むし歯や歯周病、外傷などにより失った歯を補う治療法として広く浸透しつつある
インプラント。
「しっかり噛める」「違和感が少ない」といったメリットが叫ばれる一方で、
「痛い」「怖い」「治療費が高い」といった不安の声が大きいのも事実。そこで、日本口腔インプラント学会認定医である『ハートデンタルクリニック』の髙橋章太郎先生に、
知っていそうで意外に知らないインプラント治療の“基礎知識”を教えていただきました。
Doctor’s Profile
髙橋 章太郎
医療法人ブライトティース ハートデンタルクリニック桜新町駅前 院長
日本歯科大学歯学部卒。公益社団法人「日本口腔インプラント学会」専修医(認定医)。「大学病院レベルのクリニック」をコンセプトに、2021年12月に溝の口駅前に開院、2014年4月に開院した桜新町駅前のクリニックと川崎市にある本院とともに10年・20年先まで考えた治療とメンテナンスを提供。現在も精力的に国内外のインプラント学会に参加、さらなる技術・知識の習得に力を入れている。
インプラント治療を希望される方はやはり増加傾向にあるのでしょうか。
そうですね。
歯周病などで歯を失ってしまった方はもちろん、
入れ歯が合わなくなってしまったといった・ブリッジが折れて・割れてしまったといった悩みを抱えている方も多く相談にいらっしゃいます。
当院でなら
インプラント専門医による手術・治療が受けられると、あらかじめインターネットなどで調べ、最初から「
インプラント治療を受けたい!」と決断されている方も少なくありません。また、
歯周病により、歯ぐきや骨の状態が悪く、他院でインプラント治療を断られた方がセカンドオピニオンでご相談にいらっしゃるケースも見受けられますね。
治療に踏み切れない患者さんも少なくないと聞きますが…。
インプラントは保険適応外の治療なので、
価格的な面で躊躇する方もいらっしゃいます。でも、それより
テレビや雑誌などで治療に関するネガティブな情報を目にしたり、ご友人などの体験や噂話から
「痛いのではないか」「術後の経過が心配」と不安を感じ、治療をためらう方が多いように感じます。
ネガティブな情報が広まった要因はどこにあるとお考えですか?
かつてはCTによる検査も普及しておらず、レントゲンの画像だけを頼りに
インプラントを埋入するといった盲目的な手術をせざるを得ない時期もありました。ですから今よりもトラブルが起こりやすい環境であったことが挙げられると思います。また、
インプラント治療に関する正しい情報を伝えることなく手術をすすめる医院があるとも聞きますし、せっかく
インプラント治療をしたのに「こんなはずではなかった…」と感じさせてしまう事例が多々あったのかもしれません。
患者さんの不安を払拭するために心がけていることは何かありますか?
やはり
最初の相談(カウンセリング)の時間を充実させることですね。どんな治療をどんな流れで行うのかといった概要はもちろん、痛みや腫れに強い不安を抱えている方に対しては、眠った状態での手術や腫れを抑える手術など、さまざまな選択肢がありますので、
患者さん一人ひとりの状態やニーズにあった治療法をご提案するようにしています。また、
インプラントのメリットだけでなく、デメリットや治療後のケアについてもしっかりと伝えるようにしています。
インプラント治療の「メリット」はどんな点にあるのでしょう?
これまで、歯を失ったときには、その部分に
入れ歯やブリッジを入れることが主流でした。しかし、痛い・合わないといったトラブルが起こることが多い上、それらの器具を装着するために残った歯を削るなど、周りの歯にも負担がかかっていました。しかし、
インプラント治療では歯が抜けた部分の顎骨に
インプラント体(チタン製)を埋入し、その上に
人工の歯を取り付けるので安定感があり、自分の歯と同じような感覚で噛むことができます。また、周りの歯に負担をかけることもありません。
では、逆にインプラントのデメリット・注意点とは?
