不整脈の診断と治療のアプローチ|不整脈の種類・受診するべき症状も解説
不整脈は誰にでも起こりうる疾患であり、自覚症状を伴う場合とそうでない場合があります。それゆえ自己判断が難しいという特徴があり、気づかずに放置していると重篤な状態になってしまう可能性もあるため注意が必要です。
この記事では、不整脈の種類・症状・検査法・治療法などを解説しますので、気になる症状がある場合は参考にされてください。
監修医師:
寶田 顕(東京Dタワーホスピタル)
2008年 東京医科大学循環器内科分野 入局
2015年 ベルギー・ブリュッセル自由大学病院ハートリズムマネージメントセンター fellow
2017年 東京医科大学八王子医療センター循環器内科分野 助教
2019年 東京医科大学病院循環器内科分野 助教
2022年 東京Dタワーホスピタル 循環器内科
目次 -INDEX-
不整脈の種類
皆さんは不整脈と聞いてどう思われるでしょうか?ご自身とはあまり縁のない病気と思われていませんか?不整脈は言葉の通り、脈が不整となっている病気のことを指しますが、そのすべてが病的なものというわけではなく、健康な方にもみられる現象です。
実際にたくさんの方に不整脈の検査をしていると、実に多くの方が脈の不整を持っています。
心臓の動きは心臓に流れる電気によって制御されています。心臓の右心房という部屋に洞結節という場所があり、そこから電気が発電されています。その電気が右心房から左心房に伝わり、その後房室結節という1本の電気の通り道を通り、下の部屋である心室に伝わります。洞結節で電気が作られる間隔は一定のため、本来心臓は規則正しく動くはずです。ところが、心臓は1日に10万回も休まず動いているので、どうしても誤作動を起こすことがあります。その理由は多々ありますが、主に加齢や生活習慣の乱れ、ストレスにより、誤作動が起きる確率が上がるといわれています。
誤作動が起きても、ほとんどの場合は問題ない不整脈でおさまりますが、残念ながら病的な不整脈となってしまう方もいます。不整脈は多くの種類があるため、全てをここでお伝えすることはできませんが、ここでは、よく見られる不整脈の種類を詳しく解説します。
期外収縮
期外収縮は、電気が洞結節以外から作られることで生じます。脈拍が飛んだり乱れたりする不整脈で、健康な方でもアルコールの多飲・喫煙・過労などによって引き起こされることがあります。期外収縮は、心房から出る上室期外収縮と、心室から出る心室期外収縮の2つがあります。これらが生じると、脈が1拍分触れない現象が起きます。「心臓が一瞬止まった?」と感じるかもしれませんが、それは心臓が止まったわけではありません。早いタイミングで心臓が収縮したことで1拍の脈圧が弱くなり、脈として触れなかったことが原因です。病気との関係が少ない期外収縮ですが、心室期外収縮のなかには心筋梗塞や心筋症が原因で起きている場合があり、その場合には心室が痙攣を起こす心室細動に移行し、危険な不整脈となる可能性もあります。
脈が速くなる不整脈
脈が速くなる不整脈を頻脈性不整脈といいます。異常な場所で電気が頻回に発生してしまうことや、電気が勝手にクルクル回ってしまうことで起きますが、心拍数が1分間に200回以上になることもあり、動悸や息切れ、ふらつきや失神の症状につながります。場合によっては極端に血圧が下がり、ショック状態になることもある不整脈です。
頻脈性不整脈にはいくつか種類があります。
「上室性不整脈」
- 心房細動
- 発作性上室性頻拍/WPW症候群
- 心房頻拍/心房粗動
これらは、主に心房が不整脈の原因の場所となっている不整脈です。それぞれの不整脈で治療のやり方は異なりますが、いずれも症状を伴う場合や、脈が早いことで心臓のポンプ機能に障害が出る心不全の状態になる場合は積極的な治療が必要です。
「心室性不整脈」
- 心室頻拍
- 心室細動
これらは、全身に血液を送り出す場所である心室が不整脈の原因となっており、上室性不整脈と比べて危険性が高い不整脈です。心室頻拍は、一定の間隔で心室が急激にたくさん拍動してしまう不整脈で、心臓に病気がある方や連発する回数が多い場合は命に関わるため注意が必要です。症状は動悸や息切れ、また頻拍により血圧が下がってしまうと、ふらつきやめまい、失神につながります。心室細動は、心室が痙攣すると起こる不整脈です。心室が細かく震えている状態で、心室細動が起こると5~10秒ほどで意識がなくなり、30秒経つと呼吸が停止、最悪の場合突然死してしまう恐れがあるため、緊急的な治療が必要となります。
