手術したその日に歯が入るインプラント治療「All-on-4」とは?【北海道旭川市 医療法人愛和会 エルム駅前歯科クリスタル】



JR旭川駅から徒歩約5分の「医療法人愛和会 エルム駅前歯科クリスタル」。院内には木製の調度や家具、緑の植物のほか、院長が集めたアンティークの品々が置かれ、その温かみとリラックスできる雰囲気に緊張がとける。こちらでは北海道+東北6県含め、多くの症例数を誇るインプラント治療が行われている。患者さんによって、骨量が足りない、あるいはすべての歯を失ってしまったような難症例にも対応するという増木英郎院長に、同院のインプラント治療の特徴についてうかがった。
増木 英郎
医療法人愛和会 理事長・エルム駅前歯科クリスタル院長
平成3年、北海道大学歯学部卒業。骨・硬組織研究にて学位を取得し、同年より北海道大学歯学部第二補綴科入局。平成5年11月、旭川市にて「エルム駅前歯科医院」を開業。平成17年11月、医療法人愛和会理事長。平成29年1月、「医療法人愛和会エルム駅前歯科クリスタル」院長に就任し、現在に至る。東京形成歯科研究会理事。
資格、所属は「国際インプラント学会 認定専門医・指導医」「アメリカデンタルインプラント学会 所属」「日本口腔インプラント学会 認定専門医・指導医」「国際血液生体材料臨床応用会議(ISBB)所属」など。
あらゆる面で負担を減らした新インプラント治療法の「All-on-4」
歯を失ってインプラントを検討している方も多いと思いますが、なかなか踏み切れないという声も聞きます。それはどういった理由からでしょうか?
「All-on-4」と従来のインプラント治療との違いは何でしょうか?
どのような点で患者さんへの負担が軽減できるのでしょうか?
たとえば、従来のインプラント治療では、1本のインプラントを顎の骨に埋入して骨と結合するまでに数カ月かかっていました。しかも、そのようなインプラントを数本~10数本となると、治療に何年もかかるケースも出てきます。
また、骨が痩せている場合、骨造成にさらに半年ほど余計にかかります。しかし「All-on-4」の場合には、全部の歯をカバーするために最少4本(上下の顎で8本程度)のインプラントを丈夫な骨のある箇所に埋入するので、個別に治療するよりもずっと短期間かつ少ない回数で済みます。腫れや痛みなど術後の患者さんの体への負担も軽くなり、インプラントの埋入と仮歯の装着までほぼ1日で終了です。これには患者さん自身が驚かれています。
従来のインプラント治療と比較して、費用の面ではいかがでしょうか?
治療時間や経済性以外で、「All-on-4」には何かメリットはありますか?
では逆に「All-on-4」のデメリットには、どんなことがありますか?
骨が痩せていても骨移植なしで可能な「ザイゴマインプラント」
「All-on-4」以外にも、画期的なインプラントの治療を実施されていると聞きました
「ザイゴマインプラント」のことですね。ザイゴマとは「頬骨」という意味で、通常のインプラント治療では顎の骨か歯槽骨(歯根を支える骨)にインプラントを埋入するところ、ザイゴマでは頬骨に長いインプラントを埋めるので、そう呼ばれています。
上顎の歯を1本、あるいは半分以上を失い、骨も薄くなって通常のインプラント治療が困難な場合、あるいは骨上顎の骨が萎縮して通常の「All-on-4」の施術が難しい場合には、たいてい人工骨を移植するなどの対策を講じますが、治療に1年ほどかかる難儀なものでした。そこで、代わりにザイゴマ治療を行うことで、「All-on-4」を即日機能させることが可能になりました。ただし、インプラント治療が可能なすべての歯科医院でザイゴマ治療ができるわけではありません。
ザイゴマ治療を実施するには、歯科医院にどんな必須条件があるのでしょうか?
