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重大な病気を誘発しかねない高血圧症。健康的な生活を送るために必要なことは?【静岡県浜松市 松誠会 松井クリニック】

 更新日:2023/02/03

重大な病気を誘発しかねない高血圧症。健康的な生活を送るために必要なことは?
重大な病気を誘発しかねない高血圧症。健康的な生活を送るために必要なことは?

日本人の多くが悩まされている高血圧症。自覚症状がほとんどないことから、普段はあまり意識することもなく放置してしまいがちだ。しかし高血圧症は、心筋梗塞や脳梗塞など生命にかかわる重篤な病気を引き起こす要因にもなり、「サイレントキラー」とも呼ばれている。そんな高血圧症の症状や治療法について、専門家である循環器内科の「松井クリニック」松井さおり院長に話を伺った。

Doctor’s Profile
松井さおり
松誠会 松井クリニック院長

平成 8年島根医科大学卒業後、浜松医科大学第3内科入局。その後、磐田市立総合病院や富士宮市立病院の循環器内科に勤務。同15年に浜松医科大学大学院に入学し、19年に同大学大学院博士課程終了。市立湖西病院循環器科勤務を経て松井クリニックを開院。循環器内科の専門医として、質の高い診療を地域密着で提供している。女性医師ならではのきめ細やかな診療にも定評がある。
日本内科学会認定専門医。日本循環器学会認定 循環器専門医。日本医師会認定産業医。

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日本人に高血圧症が多いのは塩分の摂りすぎが原因?

日本人には高血圧症の人が多いと聞きますが、その原因はどこにあるのでしょうか?

高血圧症の原因はさまざまですが、日本人の場合、私は食生活に大きな原因があると思っています。
日本の食事は諸外国と比べ、比較的塩分が多いことはかねがね指摘されています。特に東北や北海道など寒い地方に住む人は塩分過多が指摘され、塩分の摂りすぎは高血圧症の大きな原因です。
一方、北極圏に住むイヌイットの人たちの伝統的な食文化は塩を摂取しません。そのため、高血圧症の人は少ないそうです。

日本人に高血圧症が多いのは塩分の摂りすぎが原因?

塩分を摂りすぎると、なぜ高血圧症になってしまうのですか?

人の体は、血液などの体液を一定の濃度に保つようにできています。しかし、食塩を過剰に摂取すると、体内の塩分濃度が一時的に高くなります。この塩分濃度を下げるために、体内に多くの水分が必要になります。その結果、心臓に送り込まれる血液の量が増加し、血管にかかる圧力、すなわち血圧が高くなってしまうというわけです。

塩分の摂り過ぎ以外にも何か原因は考えられますか?

ほかには「肥満」「運動不足」「睡眠不足」「喫煙」「飲酒」などが挙げられます。また、日本人の高齢化が進んだことや生活習慣の乱れ、ストレスなども高血圧症の大きな原因と考えられます。
ちなみに、高血圧症というと高齢者の病気というイメージがありますが、若い人でも高血圧症の人が増えているのが実情です。推定では、日本には4,300万人も高血圧症の患者がいるといわれています。

高血圧症を放置しておくと、健康上どんなリスクが生じるのでしょうか?

高血圧が常態化すると、血管に常に大きな負担がかかることになります。若いときは血管も元気ですが、齢を重ねていくと血管は次第に劣化し、血圧の負荷が血管に大きくかかってきます。その結果、詰まりやすくなったり破れたりして、大きな病気を引き起こす原因につながります。
私自身の専門(循環器内科)ということもありますが、最も危険な病気は心筋梗塞でしょう。心筋梗塞は、血管が詰まるなどして心筋(心臓を動かす筋肉)に血流が届かず、酸素や栄養が不足して壊死してしまう病気です。
その初期症状として現れるのは、胸の圧迫感です。たとえ軽くても、胸部圧迫感の症状が出てきたら検査をしましょう。
また同様に、高血圧症になると脳梗塞や脳出血などの発症リスクも高くなります。脳梗塞は血管の詰まる位置で症状が変わりますが、手足のまひ症状が出たら要注意です。

いずれも命にかかわる重大な病気ですね

そのとおりです。しかし高血圧症のやっかいなところは、自覚症状がほとんどないという点です。血圧が高いまま放置していると、何かあったときの症状は初期こそ軽いものの、知らず知らずのうちに重症化します。
そして、心筋梗塞や脳梗塞を起こしてしまうと、命にかかわったり、後遺症が残ったりすることも少なくありません。そうしたことから、高血圧症は「サイレントキラー」とも呼ばれています。

高血圧症は生活習慣病の一つですが、なぜ生活習慣病になってしまうのでしょうか?

