予防の重要性がわかっていても、忙しくてケアをさぼり、その負い目から歯科クリニックに行くのが億劫になってしまうのはよくあること。「これだけ忙しい時代ですから、歯科予防に関して意識が高い方でも虫歯や歯周病になるのは不思議ではありません」 とは笠貫歯科クリニックの笠貫由訓院長。こんな歯科クリニックであれば、トラブルがあっても「叱られるのでは」とビクビクせずに受診できるそうだ。いい状態を無理なくキープしていくために、ライフスタイルにフィットした予防と治療について笠貫院長に伺った。
Doctor’s Profile
笠貫 由訓
笠貫歯科クリニック 院長
日本歯科大学を卒業。南カリフォルニア大学(USC) 客員研究員を経て帰国後、笠貫歯科クリニック開業。正会員として所属しているのは、アメリカインプラント学会、日本歯周病学会、JAID。ほかに、UCLAインプラント アソシエーションジャパン、インプラント 研究機関ISO(International Soceity of Osseointegration)のメンバー。
虫歯を防ぐだけでなく、初期の虫歯を見つけることも予防の重要な役割
予防・メンテナンスに通っているのに虫歯になると「叱られそう」でビクビクしてしまいます。
がんばって予防に取り組んでいても、虫歯や歯周病になってしまうことはあります。予防に「絶対」「完璧」を求めてしまうと、口腔ケアがつらい苦行になってしまいますし、気持ちが切れてしまって一気に悪化させてしまう可能性もあります。
口内を清潔に保つことはもちろん重要ですが、人生には重要なことがほかにもたくさんあります。大切なのは、トラブルがあったときに早めに的確な治療を受けること 、そして無理なく続けられてよりよい予防方法を見つけることです。そのためにも、気兼ねなく相談できることを当院では重視しています。親身にお話を伺うことは、その後の治療や予防に役立つヒントにもつながるんですよ。
トラブルがあったときにも親身になってくれると思うと気が楽です。
予防は、歯や歯ぐきをいい状態でキープすることを目的として行いますから、トラブルがあったときにこそ親身になれなくては本末転倒ですよね。がんばってきたのに虫歯になってしまったことで患者さんは気落ちされていると思いますので、そういうときにこそ患者さんに寄り添った治療が重要 だと考えています。早めに治療を受けることでダメージを最小限に抑えることも予防の大きな役割です。
虫歯を初期のうちに見つけるのも予防治療なんですね。
予防ではプロフェッショナルクリーニングやケア指導に加え、歯科検診が組み込まれています。歯科検診では
「しみる」「痛い」といった症状が出る前の初期虫歯を発見することが可能 です。ごく初期であれば
フッ素塗布 などで再石灰化を促すだけで済むこともありますし、ほとんどは麻酔が必要ないほど楽で短時間の治療だけで済みます。
予防とうまく付き合うためには、どんなことが重要ですか?
無理なく続けていけることは大きなポイント だと考えています。最初のうちはモチベーションが高いので丁寧なケアができても、それを続けていけなくて状態を悪くしてしまうことがよくあります。それに、歯磨きなどのセルフケアはちょっとしたことで変化するものです。ゴルフやテニスなどを始めて、筋力や柔軟性が変わることで磨き残ししやすい場所が変わることもあります。
また口内環境は、生活環境やストレスなどにも大きな影響を受けます。その時々に一番いい方法を見つけるためにも、気軽にいろいろなことを相談できるクリニックを見つけてください。
治療法の選び方でその後に必要な予防内容が変化する可能性も!
症状の有無で虫歯の進行状況はかなり変わりますか?
症状がなくても状態が悪化していることがあります。 特に金属の詰め物や被せ物の場合、年数が経つと金属の下のセメントが溶けだして、その隙間から虫歯菌が侵入し、二次カリエスになる可能性が高いので注意が必要です。再治療を繰り返して最終的に歯を失ってしまわないためにも、定期的な歯科検診が不可欠です。
セラミック の場合は歯とセメントの密着度が高く、隙間から虫歯菌が入ることがほとんどありません。
セラミック というと審美性の高さが注目されますが、機能的にも優れていて口内の衛生を保ちやすいというメリットもあるんですよ。
詰め物や被せ物は半永久的に持つものではないのですか?
