保険適用の口腔機能訓練で、子どもの健康ときれいな歯並びの土台をつくる【札幌市中央区 庄内歯科医院】


近年、子どもの口腔機能の低下がさまざまな健康問題を引き起こしているといわれている。2018年には「小児口腔機能発達不全症」という病名が新たに制定され、保険治療が認められるようになった。口は「食べる・話す・コミュニケーションを図る」という重要な機能があり、幼少期にいろいろな能力を獲得していく。子どもの口の健康は親次第といわれるが、どんなことに気をつければいいのだろうか。小児歯科医師として子どもの口腔機能の健全な発達をサポートしている札幌市「庄内歯科医院」の副院長・庄内聡子先生に話を伺った。
庄内 聡子(しょうない さとこ)
庄内歯科医院 副院長
2003年、日本歯科大学を卒業し、2004年日本歯科大学附属病院臨床研修医修了。2008年、日本歯科大学大学院歯学研究科小児歯科修了(歯学博士)後、関東の歯科医院での勤務医を経て、2011年に庄内歯科医院の副院長に就任。小児歯科医師として長期的な視点で丁寧な診察を行い、子どもの口腔機能の健全な発達を重視したアドバイスをしている。日本顎咬合学会会員(咬み合わせ認定医)、日本メタルフリー歯科学会会員。
顎の骨をしっかり育てて健全な口腔環境をつくる
子どもの歯並びで悩んでいる親御さんは、お子さんが何歳くらいのケースが多いですか?
親御さんが一番気にされるのが、上の前歯が生えてきた時期です。下の前歯は6歳頃で生えてくるのですが、上の前歯はなかなか生え変わらない場合もあり、それに気づくのが7歳頃です。なかには、下の前歯が生えてきた時点ですでにガタガタだという子もいるので、5歳から7歳くらいですね。

生え変わる前から歯並びが悪くなることは予想できるのでしょうか?
永久歯は乳歯よりも大きいので、乳歯と乳歯の間に隙間があるかどうかが目安になります。特に前歯のところに、5歳、6歳で隙間ができていることが大事です。
前歯の乳歯が密接している状態であれば、永久歯が生えてくるとガタガタになる可能性が高いです。
歯並びが悪くなる原因には何が考えられますか?
むし歯は歯並びに影響する要因になります。遺伝もありますが多くありません。現在は口や舌を使わず、成長不足による歯並びの悪さが多いです。あとは呼吸の機能をしっかり使えていなかったり、指しゃぶりを長くしていたり、姿勢が悪かったりというのがあります。さまざまな要因によって顎の骨がしっかり成長できていないと、歯が生えてくるスペースが狭くて歯並びも悪くなります。
親御さんの歯並びも子どもに関係してくるのでしょうか?
遺伝的に歯や顎の形が似てくるというのもありますが、生活習慣によって影響を受けることが多いですね。
たとえば、食事中に水を出すこと。子どもが離乳食から食事をする能力を獲得していく段階で水を与えてしまうと、食物を丸飲みすることを覚えてしまうんです。水があるのが当たり前になっている人は多いと思いますが、この時期には噛みくだいて飲み込むことを学習して身につけることが大事です。
小さい頃からの生活習慣が、顎の発達やお口の機能に大きく影響しているのですね
そうですね。子どものときに、鼻呼吸で呼吸機能をしっかり獲得していくことが重要です。鼻呼吸ができないと、口で息をするので常に口が開いている状態になってしまいます。これにはさまざまな弊害があり、口の中が乾いてむし歯にもなりやすくなります。
口の中を乾燥させないためには、唾液を出す必要があります。唾液が口の中を浄化してくれるので、むし歯予防にもなるんですね。
今の子どもたちは、唾液を出す能力もすごく下がっています。食事中に水を出すことも、自分で唾液を出さなくなる要因になっています。鼻呼吸ができないと、口を閉じるための筋肉や舌の力も弱くなり、顎がちゃんと発達できなくなってしまいます。

子どもが健全な成長をするために、ほかにも気をつけることはありますか?
今の子どもたちは体が弱くなっていると感じます。たとえば筆圧が弱い、ロウソクの火を吹き消せない、ストローを水の中に入れてブクブクすることができない子どもが実際に増えているんですよ。
ひとつの要因として、赤ちゃんのときにハイハイをする期間が短いため、体幹が弱いといわれています。ハイハイをあまりしなかった子どもは、転んだ時に手を使わずに顔面から倒れてしまいます。しっかり噛めないことも、体を上手く使えていないことに関係しています。体幹が弱い子は顎の力も弱くなります。
赤ちゃんの椅子にも注意が必要です。首が据わったばかりのときから、もたれかかるような椅子にずっと座らせておくと、自分で体を支える必要がないので体の力が育ちません。楽な育児グッズに頼りすぎないことも大事ですね。
発達の要となるのは、鼻呼吸と舌の力

