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血糖値の正常値とは?高い場合に疑われる病気・対処法も解説

 公開日:2024/02/01
血糖値の正常値とは?高い場合に疑われる病気・対処法も解説

血糖値とは、血液中に含まれるブドウ糖(グルコース)の濃度を指します。血糖値は高すぎても低すぎても身体に影響を与えるのです。

血液中のブドウ糖は、食事中の炭水化物などが消化吸収されると増加します。一方、エネルギー源として利用され、空腹時や運動時は血糖値が下がります。

それでは、血糖値の正常な値はいくらでしょうか。この記事を読むことで、血糖値の正常な値・血糖値によるリスク、その場合の対処方法がわかります。

適切な血糖値を維持することで健康を保ちましょう。

久高 将太

監修医師
久高 将太(琉球大学病院内分泌代謝内科)

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琉球大学医学部卒業。琉球大学病院内分泌代謝内科所属。市中病院で初期研修を修了後、予防医学と関連の深い内分泌代謝科を専攻し、琉球大学病院で内科専攻医プログラム修了。今後は公衆衛生学も並行して学び、幅広い視野で予防医学を追求する。日本専門医機構認定内科専門医、日本医師会認定産業医。

血糖値とは

血糖値とは
私たちは食物から栄養を摂取しますが、糖質は欠かせない栄養素の一つです。血糖値は、血液中のブドウ糖の量を示す数値です。過度に高いまたは低い血糖値は、私たちの身体にさまざまな問題を引き起こします。
血糖値は、貧血など他の疾患と併発する場合に影響を受けることが知られています。
それでは血糖値について説明します。

血液中のブドウ糖濃度のこと

血液は様々なホルモンの作用により、血液中のブドウ糖濃度(血糖値)は常に一定範囲内に調整されています。
これは、糖が筋肉や組織で消費され肝臓で貯蔵されることによって実現されるのです。しかし、この調整機構がうまく機能しなくなると、血液中の糖分が異常に増加します。

空腹時と食後では値が異なる

血糖値は、直近の食事内容によって大きく変動することが知られているのです。健康診断などで血糖値を測定する際には、外部の影響を最小限にする必要があります。
そのため、健康診断の際には「前日の夜から飲食を控えてください」といった指示が出されるのです。つまり、健康診断では空腹時の血糖値が測定されます。
糖尿病の診断には、空腹時の血糖値だけでなく食後2時間の血糖値も重要です。しかし、食後2時間の血糖値は、同じ人でも摂取した食事によって変動してしまいます。
自由に食事を摂ってしまうと、食後2時間の血糖値が基準値内に収まっているかどうかを判断することが難しいのです。

血糖値の正常値

血糖値の正常値
通常、食前の血糖値は約70〜100mg/dlの範囲です。血糖値は、血液中に存在するブドウ糖の量で、この濃度は食前と食後に変動します。
血糖値が極端に低くなると低血糖、逆に極端に高くなると高血糖を引き起こす可能性があるのです。

空腹時の正常範囲

空腹時血糖値の正常範囲は、80mg/dl〜99mg/dlです。この値は、食事を摂取していない状態で測定される血液中のブドウ糖の割合を示しています。
空腹時とは、検査の約10時間前から何も食べていない状態です。また、糖質を含む飲み物も摂らないようにします。
健康診断などで、朝食を抜くよう指示されるのはこの検査をするためです。空腹時の血糖値は、身体の糖代謝に関する重要な情報を提供するため、食事による影響を排除するために空腹状態で検査をします。

食後の正常範囲

食後2時間の血糖値が、通常では正常値である140mg/dl以下とされています。食後2時間とは、食事を始めてから2時間後です。この時点では、摂取した食べ物の約半分が腸で吸収される頃に血糖値が測定されます。
一般的に、食事を摂るとほぼ同時にインスリンが放出されるため、血糖値は160mg/dlを超えることはほとんどありません。
ただし、空腹時の血糖値が正常範囲内でも食後2時間の血糖値が高い場合は、脳梗塞や心筋梗塞などの大きな血管障害のリスクが高まる可能性があります。

血糖値が高い場合に疑われる病気

血糖値が高い場合に疑われる病気
血糖値が高い場合に疑われる病の代表は糖尿病です。また何らかの疾患や薬剤の使用によって引き起こされる糖尿病を、広い意味での二次性糖尿病と呼びます。
日本糖尿病学会では甲状腺機能亢進症、肝炎、膵炎等を挙げています。血糖値は、血糖を下げるインスリンと、血糖値を上昇させる多くのホルモンとのバランスによって正常に維持されているのです。
典型的な糖尿病(1型糖尿病・2型糖尿病)は、インスリンの絶対的または相対的な不足によって引き起こされます。
一方、内分泌系の疾患に関連した二次性糖尿病は、血糖値を上昇させるホルモンが過剰に分泌されることにより、血糖値が上昇するのです。
内分泌系の疾患に伴うもので代表的なのが甲状腺機能亢進症です。これらの病気について説明します。

