意外と知らない自律神経失調症と更年期障害の関係|自律神経失調症の症状・治療法
倦怠感や動悸など身体の不調が続いているにも関わらず、病院を受診しても明らかな異常が見つからない場合は、自律神経失調症の可能性があります。または、更年期障害の可能性も考えられるでしょう。
実は、更年期障害は自律神経失調症と密接な関係があります。
本記事では、自律神経失調症と更年期障害の関係や自律神経失調症の症状、治療法を解説します。
自律神経失調症に関する理解を深め、症状の緩和や改善につなげましょう。
監修医師:
稲村 圭亮(こころの診療所 築地・新富町)
東京慈恵会医科大学入学
平成17年 東京慈恵会医科大学卒業
平成19年 東京慈恵会医科大学精神医学講座入局
東京慈恵会医科大学附属病院 勤務
平成22年 横手興生病院 勤務
平成24年 東京慈恵会医科大学附属柏病院 勤務
平成31年 東京慈恵会医科大学附属病院
医局長、病棟長、講師など歴任
現在、東京慈恵会医科大学精神科 非常勤診療医長
目次 -INDEX-
自律神経失調症の主な症状
自律神経には活動時に優位になる交感神経と、休息時に優位になる副交感神経があります。自律神経失調症で現れる症状はさまざまで、動悸・ほてり・めまい・頭痛などの身体的症状のほか、気分の落ち込みやイライラなどの精神的症状もみられます。症状には個人差があり、複数の症状が組み合わさるケースもあるでしょう。
ここでは、自律神経失調症でみられる主な症状を紹介します。
動悸・発汗・ほてり
自律神経のバランスが崩れ交感神経が優位になると、心拍数が上がって動悸や胸が締め付けられるように感じる場合があります。ただし、動悸を伴う病気には不整脈や貧血・甲状腺機能亢進症などもあり、動悸に加え呼吸困難や意識障害などがある場合は心疾患も考えられるので、症状が続くときは医療機関を受診しましょう。
自律神経失調症になると発汗量をうまく調節できず、運動や緊張する場面でもないのに脇や手のひら・足の裏に大量の汗をかいてしまうケースもあります。さらに、血管を収縮・拡張させ血液の流れを調節する機能がうまく働かず、お顔や首などにほてりを感じることもあるでしょう。ほてりは更年期障害でもよく見られる症状で、更年期の女性の約3分の2が経験しているといわれています。
めまい
めまいは、目が回る・足元がふわふわする・身体がよろめきバランスが保てないなどの状態です。
多くは内耳の障害が原因ですが、脳疾患によって引き起こされることもあります。検査で耳や脳に異常が認められないにも関わらずめまいが続く場合は、自律神経失調症の症状の可能性があるでしょう。
自律神経のバランスが崩れ交感神経が優位な状態が続くと、血管が収縮して血流が悪化し、全身に十分な酸素や栄養が行き渡らなくなります。これにより、耳や脳の機能も低下し、めまいを引き起こしてしまいます。
このような状態が続くと生活の質に大きな影響を与えるため、早期の対処が重要です。めまいは更年期の日本人女性の35%が自覚し、不安症状との密接な関係が指摘されています。
肩こり・頭痛
肩こりと自律神経の活動には、強い相関関係があるといわれています。交感神経が優位な状態になると血管が収縮して血流が悪くなり、肩こりや頭痛を引き起こすことがあります。
肩こりは日本人に多くみられる症状の一つで、日常的に悩まされている方もいるのではないでしょうか。姿勢の悪さや運動不足などによって生じるといわれているものの、原因はまだ十分明らかになっていません。
肩こりは、家庭や仕事など社会生活で受けるストレスとの強い関連が指摘されています。ストレスによる緊張が続くと肩や首の筋肉の緊張も高まり、肩こりや緊張性頭痛を生じることがあるでしょう。
冷え
人間の体温は、熱産生・熱移動・熱放散のバランスによって一定に保たれています。自律神経の働きが低下して、体温調節の仕組みがうまく機能しなくなると、手足の末梢に冷えを感じることがあります。
副交感神経の機能が低下し、交感神経が優位になることで末梢の血流量や皮膚温が低下していたという研究結果もあります。つまり、自律神経のバランスが崩れて血管運動神経障害が生じ、血管が収縮する状態が続くと血流量が低下して冷えを起こすのです。
倦怠感・疲労感
倦怠感や疲労感も、自律神経失調症の主な症状の一つです。
自律神経が乱れて交感神経が優位な状態が続くと心や身体がリラックスできず、全身倦怠感や疲労感を感じやすくなるでしょう。
気分の落ち込み・意欲の低下
