胸のしこりの良性と悪性の違い|しこりの原因・検査について解説
乳がんの早期発見にはセルフチェックが重要といわれています。しかし、胸にできるしこりには乳がんのほか、良性の疾患もあり見極めが難しいこともあるでしょう。
今回の記事では、胸にできるしこりの原因や良性と悪性の違い、しこりを自覚した場合に医療機関で行う検査などを解説します。
監修医師:
朴 圭一(Hanaクリニック乳腺外科)
目次 -INDEX-
胸のしこりの原因
乳房の悪性腫瘍である乳がんの症状として、胸のしこりをイメージする方も多いかもしれません。しかし、胸にしこりができる原因には、乳がんのほかにもさまざまな病気があります。まず、しこりの原因となりうる乳房の病気を紹介します。
乳腺炎
乳腺とは乳房の内部にある器官で、乳汁を作っている小葉や、乳汁の通り道である乳管を指します。乳腺炎は、この乳腺が何らかの原因により炎症を起こす病気です。乳腺炎は原因によって、うっ滞性乳腺炎・化膿性乳腺炎の2種類に分けられます。
うっ滞性乳腺炎は、多くの乳汁が作られる授乳期に乳汁が詰まることが原因です。一方、化膿性乳腺炎は乳頭から乳管へ細菌が侵入して発症します。乳腺炎は、もともとある組織が炎症を起こした状態で、腫瘍性病変とは異なる病気です。しかし、症状の一つとして乳腺が腫れて硬くなる場合があり、この状態をしこりのように感じる方もいます。また、しこりのほかに乳房の腫れ・赤み・痛みが現れる点や、悪寒・発熱など全身症状を伴う点も、腫瘍性病変とは異なります。
乳腺症
女性の乳腺は、月経の周期に伴ってホルモンの影響を受け、増殖・退縮を繰り返します。月経が近付くと、健康な方でも胸が張るような感じ・胸の痛みを感じることがあるのもホルモンの変化の影響です。
しかし、乳腺の変化のなかには正常範囲から外れるものがあり、このような状態を総称して乳腺症といいます。乳腺を構成する乳管・小葉の過形成によって、多くの小さなしこりができた状態も乳腺症の一例です。
乳腺線維腺腫
乳腺にできる良性の腫瘍のなかでも罹患者数が多いのが乳腺線維腺腫です。
数センチメートル程の大きさになることが多く、治療をしなくても自然に消えていくこともあります。しかし、腫瘍がどんどん大きくなる・痛みを伴う・外見に影響するなどの場合には手術を検討することもあります。また、ほかの乳腺疾患との見分けが困難な場合には、針生検や手術で摘出した腫瘍の生検を行うことがあります。乳腺線維腺腫の好発年齢は20~30代です。
乳管内乳頭腫
乳管は、乳腺小葉から乳頭をつないでいる細い管状の器官です。乳管の中に腫瘤ができる乳管内乳頭腫では、乳首から血性の分泌物が出るなど乳がんと似た症状が現れます。
触診のみでの乳がん・乳管内乳頭腫の判別は難しく、分泌物や腫瘍に対する細胞診・生検を行って診断します。乳管内乳頭腫の好発年齢は30~50代です。
葉状腫瘍
葉状腫瘍は線維腺腫と似ていますが、悪性の可能性もあるため注意が必要な腫瘍です。
葉状腫瘍の大きさは4~7センチメートルと線維腺腫よりも大きく、また増大するスピードも線維腺腫と比較して速い傾向があります。しかし、検査をしても線維腺腫との判別が難しい場合もあるため、診断には針生検・切除した腫瘍の生検などが必要です。
悪性の葉状腫瘍は乳がんに似た性質があり、再発・転移の可能性があります。ただし、乳がんは上皮細胞から発生するのに対し、葉状腫瘍は上皮細胞・結合組織が混ざり合って腫瘍化した状態であることが大きな違いです。乳房にできる腫瘍のなかでは葉状腫瘍の発生頻度は稀で、全体の0.3~0.9%とされています。好発年齢は35~55歳で、特に40代に多く見られる病気です。
嚢胞