糖尿病

糖尿病
血液中のブドウ糖濃度(血糖値)は、インスリンや他の多くのホルモンの働きによって調節され、通常は一定の範囲内に保たれています。この調節メカニズムがうまく機能しなくなると、糖尿病が発症するのです。
糖尿病は主に1型と2型に分類されます。1型糖尿病は、膵臓のβ細胞が損傷を受け十分なインスリンが分泌されないため、血糖が消費されず高血糖の状態が生じるのです。
2型糖尿病では、インスリンは分泌されるものの、その働きが悪化し筋肉や脂肪組織などがブドウ糖を取り込めなくなります。そのため、ブドウ糖がこれらの組織で利用・貯蔵されないために高血糖となるのです。
糖尿病では、血糖値があまり高くならない限り、明確な症状を感じることはありません。しかし、血糖値がかなり高くなると、のどが渇く・全身に倦怠感が広がる・体重が減少するなどの症状が現れることがあります。
症状がなくても、高血糖の状態を放置すると、やがて全身のさまざまな臓器に合併症が発生する可能性があるのです。

甲状腺機能亢進症

甲状腺機能亢進症(こうじょうせんきのうこうしんしょう)とは、甲状腺が過剰に活動し、甲状腺ホルモンが血液中に多く放出される状態の疾患です。この病気は、バセドウ病やグレーブス病としても知られています。
その原因は、通常の健康な状態では見られない異常な物質が血液や組織内に存在し、甲状腺を刺激することによるものとされています。
この物質は、TRAb(甲状腺細胞膜上にあるTSHレセプターに対する自己抗体)やTSAb(甲状腺刺激抗体)という名前で呼ばれているものです。
この疾患では、過剰な甲状腺ホルモンの影響により、体温の上昇や交感神経感受性の増加などが見られるのです。
体温の上昇による症状としては、暑がりや多汗症・体重減少・食欲増加などがあり、交感神経感受性の増加による症状としては、動悸・体動時の息切れ・震え・不眠・不安などがあります。

肝炎

肝臓は、エネルギーバランスの安定を保つ上で中心的な役割を果たしています。糖尿病や肥満といったエネルギー代謝に関する異常は、高血糖や脂質の異常な状態を作ります。
それによりC型肝炎や非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)・アルコール性脂肪性肝炎(NASH)などの肝臓の機能を悪化させ、さらなる代謝異常を引き起こすことが明らかになっています。
肝臓の健康状態を保つことを目指した食餌療法や治療法の必要性が上がっているのです。

肝硬変

肝硬変は肝臓のインスリンが低下し、ブドウ糖が肝臓で代謝を受けずに直接末梢へ流れ込むことなどが原因となり食後高血糖をもたらします。
血糖値が高いと、インスリンの効果が低下するため(インスリン抵抗性)、肝臓に脂肪が蓄積されやすいのです。近年の研究によって、糖尿病患者の中で肝硬変による死亡率が高いことが明らかになりました。
脂肪肝は重要な病態として見逃すことのできない疾患と認識されてるのです。

膵炎

高血糖は急性膵炎を悪化させる要因であり、急性膵炎の治療において正常な血糖値を維持することが、重症急性膵炎の死亡率を改善するうえで非常に重要です。

血糖値が低い場合に疑われる病気

血糖値が低い場合に疑われる病気
血糖値が低いときの症状には、あくび・空腹・冷や汗などが含まれ、深刻な場合には意識障害から低血糖性昏睡に至る可能性があり極めて危険です。
低血糖は、血糖値が70 mg/dl未満の状態をいいます。高血糖の人や急激な血糖低下の際には、血糖値が約100mg/dl程度でも低血糖症状が出現することがあるので注意が必要なのです。
ここでは、血糖値が低い場合に疑われる病気について説明します。

膵臓腫瘍

人の体内の神経内分泌細胞に由来する腫瘍であり、膵臓や消化管など全身の多様な臓器に発生することがあります。
膵臓には、インスリンやガストリンなどのホルモンを産生する内分泌細胞(ランゲルハンス細胞)が存在し、これらの細胞が腫瘍を形成することで発症するのです。
この腫瘍は、過剰にインスリンやガストリンなどのホルモンを分泌して症状を引き起こす機能性腫瘍と、ホルモンを分泌しない非機能性腫瘍に分類されます。
また、細胞の分化の度合いに応じて、高分化型の神経内分泌腫瘍と低分化型の神経内分泌癌に区分されるのです。
さらに、この疾患は多発性内分泌腫瘍1型(MEN-1)やフォン・ヒッペル・リンドウ病などの遺伝性疾患と関連している場合があります。