自律神経の乱れは精神面にも影響を及ぼし、次のようなうつ病に似た症状が出ることがあります。
- 朝起きたとき気分がすっきりしない
- 仕事になかなか取り掛かれない
- 集中力や根気が続かない
- 悲しくなり気分が落ち込む
- やる気が出ない
日によって症状が強く出たり、違う精神的症状が出たりする場合もあるでしょう。また、自律神経失調症による倦怠感や疲労感が、気分の落ち込みや意欲低下を招くこともあります。
不安・イライラ
些細なことで不安やイライラを感じやすくなることも、自律神経失調症でみられる精神症状の一つです。不安やイライラは、更年期障害でもよくみられます。
交感神経が優位になりすぎると慢性的に不安を感じ、過剰な心配や恐怖を感じやすくなるといわれています。特に思い当たることがなくても、漠然とした不安を感じることもあるでしょう。
また、イライラしたり怒ったりすると交感神経の活動が活発になります。すると、さらに不安やイライラを招き、悪循環に陥るケースもあるため注意が必要です。
自律神経失調症の要因
自律神経失調症の要因には、心理的因子・社会的因子・生物学的因子があります。単一ではなく、複数の要因が絡み合って交感神経と副交感神経のバランスが乱れることも少なくありません。一つひとつの要因が重なることで心身への負担が大きくなり、日常生活に支障をきたす程の症状が現れることもあるでしょう。自律神経失調症の要因について解説します。
心理的因子
自律神経のバランスを乱す心理的因子には、次のようなものが挙げられます。
- ストレス
- 強い責任感
- 真面目で几帳面な性格
- 感情の抑圧
- 強い不安感
感情表現が苦手・頼まれると断りづらい・気持ちの切り替えが苦手など、ストレスを抱え込みやすい性格は自律神経失調症の要因の一つです。
心理的ストレスを受けると、防衛反応として交感神経が活性化します。ストレスを抱え込み我慢を続けると、交感神経が優位な状態が持続して自律神経のバランスの乱れを引き起こします。
心理的ストレスを感じる要因は、患者さんによってさまざまです。自律神経失調症に伴う身体的症状がストレスとなり、過度な不安を感じて症状が悪化することもあるでしょう。
社会的因子
以下のような生活習慣の乱れや環境の変化などの社会的因子が、自律神経失調症を引き起こすこともあります。
- 睡眠不足
- 運動不足
- 胃腸に負担がかかる食生活
- 過労
- 仕事でのプレッシャー
- 人間関係のトラブル
不規則な生活や社会的ストレスが続くと自律神経のバランスが影響を受け、心身にさまざまな症状が現れて日常生活に支障をきたします。不快な症状によって仕事でミスが増えたり物事がスムーズに進まなかったりすると焦りや不安を感じ、それがストレスとなって自律神経失調症が悪化するケースもあるでしょう。
生物学的因子
自律神経失調症の生物的因子は、交感神経と副交感神経の乱れやホルモンバランスの乱れ、遺伝的要因、免疫の異常などです。
自律神経には活動時に優位になる交感神経と休息時に優位になる副交感神経があり、これらのバランスが乱れ、身体的症状や精神的症状が出るといわれています。交換神経には、ノルアドレナリンが関与しており、ストレスを感じるとノルアドレナリンが放出されて交感神経の活動を高めます。そうすると、血圧や心拍数が上昇したり、イライラや興奮などの症状がでます。
また、女性ホルモンの一つであるエストロゲンには、自律神経を安定させる働きがあります。しかし、更年期・月経・妊娠・出産・不規則な生活習慣などで女性ホルモンが減少したりバランスが乱れたりすると、自律神経に影響が出ます。
自律神経失調症と更年期障害の関係性
いわゆる更年期障害と呼ばれる疾患も、広義の自律神経失調症に含まれると考えてよいでしょう。
更年期では上述の生物学的要因の一つとして、女性ホルモンのバランスの変化がもちろん影響します。しかし、それだけではなく、更年期特有の環境や周囲の変化、子どもの独立や配偶者との関係、介護負担など家庭内での役割の変化、職場でのストレスなど複数の要因が交絡していることも少なくありません。
更年期におけるさまざまな身体症状に対し、女性ホルモン剤を用いても症状が改善しないことが多々あります。このような場合、周囲を取り巻く心理・社会的要因を含めた包括的アプローチが必要です。
自律神経失調症の治療法
自律神経失調症の治療は、交感神経と副交感神経のバランスを整え症状を軽減させることがポイントです。