正しいケアを続けて定期的に検診を受けることで
長持ちさせることはできますが、どんな素材にも寿命があります。 天然の歯のように安定して長期間使い続けることができる素材はまだありません。
セラミック はかなり長く機能を保てますが、金属やレジンは寿命が短いことを考慮に入れて、より注意深くケアしていく必要があります。
天然の歯はそんなに素晴らしいものなんですね。
歯科治療で使われる素材や技術は大きく向上していますが、実はいまだに天然自然のものにかなう素材や技術は生まれていません。 神様のつくられたものを超えるような素材や技術がまだないからこそ、ご自分の歯を大事にする予防治療が重要なんです。
ただし、天然歯も削った部分が大きくなってしまうと寿命が縮まってしまいます。ダメージのある天然歯を適切に治療し、よい状態をできるだけ長く保つためには、予防まで見据えたトータルな治療が必要になります。
治療法を選択する際になにを判断基準にしたらいいかわかりません。
虫歯の治療では、レジン、金属、
セラミック 、
ジルコニア 、
メタルボンド などによる治療が可能です。また、歯を失った場合には、
入れ歯 やブリッジ、そして
インプラント治療 という選択肢があります。治療では、費用や治療期間、見た目、機能、二次カリエスの可能性、口内の衛生環境への影響など、素材や治療内容によって特徴やリスクが異なります。
当院では、
患者さんが望む治療をすることを基本 としていますので、迷うことや気になることがありましたらなんでもお気軽に質問していただきたいと思っています。
見た目が気になる場合、セラミック がよいのでしょうか?
銀歯が気になってコンプレックスを感じている場合、
セラミック に変えるだけで印象は大きく変わります。白くて透明感があるため見た目も自然ですし、体にも優しい素材ですからアレルギーなどの症状がほぼありません。また、テトラサイクリン系の抗生物質による歯の変色は
ホワイトニング で白くできないのですが、
セラミック の被せ物や薄く削った
セラミック を貼り付けるラミネートベニアなどで解決することができます。
被せ物で強度に不安がある場合には、白くて透明感のある
ジルコニア クラウンもおすすめできますし、年数が経つと歯ぐきが変色する可能性がありますが、外側は
セラミック で内側に金属を使用した
メタルボンド という選択肢もあります。
修復する場所や体質、お考え、ライフスタイルなどを考慮して最適なものを選んでください。
セラミック による治療を考えた場合、設備も気になります。
保険診療ではない場合、使える素材や治療方法に制限がないため、とても精密な治療が可能になります。当院では
双眼ルーペ や肉眼の2~24倍まで視野を拡大できる
マイクロスコープ を使うことで、精度の高い治療を可能にしています。
審美性の高い治療では、生体に合ったかたち、機能、見た目などにきめ細かく配慮した治療を心がけています。歯の色やかたち、機能だけでなく、歯肉との調和もしっかり見ています。見た目や発音、食事などに関して不具合が出ないよう、しばらく仮歯できめ細かく調整して満足度の高いものをつくるようにしています。
インプラント にも興味があるのですが、なんとなく不安があります。
インプラント の場合、当院では歯科用CTで精密なデータをとった上で、
患者さんに合わせた治療計画をおつくりし、リスクなどについてもしっかりご説明しています。
インプラント は手入れさえよければ、ご自分の歯のように長くお使いいただけるものです。患者さんが納得して選ばれることが不可欠ですから、まずは情報を集めるためにお気軽にご相談ください。
より効果的な予防のためには、食いしばりなどの癖を治すことも重要
よりよい治療と予防につなげるために必要なものを教えてください。
どのようなリスクがあって、その後のメンテナンスをどう行っていくのかをしっかり理解した上で治療を選択することで、効果的な予防につなげることができます。見た目や機能、いい状態を長く保っていくためにも、ご自分の口内の状態をしっかり理解することは不可欠 ですね。
予防のために、気を付けたほうがいいことはなにかありますか?
