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HIKAKINが発症した指定難病とは? 「好酸球性副鼻腔炎」になりやすい人の特徴や初期症状を医師が解説

 公開日:2025/01/20

YouTuberのHIKAKIN(ヒカキン)さんが、自身のYouTubeチャンネル「HikakinTV」で19日に配信した動画にて、昨年末に指定難病「好酸球性副鼻腔炎」が発覚し、入院・手術を受けていたことを明らかにしました。動画のコメント欄では「今は経過良好で完治に向かっております」とも報告。そこで、好酸球性副鼻腔炎になる原因やなりやすい人の特徴などについて、医師の井林先生に解説してもらいました。

井林雄太

監修医師
井林雄太(田川市立病院)

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大分大学医学部卒業後、救急含む総合病院を中心に初期研修を終了。内分泌代謝/糖尿病の臨床に加え栄養学/アンチエイジング学が専門。大手医学出版社の医師向け専門書執筆の傍ら、医師ライターとして多数の記事作成・監修を行っている。ホルモンや血糖関連だけでなく予防医学の一環として、ワクチンの最新情報、東洋医学(漢方)、健康食品、美容領域に関しても企業と連携し情報発信を行い、正しい医療知識の普及・啓蒙に努めている。また、後進の育成事業として、専門医の知見が、医療を変えるヒントになると信じており、総合内科専門医(内科専門医含む)としては1200名、日本最大の専門医コミュニティを運営。各サブスぺ専門医、マイナー科専門医育成のコミュニティも仲間と運営しており、総勢2000名以上在籍。診療科目は総合内科、内分泌代謝内科、糖尿病内科、皮膚科、耳鼻咽喉科、精神科、整形外科、形成外科。日本内科学会認定医、日本内分泌学会専門医、日本糖尿病学会専門医。

好酸球性副鼻腔炎とは?

好酸球性副鼻腔炎は、難治性で再発を繰り返す慢性的な副鼻腔炎の一種です。
両側の鼻腔(びくう、鼻の穴の中)に鼻茸(ポリープ)が多発し、その鼻茸の組織内に好酸球という白血球の一種が大量に見つかるという特徴があります。
一般的な慢性副鼻腔炎と異なり、好酸球性副鼻腔炎は薬の内服や吸入などの通常治療や手術を行っても再発します。好酸球性副鼻腔炎は成人発症の疾患で、15歳以下にはみられず、最も多い年代は50〜60歳代です。性別では男性に多いとされます。

好酸球性副鼻腔炎にはIL-4IL-13という免疫に関わるタンパク質が深く関係しており、Type 2炎症疾患とも呼ばれます。
そのため現在では、好酸球性副鼻腔炎は鼻だけではなく全身の疾患であり、鼻茸は副鼻腔に現れた症状とする考えが有力で、2015年に国の指定難病に指定されました。

鼻茸があり手術を要する慢性副鼻腔炎患者は日本に20万人ほどと推測されており、
中等症から重症の好酸球性副鼻腔炎の患者さんは、その10分の1にあたる約2万人ほどと推定されています。日本だけでなく、東アジア全体で患者数が増えています。

好酸球性副鼻腔炎の原因

好酸球性副鼻腔炎の正確な原因は不明ですが、薬剤アレルギーや喘息を持つ方に多く見られ、これらの疾患が悪化することで好酸球性副鼻腔炎の症状が出現することがあります。

アレルギーの影響

好酸球性副鼻腔炎は、アスピリンなどの解熱剤などにアレルギー反応を起こすアスピリン不耐症の方や、薬物アレルギーがある方に多くみられることがわかっています。アレルギーは、身体の特定の物質(アレルゲン)への過剰な反応です。アレルゲンである花粉、ダニ、動物の毛、カビなどが体内に入ると免疫系が反応し、好酸球が活性化されます。
この過剰反応が鼻の中に炎症を引き起こし、好酸球性副鼻腔炎の発症に関わっていると推定されています。

喘息との合併

好酸球性副鼻腔炎は気管支喘息との合併が多いことが知られています。
しかし、気管支喘息が先に発症して好酸球性副鼻腔炎になるのか、好酸球性副鼻腔炎の症状として気管支喘息が起きているのか、まだはっきりとしていません。現時点の研究では、気管支喘息が先、好酸球性副鼻腔炎が先、気管支喘息と好酸球性副鼻腔炎が同時、がそれぞれ30%から35%程度と同程度です。

ウイルス感染

風邪やインフルエンザのようなウイルスに感染すると、好酸球性副鼻腔炎が急激に悪化して鼻茸が大きくなり大量の鼻水が出現します。そのことから、ウイルス感染が好酸球性副鼻腔炎の発症に関連している可能性があります。

遺伝的要因

上述の通り、気管支喘息やアレルギーが発症に関与しているなら、好酸球性副鼻腔炎を発症しやすい遺伝的特性が見つかるかもしれません。ウイルス感染によって好酸球が大量に浸潤することも遺伝的体質であれば、好酸球性副鼻腔炎の発症に関連している可能性があります。

好酸球性副鼻腔炎の前兆や初期症状について

好酸球性副鼻腔炎の初期症状には、以下のようなものがあります。

嗅覚障害

匂いを感じにくくなることが多い傾向です。
嗅覚が低下することで、食事の楽しみが減少することもあります。

鼻づまり

鼻が詰まった感覚が持続します。
これにより、呼吸がしづらくなることがあります。

粘稠な鼻水

鼻水が粘り気を持ち、時には膿性になることもあります。
鼻水の色が変わることもあります。

後鼻漏

鼻水が喉に流れ込み、喉の違和感や咳を引き起こすことがあります。

特に喘息を合併している場合に見られます。
慢性的な咳が続くことが多いです。

顔面痛や圧迫感

副鼻腔が炎症を起こすことで、顔面に痛みや圧迫感を感じることがあります。

中耳炎

好酸球が中耳に浸潤することで進行性の中耳炎を起こすことがあります。

これらの症状は単純な副鼻腔炎などほかの病気とも共通するため、これらだけで好酸球性副鼻腔炎とは診断できません。
症状が持続する場合や繰り返し起こる場合には、医療機関を受診することが重要です。副鼻腔症状や喘息に対しては、内科、耳鼻科、総合診療科を受診しましょう。