歯科医院で行う口腔機能訓練とは、どのようなものですか?
まず、測定器で唇を閉じる力と舌の力を調べます。どちらか力が弱いと、両方とも弱いケースが多いです。
測定をしたあとは、唇を閉じて鼻で呼吸をするトレーニングを始めます。上顎に舌がぺったりついているのが正しい舌の位置ですが、上まで舌が上がらない子どもが多いので、舌の力をつける練習をします。あまりにも体の力が弱い場合は、片足立ちなどで体幹を鍛える指導も行います。
実際にどのようなトレーニングをするのでしょうか?
唇の力をつけるためには、唇を引っ張るトレーニングをします。舌の力はガムトレーニングをしています。ガムを口の中で丸めてもらうのですが、舌の力が弱いときれいに丸くすることができません。練習すると、だんだん舌が使えるようになります。
また、鼻呼吸を習慣づけるために、自宅でテレビを見ているときなどに薄いクリップを口にはさんでもらっています。口が開くと落ちてしまうので、無意識のときにもずっと唇を閉じておくトレーニングです。
トレーニングはいつ頃から始めればよいのでしょうか?
口腔機能のトレーニングは、5歳~7歳くらいで歯並びが気になってきた頃に始めるのがスムーズだと思います。
予防という観点では、マイナス2歳といわれています。まず、お母さんが赤ちゃんの口腔衛生に関する予備知識をつけて、自分自身のお口の中をきれいにして出産を迎える。母乳の吸い方も口腔機能の発達には関係あるので、知っておくに越したことはないですね。
ただ、現実的にそれはなかなか難しいので、1歳半の歯科健診をきっかけに、定期的に歯科医院でケアを継続することをおすすめしています。離乳食は子どもの成長度合いに合わせた与え方がありますので、その時期から来院してもらえるとよいと思います。
口腔機能訓練の流れについて教えてください
まだ口腔機能訓練が世間にあまり知られていませんので、口呼吸をしているようなお子さんを見たら、私のほうから親御さんに案内します。口の機能を高めるトレーニングが今は保険適用になり、札幌市は子どもの医療費助成制度があるため、0円でできることを伝えています。
診療を希望する場合はご予約いただき、初回に測定と写真撮影をします。その後は、子どもの状態に合わせたトレーニングの指導をして、自宅で継続していただきます。月1回通院してもらい、経過を観察しながら行っています。
どのくらいで成果が表れてくるのでしょうか?
人によって違いますが、3カ月経過ごろから変化が期待できるでしょう。乳歯と乳歯の間に隙間ができて、永久歯が並ぶためのスペースを確保しやすくなることが期待できます。
体が成長する時期には変化が大きいので、毎日ちゃんと続けていれば、成果は出てくるでしょう。
トレーニングをするときに気をつけることは何かありますか?
ゲームのように楽しみながらやってもらえると、続けられると思います。お子さんの場合は、親御さんのサポートが欠かせないので、毎日の習慣にできるように支えていただければと思います。

口腔機能訓練で健康という財産を子どもにプレゼント

口腔機能訓練をすると、矯正治療はしなくても歯並びがよくなるのでしょうか?
永久歯が並ぶ土台をつくるために顎の成長を促していくので、もちろん歯並びがよくなる可能性は大きいです。お子さんの状態によっては口腔機能訓練だけでは厳しいケースもありますので、マウスピースを使った治療をすることもあります。
マウスピースをするときは口を閉じることが必要なので、やはりトレーニングは大切になってきます。
貴院ではどのような矯正治療を行っていますか?
小児矯正は何歳くらいから対象になりますか?
6歳頃に始めるのが理想的といわれます。期間は子どもによってかなり違いがあり、早い場合は1年くらいで歯並びがよくなる子もいます。糸切り歯が生えてきたら骨の成長が終わりというサインですが、生える順番も人によって変わるので、12歳頃まで使う子もなかにはいます。
口腔機能訓練で一番大切なことは何でしょうか?
やはり鼻の呼吸ですね。鼻の気道を支える骨と上顎は同じ骨なんです。ここをしっかり成長させるためには、鼻を使って息をすること、そしてしっかり噛むことの両方が必要です。鼻呼吸を獲得できないとアデノイド顔貌※になりやすく、顔の形にも影響が及びます。
最初に上顎が成長しないと、下顎が前に出られなくて後ろに押し込まれる形になり、苦しくなって姿勢が悪くなります。気道も狭いため、いびきもかきやすくなります。骨格ができた後に治すのは難しいので、子どものうちにお口の正常な機能をしっかり身につけることが大切です。
※鼻の奥にある咽頭扁桃(アデノイド)が肥大し、口呼吸が慢性化することで生じる特有の顔つきのこと。口元が前に出て顎が小さく後退し、首との境が不明瞭になるのが特徴。

貴院での口腔機能訓練の費用について教えてください
札幌市の医療費助成制度があるため、保険診療は0歳から18歳まで0円です。初診料のみ必要で、歯科は510円です。口腔機能訓練やむし歯治療は保険適用となります。マウスピース型の矯正装置などは別途料金がかかります。
最後に、Medical DOCのサイトを訪れた読者の方にメッセージをお願いします
口腔機能は全身に影響を及ぼし、将来の健康にもつながります。成長期のお子さんにしかできないトレーニングや治療がありますので、その時期を逃さず、親御さんにサポートしていただければと思います。きれいで丈夫な歯は一生の宝物です。ぜひお子さんに、健康という財産をプレゼントしてあげてほしいと思います。
編集部まとめ
庄内聡子先生のお話を聞いて、鼻呼吸の大切さに改めて気づきました。お口の機能が全身に及ぼす影響や、保険診療で口腔機能のトレーニングができることを多くの人に知っていただきたいと思います。成長期に口腔機能訓練をすれば、将来的に抜歯を伴う矯正治療のリスクを避けることもできます。妊婦健診や1歳半健診などをきっかけに、早いうちから定期的に歯科医院のサポートを受けておくと安心です。




