更年期障害が始まる年齢は?症状・原因も解説
最近、「特に理由もなくイライラすることが増えてきた」「冬なのに汗が止まらない」といった身体の変化を感じることはありませんか。もしかしたら、それは更年期障害のサインかもしれません。
40代に差しかかった女性は、更年期障害について心配や関心を抱くことがあります。この記事では、更年期障害が始まる年齢・一般的な症状・原因について詳しく解説します。
事前に知っておくことで、心理的な負担を軽減しましょう。更年期障害について理解することで、自身の症状や状態についてより具体的な情報を得られるのです。
監修医師:
馬場 敦志(宮の沢スマイルレディースクリニック)
目次 -INDEX-
更年期障害が始まる年齢は?
更年期障害の始まる年齢は個人差がありますが、一般的には40代後半から50代にかけての女性に多く見られ、閉経前後の約5年間を含みます。
ただし、更年期障害の症状が早く現れる場合もあり、30代後半から始まることもあり一部の女性では更年期障害が60代まで続く可能性があるのです。
しかし、更年期障害は加齢などの身体的要因・個人の性格・心理的要因などが絡み合い、更年期障害の発症に関与しています。
そのため、更年期障害の症状や現れ方には個人差が大きい特徴があるのです。
更年期障害の症状
更年期障害の症状を、身体的な症状と精神的な症状に分けて解説したいと思います。
更年期障害にはさまざま症状があり、なかには重い病気に発展するものもあるため注意が必要です。自己で判断せずに、病院で適切な診断を受けるようにしましょう。
身体的な症状
更年期障害に関連する身体症状のいくつかで、血管の拡張と放熱に関係する症状は下記のとおりです。
- ほてり:突然の体温上昇や顔のほてりを感じること。
- のぼせ:頭がふらついたりめまいがするような感覚を経験すること。
- ホットフラッシュ:突然の体温上昇と発汗・顔のほてりを伴うこと。
その他の身体症状には下記のような症状があります。
- めまい:周囲がぐるぐる回っているようなめまいや立ちくらみを感じること。
- 動悸:心臓の鼓動が速くなったり不規則に感じること。
- 胸が締め付けられるような感じ:胸の圧迫感や窮屈さを感じること。
- 頭痛:頭が痛くなることや頭が重たく感じること。
- 肩こり:肩や首の筋肉がこり固まる感じを経験すること。
- 腰や背中の痛み:腰や背中の痛みやコリを感じること。
- 関節の痛み:関節が痛くなることや関節の可動域が制限されること。
- 冷え:手や足の冷たさや全身の冷えを感じること。
- しびれ:手や足のしびれやピリピリ感を感じること。
- 疲れやすさ:少ない活動にも関わらず疲れやすくなることや持続的な疲労感を感じること。
これらは一般的な更年期障害の身体症状の例ですが、個人によって経験が異なる場合もあります。もしこれらの症状が日常生活に大きな影響を及ぼす場合は、医師に相談して適切な対策や治療方法を検討することが重要です。
精神的な症状
更年期障害には、身体症状だけでなく、精神的な症状も現れることがあります。これらの症状は、個人によって異なる程度や頻度で現れることがありますが、一般的な精神症状には以下のようなものがあります。
- 気分の落ち込み
- 憂鬱感
- 意欲の低下・やる気の減退
- イライラや怒りっぽさ
- 情緒の不安定さ
- 不眠や睡眠障害
これらの症状は、ホルモンの変化や神経系の影響によって引き起こされる可能性があります。特に、気分の変動や不眠によって日常の活動に支障が出たり、人間関係に影響が出たりするのです。
これらの精神症状がほかの病気によるものではないか確認するためには、医師の診断が重要です。医師は症状を詳しく聞き、必要に応じて適切な検査や評価を行うことで、更年期障害による精神症状を正しく判断することができます。
更年期障害の原因
更年期障害の原因には下記のような原因があげられます。
- 女性ホルモン(エストロゲン)が低下するため
- 加齢
- 心理的要因
- 社会的要因
上記について詳しく解説していきましょう。
女性ホルモン(エストロゲン)が低下するため
女性ホルモンにはエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)の2種類があります。エストロゲンは女性生殖器だけでなく、身体全体の健康にも重要な役割を果たし、女性の身体に大きな影響を与えるためです。