肝臓がん

愛知県がんセンターにおいて、1964年から1972年にかけて登録された肝細胞癌の89例の中で、発熱型の症例が7例存在しました。そのうちの1例が低血糖症状を呈していました。
国内では1968年までに14例の報告があり、低血糖が肝臓がんに影響することがわかっています。

血糖値が高くなりやすい人の特徴

血糖値が高くなりやすい人の特徴
高血糖は膵臓で作られるインスリンが少ない・インスリンが効果的に働いていないなどの理由で血液中のブドウ糖濃度が上がることと説明してきました。
それでは血糖値が高くなりやすい人はどのような人でしょうか。ここでは、高血糖になりやすい人の特徴について説明します。

妊娠中である

妊娠中である
女性においては、妊娠や閉経といったタイミングでホルモンバランスが大きく変転します。これにより、インスリンの働きが減少し、血糖値が上昇する可能性があるのです。
たとえば妊娠時には、胎盤が生成するホルモンの影響で血糖値が増加しやすくなります。そのため、妊娠中は通常よりも幅広い基準値で評価されるのです。
妊娠期間中は、空腹時や食後にかかわらずいつでも血糖値が100mg/dlを超える場合は、「75g経口ブドウ糖負荷試験」などの詳細な検査が行われます。
もし検査結果が異常であれば、妊娠糖尿病と診断され、適切な治療が開始されるのです。ただし、多くの場合、妊娠糖尿病は出産とともに通常の状態に戻ります。

高齢である

高齢である
人は高齢になると、インスリンの分泌が減少し始めるため、年齢が上がるにつれて高血糖になる可能性が高まります。同時に、年を取ることで免疫力が低下し、感染症にかかりやすくなる傾向があるのです。
高齢者の中には、慢性的な炎症を抱える肺気腫などの状態を持っている人も多いです。これにより、生体防御の一環として血糖値が上昇することがあります。したがって、高齢者の場合、血糖の正常範囲を明確に定義することは難しいといえるでしょう。
そのため、高齢者の血糖基準値は通常よりもやや高めに設定されています。空腹時の血糖値が140mg/dlを超える場合は、糖尿病の可能性があると見なされ、より詳細な検査が行われるのです。

血糖値が高い場合の対処法は?

血糖値が高い場合の対処法は?
もし体内でインスリンが生成されなくなる状態になった場合、外部からインスリンを補充する必要があります。
膵臓がインスリンを生成しない1型糖尿病の場合、インスリン治療が必須となります。同様に、インスリンの分泌が不足している2型糖尿病でも、治療方法としてはインスリン注射への切り替えが考慮されるのです。
日常生活では、インスリン補充に加え、食餌療法と運動療法の重要性が注目されてます。高血糖の早期段階では、これらの療法を組み合わせて日常生活に取り入れることが推奨されているのです。
食餌療法では、摂取するエネルギー量を過剰にしないこと・適度な運動をすること・過度なアルコール摂取を避けること・喫煙しないこと・野菜や大豆製品・海藻・きのこなどをバランスよく摂ることが重要です。
特に、砂糖を多く含む飲み物を過度に摂取することは血糖値を上げる要因となります。やせていても糖尿病になりやすい人がいますので、肥満や過体重のない人でも注意が必要です。
運動療法では、有酸素運動(例:歩行など)によって、中性脂肪と体脂肪の減少(肥満や高脂血症の状態)・血圧の降下(高血圧)・血糖値の低下・および糖質代謝の改善(糖尿病)を促進することです。
さらに、運動による刺激によって筋肉の減少や骨粗鬆症の予防・そしてストレスの軽減によるストレス関連の疾患の改善も期待されています。
高血糖の悩みは主治医と個別に相談し、適切なアドバイスを受けることも大切です。

編集部まとめ

指示する女医
血糖値とは、血液中に含まれるブドウ糖(グルコース)の濃度を指します。血糖値は高すぎても低すぎても身体に影響を与えるのです。

もし自分の血糖値がどれほどかわからない場合は、まずその情報を得ることから始めてみましょう。

血糖値に気を配りたい方は、自身の日常生活で実践可能な方法から始めてみることをおすすめします。

適切な血糖値を維持することで健康を保ちましょう。

この記事の監修医師