人生100年時代だからこそ痛くなる前の検診が重要。チームで取り組む「一口腔一単位」のケア【山形県山形市 スピカデンタルクリニック】


むし歯や歯周病の予防には、痛みが出る前からのケアと3カ月ごとに定期検診に通うことが重要とされている。しかし、歯は痛みが出るまで放置される傾向にあり、気づいたときには悪化してしまっているケースが少なくない。「歯は外界にさらされやすく、定期的なケアが特に重要な部位」と話すのは、山形市「スピカデンタルクリニック」の菅原院長。今回は菅原院長と工藤医師に、予防治療の重要性や診療の流れ、セルフケアのポイント、「一口腔一単位」の理念について話を伺った。
菅原 拡(すがわら ひろむ)
スピカデンタルクリニック 院長
2012年東北大学歯学部卒業。東北大学病院での研修を経て、その後開業。全国規模の大型医療法人の分院長、理事を経て現在に至る。「一口腔一単位」を診療理念に掲げ、悪い歯だけ治療するのではなく、かみ合わせや顎のバランスなどのお口全体を考慮した治療を実践。スタッフの働きやすさも考慮し、各専門職が一丸となった「チーム医療」を大切にしている。
工藤 快(くどう かい)
スピカデンタルクリニック 勤務医
2016年東北大学歯学部卒業。東北大学病院での研修を経て、スピカデンタルクリニックの勤務医となる。痛みを取る治療だけでなく、予防や定期的なメンテナンスを大事にし、「歯の後悔をしなくてすむ」診療に取り組んでいる。
目次 -INDEX-
- 痛くなってからでは遅い?歯の定期検診は3カ月ごとに
- むし歯や歯周病は、痛みが出るまでなかなか歯医者さんに行かない人が多いようです。受診が遅れてしまうのはなぜだと思われますか?
- 歯石を取るときの痛みも歯医者に行きにくい理由のひとつではないでしょうか。貴クリニックでは、歯石除去の痛みに対し、どのような対策をされていますか?
- 北欧諸国では予防治療が進んでいると聞いたことがあります。日本と北欧の違いはどのような点にあるのでしょうか?
- 最近の若い方は、むし歯の率が少なくなっていることを聞いたことがあります。世代によって口のケアに対する考え方に違いはあるのでしょうか?
- 歯のトラブルのネックは、歯石が溜まることにあるのではないでしょうか。歯石とはそもそも何なのか、口の中でなぜ溜まってしまうのか、どのような悪影響があるのか教えてください
- 貴クリニックでは、「パウダーメンテナンス」を行っているそうですね。どのような処置なのでしょうか?
- チーム一丸で実践する「一口腔一単位」の診療
- セルフケアのポイントは歯間ブラシ・フロスの併用
痛くなってからでは遅い?歯の定期検診は3カ月ごとに
むし歯や歯周病は、痛みが出るまでなかなか歯医者さんに行かない人が多いようです。受診が遅れてしまうのはなぜだと思われますか?
【工藤先生】日本の文化や国民性もあると思いますが、保険制度の影響が大きいのではないかと感じています。保険診療で比較的安く治療を受けられる環境は、気軽に受診できるよい面でもあります。しかしその利点が、歯をないがしろにしてしまう要因にもなっているのではないでしょうか。

