「スキルス胃がんになりやすい人」の特徴はご存知ですか?医師が徹底解説!
スキルス胃がんになりやすい人の特徴とは?Medical DOC監修医がスキルス胃がんになりやすい人の特徴・症状や何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。
※この記事はMedical DOCにて『「スキルス胃がんになりやすい人」の特徴はご存知ですか?代表的な症状も解説!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。
監修医師:
丸山 潤(医師)
【保有資格】
医師/医学博士/日本救急医学会救急科専門医/日本集中治療医学会集中治療専門医/DMAT隊員/日本航空医療学会認定指導者(ドクターヘリの指導者資格)/JATECインストラクター/ICLSインストラクター
目次 -INDEX-
「スキルス胃がん」とは?
スキルス胃がんのスキルスは「かたい腫瘍」という意味で、胃壁を厚く固くする病変を起こすがんです。胃がん全体の1割を占め、若い女性に比較的多いのが特徴です。
スキルス胃がんの厄介なところは、がん細胞が固まって成長せず、組織全体に散らばりながら広がる性質(びまん性)です。しかも胃の粘膜の表面ではなく、目に見えない粘膜の内部で増殖します。
スキルス胃がんは「内視鏡で検査しても確認できず」「がんの進行が早い」「転移しやすい」という性質があり、腹膜など他の場所に転移することが多いがんです。そのため治すことが難しく、予後が悪いのが特徴になります。
見つかった時には末期がん、というケースは珍しくありません。多くの胃がんはピロリ菌除菌と定期健診で改善しつつありますが、スキルス胃がんは健診で見つけることが難しいがんです。
スキルス胃がんになりやすい人はいるのでしょうか。どうすれば早期発見できるのでしょうか。これらの疑問にお答えしていきたいと思います。
スキルス胃がんになりやすい人の特徴
スキルス胃がんは不明なところが多く、まだ全容が解明されていません。しかし、発症しやすい人の傾向はあります。どんな人がなりやすいのかを知れば、いち早く発見できる可能性があります。
若い女性に多い
多くのがんは高齢になるほど発症しやすくなります。
しかし、スキルス胃がんは若い女性が発症しやすい特徴があります。20代、30代のこれから人生が充実する世代に発症することが珍しくありません。したがって、スキルス胃がんは子宮頸がんと並び、若い女性が特に注意したいがんです。ワクチンで発症が予防できる子宮頸がんとは異なり、残念ながらスキルス胃がんは予防手段がほぼありません。また、なぜ若い女性でも発症するのか、原因もはっきりと分かっていません。
ピロリ菌感染
国立がん研究センターの研究では、ピロリ菌感染者の胃がん発生率は、感染していない人の5.1倍あることが分かりました。調査時に感染していないもののピロリ菌が原因と見られる胃壁収縮が起こっている人も含めると、胃がん発生率は10倍にまで上昇します。
ピロリ菌感染を長期間放置すると、胃壁が委縮し、胃がんに進行するリスクが上がります。ピロリ菌感染はスキルス胃がんに限らず、胃がん全般の大きなリスクです。
ピロリ菌は5歳ごろまでの幼少期に感染する菌で、胃酸を中和する能力があり長期間胃壁に寄生します。ピロリ菌に感染した胃は「萎縮性胃炎」や、胃の粘膜に鳥肌のようなブツブツした突起が広がる「鳥肌胃炎」、胃のひだが肥大する「ひだ腫大型胃炎」などを起こします。特に鳥肌胃炎は若者に起こりやすい病変で、スキルス胃がんのリスク因子になると考えられています。
ピロリ菌の検査は定期健診で行うことができます。定期健診の検査は実費ですが、胃がんリスクを減らすためにもぜひ一度は受けましょう。
もし陽性の場合は、早急に消化器内科でピロリ菌の除菌を行いましょう。ピロリ菌を除菌できれば胃がんリスクを大きく下げることができます。ただし除菌が成功しても胃がんリスクはゼロにはならないため、除菌後も胃の定期健診を受けるようにしましょう。
遺伝子変異
