矯正治療には、いまや多様な選択肢がある。とくにマウスピース型の矯正装置は、次々と新しいタイプが登場している。その中で世界シェアNo.1を誇るのが
インビザラインと呼ばれる装置だ。もちろん、従来から行われているワイヤー矯正にもメリットはある。そこで、
自分にはどの装置が合っているのか、何を基準に選べばいいのか、どんな歯科医院で治療を受けるべきかについて、「うえだ歯科クリニック」の植田先生にうかがってみた。
Doctor’s Profile
植田 憲太郎
うえだ歯科クリニック 歯科医師
三国丘高等学校卒、大阪大学歯学部入学。同大学卒業後、小室歯科難波診療所での勤務を経て、2016年、大阪府箕面市に「うえだ歯科クリニック」開院。2017年「医療法人UDC」を設立、理事長就任。2018年、歯科技工所「UDLab」設立。デジタル機器と人工知能(AI)を駆使した矯正、インプラント治療に取り組む。「HANA Intelligence歯科・矯正歯科」総合治療ディレクター。医療者による歯科・医科のスタディグループ「bloom」代表。
矯正治療の種類には、どんなものがありますか?
成人矯正の場合、ブラケットとワイヤーを使った
「ワイヤー矯正」が従来から行われてきた治療法です。近年は、そこに透明のマウスピース型の装置を使った
「マウスピース型矯正」が加わりました。あとは、ブラケットとワイヤーを歯の裏側に取り付ける
「舌側矯正」、部分的に1~2本の歯を動かす
「部分矯正」などが
矯正治療の主だったものでしょうか。
自分に合った矯正方法を選ぶ目安といたものを教えてください。
まずは
“装置が目立つことが気になるか”を考えてみればよいと思います。ワイヤー矯正はやはり装置が目立ってしまいますので、「それが我慢できない」「仕事に支障がある」というような場合には、
マウスピース型矯正が第1候補、
舌側矯正が第2候補になります。
矯正の内容によっては、従来からのワイヤー矯正を選んだほうがいいといったケースはありますか?
ワイヤー矯正でできることは、
インビザラインでも可能です。ですから、必ずワイヤー矯正でないといけないという症例はまずないといえるでしょう。ただ、最近はワイヤー矯正の装置の価格が下がってきているので、
費用面からワイヤー矯正を選択される方はいらっしゃいます。
部分矯正はどういったときに有効ですか?
部分的に歯列が乱れているようなときに有効です。治療対象となる歯が少ないので、費用もそれだけ抑えられます。ただ、スペースが足りないところに無理に押し込んでも後戻りを起こす可能性が高いので、1~2本動かすだけだからといって、必ずしも適応になるとは限りません。
口腔、全身の健康のためにも、思い立ったときに矯正相談を
インビザラインは、「大きく歯を動かすことができない」という話を聞いたことがあります。本当でしょうか?
そういった意見があるのは事実です。ただ、私は実際に患者さんに治療を行っています。また、私自身も
インビザラインによる
矯正治療を受けました。その経験のなかで、歯を動かせる距離や正確さは、
インビザラインもワイヤー矯正と同等かそれ以上という実感を持っています。
ポイントは使用する装置の種類にかかわらず、治療する歯科医が咬合学、矯正学を十分に学んでいることが大切なんです。どうすればどう動くか、咬み合わせはどうなるか、というメカニズムについての知識は矯正に欠かせません。
なるほど。歯が動くメカニズムが先ということですね。
もちろん、歯科医としてそれぞれの装置の特性は十分に把握していなければなりませんよ。
インビザラインの講習を受けて正しい扱い方を身につけていること、経験があることも大切です。インビザラインの特性を知らなければ、当然、その性能を活かすことはできませんからね。
インビザライン矯正の効果は歯科医院によって違いが出てくるものですか?
スキャニングしたデータをもとにマウスピースを作製するシステムのため、“どこで受けても同じ”というイメージがあるかもしれません。でも、マウスピースは作製前に歯科医師による調整を行います。その技量によって、得られる効果にも差が出てくるのではないでしょうか。
費用面を気にされる方は多いと思いますが。
インビザラインに限らず、
矯正治療は自由診療であるため比較的高額です。しかし、きれいな歯並びは一生の健康の土台になります。
その後の虫歯・歯周病リスク、身体全体への影響を低減させることを考えると、私はお金をかける価値のある治療だと思います。
身体全体への影響とおっしゃいましたが、それは何を意味しているのでしょうか?
歯並びや咬み合わせが悪いと、食べ物を噛み切る・すり潰す機能が十分に働きません。すると胃腸に負担がかかりますし、栄養の吸収効率にもかかわります。また、咬み合わせの乱れが身体の歪みにつながることもあります。
咬み合わせの乱れが、身体のゆがみ…ですか?