歯石を取るときの痛みも歯医者に行きにくい理由のひとつではないでしょうか。貴クリニックでは、歯石除去の痛みに対し、どのような対策をされていますか?
【工藤先生】痛みを感じる方には麻酔を使用します。麻酔の注射自体もなるべく痛くないよう数回に分けてゆっくり行いますし、スタッフも丁寧な対応を心がけています。歯石を取った後はしみやすくなることがあるので、事前にチェックした上で必要に応じてお薬も使います。通院の目安は基本的に3カ月ごとです。
ただし、歯石のつきやすさは体質や唾液の成分によって個人差があります。歯科衛生士と相談しながら、自分に合ったペースを見つけていただくのが一番です。
北欧諸国では予防治療が進んでいると聞いたことがあります。日本と北欧の違いはどのような点にあるのでしょうか?
【工藤先生】北欧では小児歯科への公的支援があり、「病気にしない、悪いかみ合わせにしない」といったことに国が力を入れています。
一方日本では、悪くなったものを治すためにお金を使う構造になっています。予防に力を入れることで、医療費負担の抑制や国民全体の健康につながる可能性があります。そういった点は日本も見習っていきたいですね。
最近の若い方は、むし歯の率が少なくなっていることを聞いたことがあります。世代によって口のケアに対する考え方に違いはあるのでしょうか?
【工藤先生】確かに検診希望で、むし歯がなくても来てくれる若い方が増えている印象です。お子さんも2歳くらいから連れて来てくれる親御さんもいます。
そういった若い世代が多いようですね。SNSやインターネットの普及で、情報が身近になったのも理由のひとつだと思います。
歯のトラブルのネックは、歯石が溜まることにあるのではないでしょうか。歯石とはそもそも何なのか、口の中でなぜ溜まってしまうのか、どのような悪影響があるのか教えてください
【工藤先生】歯石の原因は口の中に溜まるプラーク(細菌の塊)です。蓄積されて石のように硬くなってしまったものが歯石になります。長年積み重なって大きくなってしまう方も少なくありません。歯ぐきや骨に影響がおよび、炎症を起こしてしまう状態が歯周病です。進行すると自分での対処は難しく、歯科医院で処置してもらう必要があります。

貴クリニックでは、「パウダーメンテナンス」を行っているそうですね。どのような処置なのでしょうか?
【菅原院長】ガリガリと歯石を取るだけでなく、パウダーと超音波を組み合わせた処置も行っています。歯や歯ぐきをできるだけ傷つけないようにして、患者さんに負担のない処置ができるように、機材も取り揃えています。
よいものをできるだけ負担なくご提供したいという思いから、当院では保険診療の範囲内で行っています。
チーム一丸で実践する「一口腔一単位」の診療

予防・検診の重要性について、院長のお考えをお聞かせください
【菅原院長】働いていれば1年に1回は健康診断を受けると思いますが、歯も定期検診が欠かせません。
歯は、内臓とは大きく異なる点があります。口を開けた瞬間に外界と接する、いわば「むき出しの状態」にある組織なのです。だからこそ、検診で早めに診る必要があります。お口の状態によっては、全身の健康に影響を及ぼす場合もあります。
歯は体の「門番」といえるでしょう。それでいてしっかり磨いていても、3カ月ごとに歯石が溜まってきます。これほど定期的なケアが必要な部位はほかにないと思います。
ホームページを拝見したときに「一口腔一単位」の言葉が印象に残りました。どのような思いが込められているのか教えていただけますか?
【菅原院長】歯の痛いところだけを処置しても、患者さんの幸せにはつながらないと考えています。「神経を取って終わり」といった治療を繰り返していくと、20年後、30年後に大きな差が出て、歯を失うことになりかねません。治療費の負担も増えるでしょう。最初から原因をしっかり特定し、丁寧に治療していくほうが長い目で見てベターです。
小さなお子さんからご高齢の方まで、患者さんの幸せにつながる治療をしたいという思いが理念の根底にあります。
現在、何名の先生で診療をされていますか?
【菅原院長】主に私と工藤医師がメインでやっています。ほかに、パートの女性医師と外部の矯正の医師が2人来てくれています。今のところ合計で5人ですね。来年の4月からはもう1人勤めてくれる予定です。歯科衛生士の希望者もいるので、チームをもっと強くできると考えています。
院長が予防治療において一番大切にされていることは何ですか?
【菅原院長】患者さんへの対応はもちろんですが、院長として一番大切にしているのは、チームづくりです。スタッフがやりがいを持って働けることが、患者さんへの丁寧なケアにつながると考えています。
患者さんは年に数回しか来ない検診やメンテナンスのなかで、スタッフの姿勢をしっかり感じ取っています。思いだけが強くてチームがついてこなければ、多くの患者さんに対応できませんし、スタッフにとって働きやすい職場にもならないでしょう。
スタッフが満足して働ければ、患者さんサービスにも還元できるということですね
【菅原院長】「オレが治す」というスタイルの先生も多いと思いますが、私は、スタッフがやる気を持って動ける環境づくりをすることが自分の役割だと思っています。
「担当衛生士」は患者さんの希望に応じて対応しつつ、スタッフも休みが取りやすいように考慮しています。
患者さんに対しては、「会計の待ち時間が長い」といった問題が少なくなるように、スムーズな支払いを可能にする「自動精算機」を導入するなどのシステム面を整備しました。