患者さんの中には、
インプラント=手術すればすぐ噛めるようになるし、一生長持ちする治療だと思っている方も少なくありません。しかし実際は、
手術で埋入したインプラント体がしっかりと骨に固定したのを確認してから人工歯を入れるので、治療は場合によっては長期に渡ります。
また、
義歯が入った後も、健康で快適な状態を保つために、
定期的な検診やクリーニングなどのメンテナンスをしていただく必要があります。実際に今、
インプラント治療後のメンテナンス不足によって起こる「
インプラント周囲炎」が世界的にも問題となっており、患者さんにも治療に入る前に検診・メンテナンスの重要性をしっかり理解していただく必要があるといえますね。
インプラントは歯科医師・歯科衛生士との「長いお付き合い」が必要ということですね。
現状、
インプラントはしっかりとメンテナンスを行えば、ほかのどんな歯科治療よりも長持ちするといわれています。しかし「正しい知識を持たないまま治療した」「メンテナンスもしていない」などの理由で、抜けてしまった事例も見てきました。
人生100年といわれる今、やはり
インプラント治療も「いかに長く持たせるか」が重要になってきます。そのためには
歯科医師・歯科衛生士、そして患者さんが一緒になって治療・メンテナンスに取り組むことが重要だと考えています。
実際にインプラント治療を行う場合の流れを教えてください。
インプラント治療は、歯が抜けた部分の顎の骨に
インプラント体(チタン製)を入れるわけですから、やはり骨の状態によって治療法も大きく変わってきます。そのため
手術前の検査・診断では、残っている歯や骨、粘膜の状態を詳細にチェックすることが重要。
当院では、これらの
検査結果やCT撮影画像をもとにインプラント専門医と放射線指導医の2人によるダブル診断によって治療方針を決めています。患者さんの状態によって使われる
インプラント体の長さや、埋入の位置なども異なりますし、骨の状態が悪い患者さんには「
骨造成」をご提案することもあります。また、
サージカルガイドといって、CT画像をもとに作成したシミュレーション模型をもとに
インプラントを正確にいれるので、より安全に手術を行えます。
「骨造成」とはどのような治療なのですか?
歯を失ってから長期間ブリッジや
入れ歯を使っていたり、歯周病が進行してしまっている場合、歯が抜けた部分の顎骨が痩せて
インプラント体をしっかりと支えるだけの骨量がないケースも見受けられます。その場合、
足りない部分に患者さん自身の人工骨を移植するなど、骨を増やすための「骨造成」を行います。
状態によって移植する骨の量も異なり、高い技術が必要となるため、どの医院でも対応できるという治療ではありません。しかし、当院では経験豊富な
インプラント専門医がこうした治療が困難な症例にも対応し、
インプラント治療をあきらめていたという方にも対応でき、喜ばれています。
治療期間はどのくらいかかると考えればよいでしょうか?
先ほどもお伝えしたとおり、
インプラントは手術をすればすぐに
義歯が入り、自分の歯と同じように噛めるというものではありません。埋入した
インプラント体が骨にしっかりと結合するまで2~3カ月くらい時間はかかります。
また、
骨の状態が悪く骨造成を行った場合は、義歯が入るまでにさらに長い期間を要します。この治療期間の長さをデメリットに感じる方もいるかもしれませんが、10年20年先まで長持ちする
インプラント治療のためには、あわてず、じっくりと取り組むことが必要です。
手術を行う際に心がけていることを教えてください。
やはり
感染予防を徹底することですね。粉塵や空気中のウィルスから守られる
クリーンな環境を保った個別のオペ室での手術など、
インプラント手術後の
歯周病・感染症へのリスクを徹底して排除することを心掛けています。
もちろん、
使用する器具の滅菌、オペ室だけでなく診察室や待合室も常に清潔な状態に保っています。同時に手術の前には必要であれば患者さんの
唾液検査やスワブ検査し、歯周病などの感染リスクが高いと判断したときには、手術予定日を変更してまずは口腔内の環境を整えるケアを行うこともあります。
「痛みが不安」という方にはどんな対応をされていますか?