嚢胞とは袋状になった組織に分泌物・体液などが溜まったものです。乳腺嚢胞の場合は、乳腺の分泌物が溜まることで乳管が袋状に膨らんだ状態を指します。
乳腺症と同じくホルモンバランスの影響を受けやすく、時期により大きさが変わったり、自然になくなったりする場合もある病気です。しかし、腫れや痛みの原因になることもあるため、症状・外見が気になる場合などは穿刺(せんし)をして嚢胞に溜まった液体を排出させる場合があります。
乳がん
乳房にできる腫瘍のうち、代表的な悪性腫瘍が乳がんです。多くの場合は乳管から発生しますが、小葉や乳腺以外の乳房組織から発生することもあります。予後の指標となる5年相対生存率は92.3%と高いですが、罹患者数・死亡者数ともに増加傾向にあるため注意が必要です。
乳がんは進行すると近くにある腋窩リンパ節に転移するほか、血液の流れに乗って骨・肝臓・脳などに転移する可能性もあります。早期発見が良好な予後を目指すカギとなるため、定期的な検診のほか、1ヵ月に一度セルフチェックを行い気になる症状があれば受診することが大切です。
胸のしこりの良性と悪性の違い
乳房にできるしこりの原因を紹介してきました。多くは良性の疾患ですが、葉状腫瘍の一部・乳がんは悪性腫瘍に分類されます。
では、乳房にできたしこりの良性・悪性を自分で見分ける方法はあるのでしょうか。ここからは、一般的にいわれている良性腫瘍と悪性腫瘍の違いを解説します。
押すと痛いかどうか
乳がんは、一般的には痛みを伴わない場合が多い病気です。
乳房の張り・痛みにつながりやすい病気として頻度が高いものには、乳腺症・乳腺炎があります。次いで多いのが嚢胞が炎症を起こしている場合や、乳腺線維腺腫です。
ただし、目立ったしこりがないまま痛みによって乳がんが発見されるケースも稀にあります。そのため、痛みがあるからといって良性のしこりとは言い切れないでしょう。
しこりが動くかどうか
良性のしこりは、指で押すと皮膚の下で逃げるように動くものが多いといわれています。そのため、セルフチェックを行った場合にしこりがころころと動いて触れにくいと感じたら、良性の可能性が高いでしょう。
悪性腫瘍は、周囲の組織を巻き込みながら腫大していきます。そのため、周囲組織と境界は不明瞭なことが多く、指で触れてもしこりの位置が動きにくいことが特徴です。
なお、月経周期の影響でしこり以外の乳腺も硬くなっているとセルフチェックが難しい場合があります。このような場合には、時期をずらして再度セルフチェックをするとしこりを確認しやすくなるでしょう。
やわらかいかどうか
しこりの硬さは、原因となっている腫瘍の成り立ちや内容物により異なります。
良性のしこりは乳がんと比較するとやわらかいといわれており、具体的には消しゴムのような硬さと表現されます。一方、乳房の悪性腫瘍は石のように硬いしこりとして触知される場合が多いです。
また、硬さのほか悪性のしこりは表面に凹凸があり健康な組織との境界が不鮮明とされています。しかし、乳腺症でも境界不鮮明な硬いしこりができることは多く、感触だけで良性か悪性かの判断は困難です。
胸にしこりを自覚したら乳腺外科を受診することが大事
前述のとおり、胸にできるしこりは種類によっていくつかの特徴があります。
ただし、しこりの硬さ・可動性ともに一般的な傾向であり、この傾向から外れた腫瘍ができることもあります。そのため、触れるとやわらかい・可動性があるなどの特徴があっても、良性と言い切れません。
良性の可能性が高いからと自己判断せず、気になる症状に気付いたらまずは医療機関を受診して検査を受けることが大事です。もし悪性腫瘍ではなかった場合にも、しこりの原因を調べて良性の病気だったと知ることが安心につながるでしょう。
胸にしこりがある場合に行う検査
