「花粉症」の薬を飲むと眠くなる理由はご存じですか?【薬剤師が解説】
「花粉症の薬を飲むと眠くなるので困っています」という話をよく耳にします。日頃の服薬指導でも「眠気の出ない薬はありませんか?」と相談されることも少なくありません。どうして花粉症の薬は、眠気を引き起こすのでしょうか? 「薬剤師」の小田桐さんに解説していただきました。
監修薬剤師:
小田桐 功武(薬剤師)
編集部
そもそも花粉症の原因って何ですか?
小田桐さん
花粉症とは、花粉の飛散時期だけに鼻炎症状が認められる「季節性アレルギー性鼻炎」のことをいいます。花粉に対するアレルギー反応を原因とするくしゃみや透明な鼻水などの症状が特徴の疾患です。
編集部
花粉症のもう少し詳しいメカニズムを教えて下さい。
小田桐さん
目や鼻から入ってきた花粉に対し、体内の免疫システムが「花粉=異物」と認識し、異物に対する抗体をつくります。この抗体は、花粉に接触するたびにつくられるため、少しずつ体内に蓄積されていきます。蓄積量が一定量に達すると、次に花粉が入ってきたときにアレルギー反応を起こすヒスタミンなどが分泌され、花粉症の症状を引き起こすのです。去年までは大丈夫だったのに急に花粉症になったという方もいるかと思います。それは、これまで蓄積されていた抗体が一定量に達してしまったからと考えられます。
編集部
花粉症の薬の効果はどのように発揮されますか?
小田桐さん
分泌されたヒスタミンは知覚神経にあるH1受容体にくっつくことで、鼻粘膜が刺激され症状が現れます。花粉症の薬は抗ヒスタミン作用を有しているため、ヒスタミンの代わりにH1受容体にくっついて、くしゃみや鼻水を止める作用を発揮します。
編集部
花粉症の薬を飲むと眠くなるのはなぜでしょうか?
小田桐さん
このH1受容体は脳内にも存在しており、睡眠・覚醒のリズムや注意力・集中力などを制御していると言われています。脳内のH1受容体に薬の成分がくっつくことで、ヒスタミンの働きが遮断され眠気がおきるとされています。