「食いしばり」「噛みしめ」「歯ぎしり」などで無意識に歯を強く食いしばってしまうと、歯や歯ぐきに大きなダメージを与えてしまいます。本来、人間はリラックスした状態では上下の歯が接していないことが正常です。唇を閉じた状態で、上下の歯が接触しない状態を保つよう常に意識するようにしてください。
食いしばりや噛みしめにはどんなデメリットがありますか?
歯がすり減る、歯がグラつく、顎関節症などを起こすリスクが大きく上がってしまいます。 肩こり や頭痛などにつながることもあります。
スポーツ選手などで力を入れる際に強く噛みしめる癖がある場合、虫歯ではないのに奥歯が砕けてしまうこともあります。さらに歯周病があると噛みしめによって歯周組織へのダメージが蓄積しやすくなり、悪化させやすくなります。
無意識に行っていることなので、改善できるか不安です。
常に意識するのは難しいと思われるかもしれませんが、腕時計や指輪、ネイルなど「これを見たら噛みしめていないか注意する」と自己暗示をかけることで噛みしめを効果的に解消させたケースもあります。
パソコンに付箋を貼る、スマホにシールを貼るなど、まずは簡単な自己暗示によるきっかけづくりをして、食いしばりや噛みしめを解消させてください。
眠っているときの歯ぎしりなどはどうしたら改善できますか?
歯ぎしりもそうですし、日中の噛みしめや食いしばりでもきっかけづくりの自己暗示では効果がないこともあります。そうした場合には、マウスピースを使った治療をおすすめしています。 歯や歯ぐきへのダメージを蓄積させないためにも、歯ぎしりを指摘されたり、噛みしめの癖を自覚されたらご相談ください。
改善しているかどうかは歯科検診でわかりますか?
初診の歯科検診でもほとんどの場合、食いしばりがあるかどうかがわかります。また、継続して定期的に歯科検診を受けている場合には、改善しているかどうかも判断できます。
当院では食いしばりや噛みしめの解消についても丁寧に指導していますので、ご相談ください。
最後にメッセージをお願いします。
歯や歯ぐきなど、天然自然の生体臓器は機能的にも見た目にもとても優れています。そうした優れた生体をできるだけ良好な状態で保つための予防と、失った機能や見た目をできるだけ生体に合わせて再現する治療 を当院では心がけています。
そのためにも、気になることやお悩み、不安をなんでも気軽に相談できること、そしてご自分の状態をしっかり理解した上で、最適な予防法や治療法を選ばれることが重要だと考えています。無理せず、自然体でいらしてください。
予防はクリーニングやケア指導だけでなく、できるだけ早い段階で虫歯などを見つけて適切な治療をすることも重要な役割のひとつ。 予防しているのに虫歯になってしまっても、親身に話を聞いてくれて、その後の治療や予防をよりよいものにしてくれる歯科クリニックがあるとわかったので、これからはビクビクせずに通院できそう。噛みしめの癖を解消するためのきっかけづくりも教わりました。そんな癖のある人は、早速スマホにシールを貼って気を付けましょう!
医院情報
笠貫歯科クリニック
所在地
〒158-0095
東京都世田谷区瀬田1丁目9−5
アクセス
東急田園都市線・大井町線 二子玉川駅より徒歩7分
東急大井町線 上野毛駅より徒歩7分
診療内容
歯科一般 小児歯科 矯正歯科 歯科口腔外科 審美治療 他
監修記事一覧
日本歯科大学を卒業。南カリフォルニア大学(USC) 客員研究員を経て帰国後、笠貫歯科クリニック開業。正会員として所属しているのは、アメリカインプラント学会、日本歯周病学会、JAID。ほかに、UCLAインプラントアソシエーションジャパン、インプラント研究機関ISO(International Soceity of Osseointegration)のメンバー。