胸にしこりがある場合、主にX線で乳房を撮影するマンモグラフィを行います。
マンモグラフィは、検診でも実施される精度の高い検査です。
また、下記の方に対しては超音波検査を行う場合があります。
- 妊娠・授乳中の方
- 高濃度乳房(デンスブレスト)の方
妊娠・授乳中の方は被爆を避けるため、マンモグラフィではなく超音波検査を行うのが一般的です。
乳腺の密度が高い高濃度乳房の方は、マンモグラフィだけではしこりが見えにくい場合があるため、超音波検査を追加で行うことでより正確な診断が期待できます。
胸のしこりはHanaクリニック乳腺外科にご相談を
今回は、胸のしこりにはさまざまな原因があること、良性と悪性のしこりの違いなどをお伝えしてきました。
しかし、セルフチェックや触れるだけでは正確な原因まではわからず、しこりのなかには今回紹介した良性・悪性の傾向に当てはまらないものもあるため注意が必要です。
早期発見・診断のためには、乳腺外科への受診をおすすめします。乳腺外科は乳腺疾患を専門とする診療科です。
胸のしこりが気になる方は、Hanaクリニック乳腺外科に相談してみてはいかがでしょうか。Hanaクリニック乳腺外科の特徴をご紹介します。
良性のしこりは日帰りでオペが可能
乳腺疾患の好発年齢である30代以降は、仕事・家事・育児などに忙しい方も多いでしょう。
このような大切な時間のなかで手術によって拘束される時間を減らすため、Hanaクリニック乳腺外科では、良性のしこりに対する日帰り手術(※1)を行っています。
なお、日帰り手術の可否は、患者さんの状態・しこりの原因によっても異なります。実際の治療内容は、受診をした際に医師と相談する必要があります。
(※1)術前検査・術後の経過観察が必要です。
日本形成外科学会 形成外科専門医だからこそできる摘出手術
Hanaクリニック乳腺外科の院長は、形成外科医として乳房再建を担当するなかで「診断・治療にも携わり患者さんの力になりたい」との考えから乳腺科を目指したそうです。
このような背景も生かし、日本形成外科学会 形成外科専門医として、Hanaクリニック乳腺外科では病気の治療だけでなく外見も意識した治療を提供されています。
そのため、乳がんの治療だけでなくしこりにより乳房の見た目に影響が出て困っている患者さんも、希望に沿った診療を受けられる可能性があります。必要に応じて摘出手術も検討可能です。
日本乳癌学会 乳腺専門医による患者さんに寄り添った診療
Hanaクリニック乳腺外科の院長は、日本乳癌学会 乳腺専門医でもあります。形成外科・乳腺に関する豊富な知識と経験をお持ちで、女性が抱える乳腺に関する悩みや不安に寄り添った丁寧な診療を提供されています。
Hanaクリニック乳腺外科は、女性が安心して相談できるクリニックを目指し、患者さんの不安や疑問にどう応えていくかを日々考えながら診療を行われているそうです。
Hanaクリニック乳腺外科は、地域のかかりつけ医として患者さんと近い距離で、患者さんの笑顔を取り戻すお手伝いをされています。
Hanaクリニック乳腺外科の基本情報
アクセス・住所・診療時間
新宿駅南口より徒歩2分
東京都渋谷区代々木2丁目7番5号 exside 南新宿bldg.4階
診療時間 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 | 祝 |
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10:00~13:00 | ● | ● | - | ● | ● | ● | - | - |
15:00〜19:00 | ● | ● | - | ● | ● | - | - | - |
休診日:水曜日、日曜日、祝日
参考文献