不妊治療はいつから始めればいい? 費用の負担はどのくらい?【埼玉県さいたま市 かしわざき産婦人科】 2020/03/12

かしわざき産婦人科
かしわざき産婦人科

子どもを望んでいる夫婦にとって、不妊は深刻な問題だ。2015年に実施された国立社会保障・人口問題研究所の「第15回出生動向基本調査」によると、不妊を心配したことがある夫婦は3組に1組を超え、実際に不妊の検査や治療を経験した夫婦は18.2%にのぼる。増加傾向にある不妊の原因とは一体どのようなものなのか、また、不妊治療はいつから始めるのがよいのか、費用はどのくらいかかるのか。高度不妊治療に豊富な経験を持つ、かしわざき産婦人科の柏崎祐士先生にお話を伺った。

Doctor’s Profile
柏崎 祐士
医療法人かしわ会 かしわざき産婦人科 副院長

京都府立医科大学医学部卒業。2000年5月まで日本大学板橋病院において主に不妊治療に従事。その間、米国エール大学医学部産婦人科に留学。
医学博士。日本生殖医学会生殖医療専門医、日本受精着床学会評議員、母体保護法指定医、日本卵子学会代議員等。

不妊の原因は女性だけに限らない。男性と女性で約半々

まず、不妊とはどういう状態を指すのか、その定義について教えてください。

妊娠を望む健康な男女が避妊せずに1年以上性交を行っているにもかかわらず、妊娠しない場合を「不妊」といいます。
しかし、婦人科の既往歴などから女性が妊娠しにくい状態であると考えられる場合は、この定義を満たさなくても不妊の可能性を考慮して早めに検査を受け、必要に応じて治療を行ったほうがいい場合もあります。

不妊の原因は女性だけに限らない。男性と女性で約半々
不妊はどのようなことが原因で起こるのでしょうか?

不妊というと、妊娠出産をする女性に問題があるかのようにとらえられがちですが、実は不妊の約半数は男性側に原因があります。そのため、不妊の検査や治療は女性だけでなく男性も一緒に、二人で受けることが大切になります。
わかりやすい言い方で大まかにお伝えすると、不妊は、「排卵しない」「卵管が詰まっている」「精子がない」の3つが主な原因となっており、これらの原因が不妊全体の4分の3を占めています。また、原因不明なケースが11%と、意外に多いことも不妊の特徴です。

不妊の原因を男女別に教えていただけますか?

女性側の原因としては主に、「卵巣機能不全」「卵管や子宮の疾患」「内分泌ホルモン系の異常」が挙げられます。
卵子をつくる卵巣の機能が衰えると、卵子の数が減少するだけではなく、質も低下し、妊娠しにくくなります。
卵管は、卵子を取り込んで精子と受精する場所であり、受精卵を子宮に運ぶという重要な働きをしますが、この卵管が何らかの原因により狭くなったり詰まってしまったりすると、受精することができません。
子宮については、子宮筋腫や子宮の奇形発育不全、子宮内膜症などの疾患が不妊と関連があることがわかっています。
内分泌ホルモン分泌の異常は、排卵障害につながります。

不妊の原因は女性だけに限らない。男性と女性で約半々
男性の不妊の原因にはどんなものがありますか?

男性側に原因がある場合の主なものは「無精子症」です。
無精子症は、精巣(睾丸)で精子をつくる能力が低下してしまっていて精子がない状態と、精子はつくられているのに、通り道が塞がっているために射精しても精子が放出されない状態と2通りがあり、後者を「精路閉鎖」といいます。
また、勃起障害や膣内射精障害など、セックスで射精できない「性交障害」も男性側の不妊の原因となります。
ほか、近年のカップルに多い「セックスレス」も不妊の大きな原因の一つとなっています。

不妊治療を開始する目安とは? どんな検査をする?

不妊治療はいつからスタートすればよいのでしょうか?

不妊の定義に該当するカップルもちろん、男女ともに年齢を重ねるほどに妊娠しにくくなることがわかっています。ですから、40歳以上で初めての妊娠を希望される方は、1年という期間を待たずに早めに不妊症治療の専門クリニックを受診することをおすすめします。
近年、「妊活」という言葉が一般的になってきていることもあり、結婚後1カ月で受診される方も少なくありません。不妊治療は早くスタートすることで結果が出やすいものです。
子どもを望んでいて少しでも気になることがある方は、パートナーとともに受診し、まず検査を受けてみてください。

不妊治療を開始する目安とは? どんな検査をする?
不妊治療に必要な検査とは、どのようなものがありますか?

男女で検査の内容が異なるので、男女別にご説明します。女性の場合は、「超音波検査」「血液検査」「子宮卵管造影検査」「ヒューナーテスト」の4つの検査が必要です。
超音波検査では、子宮や卵巣に異常がないかどうか、また、卵子が成熟する袋である卵胞の状態を観察します。
血液検査では、排卵の有無や卵の育ち具合、卵巣年齢を調べます。血液検査でわかる抗ミューラー管ホルモン測定(AMH)では、実年齢とは異なる卵巣年齢が診断できます。卵巣に残された卵子の数や質を推定でき、今後の妊娠・出産のチャンスの可能性を予測する助けとなるとても有益な検査なので、当院で不妊治療を受けられる場合には、原則としてすべての方にこの検査を受けていただいています。
子宮卵管造影検査は、膣から造影材を入れて行う、子宮の形や卵管の通り具合を調べる検査です。
女性の頚管粘液と男性の精子の相性を調べる検査がヒューナーテストで、「性交後試験」とも呼ばれています。排卵日付近に性交を行い、12時間以内に来院して子宮頚部の精子の数と運動性を観察します。

男性はどのような検査をするのでしょうか?

