歯が欠損したときの代替手法として知られる
インプラント 。ブリッジや
入れ歯 といったほかの代替手法に比べ、使用感や耐久性などの面で大きなメリットがある。しかし、
インプラント は外科手術が必要なことなどから、敬遠してブリッジや
入れ歯 を選択する人も少なくない。
インプラント に対する不安を取り除き、正しいインプラント治療 を受けるためのポイントを、「太田歯科クリニック」の太田一伸院長に伺った。
Doctor’s Profile
太田 一伸
太田歯科クリニック 院長
静岡県立静岡高校、岐阜歯科大学を卒業後、勤務医を経て1988年に太田歯科クリニック開院。同年ストローマン・インプラント を導入し、常に最先端の技術と知見でインプラント 技術の向上と普及に務めている。
日本口腔インプラント学会専門医。日本歯科審美学会や日本歯周病学会、デンタルコンセプト21など参加学会多数。ITIメンバー。AO(アメリカインプラント学会)アクティブメンバー。
インプラント に偏見や抵抗を持っている人もいらっしゃいます。その原因をどうお考えですか?
30年ほど前のことですが、
インプラント が認知され始めた当時、歯科医業界で「
インプラント ・バブル」と呼ばれるほど、多くの歯科医院で
インプラント を取り入れていた時期がありました。そのため一部の医院では
未熟な技術にも関わらずインプラント を始め、トラブルに結び付いてしまった。 そんな経緯が今も尾を引いています。それが偏見や抵抗の最大の原因だと考えられます。
かつては未熟な技術の歯科医師が多かったため、インプラント についての悪い評判や噂が広まってしまったということですね。
インプラント は外科手術なので、一定以上の外科的なスキルが求められます。また、
インプラント は歯科医一人では成り立たず、
歯科技工士の技術や専門の設備など、必要な環境が総合的に整っていることが大切 なんです。価格的にリーズナブルだからということだけで選ぶのは、おすすめできません。
インプラント の技術は、現在はどうなのでしょうか?
インプラント の技術が確立されたのは1970年代のことです。それ以降も、年を追うごとにエビデンスが集積され、学会や研修会で発表されるなどして
技術が進化し続けています。
たとえば、従来は
インプラント 体(チタン製の人工歯根)と骨が定着するには、長くて半年の期間を必要としていました。しかし、チタン表面のサンド処理や洗浄処理などの進歩により、現在では1カ月半ほどで定着するようになりました。
なるほど。確かに、インプラント の進化は目覚ましいですね。
当院は国際的な学術機関である
「ITI(International Team for oral Implantology)」 のメンバーです。学会や研修会に参加することはもちろん、発表もすることでほかの
インプラント 医から批評・評価されることで自分を高めています。ですから、常に最先端の
インプラント治療 の情報収集が可能になっています。
しかし、こういった研鑽を怠り、古い技術のまま
インプラント治療 を行っている医院も残念ながら存在します。私は、ドクター向けの
インプラント 講習会の講師を行っているのですが、それが業界全体の技術の底上げにもつながると信じています。
歯を失った場合の治療法には、インプラント 以外では入れ歯 やブリッジを選ぶ人も少なくありません。それぞれのメリットとデメリットを教えてください。
まずブリッジは、欠損した歯の両脇の歯を土台にして、人工の歯を橋のように架ける補綴技術です。
ブリッジのメリットは、
インプラント のように
外科手術を必要としない ことです。デメリットとしては、
両脇の健康な歯を削る必要があること 。そして、ブリッジは両脇の歯に負担がかかるため、両脇の歯の寿命も短くなるリスクがあります。
入れ歯 についてはいかがですか?
入れ歯 のメリットは、
コストが安く抑えられる ことです。その一方で、「異物感」「良くかめない」「痛い」「外れやすい」「においやすい」そして
「入れ歯 を支える歯がだめになる」 など、多くのデメリットがあります。
インプラント の「自分の歯で噛める」という充足感とは、比べ物にならない違和感を我慢する必要があります。
また、すべての歯が脱落したり抜歯したりすると、顎堤(がくてい/歯を失った位置)部分の歯茎が痩せてしまいます。
入れ歯 を外したときの自分の顔を鏡で見ると、その年老いた顔に気分的に落ち込む方も少なくありません。
インプラント 手術で後悔しないための医院選びとしては、どんなポイントがありますか。
まず
「インプラント ありき」という考え方の医院は避けましょう。 良識ある歯科医は、今ある歯はなるべく残す努力をするものです。
また、患者さんのお口や顎の状態によっては、術後トラブルのリスクが発生したり、治療に長い期間が必要になってしまったりする場合もあります。そういうリスクを顧みることなく、あらゆる選択肢を説明することなく
インプラント をすすめてくる医院は要注意です。
太田歯科クリニックでは、インプラント を希望する患者さんにどのような検査をするのですか?
