「症状のない逆流性食道炎」とは!? 無症状で診断されてしまったら気を付けたいこと
「症状はないのに逆流性食道炎と診断されてしまった…」ということもあるようです。検査で逆流性食道炎と診断されたら、どんなことに気を付ければ良いでしょうか? また、治療は必要なのでしょうか? 無症状の逆流性食道炎について、日本橋人形町消化器・内視鏡クリニックの石岡先生に伺いました。
監修医師:
石岡 充彬(日本橋人形町消化器・内視鏡クリニック)
編集部
症状はありませんが、内視鏡検査をおこなったら「逆流性食道炎」と診断されました。どうしたらよいですか?
石岡先生
内視鏡検診が普及し、無症状の「逆流性食道炎」を指摘されるケースが増えています。実は「逆流性食道炎」は食道に炎症を起こしている「状態」をあらわすもので、症状のある「胃食道逆流症」とは厳密には異なるものです。しかし、「胃食道逆流症」という言葉は一般の方にはあまり馴染みがないため、症状の有無に関わらず「逆流性食道炎」の用語を使用されているケースが多く、混乱の元となっています。症状がない場合は必ずしも薬物治療は必要ではありませんから、まずは生活習慣の改善を心掛けてください。
編集部
「バレット食道」と診断されたのですが、治すにはどうしたらよいですか?
石岡先生
残念ながら、「バレット食道」は不可逆的な変化で、元通りになることはありません。これ以上悪化しないように、日々の生活習慣の見直しをおすすめします。ただし、日本の内視鏡診断精度は非常に高いため、海外では「バレット食道」とは診断されないような、ごくわずかな粘膜変化を捉えて診断されている場合も多いため、1年に1回の内視鏡検査で適切に経過観察をおこなっていれば、過剰に心配する必要はありません。
編集部
症状はありませんが、「バレット食道」や「食道腺がん」のリスクになると聞くと、予防的に薬を飲みたいと思いますがどうですか?
石岡先生
症状がない場合の予防的な内服はおすすめしません。制酸剤は比較的安全性の高い薬ではありますが、長期間内服を続けた場合にさまざまな弊害が出る可能性が近年指摘されています。例えば将来的な認知症の発症リスクを増加させたり、消化吸収能力に変化を及ぼしたり、腸内細菌叢に変化を与えたりなどが挙げられます。これらの弊害はあくまで長期間服用を続けた場合のものですから、症状がつらい時の短期的な使用を躊躇する必要は全くありませんが、薬の使用は必要最低限にとどめて、生活習慣の改善によってよい状態を保てるようにしたいですね。
※この記事はメディカルドックにて【近年増えている「逆流性食道炎」 原因と治療法を消化器内科専門医が解説】と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。