「加齢黄斑変性」に伴う”社会的失明”とは? 医師が進行速度も解説
加齢黄斑変性は失明することはありませんが、視力低下を伴うため、三枝眼科医院の三枝先生は「社会的失明」が起きると言います。果たして、どういうことなのでしょうか? 解説してもらいました。
※この記事はMedical DOCにて【「加齢黄斑変性」は放置すると失明も!? 要注意の見え方を眼科医が解説】と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。
監修医師:
三枝 佳五(三枝眼科医院)
編集部
加齢黄斑変性を治療しないとどうなるのでしょうか? 失明の可能性はありますか?
三枝先生
網膜の中の「黄斑」という部分に限定した症状ですので、進行したとしても網膜全体の視力を奪う病気ではありません。そのため「社会的失明」と言われることもあります。例えば、「誰かいるのはわかるけれど顔がわからない」とか、「目の隅に映った塩を取ろうとしてそっちに向いたら塩が消えた」とか、そういう事態になり得るということです。こうした社会的失明は、滲出型の場合、比較的急速に進んでいきます。一方の萎縮型の場合、進行は緩やかですが、止めることができません。
編集部
急な滲出型の場合、失明までどれくらいの猶予があるのですか?
三枝先生
猶予を考えていると手遅れになります。とにかく、早期発見・早期治療開始が欠かせません。ちなみに一般の運転免許の要件は「両眼で0.7以上、片眼でそれぞれ0.3以上」です。タクシーに必要な普通二種免許なら「両眼で0.8以上、片眼でそれぞれ0.5以上」になります。視力低下によって現在の職を失いかねないという意味でも、社会的失明と言えるでしょう。
編集部
やはり、早期発見が問われそうですね。
三枝先生
ぜひ、そうしてください。インターネット上には、加齢黄斑変性専用の「碁盤の目」のようなチェックシートがあります。使用する場合は、視点を中央の黒い点に固定して、片目ずつチェックしてください。見えづらい部分があると、視点をその方向へそらしがちなのですが、これでは意味がありません。見えの違和感があったとしたら「よく見えるように工夫する」のではなく、そのことをもって眼科へご相談ください。
編集部
加齢黄斑変性が片目だけに起こるということは考えられますか?
三枝先生
起こり得ますし、進行度合いが左右で異なることもあります。新生血管の状態や萎縮度によるからです。こうした場合、逆の目でモノが正常に見えていると自覚は難しいでしょう。セルフチェックする際には「片目ずつ」が原則です。