インプラント埋入の位置や角度を調整、施術するのに高度な技術のほか、それに応じた器機設備などが求められます。まず、上顎の事細かな状況をCTで撮影し、さらに骨の硬さやインプラントが可能かなどをコンピューターで計測し、施術においてもコンピューターガイドで施術の位置を決めるなど、精密な診査診断と精密で高度な治療が必要です。当院には、この治療を行うのに必要な技術、特殊な器機などすべてが備わっているので、患者さんの条件さえ揃えば、ザイゴマ治療をご提案しています。
私はオーストラリアでこの治療法を学び、現在当院は北海道で実施している数少ない歯科医院の一つです。上顎の骨に問題があるなどによって、インプラント治療を断られてしまった患者さんは、ぜひ一度ご相談ください。
ザイゴマ治療のデメリットにはどんなものがありますか?
まず、専門的かつ高度な技術が必要なので、一般のインプラントのようにどこの歯科医院でもできる治療ではありません。当院のように数多くの施術経験のある歯科医院で行っても、手術には長時間(通常2時間ほど)かかります。しかも、頬骨まで切開するため、術後には腫れや痛みなどのリスクも生じます。これも保険適用外のため、ザイゴマ治療として38.5万円(税込)が加算されるため、高額な費用がかかる点は患者さんにはデメリットといえるでしょう。
ザイゴマ治療をお願いするためにも、クリニック選びは重要ですね。そのポイントについてアドバイスをお願いします
すべては歯からはじまる健康寿命を守るため
貴院は、さまざまな面でより進んだインプラント治療を目指しているとうかがいましたが、具体的にはどのような点でしょうか?
たとえば、骨の再生を促す「GBR(骨誘導再生療法)」や「CGF(濃縮成長因子による再生療法)」といった新しい骨造成治療に取り組むことで、これまでインプラントが不可能だと診断されていたケースを可能にしています。
また、当院では「All-on-4」や通常のインプラント治療のあとで、「酸素カプセル」を使用します。十分な酸素を体内に取り込むことで細胞の再生が促進され、その結果、埋め込んだインプラントが比較的早く顎の骨と結合しやすくなります。歯ぐきの傷も治りやすいとされているほか、鎮痛効果や歯周病菌などの殺菌作用が期待できます。
もちろん、術後のケアについても当院の責任は重大だと考えています。そこで、術後のメンテナンスとして定期的に技術力のある歯科衛生士がクリーニングや噛み合わせのチェックに当たり、ご家庭でのお手入れの指導も徹底して行います。
院長が積極的に新しい治療に取り組むのは、どのような思いからでしょうか?
むし歯や歯周病で歯を失うのは、単に1本の歯がなくなるということではありません。その歯を含めたお口全体の機能や噛み合わせのバランスが崩れてしまうことであり、そこからさらに状態が悪化していく可能性も否定できません。
しかも、歯を失うことは全身の健康に影響が及びます。自分の歯はかけがえのないもので、インプラントのような機能性の高い代替歯があるとしても軽んじてはいけません。自分の歯は自分で守るのが鉄則で、やはり普段からの歯のお手入れ、通院によるメンテナンスは必須ですし、先々のことを考えたら、早めにインプラントなどの治療法を経験豊富な歯科医に相談するのが得策なのです。私は、目の前の歯の状態よりも、10年先、20年先の、患者さんの口腔内の健康にまで配慮する歯科医であるよう努めています。
歯の健康が全身の健康に大きく関わっているということでしょうか?
そのとおりです。お口は消化管の入り口でもあるわけです。ここでどれだけきちんと食物を噛み、唾液と混ぜて胃に送り込むかによって、消化の具合や栄養摂取の状況が変わってきます。
年齢を重ねるごとに、またお口の状態によって十分に噛むことが困難になってきがちですが、それと同時に歯を失うリスクも増してきます。
歯は失えば失うだけ、全身に悪影響が及ぶ可能性が高くなってきます。ですから、できるだけ長い間自分の歯でしっかり噛んで、健やかな食生活を送ることをどの患者さんにもおすすめしています。それが健康寿命を延ばすことにつながります。
編集部まとめ