今や日本は長寿社会ですね。これは喜ばしいことですが、そのため逆説的に生活習慣病の人が増えたともいえます。寿命が延びる前の社会では、生活習慣病にかかる前に亡くなられる人が多かったというわけです。
また、現代人は運動不足が常態化しているのに加え、飽食の時代です。昔、肥満の人はあまりいませんでした。しかし最近では、食生活は塩分過多に加え、欧米型の食事で油も多く摂取するようになりました。
さらに、ストレス社会も生活習慣病の大きな原因でしょう。ストレスが増加すると血液が酸化しやすくなり、血管の劣化を引き起こします。そしてイライラすると食べすぎにもつながります。

健康診断などで高血圧症と診断されたら、病院で何科を受診すればいいのでしょうか? また、検査ではどのようなことがわかるのでしょうか?

高血圧症の診察を受けるのであれば、循環器内科がベストです。しかし、近隣に循環器内科がない場合は、お近くの内科医院で受診されるとよいでしょう。
これらの科は高血圧症の専門科なので、「早期の治療が行える」「栄養指導や運動指導などの専門的な治療や指導をしてもらえる」といったメリットがあります。

日本人に高血圧症が多いのは塩分の摂りすぎが原因?

高血圧には2種類あると聞きました。どのような違いがありますか?

高血圧症にかかる人の9割は「本態性高血圧」といわれるものです。本態性高血圧とは、いわゆる基礎疾患がなく、塩分過多や生活習慣の乱れなどから起こるものです。私たちが一般的にイメージする高血圧症はこちらですね。
しかし、なかにはホルモン異常などが原因で起こる高血圧症もあります。こういった原因が明らかな高血圧症を「二次性高血圧」といいます。
もし、生活習慣病の治療を行なっても高血圧が改善しないのであれば、その高血圧症は二次性高血圧である可能性もあります。循環器内科であれば、その高血圧症が二次性高血圧である可能性も調べることができます。

高血圧症と診断されたら、まずは生活習慣の改善から

高血圧症と診断されたら、まずは生活習慣の改善から

高血圧症はどのように治療するのですか?

まずは生活習慣の改善で、そのなかでも重要なのが食事の塩分制限です。1日で摂取する塩分量は6gが理想とされていますが、現状としては1日9〜10gほどの塩分を摂取している人がほとんどです。
具体的な食事指導としては、30代後半くらいの方であればスナックやお菓子類の間食をやめるよう指導します。また70歳以上の方であれば、漬け物や味噌汁の塩分量を減らすようすすめています。50代・60代の方は、食習慣の差が大きいので、ヒアリングして適切な指導を行うようにしています。
こういった食事制限に加え、「ウォーキングなどの軽い運動療法」「体重制限」「アルコールを控える」「たばこは吸わない」などの生活指導も行なっています。

生活習慣の改善でよくならない場合は、お薬の治療になるのでしょうか?

生活習慣はその人にとって長年送ってきた慣習なので、なかなか改善できない人もいます。一般的には、2週間経っても生活習慣を変えられない人には、薬物療法を行います。また、仕事などの都合で生活習慣を変えられない人には、最初から薬物療法をご提案しています。

高血圧症の検査や診断、治療はどのように行いますか?

検査としては、まず血圧を測定します。次に、ホルモン異常がないかどうかを調べるために、採血して血液検査をします。血圧が基準値よりも高く、血液検査で異常が認められなければ「本態性高血圧」の診断が下されます。
また、ホルモン異常が判明したら、総合病院などをご紹介し、専門的なホルモン治療を受けていただきます。
治療については、生活習慣病の改善指導を通して行います。ただし、2週間で改善が見られない場合は、薬物療法を取り入れます。

薬物療法で使用されるお薬について教えてください

高血圧症の薬物療法にはARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)、カルシウム拮抗薬、そして利尿薬の3種類が主に使われます。
ARBは血圧を上昇させる物質(アンジオテンシンⅡ)の作用を抑え、血圧を低下させます。カルシウム拮抗薬は、血管収縮の原因物質(カルシウムイオン)が血管に入るのを抑えて血圧を低下させます。そして、利尿薬は体内のナトリウムと水分を尿として排出し、体液を減らすことで血圧を低下させる作用があります。
ARBとカルシウム拮抗薬は、血圧の降下をうながす「降圧剤」と呼ばれるものです。ただし、血圧が下がりすぎると、立ったり歩いたりしているときにふらつくといった副作用があります。降圧剤を使用するときは用法容量を正しく守って服用してください。
また、降圧剤は腎臓に負担をかける可能性があるので、腎臓が悪い人は先に腎臓を治療するようにしましょう。

高血圧症の治療薬は一生飲み続けなければならないと聞きましたが、それは本当でしょうか? また、続けられる治療のポイントなどがあれば教えてください

高血圧症の治療で投薬療法になった場合、8割の人は一生飲み続けていくことになります。なぜなら、人の生活習慣は根本的な部分ではなかなか変えられないものですし、血管は加齢によって衰えていくものだからです。
治療を長く続けるために、「毎日血圧を測定して薬を服用する」という1日のルーティンを決めて実行することをアドバイスしています。もちろん食事に気を遣い、軽い運動も毎日の日課として行うことをおすすめしています。
血圧は、家庭用の血圧計を購入していただき、ご自宅で血圧を測定することをおすすめしています。クリニックで計測する血圧は、緊張から高くなる傾向があるからです。ご自身で正しい血圧を把握し、体調管理につなげましょう。

高血圧症の治療薬にジェネリックはありますか?

