急におしっこがしたくなる「過活動膀胱」は”注射”で治す! ボツリヌス注射について医師が解説
急に尿意を催して何回もトイレに行ったり、尿を漏らしてしまったりする「過活動膀胱」。投薬が基本的な治療になるこの病気ですが、“注射”でも治療できることをご存知でしょうか。「ぐみょうじ泌尿器科」の速水先生に伺いました。
監修医師:
速水 悠太郎(ぐみょうじ泌尿器科)
編集部
年を取ると、トイレの頻度が高まるように感じます。
速水先生
そうかもしれませんね。例えば、観光地を旅行する際、「まず、トイレの場所から確認」という人もいらっしゃるのではないでしょうか。このような尿意切迫の多くは、膀胱が硬くなって量をためておけないことで生じます。病名としては、「過活動膀胱」と呼んでいます。ほかには、タンクではなくホースに問題がある排尿障害により、尿を排出しきれていないケースなども考えられます。
編集部
タンクなのかホースなのかは、どうやって鑑別しているのですか?
速水先生
まずはエコー検査で、膀胱に尿がたまっていないか、あるいは前立腺が肥大していないかなどを調べます。例えば、トイレを済ませた後でも膀胱に尿がたまっていたら、ホースの問題を疑います。逆に膀胱が空なら、ためておけないタンクの問題ということになります。
編集部
今回はタンクの問題に限定します。具体的な治療方法は?
速水先生
膀胱を柔らかくする薬で対処します。市販薬の一部にもありますが、やはり医療機関による処方薬に分がある印象です。しかし、飲み薬だけでは一定の効果を得られない患者さんもいらっしゃいます。そこで近年、「ボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法」に保険が認められるようになりました。
編集部
ボツリヌスというと、美容でシワ取りに使うイメージがあります。
速水先生
仕組みとしてはシワ取りと同じで、結果として、膀胱の筋肉の緊張を緩める働きが期待できます。つまり、タンクが柔らかくなって「尿をよりためられる」ということです。ここで注意したいのは、ボツリヌス菌を膀胱内に注射するのではなく、「ボツリヌス菌がつくりだした成分の一種」を注射するということです。保険が認められたということは、国により一定の安全性も担保されたということなのでご安心ください。
※この記事はMedical DOCにて【尿が近い人に朗報! 過活動膀胱の治療で保険適用が認められた「ボツリヌス」注射】と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。