体嚢が残るため、ここに眼内レンズを小さく折りたたんだ状態で挿入し、水晶体嚢の内側で広げて固定すれば、手術完了となります。

眼内レンズの種類

白内障手術後の視力は、挿入する眼内レンズの性質に依存します。眼内レンズには保険適用が可能な単焦点レンズと、自費診療となる多焦点レンズがあります。

単焦点レンズ(保険適用)

単焦点レンズは、ものを見る際のピントが1か所で合うように作られたレンズです。設定された特定の距離のものにピントが合うようになるため、それより近いものや遠いものにピントを合わせたい場合は眼鏡などによるピント調節が必要となることが多くなります。
ピントが合う距離は限定されますが、見え方がクリアで、保険適用により経済的負担を抑えられる点がメリットです。

多焦点レンズ

多焦点レンズは、遠くのものと近くのものの両方に対して同時に焦点が合うように設計されたレンズで、遠近両方にピントを合わせることができます。
遠くから手元まで幅広くピントを合わせることが可能な連続焦点型レンズや、遠くから中間距離が見やすい焦点深度拡張型レンズなど、いくつかの種類があります。
複数の距離にピントを合わせることができるため日常生活の質が向上しやすい一方、眩しさや光のにじみを感じやすかったり、ピントが合う距離での視界が単焦点レンズほどはクリアになりにくいというデメリットがあります。
また、多焦点レンズは保険適用外となるため、レンズの料金を自費で支払う必要があります。

白内障手術後の注意点

白内障手術後は、感染症などを防ぐため、洗顔や洗髪といった日常生活が一定期間制限されます。目に対する負担を避けるため、目を触ったりしないように注意することや、お酒なども控える必要があります。また、感染症を予防するための点眼薬なども適切に使用する必要があり、きちんとケアを行うことが大切です。
また、水晶体を除去しているため白内障そのものの再発リスクは少ないですが、水晶体嚢の混濁による後発白内障などの可能性があるため、場合によっては追加の治療が必要となります。

白内障治療の手術におけるリスクと合併症

白内障治療の手術におけるリスクと合併症
白内障治療の手術においては、下記のようなリスクがあります。

痛みや腫れ

白内障手術は麻酔で痛みを抑えるため、手術中の痛みは基本的にありません。ただし、手術時間が長引いた場合などは痛みが出る可能性もあるため、その場合は医師に申告して麻酔の追加などを受けましょう。
手術後も強い痛みが生じる可能性は低いですが、軽い圧迫感やゴロゴロ感がしばらく続く可能性はあります。
また、眼球の手術なので、皮膚組織の腫れなどは基本的にありません。

見え方のトラブル

元々白く濁っていた状態が透明になるため、手術直後はまぶしいと感じる場合が多いといえます。手術後すぐに見えるようになることもありますが、手術後の状態によってはだんだんと視力が上がってくることもあります。

合併症

白内障手術で生じやすい合併症は下記のとおりです。

飛蚊症

飛蚊症は、視界に黒い点などが見える症状で、硝子体内部の小さい濁りなどが原因で現れます。白内障手術によって生じるのではなく、手術によって物が見えやすくなることで気になるようになる場合が多く、基本的には大きな問題はありません。
ただし、目の病気などで飛蚊症が増加することもあるため、黒い点が増えていると感じたら眼科の診察を受けましょう。

後発白内障

眼内レンズを挿入している水晶体嚢が濁ることで、再び白内障のような状態になるものが、後発白内障です。手術後数ヶ月で発症することもありますが、YAGレーザーの照射ですぐに治療が可能です。

細菌性眼内炎

手術によってできた傷口から細菌が入り込み、感染が引き起こされることで生じる合併症です。処方される点眼薬を適切に使用するなど、術後のケアをしっかりと行えば予防可能ですが、万が一悪化すると重篤な後遺症につながる恐れもあります。

眼内レンズの偏位・脱臼

外部からの衝撃や経年劣化などにより、眼内レンズの位置がずれてしまう場合があります。この場合、視力を回復させるためには再手術が必要になります。

まとめ

まとめ

白内障は、加齢などによって水晶体が白く濁ることで生じる目の疾患で、根本的な治療には水晶体を除去して人工の眼内レンズを入れる手術が、現在のところ唯一の方法となっています。
ただし、点眼薬で進行を遅らせることは可能であるため、早めに診断を受けて治療を開始すれば、点眼薬で視力をある程度維持することもできます。
白内障の手術はすばやく視力を取り戻し、生活の質を向上できるというメリットがありますが、術後の過ごし方などによっては合併症のリスクもあるため、治療を受ける際は医師の指示をしっかり守るようにしましょう。

この記事の監修医師