セルフケアのポイントは歯間ブラシ・フロスの併用

貴クリニックの予防治療における診療の流れを教えてください
【工藤先生】初診の方にはまずお困りの点や痛みをお聞きして、最低限のレントゲンを撮影し、応急処置を行います。その後、全体的な検査に移ります。
複数枚のレントゲン・口腔内写真の撮影、歯周ポケット検査(歯と歯肉の隙間の溝の深さを測る歯周病の検査)、むし歯の確認などを行い、問題点を整理した上で治療計画を提案する流れです。患者さんによっては複数の選択肢をご提案することもあります。
治療は歯周病とむし歯を並行して進めることが多く、完了したらメンテナンスへと移行します。来院される方の中には歯周病が見つかることがあり、ご自身では気づいていないケースも多いです。
セルフケアの基本となる歯磨きについてお聞かせください。「3分磨きましょう」とよく言われますが、実際はどの程度必要でしょうか。歯磨きのポイントも合わせて教えてください
【工藤先生】よくある問題が、磨く力が強すぎることです。歯ブラシの毛先が寝てしまっている状態だと、ポケットや歯間にブラシが届きません。やさしい力でゆっくりと、毛先が歯面にしっかり当たるように磨くことが大切です。
歯磨きについては、適切な圧で磨けるように指導します。手磨きであれば5分はかけていただきたいですね。
また、セルフケアでは歯間ブラシとフロスの併用を推奨しています。歯ブラシのみでは全体の60%程度しかプラークを除去できないといわれていますが、フロスと歯間ブラシを併用すれば、80~90%程度に高まることがわかっています。1日1回でもよいので、ぜひやっていただきたいです。
最近は市販でも手軽に電動歯ブラシが入手できるようになりました。電動歯ブラシは、手磨きより効率がよいですか?
【工藤先生】上手に使える方であれば、効率が上がるでしょう。ただし、磨く場所や当て方、適切な圧がわかっていないと、逆効果になってしまう可能性があります。
圧が強すぎると、歯ぐきを痛めてしまうことにもなりかねません。フロスと歯間ブラシでのケアは必ず行い、その上で電動歯ブラシや音波ブラシを使っていただければと思います。

親御さんがお子さんのお口を見るときのポイントはありますか?
【工藤先生】仕上げ磨きをしっかりしてもらうことです。むし歯の有無や歯並びもチェックしていただきたいですね。噛み方がよくないと、将来永久歯の歯並びにも影響が出てしまいますからね。
成長したら自然に治る場合もありますが、矯正が必要になることもあります。歯科で定期的に診てもらうことをおすすめします。
ありがとうございました。最後にMedical Docのサイトを訪れた読者にメッセージをお願いします
【菅原院長】「人生100年時代」といわれています。歯の健康を長く健康に保つためには、痛くなってから治すのではなく、定期的に検査を受けて、必要な治療を行うことが重要です。
歯は日々のケアや定期的なメンテナンスが必要になる部位なんです。ないがしろにせず、大事な体の一部として考えていただきたいですね。治療について医師が詳しく説明してくれて、長い付き合いのできる歯科医院を選んでいただければと思います。
【工藤先生】お口の中が気になっている方も、歯科に行きづらいと思っている方も、ぜひ気軽に来院していただければと思います。私たちは、なるべく痛くないように、通いやすいように配慮して診療にあたっていますので…。これからも、皆さんのお口の健康維持をサポートしていきます。
編集部まとめ
「歯は、体内でもありながらむき出しになる場所」。取材を通じて、院長のこの言葉が印象に残りました。しっかり磨いていても歯石は溜まり、お口の状態によっては全身の健康にまで影響する可能性があります。悪くなってから治すのではなく、「歯を守るために診てもらう」といった意識改革が、人生100年時代の歯の健康に欠かせないと感じました。
スピカデンタルクリニックでは「一口腔一単位」の理念のもと、チーム一丸となって患者さんお口の健康を支えています。歯の不具合がある方も、不具合がない方も、ぜひ一度ご相談してみてはいかがでしょうか。

医院名
スピカデンタルクリニック
診療内容
予防治療 むし歯治療 歯周病治療 など
所在地
山形県山形市上町3丁目11-7
アクセス
JR各線「山形」駅より徒歩15分
バス「西部公民館口」バス停留所目の前