当院では、
CTスキャン や
三次元コンピュータ解析 などを駆使し、患者さんのお口や顎の状態を徹底的に検査します。その上で、「あなたにとって
インプラント が必要か」を念入りに検討し、十分に説明します。
実際に、骨密度や骨の薄さ、全体的な健康状態など、
インプラント治療 に向かない方もいらっしゃいます。そういった方には、あえてブリッジや
入れ歯 といった治療法を提案する場合もあります。しかしそれは、何よりも『患者さんの幸せ』を考慮したからこその提案だとお考えください。
先生は数あるインプラント メーカーの中でもストローマン社のインプラント を導入していらっしゃいますね。その理由を教えてください。
インプラント の技術は、先ほども紹介した
「International Team of Implantology(ITI)」 という国際的な非営利団体に情報が集約されます。このITIと非常に密接な連携体制にある
インプラント メーカーがストローマン社なのです。その強みは、ITIによる最新のエビデンスに則った技術を蓄積していること。その信頼性から、世界70カ国以上で500万人を超える患者さんの治療に使われ、世界No.1のシェアを誇っています。
当院は
「ストローマン・インプラント 」のパートナーズ医院 であり、医師は専門的なトレーニングを積んでいます。私自身、スイス・ベルン大学にて、ITIストローマン・クリニック、ITIマスターコースを修了しています。
それでは改めて、太田歯科クリニックのインプラント治療 の流れを教えてください。
当院での
インプラント治療 の流れは、大まかな次のように進みます。
ストローマン・
インプラント は
インプラント 体と骨の定着が早いので、最短で2カ月ほどで完了します。
(1)カウンセリング
最初に、歯科衛生士のクリニカル・コーディネーターが、カウンセリングを行います。このとき、口腔内の写真を撮影し、口腔内の健康度を測定するなどして入念にチェックします。あえて医師ではなく、専門のカウンセラーが担当するので、患者さんからは「圧迫感がなく安心できる」という声をいただいています。
(2)治療提案
クリニカル・コーディネーターによるカウンセリングをもとに、医師が治療提案書を作成します。提案書は、インプラント はもちろん、ブリッジの場合、入れ歯 の場合など、何通りも作成します。インプラント 以外の治療方法もあることを提示した上で、患者さんにもっともマッチした治療法を選択していただきます。
治療内容にご納得していただいた上で、同意書にサインしていただきます。
(3)検査(CT・血液検査等)
CTスキャンや血液検査等を行い、インプラント 手術をより安全に実施できるようチェックします。ここで、インプラント に必要な骨があるかを正確に確認します。また、術後のリスクを事前に知るために、糖尿病などの症状もチェックし、必要に応じて栄養指導を行い、内科医との連携も行います。
(4)治療スケジュールを組む
治療スケジュールを組んでいきます。手術の1週間前に健康度チェックを再度行い、手術3日前には予防的に抗生剤を服用していただきます。
(5)インプラント 手術当日
インプラント 手術自体は、手術日の午前中を目安に、1時間ほどで完了します。少しお休みいただいた後は普通にご帰宅が可能です。また手術後は、通常は固いものでなければ食事も可能です。
(6)手術翌日~1カ月
手術翌日からは1週間ほど毎日来院していただき、消毒などを行います。
約1週間後には抜糸ができます。その後はブラッシング指導を行います。術後2~3週間で、ほぼ日常の生活に戻ることができます。
(7)人工歯冠の装着
術後1カ月半をめどに、歯型を取り、人工歯冠を製作します。約2週間後をめどに仮合わせを行い、技工所に戻して再度調整します。数日後に人工歯冠を装着します。
インプラント の施術に際し、太田歯科クリニックで特に留意、あるいは工夫しているのはどんな点でしょうか?