女性ホルモンは脳から分泌されるホルモンによって調節されています。視床下部からゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)が分泌され、これが下垂体を刺激するのです。
下垂体からは卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体形成ホルモン(LH)が分泌され、これらが卵巣から女性ホルモンの分泌を促します。
一方女性ホルモンの濃度が低下すると、FSHとLHの分泌が促進され、女性ホルモンの分泌も増加するのです。
女性ホルモンの濃度が上昇すると視床下部と下垂体に抑制がかかり、FSHとLHの分泌が抑制され、女性ホルモンの分泌も抑制されます。
このようなホルモンのバランスの変化が、更年期障害などの症状を引き起こす要因となります。
加齢
更年期障害には、加齢が重要な要因となります。女性が更年期に入ると、卵巣の機能が徐々に低下し、女性ホルモンであるエストロゲンとプロゲステロンの分泌が減少します。
このホルモンの減少により、ホルモンバランスが乱れ、更年期障害の症状が現れる可能性が高まります。
年齢が進む程、更年期障害の症状が現れやすくなるのは卵巣の機能が完全に停止し、女性ホルモンの分泌がほとんどなくなる閉経期に近づいているためです。
更年期障害の症状は、通常40代後半から50代にかけて頻繁に発生します。
心理的要因
更年期障害の症状は、心理的な要因によっても影響を受けるでしょう。
高いストレスレベルは更年期障害の症状を悪化させる可能性があります。日常生活・仕事・家庭の負担・人間関係の問題などがストレスの原因となります。ストレスはホルモンのバランスを崩し、更年期障害の症状を増強させるのです。
更年期には女性の身体的な変化が起こるでしょう。これにより、自己イメージや自己評価に変化が生じます。身体の変化に対する否定的な感情や不満が心理的な負担となり、更年期障害の症状を悪化させる可能性があります。
社会的要因
労働条件や職場の環境がストレスや負担を増加させる場合、症状を悪化させるでしょう。柔軟な勤務時間・適切な休暇制度・労働環境の改善など、更年期障害の女性の働きやすさが求められています。
更年期には、子育ての終了や親の介護など、社会的な役割に変化が生じるでしょう。これらの変化により、女性のストレスや負担が増加し、更年期障害の症状が悪化します。適切なサポートや社会的なネットワークの活用が、このような変化に対処するために重要です。
これらの社会的要因は、更年期障害の症状と密接に関連しており、女性の生活の質に大きな影響を与えるでしょう。
更年期障害で起こる体の変化は?
更年期障害で起こる体の変化を下記にいくつかまとめました。
- のぼせ
- イライラ
- めまい
上記について詳しく解説しましょう。
のぼせ
のぼせは更年期障害の症状としてよく知られています。突然顔や頭が紅潮し熱くなり、発汗や脈拍増加とともに強い熱感を感じるのです。
これに対して、強い熱感が身体全体に生じる場合はほてりと呼ばれます。更年期や卵巣摘出を受けた女性の約60%が経験するといわれています。
頻度は数日に1回から1時間に1〜2回の頻回な出現までさまざまです。のぼせは緊張や感情の高揚時に起こりやすく、睡眠中にも現れるため、夜中に汗をかいて目が覚めます。
のぼせは風邪や熱中症などの状態でも起こることがありますが、更年期の女性の場合は心理的ストレス・女性ホルモンの減少・体温調節・血管の収縮・拡張を調節している自律神経のバランスの崩れが原因と考えられます。
イライラ
更年期におけるイライラは、更年期障害の一つの症状としてよく知られています。ホルモンの変動や身体の変化により、女性の心理状態にも影響が出るため、イライラ感が増すのです。
更年期のホルモンの変動は、神経伝達物質や情緒を調節する脳の部位にも影響を及ぼします。これによって、イライラや怒りっぽさが増加し、日常生活や人間関係にストレスをもたらすのです。
めまい
めまいや耳鳴りは通常、耳鼻咽喉科の病気と関連がありますが、更年期の女性にも一定の割合で見られます。
これにより、産婦人科を受診するケースも少なくありません。特にめまいは、古くから更年期障害の症状とされてきましたが、その病態はまだよく理解されていません。