高血圧症の治療薬にはジェネリック医薬品もあるので、治療費を抑えることができます。成分はオリジナルと変わりません。むしろ高血圧症の治療薬は長期間にわたって服用することが多いので、当クリニックとしてはジェネリックをおすすめしています。

薬の副作用が心配なのですが大丈夫でしょうか? また、お薬を減らすことはできますか?

降圧剤は腎臓に負担がかかる場合があるので、半年に1回ほどの割合で血液検査し、腎機能の異常が出ていないか調べます。その結果に応じてお薬を調整します。
なお、生活習慣の改善がいちじるしく、血圧が安定すれば、お薬を減らすことも可能です。

高血圧症と診断されたら、まずは生活習慣の改善から

重大な病気になる前に、高血圧症は早め早めの対策を

重大な病気になる前に、高血圧症は早め早めの対策を

貴クリニックの地域医療では、どのようなことを目指しているのでしょうか?

私は浜松市で生まれ育ちました。勤務医時代も静岡県内で過ごし、地域に大きな愛着があります。それが浜松市の地域医療に貢献したいという気持ちにつながり、当地でクリニックを開院した経緯です。
特に高血圧症などの生活習慣病は、毎日の暮らしの積み重ねが症状の悪化にも改善にもつながります。高血圧症を甘く見て、心筋梗塞や脳梗塞などの重い病気にかかってほしくない。そのためにも、当院は「気軽に足を運んでいただける場所」でありたいと思っています。
大きな窓のある明るく清潔感のある雰囲気をはじめ、キッズスペースを完備するなど、通いやすいクリニックを目指しています。

先生は地域の人たちの健康に寄り添うホームドクターということですね

勤務医時代の経験を生かし、専門である循環器内科はもちろん、内科一般、高血圧症、糖尿病、高脂血症、メタボリックシンドロームなどの生活習慣病まで、幅広く診療させていただいています。
また、近隣の病医院と密に連携をとっていますので、どんな小さなこともご相談いただけたらと思います。地域の皆様の健康増進に少しでもお役に立てるよう、全力を尽くしています。
クリニックはJR東海道本線「天竜川」駅からすぐの場所ですので、浜松市内はもちろん、勤務医時代の患者さんが電車で来院されることも少なくありません。

重大な病気になる前に、高血圧症は早め早めの対策を

ホームドクターとして、生活習慣の改善のため、貴クリニックではどのような生活指導を行なっていますか?

当院では投薬療法だけでなく、生活の改善の指導を受けられます。まずは日頃の食事の内容を聞きながら、塩分制限について詳しく説明します。そして運動指導ですね。大切なのは、その人の年齢や生活環境なども考慮し、本人と相談しながら治療を進めることです。
実は、筋トレなどの激しい運動は、血圧には無関係だということがわかっています。私が特に推奨しているのは「歩くこと」です。ウォーキングは有酸素運動で、無理をせず続けることで筋肉がつきますし、基礎代謝が上がるので体も活性化します。もちろん肥満予防にもなります。
70代は5,000歩も歩けたら十分です。人によっては、2,000歩でもいいので、続けることが大切です。また、歩くのが苦手な人なら、スイミングやサイクリングでもいいですね。その人にもっとも適した治療方法を見つけ、それが継続するようにサポートするということ。そこに、ホームドクターとしての役割があると思います。

最後に読者へのメッセージをお願いいたします

「血圧が高い」とわかっていても、ついつい放置してしまう人が多いと思います。しかし、健康に不安を抱えながら毎日を過ごすなら、すぐに医院に受診して適切な治療を開始しましょう。放置し続けると高血圧症によって、血管への負担が少しずつ蓄積していきます。大きな病気につながる前に、早め早めの対策をすることが大切です。

編集部まとめ

もはや国民病ともいうべき高血圧症。「サイレントキラー」と呼ばれ、心筋梗塞や脳梗塞など大きな病気のトリガーにもなる症状です。高血圧症は日頃の生活習慣次第で良くも悪くもなります。改善するためには医師による適切な診断と治療が不可欠です。一生かけて付き合っていくことになる高血圧症だからこそ、地域医療に寄り添うホームドクターとの二人三脚の治療が大切なことが取材を通じてよく理解できました。健康診断の数値などで気になることがあれば、松井クリニックにご相談してみてはいかがでしょうか。

松井クリニック

医院名

松井クリニック

診療内容

内科 小児科 循環器内科

所在地

静岡県浜松市東区和田町200-2

アクセス

JR東海道本線「天竜川」駅より徒歩2分

この記事の監修医師