脈が遅くなる不整脈
脈が遅くなる不整脈を徐脈性不整脈といいます。洞結節から電気が生まれる回数が減ったり、房室結節での電気の伝達がうまくいかなかったりすることで、健常の方であれば60回以上ある心拍数が、それ未満に落ち込んでしまう不整脈です。
代表的な徐脈性不整脈は、洞不全症候群、房室ブロックという病気で、めまい、目の前が急に暗くなる、血の気が引く感じがする、失神、息切れ、疲労感などの症状がみられた場合はペースメーカ治療の適応となります。
不整脈の検査
不整脈の有無や頻度、その性質などを調べるためのさまざまな検査があります。
12誘導心電図
健診などでよく見られる検査法です。不整脈の評価は、心電図を取りつけている間のみに限定されますが、ちょうど不整脈が出ているときに測定すれば的確な診断につながります。
ホルター心電図・パッチ型心電計
ホルター心電図は24〜48時間心電図が測定できるため、不整脈を検出する性能は12誘導心電図よりも高くなります。パッチ型心電計は非常に小型の機械で、胸の前面に貼りつける心電図です。ホルター心電図より携帯性に優れ、運動やシャワー浴もできます。パッチ型心電計では、1週間の心電図記録が可能なので、さらに高い不整脈の検出力が見込めます。
植込み型心電計
年単位での心電図でのモニタリングが可能な検査法であり、特に何度も失神を繰り返すなど不整脈が疑われるものの前述の検査法では不整脈をとらえられない場合に用いられる検査方法です。
また、原因のわからない脳梗塞の方がこの検査を行うことで、原因となる心房細動を見つけ出すことができるようになります。
アップルウォッチ
アップルウォッチには脈波を測定するプログラムや、実際に心電図を記録するプログラムが搭載されており、心房細動を検出して利用者に通知できる機能があります。ただし、アップルウォッチからの通知だけでは、心房細動やその他の不整脈を見逃す可能性があるため、循環器内科医に通知結果や記録された脈波や心電図の記録をみてもらうことが大変重要となっています。近年ではアップルウォッチで記録されたデータを元に、心房細動をはじめとした不整脈の精密検査や治療が必要かどうかを判断するアップルウォッチ外来があり、医療機関で何度も検査を行う必要もなく、効率的に診察を受けることができます。
不整脈の治療法
不整脈になった場合、その不整脈の状態や症状に対して適切な処置を行う必要があります。ここでは、不整脈のさまざまな治療法を解説します。
薬物療法
不整脈を抑え込む薬や心臓の興奮を抑える薬を使用し、不整脈をでないようにする治療法で、毎日服用するものと、発作が出た時に服用するものがあります。
薬物療法は一般的に、「治療導入がしやすい」というメリットがある反面、治療効果は人によってまちまちで、全く効果がなかったり、副作用により治療が中断されたりする方もいます。
カテーテルアブレーション
カテーテルアブレーションはメスを使用せずに行う心臓手術法の1つで、薬物療法で改善しない頻脈性不整脈に対して行われる治療法です。主に足の付け根(鼠経部)を走る太い静脈から、電極のついたカテーテルを挿入し、それを心臓まで進めていき電気刺激の異常を発生させている場所を特定します。発生源が特定できたら、カテーテルの先端を患部に密着させ、その部分の組織を焼灼して不整脈を根本的に治す方法です。さまざまな不整脈に対して行う治療法で、患者さんの体への負担も少なく、治療により自覚症状が改善されるため生活の質の向上にもつながります。
ペースメーカ
ペースメーカ植込み術はめまいやふらつき、失神といった症状を引き起こす徐脈性不整脈に対して行われる治療法です。電極を心臓の筋肉に装着し、適切な電気刺激を心臓に与えて脈の数を回復させることができます。これまでは左あるいは右の鎖骨の下にペースメーカを植え込み、心臓まで電線をつなぐことで電気信号を伝えていました。最近は直接心臓の中に小型化されたペースメーカを植え込む手術が普及してきており、治療の対象となる方の病状や背景、ライフスタイルに合わせたペースメーカを選択できる環境となっています。
どのような症状の時に受診すべきか?