スキルス胃がんを含む、びまん浸潤型の胃がんは遺伝子が影響していると言われています。第16番染色体にあるCDH1遺伝子という場所に変異があると、高い確率でびまん浸潤型胃がんを発症することが分かっています。
CDH1遺伝子は、E-カドヘリンというタンパク質の設計図です。E-カドヘリンは胃壁の細胞をつなぎ、細胞のがん化を防ぐはたらきがあります。しかし、CDH1遺伝子に変異があると正常なE-カドヘリンが作られず、がん化しやすくなります。他にも、スキルス胃がんの患者にはαカテニンという遺伝子の欠損が多いことが知られています。
あなたのご家族や血のつながった親族がスキルス胃がんを発症した場合は、あなたにも発症リスクがある可能性があります。
「スキルス胃がんになりやすい人」についてよくある質問
ここまでスキルス胃がんになりやすい人の特徴を紹介しました。ここでは「スキルス胃がんになりやすい人」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
スキルス胃がんを発見する検査について教えて下さい。
丸山 潤(医師)
スキルス胃がんの検索は胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)で行います。スキルス胃がんは胃の粘膜ではなく、粘膜の奥で増殖します。そのため内視鏡でも見えにくく、見逃しやすいのは事実です。しかし粘膜の奥であっても、ごくわずかに粘膜の表面に変異を起こすことがあります。熟練した内視鏡専門医なら、そのわずかな変化を見逃さずに早期発見できる可能性があるため、定期的に検査を受けることをお勧めします。
胃がんが進行すると胃のバリウム検査でもスキルス胃がんが見つかります。スキルス胃がんは胃壁を固く、厚くするため、胃が膨らみにくくなるためです。
胃カメラやバリウム検査でスキルス胃がんの疑いがあれば、ボーリング生検という特殊な方法で細胞を採取して確定診断を行います。
スキルス胃がんを早期発見するポイントはありますか?
丸山 潤(医師)
確実に早期発見することは、難しいのが現状です。しかし、熟練した内視鏡専門医のもとで定期的に胃がん検診を受けることが、早期発見につながります。自費の場合、内視鏡検査の費用は1万円以上かかりますが、健康な身体を保つために一度検査されることをお勧めします。
編集部まとめ
スキルス胃がんは胃壁を厚く固くするがんで、特に若い女性に多いです。このがんは胃の内部で増殖し、内視鏡での発見が難しいため診断が遅れがちな上、進行も早いため予後不良です。発症の原因は不明ですが、発症リスクを高める要素としてピロリ菌感染や特定の遺伝子変異があります。早期発見のためには、定期的な胃がん検診やピロリ菌の検査・除菌が重要です。また、生活習慣として、喫煙、過度な塩分摂取、飲酒を控えることもリスクを減らす方策とされています。この記事が検診や生活習慣の見直しのきっかけになれば幸いです。
「スキルス胃がんになりやすい人」と関連する病気
「スキルス胃がんになりやすい人」と関連する病気は3個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
消化器科の病気
スキルス胃がんになりやすい人は胃にピロリ菌がいることが多く、慢性胃炎や機能性ディスペプシア、胃潰瘍など胃の病気を発症することがあります。一時的な胃痛であれば様子見で改善することがありますが、様子を見ても改善しない場合には、病気が隠れている可能性があります。
「スキルス胃がんになりやすい人」と関連する症状
「スキルス胃がんになりやすい人」と関連している、似ている症状は4個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
スキルス胃がんの自覚症状はみぞおちの痛み、下血、黒い便、腹水が溜まるなど、多岐にわたります。慢性胃炎や機能性ディスペプシア、胃潰瘍によく似ていることがあります。前述のような症状を自覚した場合は早めに医療機関を受診するようにしましょう。