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肥満でも種類で危険度が変わる! 「糖尿病」を防ぐ簡単チェック法と予防策

 公開日:2025/12/10

糖尿病」という病気は誰にでも起こり得るものですが、実は発症しやすい特徴を持った人たちがいることをご存じですか? 「自分は大丈夫」と思っていても、もしかすると当てはまる項目があるかもしれません。今回は、肥満でも種類で危険度が変わる「糖尿病」を防ぐ簡単チェック法と予防策について、糖尿病を楽しく知るメディア「あおいろサークル」代表の中尾先生にお話を伺いました。

中尾 裕

監修医師
中尾 裕(医師)

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2014年九州大学卒業。卒業後は九州大学病院や九州医療センターをはじめ、福岡の多数の拠点病院で内分泌・糖尿病内科医として勤務。現在は九州大学大学院所属。これまでの経験を活かし、SNS上で糖尿病を中心とした医学の啓発活動を行っている。2023年5月より糖尿病を楽しく知るメディア「あおいろサークル」を発足。

編集部編集部

遺伝的な要素以外に、生活面で気をつけるべきことはあるでしょうか?

中尾 裕先生中尾先生

やはり肥満・食習慣・運動不足などは、糖尿病を発症するリスク因子になります。現在の日本の基準では、BMI(Body mass index)が25以上の場合に肥満と判定しています。体重(kg)を身長(m)で2回割り算すればBMIが計算できるため、自分が肥満に該当していないか計算してみてください。たとえば身長170cm、体重65kgなら65÷1.7÷1.7≒22.5、という感じです。肥満がある場合、減量に取り組むことは糖尿病を予防する上で非常に有効です。

編集部編集部

同じ肥満でも、特に注意した方が良い人の特徴などはあるのでしょうか?

中尾 裕先生中尾先生

肥満には大きく分けて皮下脂肪が多いタイプと、内臓脂肪が多いタイプがあります。お腹がぽっこり出ているのが内臓脂肪型肥満のイメージです。過去の研究でも、腹囲・ウエスト/ヒップ比が高いと、糖尿病のリスクが高いことが分かっています。皮下脂肪型でも内臓脂肪型でも、肥満自体が糖尿病の発症リスクになりますが、特にお腹がぽっこり出ているような内臓脂肪型肥満の方は、より注意が必要です。

編集部編集部

肥満のある方が体重を落とすと、糖尿病の発症予防にどのくらい効果があるのでしょうか?

中尾 裕先生中尾先生

有名な研究(※)によると「糖尿病の予備軍の方々のうち、体重を5%ほど落として運動習慣をつけた人たちでは、そうでない人たちと比較して、糖尿病の発症を3年間で58%減少させた」ということが報告されています。

※Knowler WC, et al. N Engl J Med. 2002 Feb 7;346(6):393-403.

編集部編集部

食生活におけるリスクなどもあるのでしょうか?

中尾 裕先生中尾先生

食事内容と糖尿病の発症リスクの関係については、ある程度分かっていることと、分かっていないことがあります。肥満がある方においては、食事の総エネルギー(カロリー)を適正化することで体重を落とすのが最も重要なのは間違いなさそうです。各栄養素の最適なバランスについては、意外と結論が出ていないところもあります。

編集部編集部

炭水化物制限なども効果は期待できないのでしょうか?

中尾 裕先生中尾先生

食事から取るカロリーの中で、炭水化物の割合が多すぎても少なすぎても糖尿病になりやすいことが分かっています。日本人の場合は、総カロリーのうち炭水化物をだいたい45〜65%程度摂取していると糖尿病の発症リスクが最も低いと言われています。

編集部編集部

食事について、ほかに気をつけるべきことはありますか?

中尾 裕先生中尾先生

気をつけるべき点で言えば、「早食い」は糖尿病の発症リスクだとする報告(※1)があります。ほかにも、ある程度の量までの果物は糖尿病の発症リスクを抑えること、清涼飲料水やジュースなどの甘味飲料は糖尿病の発症リスクを高めることなどが報告(※2)されています。脂質の総摂取量と糖尿病の発症リスクは関係がないとされていますが、脂質の中でも動物性の脂肪に多く含まれる飽和脂肪酸は発症リスクを上げ、植物性の脂肪に多く含まれる不飽和脂肪酸は発症リスクをあまり上げないのではないか、と言われています。

※1.Fujii H, et al. J Clin Med. 2021 May 1;10(9):1949.

※2.Muraki I, et al. BMJ. 2013 Aug 28;347:f5001.

編集部編集部

運動についてはいかがでしょうか?

中尾 裕先生中尾先生

日常的な活動量に関する研究として、1日当たり10時間以上座っている人たちでは、6時間未満の人たちと比べて、糖尿病を発症している割合が1.84倍だった、という報告(※1)があります。また、運動習慣としては、定期的に中等度の運動をしている人たちは、運動習慣のない人たちと比べて、糖尿病発症のリスクが31%低かったという報告(※2)があります。「中等度の運動」とは、ウォーキングや自転車、軽いスポーツなど、軽く息が上がる程度の運動のことを指します。

※1.Honda T, et al. J Diabetes Investig. 2019 May;10(3):809-816.

※2.Jeon CY, et al. Diabetes Care. 2007 Mar;30(3):744-52.

※この記事はメディカルドックにて<「糖尿病の発症リスクを高める要因」をご存知ですか? 当てはまる人は何に注意したらいい?>と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。

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