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運動が膵臓を守る! 「糖尿病治療」における重要な役割と合併症予防効果とは?

 公開日:2025/01/06
膵臓を守る

糖尿病治療において運動療法は、血糖値の低下やインスリン抵抗性の改善、さらに膵臓の保護や合併症予防に欠かせない重要な役割を果たします。運動は血液中の糖を筋肉に取り込みエネルギーに変えるため、インスリンと似た働きをし、食後高血糖の改善にも効果的です。この記事では、運動療法のメカニズムや効果を実感するための適切な頻度・方法について、理学療法士の河江さんが詳しく解説します。

河江 敏広

監修理学療法士
河江 敏広(理学療法士)

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東都大学幕張ヒューマンケア学部理学療法学科准教授として理学療法士の育成に従事し、同時に糖尿病の運動療法に対する研究も数多く行っている。日本糖尿病理学療法学会副理事。Asian Association for the Study of Diabetes、American Diabetes Association、日本糖尿病協会、日本リハビリテーション医学会に所属。

編集部編集部

糖尿病患者にとって運動療法はなぜ重要なのでしょうか?

河江 敏広さん河江さん

糖尿病の病態の1つに、食後にインスリンが十分に分泌できず、血糖値が上がってしまうことがあります。運動は血液中の糖を筋肉に取りこみエネルギーに変えることが出来るため、血糖値を下げる効果があります。すなわち、運動はインスリンと同様の効果が期待できるということです。そのため、運動を行うことで血糖値を低下させることが出来れば、膵臓は過剰なインスリン分泌を行わなくてもよいため、膵臓を保護する働きがあると考えられています。また、食後に運動を行うことで糖尿病の3大合併症の原因である食後高血糖を是正することが出来るため、これらの合併症予防のためにも運動療法は重要な治療手段と位置付けられています。

編集部編集部

運動療法はどのようにして血糖値やインスリン抵抗性を改善するのですか?

河江 敏広さん河江さん

運動療法で血糖値を改善する効果において、血液中の糖を筋肉内の細胞に取り込む役割を行う糖輸送担体(GLUT4)の働きが重要です。運動を継続して行うことでGLUT4が増加するため、血糖値の改善に効果的と考えられています。運動でGLUT4が増えることで、より多くの血糖を筋肉に取り込むことが出来るので、血糖値を低下させることができるという考え方です。もう1つの運動の効果はインスリン抵抗性を改善するという働きです。インスリン抵抗性を生じる要因として脂肪の存在が挙げられますが、運動によって脂肪組織を減らすことでインスリン抵抗性を改善すると考えられています。

編集部編集部

運動療法はどれくらいの期間や頻度で行うと効果が現れるのですか?

河江 敏広さん河江さん

成人糖尿病の場合は、週に150分以上の中等度から強度の有酸素運動を少なくとも週3日以上行い、より体力のある人は、より短時間(75分/週以上)の高強度のトレーニングなどでも血糖コントロールに良い影響を与えることが知られています。また、運動は食後30分から1時間以上あけて実施することで、すぐに食後血糖を低下させる効果があります。さらに、様々な糖尿病由来の合併症を予防するためには、これらの運動を長期間継続する必要があります。しかしながら、忙しくて運動の時間が確保できず運動習慣の獲得に失敗してしまうこともありますので、自分に合った方法を見つけていくことが重要です。

※この記事はMedical DOCにて【糖尿病患者は運動すると何が改善できる? 運動時の注意点を理学療法士に聞く】と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。

この記事の監修理学療法士