男性の場合は、女性と一緒に受けるヒューナーテストのほか、「精液検査」が必要です。精液検査では、マスターベーションにより採取した精液の量や精子の濃度、運動率、奇形率を調べます。
これらの検査は、不妊症治療を提供している産婦人科や泌尿器科で受けることができます。異常が見られた場合には、男性不妊症患者に多く見られる「精索静脈瘤」などの疾患がないかどうか、泌尿器科で検査をします。「精索静脈瘤」とは、精巣から心臓に戻る静脈の血液が逆流することで精巣の周りに静脈のこぶができる疾患です。

検査の後の不妊治療について教えてください。

不妊の原因が特定できない場合は、身体に負担の少ない順に、排卵と受精を補助する不妊治療を始めていきます。
まず、最も妊娠しやすい時期に性交を持つようにする「タイミング法」、内服薬や注射で排卵を促す「排卵誘発法」を行い、それでも妊娠しない場合に、「人工授精」「体外受精」を試みます。
人工授精は、排卵のタイミングに合わせて元気な精子を女性の子宮の奥に注入する方法です。
体外受精は、体内から取り出した卵子と精子をシャーレで受精させ、受精卵が順調に成長したのを確認した後に子宮内に戻す方法です。
体外受精で精子と卵子が自然に受精しない場合や、精子の数が極端に少ない場合は、細い針で精子を卵子の中に注入する「顕微授精」を行うことがあります。

不妊治療を開始する目安とは? どんな検査をする?
原因が特定できた場合は、それぞれに応じた治療が行われるわけですね。

はい。女性の排卵障害が原因となっている場合は、排卵誘発法と併せて、タイミング法や人工授精などを行います。
卵管の狭窄・閉塞がある場合は、卵管癒着剥離術や卵管形成術により卵管を開通させるか、体外受精を行います。
子宮内膜症の場合は、年齢や不妊期間、痛み、重症度を考慮し、治療法を選択します。
男性が無精子症で精路閉鎖の場合は、精路再建手術を行うか、精巣から精子を採取して顕微授精などを行います。精液中の精子の数が少ない場合は、人工授精や体外受精、顕微授精が治療の選択肢となります。
性交障害がある場合は、勃起障害治療薬等による治療や人工授精等を行います。

不妊治療の費用の一部は助成を受けられることも!

不妊治療を検討する方が気になる、その費用について教えてください。

最も一般的なタイミング法は保険の適用となり、患者さんの費用負担は1回数千円です。人工授精と体外受精は保険の適用外で自由診療となるため、人工授精は数万円、体外受精は数十万円の費用負担が発生します。
参考までに、当院の費用目安は1回につき人工授精が2万円、体外受精が40万円です。
不妊治療にはいくつか選択肢があるため、まずは経済的、身体的負担が少ない選択肢から始めてみることをおすすめします。
当院では、ご来院された方に、どのような選択肢があるのか、検査や治療の内容、もちろん費用の目安についても詳しくご説明させていただいています。費用面も含め、不妊に悩んでクリニックに来られる方は不安でいっぱいだと思いますので、特に初診では十分なコミュニケーションをとるように心がけています。

不妊治療の費用の一部は助成を受けられることも!
不妊治療の費用の一部は助成を受けられることも!
不妊治療には治療費の助成制度はないのでしょうか?

不妊治療の経済的負担の軽減を図るため、不妊治療のうち、高額な医療費がかかる体外受精と顕微授精については、「特定不妊治療費助成制度」があります。
治療にかかった費用の一部を国や自治体が助成するこの制度の対象者は、「特定不妊治療以外の治療法によっては妊娠の見込みがないか、または極めて少ないと医師に診断された法律上の婚姻をしている夫婦」「治療期間の初日における妻の年齢が43歳未満である夫婦」という条件があります。
助成を受けるには所得制限や回数制限があるほか、自治体によって内容も異なるため、詳しくは自治体に直接問い合わせるかホームページ等でご確認ください。
また、費用だけでなく、人工授精は行うが体外受精や顕微授精は対応していないなど、不妊治療は医療機関によって診療内容が異なりますので、詳細を確認してから受診するクリニックを決めるようにしましょう。

不妊治療は悩み始めたら夫婦揃って受診しよう

不妊治療は気軽にクリニックの門を叩けないイメージがありますが、先延ばしにすると、加齢によってますます妊娠が難しくなる可能性があります。
「少しでも心配なことがあれば、早めにパートナーと一緒に産婦人科を受診してほしい」と柏崎先生がおっしゃっていた言葉が印象に残りました。費用についても、保険外治療では医療機関によって設定が異なり、また、治療費の助成制度の規定も自治体によって異なることから、事前にしっかりと調べて不妊治療に臨むことが大切です。

医院情報

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埼玉県さいたま市大宮区上小町604-4
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JR大宮駅西口から徒歩の場合、約15分
診療内容 不妊治療 産科 婦人科