インプラントに興味はあるけれど、痛みや腫れが心配だという方は多くいらっしゃいます。基本的に手術は部分麻酔によって行っていますが、「どうしても痛みが苦手で不安…」という方には、
眠った状態で手術を行うといった対応もしています。そのため、
患者さん自身から採血した細胞を用いた「再生療法」なども行っており、痛みの軽減や感染予防という面からも患者さんに喜ばれています。
「再生療法」とはどのような治療なのでしょうか?
当院ではPRF(多血小板フィブリン)を使用し、なるべく少ないリスクで骨を再生させる治療を行っています。PRFは患者さんご本人の血液を遠心分離機にかけて抽出し、そのまま使用することもあれば、人工骨と混ぜて使用することあります。この技術はフランスで開発された新しい再生治療で、術後の痛みや腫れが少なく、術後の治癒が早いといったうれしい効果も期待できます。
ここ数年でかなり技術も進化している…ということですね?
まさにそのとおりだと思います。最近は日本国内でも新しい
インプラント治療を提供している歯科医院が増えました。それでも欧米に比べればまだまだ技術・知識とも遅れをとっています。
インプラントの技術はまさに日進月歩。これまで
「インプラント治療は無理」といわれていたような方でも、新しい治療を取り入れている医院でなら治療が可能な場合も十分ありえます。あきらめずに相談してみてはいかがでしょうか。
最適な歯科医院を探す際にチェックすべきポイントなどありますか?
手術からメンテナンスまで、インプラント治療は歯科医院との長いお付き合いが必要となります。今の状態にあった治療方法や予算、期間など、気になることはきちんと質問してみてください。そのときに納得できる説明をしてもらえるかどうか、そして「この先生にならおまかせしたい」と思えるかどうかが何よりも重要だと思います。
長い治療期間には不安や疑問がたくさん出てくると思います。
「疑問や不安を話しやすい環境・先生かどうか」がポイントだと思います。
技術的な面でチェックしておきたい点はありますか?
インプラント治療は手術を伴うものですから、やはりその先生が「きちんとした技術・知識を持ち合わせているかどうかが不安」という方は確かにいると思います。そんなときには、
国内でも最大の「日本口腔インプラント学会の専門医であるかどうか」というのは、ひとつの判断材料になると思いますね。
専門医の認定資格を取るためには、確かな経験と高度な知識・技術が求められますし、認定を更新する際にも再度試験を受けなければならない厳しい基準が設けられていますので、一つの判断基準になるかと思います。
ご自身にふさわしいと思える先生を見つけてください。
そうですね。やはり自分が納得できる、ここなら治療をおまかせできると思える医師を選ぶことが治療のリスクを減らす一番の近道となりますから、
セカンドオピニオンを受けて何人かの歯科医師の意見を聞くことも大切です。
インプラント治療は保険適応外なので、治療費は決して安いものではありません。
ぜひ自分にふさわしい主治医をみつけてください。
最後に読者へのメッセージをお願いします。
インプラントは保険適応外の治療ですから、治療費は決して安いものではありません。しかし、一度の手術・治療、正しいメンテナンスを続ければ、5年10年先も快適に自分の歯に近い感覚で食事を楽しむことも可能です。
当院では日本口腔インプラント学会専門医による高度で精密な治療を行っています。国内外の著名な学会に所属し、新しい治療の発表、知識の習得にも励んでいますので、他院で「
インプラント治療は難しい」「納得する治療法を提案してもらえなかった」というときも、きっとお力になれると思います。
まずはお気軽にご相談ください。
近年、急速にインプラント治療の技術も器具も進化し、これまでは治療が難しいといわれていた方でも、インプラント治療が受けられる可能性が広がっています。つまり、自分に合った治療法、歯科医院を選ぶことで、何年先も「自分の歯と同じように噛める」喜びを味わうことができるかもしれないということ! 今回教えていただいた「医院選びのコツ」を参考に、ぜひ心から信頼できる主治医を見つけることから始めましょう。
医院情報
ハートデンタルクリニック桜新町駅前