はい。咬み合わせが悪いと、左右の顎のどちらかに偏ったストレスがかかります。その歪みは次第に首、肩へと広がっていきます。頭痛などの原因になることもあるんですよ。
歯並びの乱れの影響は口内だけに留まらないのですね。
矯正治療を受けるきっかけとしては、
「見た目が気になって」と言う人が多いのですが、矯正がうまくいけば結果的にお口、そして身体の健康によい影響を及ぼしていくことは間違いありません。早くに治療を受けるほど、人生の中で
“きれいな歯並びの期間”は長くなるわけです。とにかく、思い立ったときに相談されることをおすすめします。
矯正治療を受けた方の反応として、どんな声が聞かれますか?
治療を終えてすぐは、やはり「きれいになってうれしい」とおっしゃっていただけます。皆さん、鏡を見て、思わず笑顔になりますね。長期的に見れば「歯磨きが簡単になった」「虫歯になりにくくなった」という感想もいただいています。
気持ちの面でもよい影響がありそうですね。
はい。以前は話すときに口元を手で隠していたのに、治療後は思い切り歯を見せて笑ってくださる方もいらっしゃいます。また、せっかく手に入れたきれいな歯を傷つけたくない、失いたくない、という気持ちが湧いてくるのか、お口の健康への意識が高まるように感じます。
ここまでのお話を聞くと、矯正治療の種類が豊富な歯科医院に相談するべきという気がします。
そうですね。ただ、選択肢が豊富という理由だけで歯科医院を選ぶのはリスクがあるように思います。浅く広くでは、どの方法を選んだとしても、十分な効果が得られない可能性があります。
では、どんな点に注目すればいいでしょうか?
実績や経験はもちろんですが、
咬み合わせを考慮して矯正治療を行っているか、ほかの口腔トラブルにも対応できる体制が整っているか、矯正治療用の小型のインプラントを埋め込んで歯を引っ張る「インプラント矯正」などを行う応用力があるか、といったあたりを基準にしてみるといいかもしれません。
歯並びを含め、お口を総合的に診てくれる歯科医院、ということですか?
そうです。口腔の健康と美しさは表裏一体で、どちらかが0点でどちらかが100点ということはありません。両方の土台となるのが、歯並びです。ホームページを見比べたり、無料相談に足を運んだりするなどして探してみてください。
臨機応変に対応してもらえれば安心ですね。
矯正治療の期間は、基本的に年単位です。
万が一虫歯になったとき、歯周病になったときに適切な治療が受けられるということは、
矯正治療の成功のためにも欠かせないポイントです。
相談のときには、どんなことを尋ねればいいでしょうか?
まずは患者さんのほうから、どんな悩みがあって、どんなふうに治したいかを伝えてみてください。そのとき、“歯科の常識”というものはあまり気にしなくていいと思います。「痛くなくて楽なのがいい」とか、「一番目立たないのはどれですか」とか。そういった患者さんの生の声に寄り添って提案するのが、私たち歯科医の義務ではないでしょうか。
植田先生は、相談のときに気をつけていることはありますか?
患者さんが求めている答えは、できるだけその場で出すようにしています。相談をして帰るときには、疑問が1つ、2つと解決できればいいな、と。口の中を覗くだけではわからないこともありますので、そういった方には、検査まで受けていただくということも可能です。
1回だけの相談では、疑問が解消しないということはありませんか?
そうなんですよ。一つひとつの説明に時間をかけていくので、時間が足りないことがあります。ですから
当院では、矯正治療の相談は何度でも無料でご利用いただけます。
それなら、納得できるまでとことんお話できますね。
納得して治療に進むのと、不安なまま治療に進むのでは、患者さんのモチベーションも変わります。最高のスタートを切っていただくためにも、最後に「ここでよかった」と思っていただくためにも、このルールは継続していきたいと思います。
最後に、このページをご覧の方にメッセージをお願いします。
近年、
インビザラインに注目が集まっています。ただ、やっぱり
ワイヤー矯正のほうが信用できる、費用面からワイヤー矯正の方がいい、という方ももちろんいらっしゃいます。
当院では、そういったご希望に真摯に応える“安心”を大切にしたいと考えておりますので、ぜひ一度ご相談いただければと思います。
一人で調べたり悩んだりするより、まずは実際に相談してみることが大切だということが、植田先生のお話でよくわかりました。また、選択肢は多いに越したことはないけれど、一つひとつの治療の質が高いレベルで維持されていることが重要だというお話でした。治療が始まれば、長く通院することになる矯正治療だからこそ、お口全体の健康を守ってくれる歯科医院を見つけたいものですね。
医院情報
うえだ歯科クリニック
所在地 |
〒562-0023
大阪府箕面市粟生間谷西1丁目1-6
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アクセス |
阪急バス「尼谷」下車すぐ、「豊川支所前」下車 徒歩1分 |
診療内容 |
歯科一般 小児歯科 歯周病治療 インプラント |