好酸球性副鼻腔炎の検査・診断

好酸球性副鼻腔炎の診断には、以下の検査が行われます。

問診

医師が症状や病歴を確認します。
過去のアレルギー歴や家族歴も重要な情報です。

血液検査

好酸球の数値を確認し、アレルギーの有無を調べます。
好酸球の数が増加している場合、好酸球性副鼻腔炎の可能性が高まります。

内視鏡検査

鼻腔内を観察し、鼻茸の有無や鼻汁の性状を確認します。
特徴的な鼻茸が両側にあれば、好酸球性副鼻腔炎を疑うことができます。

CTスキャン

CTスキャンによって副鼻腔の断層写真を撮影すると、副鼻腔の状態を詳しく知ることができます。鼻茸の大きさや副鼻腔の炎症の程度も評価できます。好酸球性副鼻腔炎では、両目の間にある篩骨洞という副鼻腔に副鼻腔炎を起こすことが特徴的とされています。

生検

鼻茸の一部を取り、病理検査を行うこともあります。
これにより、悪性腫瘍の可能性を排除することができます。

診断スコア

上記の検査データを用いて好酸球性副鼻腔炎の診断と重症度判定ができる診断基準が日本で開発されました。それが大規模疫学調査を基に策定されたJESRECスコアです。
指定難病もこれを用いて申請できます。

好酸球性副鼻腔炎の治療

好酸球性副鼻腔炎の治療は、以下の方法があります。

急性鼻炎の治療

急性鼻炎や急性副鼻腔炎を起こしている場合は、抗菌薬を含む内服薬や点鼻薬により治療します。なお、慢性の副鼻腔炎に対して行われる少量マクロライド持続投与を並行して行うこともありますが、これは好酸球性副鼻腔炎に対する特異的治療ではありません。

内視鏡手術

内視鏡を用いて鼻茸を除去する手術が行われます。
手術により、鼻腔の通り道を広げ、炎症を軽減することが目的です。
手術は一般的に日帰りで行われることが多く、入院の必要はない場合がほとんどです。術後は鼻腔を生理食塩水で洗浄する処置やステロイド薬の投与などを行いながら経過を観察しますが、手術後も再発が多いため通院は継続する必要があります。

ステロイド治療

内服薬や点鼻薬を使用して炎症を抑えます。
特に、点鼻式の局所ステロイド治療は全身への副作用が少ないため、推奨されます。ステロイドは好酸球の活動を抑えることで炎症を軽減し、症状を改善します。

生物学的製剤

最近では重症例に対して、好酸球の活動を直接抑える抗IL-4/IL-13受容体抗体をはじめとする生物学的製剤が使えるようになりました。定期的に投与することで、従来の治療法に抵抗性を示す患者に対しても高い効果が期待できます。ただし、注射をやめると再発します。

アレルギー治療

アレルギーが原因である場合、アレルギーの治療も重要です。アレルゲンを特定し回避することが基本です。また、アレルギーに対する免疫療法(アレルゲン免疫療法)も選択肢の一つです。これにより、アレルギー反応を軽減することが期待されます。

好酸球性副鼻腔炎になりやすい人・予防の方法

好酸球性副鼻腔炎は、以下のような人に多く見られます。

アレルギー体質や喘息がある人

アレルギー性鼻炎や喘息は好酸球性副鼻腔炎と関連があるとされており、該当する方は好酸球性副鼻腔炎の発症につながる可能性があります。

家族に喘息の人がいる人

遺伝的要因が関与している可能性があります。
家族に喘息やアレルギー性疾患を持つ方が多い場合、発症リスクが高まります。

環境要因に敏感な人

喫煙や大気汚染などの環境要因が、好酸球性副鼻腔炎の発症に関わっている可能性があります。
特に、アレルギーを持つ方は環境要因に敏感であるため、注意が必要です。

予防の方法

好酸球性副鼻腔炎の悪化を予防するためには、以下の方法が有効です。

アレルギーの管理

アレルギーの原因を特定し、適切な対策を講じることが重要です。
アレルゲンを避けるための生活環境の改善や、アレルギー治療を行うことで、発症リスクを低減できます。
特に、花粉症の季節には外出を控えることや、マスクを着用することが推奨されます。

感染症予防

風邪やインフルエンザなどの感染症を予防するため、手洗いやマスク着用を心がけましょう。
特に、ウイルス感染が引き金となることが多いため、感染症にかからないように注意が必要です。

定期的な医療チェック

症状が出た場合は早期に医療機関を受診し、適切な治療を受けることが大切です。
特に、慢性的な鼻炎や副鼻腔炎を持つ方は、定期的に耳鼻科を受診し、状態を確認することが重要です。

健康的な生活習慣

バランスの取れた食事や適度な運動、十分な睡眠を心がけることで、免疫力を高めることができます。免疫力が向上することで、アレルギー反応や感染症に対する抵抗力が強化され、好酸球性副鼻腔炎のリスクを低減することが期待されます。実証はされていませんが、納豆や唐辛子に含まれる成分は有益かもしれないといわれています。

※この記事はMedical DOCにて【「好酸球性副鼻腔炎」になりやすい人の特徴はご存知ですか? 原因・症状を併せて医師が解説】と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。

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