女性ホルモンの低下によって必ずしもめまいや耳鳴りが引き起こされるわけではありませんが、症状が現れた場合は、まず耳鼻咽喉科を受診しましょう。
メニエル病・良性頭位回転性めまい・前庭神経炎などの代表的な病気の可能性を排除するための診断を受けましょう。更年期障害の症状として考える前に、専門の医師の意見を仰ぐことが大切です。
更年期障害になりにくい人の特徴
更年期障害になりにくい人には、下記のような特徴があります。
- 規則的な生活を送っている
- ストレスが少ない
上記について詳しく解説していきましょう。
規則的な生活を送っている
規則的な生活を送っている人は、更年期障害になりにくい傾向があります。規則的な生活は、ホルモンバランスを安定させることに役立ち、更年期に関連する症状の出現や重症化を軽減するでしょう。
規則的な生活習慣を維持することで、ホルモンバランスを安定させ、更年期障害の症状を和らげる可能性が高まります。
特に健康的でバランスの取れた食事を摂りましょう。それにより栄養素の供給が安定し、体の調子を整えます。注意する点として、カフェインやアルコールの摂取を適度に制限しましょう。
しかし、更年期障害は個人によって異なるため、十分な休息や医師の助言も重要です。
ストレスが少ない
ストレスが少ない人は、更年期障害になりにくい傾向があります。慢性的なストレスは、更年期の症状を悪化させる要因とされています。
日常的にリラクゼーション法やストレス解消法を取り入れることで、ストレスを軽減できます。瞑想・ヨガ・深呼吸・趣味に没頭するなど、自分に合った方法を見つけましょう。
ストレスが少ない状態を保つことは、更年期の身体的・精神的な変化への対処に役立つのです。
しかし、ストレスは完全に避けられない場合もあります。その際には、適切なストレス管理の方法を学んでください。医師や専門家のアドバイスを受けながら、自己ケアを行いましょう。
更年期障害を軽くするためには?
更年期障害を軽くするためには下記のような方法があります。
- 定期的に運動をする
- 朝日をしっかり浴びる
- 良質な睡眠をとる
上記について詳しく解説しましょう。
定期的に運動をする
適度な運動は身体的な健康を促進し、心身のバランスを保つ助けとなります。更年期障害による症状を緩和するでしょう。
運動はホルモンの分泌を調整し、更年期におけるホルモンの変化による症状を軽減します。特に、エストロゲンの減少による不快感やイライラを緩和する効果が期待できます。
ただし、過度な運動や急激なトレーニングは逆効果です。適度な運動を継続することで、更年期障害に対する健康上の利益を引き出します。
朝日をしっかり浴びる
朝日には多くの利点があり、身体と精神の健康を促進する助けとなります。朝の明るい光は体内時計を調整し、サーカディアンリズムを整える効果があります。
これにより、睡眠の質やホルモン分泌の調節が改善され、更年期における睡眠障害やホルモンバランスの乱れを軽減するのです。
ただし、長時間の直射日光への露出は肌への悪影響や紫外線による健康リスクを伴う場合があるため、適度なバランスを保ちながら朝日を浴びるようにしましょう。
良質な睡眠をとる
更年期には睡眠の質やパターンが変化することがあり、熟睡できずに症状を悪化させる可能性があります。
良好な睡眠環境のために、静かで暗い環境・快適な温度・湿度の調整・快適な寝具などを整えましょう。寝室をリラックスできる空間にし、外部の騒音・明るさを遮断するカーテン・耳栓を利用するなどの工夫が必要です。
また、規則的な睡眠スケジュールを確保し、毎晩同じ時間に寝て同じ時間に起きるように心がけましょう。これにより体内時計が調整され、自然な睡眠リズムを促進します。
ただし、個人の睡眠ニーズや健康状態は異なるため、自分に合った睡眠環境を見つけましょう。
編集部まとめ
更年期障害の始まる年齢は個人差がありますが、一般的には40代後半から50代にかけての女性に多く見られます。更年期の症状にお悩みの方へは早めの病院受診をおすすめします。
専門家の診断と適切な治療は、更年期障害の症状を緩和するのです。ご自身の健康と幸福を優先し、積極的にサポートを受けましょう。
早期の対応は更年期の症状の軽減につながります。専門家のアドバイスを受けながら、健康な更年期を迎えるために病院を受診する一歩を踏み出してください。
参考文献