不整脈を放置しておくと、生活の質が損なわれるばかりか、命に関わるケースもあります。そのため、以下の自覚症状があれば早めの受診が大切です。
動悸
動悸は、心臓の鼓動や拍動が乱れることで不快に感じる症状です。脈が飛んだ・脈が乱れている・脈が速くなっている・心臓がバクバクと速く拍動するなどの症状が、動悸の自覚症状です。主に頻脈性不整脈があるとみられる症状です。
息切れ
息切れは頻脈性不整脈と徐脈性不整脈のいずれの場合でもみられる症状です。体を動かしている時に自覚することが多く、逆に就寝時や安静にしている時などは、症状が出にくい特徴があります。
意識が飛ぶ
意識が一瞬遠くなることがある場合、不整脈を起こしている可能性があります。心臓のポンプ機能がうまくいっておらず、脳に血液が十分に送り込まれていないことが原因で起こります。頻回に意識が飛ぶ場合は、不整脈が原因かもしれません。
失神する
失神とは、一過性に意識消失が起こることです。駅のホームや階段でこの症状が起きると非常に危険です。失神はさまざまな要因で起こりますが、不整脈が原因の失神は命に関わるため注意が必要です。一度でも失神した場合は、早めに医療機関を受診し医師に相談しましょう。
不整脈の治療なら東京Dタワーホスピタルにご相談を
東京Dタワーホスピタルは、高性能な医療機器を導入し、保険診療を主軸とした先進医療を提供している医療機関です。循環器内科では、冠動脈疾患・不整脈・弁膜症・心筋症・心不全・高血圧など幅広い循環器疾患の診断・治療に対応しています。
不整脈に対しては、低侵襲治療のカテーテルを用いたアブレーションやペースメーカなどのデバイス手術を行っています。不整脈の外来診療・検査・カテーテル治療・外科的治療までトータルで行うことの可能な医療機関です。
循環器内科と心臓血管外科で緊密な連携による治療
東京Dタワーホスピタルでは循環器内科のほかに、心臓血管外科による診療も可能です。治療が難しいと診断された疾患に対しても、循環器内科と心臓血管外科が緊密に連携し、患者さんにとって適切な治療方法を提案いたします。
集中治療室と個室病室でコンシェルジュによるきめ細かいサポート
東京Dタワーホスピタルには手術や治療後に集中治療が受けられる集中治療室が設置されています。新しい生体情報モニタリング機器や人工呼吸器を装備しており、必要に応じて集中治療室での管理が可能です。また、病室は完全個室を採用しており、プライバシーを守りながら快適な入院生活を送れるよう、落ち着いた環境を提供いたします。
東京Dタワーホスピタルの基本情報
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〇:〈第2、第4月曜〉痛み外来、〈火曜午後〉デバイス外来
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参考文献