ストレスと上手に付き合ったり生活習慣を整えたりといった、要因と病態に合わせた治療によって、症状の改善を目指します。
また、悪循環を防ぐためには、環境改善・自律訓練法・精神療法なども有効な治療です。抑うつ症状や不安が強い場合は、抗うつ薬や抗不安薬などの薬物療法を併用することもあります。
これまで説明したきたように、自律神経失調症や更年期障害にはさまざまな要因が考えられるため、ホルモンバランスの変化のみでなく、家庭内や職場での役割変化など、全てを考慮してアプローチしなければなりません。
自律神経失調症と考えられる症状でお悩みの場合は、早めに精神科や心療内科を専門とする医師の診察を受けましょう。
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精神医学の臨床・研究・教育に従事してきた院長によるエビデンスに基づいた診療
こころの診療所 築地・新富町では、精神医学の豊富な経験を持つ院長が、エビデンスに基づき幅広いこころの疾患を診療しています。
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日本総合病院精神医学会 一般病院連携精神医学指導医・専門医、日本老年精神医学会 老年精神科指導医・専門医、精神保健指定医の資格もお持ちです。さらに、日本老年精神医学会では代議員も務め、認知症ケアの分野では日本認知症ケア学会 代議員・学会誌副編集長を務めています。
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こころの診療所 築地・新富町では、動悸やめまい・やる気が出ない・気持ちが晴れないなどのさまざまな症状に対して、専門的視点で診療を行われています。
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こころの診療所 築地・新富町では、患者さん一人ひとりの悩みに向き合い、それぞれの個性に寄り添った適切な治療を提供しています。
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こころの診療所 築地・新富町の基本情報
アクセス・住所・診療時間・費用
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診療時間 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 | 祝 |
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10:00~13:00 | ● | ● | ● | - | ● | ● | - | - |
15:00~19:00 | ● | ● | ● | - | ● | - | - | - |
※第二週月曜日の午前は休診
【費用(税込)】
心療内科・精神科
1回 2,000~4,000円
参考文献
- 更年期障害
- 更年期障害には、どんなものがあるのですか。|千葉県庁
- 自律神経失調症|厚生労働省
- セルフメンタルヘルス
- 自律神経系の神経学:発汗機能を中心に
- 動悸
- 自律神経機能とめまい
- めまい
- 肩凝りと心拍変動との関連
- 「肩こり」とその背景
- 日本人が訴える肩こりの特徴について―欧米における neck pain との比較―
- 冷え症の生理学的メカニズムについて―循環動態および自律神経活動指標による評価―
- 冷え症と自律神経
- リラックスと脳波そして自律神経
- ストレスと食生活|厚生労働省
- 心理ストレスに対する交感神経反応と行動反応の中枢神経メカニズム
- 女性のうつ|一般財団法人 女性労働協会
- 女性ホルモンとライフステージ|一般財団法人 女性労働協会
- 自己免疫性疾患における自律神経症候
- 小林聡幸先生に「身体表現性障害」を訊く|公益社団法人 日本精神神経学会
- 自律神経失調症と更年期障害について|こころの診療所 築地・新富町
- 自律神経失調症・身体表現性障害(身体症状症)の症状と治療|こころの診療所 築地・新富町
- こころと身体の関係・自律神経失調症について|こころの診療所 築地・新富町
- こころの診療所 築地・新富町
- 医師紹介|こころの診療所 築地・新富町
- 当院について|こころの診療所 築地・新富町