何よりも患者さんの健康や安全が第一であることです。そのためにも、
術前のカウンセリングや検査を念入りに行っています。
当院では、最新技術を取り入れた安全な
インプラント を患者さんに提供しています。しかし、治療法を最後に決めるのは患者さんです。当院としては、患者さんの状況や希望なども鑑み、最適な治療法をご提供しています。
太田歯科クリニックの院内設備について教えてください。
インプラント治療 は外科手術です。手術を安全に行うには、外科にかかわる専門の知識と訓練、そして設備が必要です。
当院では、安心安全な
インプラント 手術を行うため、世界基準の設備を念頭に置いています。その一つが、最新の
デジタル・レントゲン および
CTスキャン の設備です。スキャンデータから、顎の骨を三次元的に詳細に把握し、より安全・確実な手術を行うことが可能です。それから、
外科専用の手術室を完備 しております。病院の口腔外科に相当する環境での手術は、通常の診療室レベルよりも確実に安全性が高まります。
通常の歯科治療についても、精密な治療の実現のために、最低2.5倍の
拡大鏡 下での精密作業を行い、最高水準の治療を目指しています。また最大8.0倍の
拡大鏡 から、さらに高倍率の
マイクロスコープ も用います。これにより、裸眼とは比べものにならない精度の治療が可能です。
コンピュータ技術も導入されていると聞きました。
当院では、難易度の高い
インプラント 手術では、
コンピュータ・シュミレーションによる高精度のガイドシステム が誤差の解消に大きく役立っています。
また、治療前と治療中、そして治療後の状態を高解像度カメラで撮影し、リアルタイムで説明しているので、治療の経過がわかりやすいと好評です。
衛生面での配慮はいかがですか?
もちろん、衛生面にも細心の注意を払っています。器具の滅菌に関しては、滅菌器も最高基準に則り、患者さんごと使用器具の完全滅菌 に努めております。
太田歯科クリニックにおけるインプラント の治療実績を教えてください。また、患者さんの反応はいかがでしょうか。
当院では、患者さんが「長期的に安心して幸せを実感できる」治療がモットーです。そのため「
インプラント ありき」ではなく、入念なカウンセリングや検査をもとに、納得していただいた上で手術を行っています。
ストローマン・
インプラント の大きなメリットとして、
インプラント 体と骨の定着する期間が短いことが挙げられます。患者さんが日常生活に復帰できるまでの期間が短いため、患者さんには喜んでいただけていますね。
そうした実績が内外に評価され、
当院では31年間にわたり、2,000件以上のインプラント治療 実績があります。
インプラント は施術後のケアも大切です。先生の医院ではどのようなフォローを行っていますか?
歯は、食事などで毎日使っています。術後の
インプラント には常に咀嚼などの負荷がかかるので、
定期的なメンテナンスは非常に重要 です。
患者さんの状態にもよりますが、3カ月ごと、または半年に1回の割合で、定期的なメンテナンスを行っています。また、最低でも1年に1回は、レントゲンと口腔内写真を撮影し、術後の経過観察を行っています。
仮に、引越しなどをしてしまった場合はどうすればよいでしょうか。
当院では、全国の優秀な
インプラント 医と支え合う
「インプラント 保証制度」 に加盟しています。そのため、転勤などの理由で引っ越しをしても、指定された歯科医院が受け入れてくれるのでご安心ください。
最後に、Medical DOCのサイトを訪れた読者へのメッセージをお願いします。
インプラント治療 は、ドクターと患者さんが信頼関係を築き、正しく行えば何の心配もない治療法です。漠然とした不安感などで
インプラント を敬遠されているなら、本当にもったいないことです。
食事は、人生の充実度において非常に大切な要素です。
食べ物を自分の歯で食べることができるインプラント は、ブリッジや入れ歯 よりもはるかにQOL(クオリティ・オブ・ライフ=生活の質)が高い治療法です。 インプラント で少しでも不安な点がありましたら、迷わずに専門医にご相談ください。
歯が欠損しても自然な噛み心地を取り戻せるインプラント は、ブリッジや入れ歯 よりもはるかに快適な暮らしを私たちに提供してくれます。しかし、インプラント治療 のクオリティは、まだまだクリニックによって大きなばらつきがあるのが現実のようです。後悔しないインプラント治療 を受けるためには、何よりも信頼できる医院を選ぶことが重要 といえるでしょう。最新のインプラント治療 を熟知した医師と二人三脚で、人生のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)を高めたいものです。
医院情報
太田歯科クリニック
所在地
〒420-0882
静岡県静岡市葵区安東2-21-23
アクセス
JR静岡駅前 バス16番のりば大浜麻機線:「安東一丁目」下車
診療内容
歯科一般 予防 口腔外科 審美治療 小児歯科
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