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ピーコさんが「敗血症」により逝去 どういう疾患なのか? 症状・原因を解説

 公開日:2024/10/21

ファッション評論家で、テレビのバラエティ番組などでも活躍したピーコさんが、敗血症による多臓器不全で9月3日に逝去していたことが10月20日に報じられました。79歳でした。敗血症は、細菌やウイルスの感染によって、心臓や肺といった臓器の機能が障害を受け、臓器不全を起こす病気です。詳しい症状、原因、検査・診断、治療法などを、医師の武井智昭先生に解説してもらいました。

武井 智昭

監修医師
武井 智昭(高座渋谷つばさクリニック)

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【経歴】
平成14年慶應義塾大学医学部を卒業。同年4月より慶應義塾大学病院 にて小児科研修。平成16年に立川共済病院、平成17年平塚共済病院(小児科医長)で勤務のかたわら、平成22年北里大学北里研究所病原微生物分子疫学教室にて研究員を兼任。新生児医療・救急医療・障害者医療などの研鑽を積む。平成24年から横浜市内のクリニックの副院長として日々臨床にあたり、内科領域の診療・訪問診療を行う。平成29年2月より横浜市社会事業協会が開設する「なごみクリニック」の院長に就任。令和2年4月より「高座渋谷つばさクリニック」の院長に就任。

日本小児科学会専門医・指導医、日本小児感染症学会認定 インフェクションコントロールドクター(ICD)、臨床研修指導医(日本小児科学会)、抗菌化学療法認定医
医師+(いしぷらす)所属

敗血症の症状

敗血症の症状

敗血症の症状はどのようなものですか?

敗血症は、細菌感染を引き起こす細菌(肺炎球菌、インフルエンザ菌、ブドウ球菌、大腸菌、緑膿菌、溶連菌など)といった細菌感染が悪化した状態であり、肺炎、尿路感染症、髄膜炎、皮膚や消化管の感染症が悪化した状態です。
敗血症の症状の特徴は、全身に様々な症状が現れるということです。
原因となる感染症によって起こる下痢、嘔吐、頭痛、呼吸困難、咳などの特有な症状に加え、全身症状として異常な体温の上昇や低下、心拍数の上昇、呼吸数の増加、悪寒、震え、手足の冷えなどが起こります。
更に精神症状として自分のいる場所や時間が分からない見当識障害や、錯乱なども現れる場合があります。
また、敗血症は症状が悪化しやすく、血圧低下、尿量減少、呼吸困難などの重篤な症状が起こります。
敗血症では臓器の血流が低下し機能が損なわれるため、症状が進行すると臓器の組織の壊死、腐敗が発生します。

敗血症の原因

敗血症はどのような病気ですか?

通常感染症では、病原体の感染を受けた喉、鼻、気管、腎盂といった臓器のみに障害が発生します。ところが敗血症は、局所的な症状だけではなく全身に障害が広がり、体温の異常上昇、心拍数の上昇、呼吸数の増加、白血球数の異常増加、異常減少が現れます。
更に障害が進行すると、全身の臓器機能不全を起こし、敗血症ショックと呼ばれる状態に陥ります。生命の危険に陥るほどの低血圧を起こしますので、早期の治療が必要です。
敗血症は軽度な感染症からの進行による場合があり、乳幼児、高齢者、持病のある方などで発熱症状が長引く場合は、特に注意が必要です。

敗血症の原因はどんなものですか?

敗血症はブドウ球菌、大腸菌、連鎖球菌といった細菌やウイルス感染症から起こり、主に肺炎、尿路感染症、皮膚や腸管の感染症の発症後に原因菌が体内で増殖します。
これら感染症の原因菌の毒素によって発生するサイトカインという物質が発生します。
サイトカインは体内の炎症を引き起こすだけでなく、血管を広げて血圧を低下させたり、細い血管の血液を固めたりする作用があります。血流が低下する臓器にダメージを与え、機能低下を招くことが、敗血症の特徴です。
年齢や性別によらず、何らかの感染症により敗血症へと進行する可能性はゼロではありませんが、65歳以上の高齢者、乳幼児、免疫機能が低下する病気の方では特にリスクが高くなりますので、注意が必要です。

敗血症の検査・診断

敗血症の検査・診断

敗血症の検査・診断はどのようなものですか?

敗血症は、血液検査、血液培養検査、血液ガス分析検査、画像検査により診断します。

血液検査

血液検査とはどのようなものですか?

血液検査を行うことで、体内の炎症の程度、腎機能、肝機能を測定します。
敗血症では特に血液中の白血球が増加、減少するのが特徴です。
また血液検査は診断以外にも敗血症の重症度を確認できますので、治療効果を判定するために、繰り返し実施します。

血液培養検査

血液培養検査とはどのようなものですか?

敗血症では、本来は無菌状態の血液中に細菌が入り込んでいます。
採取した血液の血液培養検査を行うことで、血液中の細菌の有無、細菌の種類を特定することができます。
敗血症を起こしている原因菌の特定は、適切な抗菌薬の選択に有効です。

画像検査

画像検査とはどのようなものですか?

敗血症による全身臓器のダメージを調べるため、症状に応じてX線、CT、MRIなどの画像診断を行います。

敗血症の治療方法

敗血症の治療方法

敗血症の治療をする場合、どのような治療方法がありますか?

敗血症の治療は「原因菌に対する根本治療」と「血圧低下とそれに伴う臓器障害を防ぐ治療」を並行して行います。

  1. 1. 原因菌に対する根本治療
    根本治療として、速やかに病原菌を特定して適した抗菌薬の投与を行います。また、感染により臓器に障害がある場合は、外科的に切除を行います。
  2. 2. 血圧低下とそれに伴う臓器障害を防ぐ治療
    血圧低下や臓器障害を防ぐ治療として、血圧と血液中の酸素濃度を維持するため、酸素投与や大量の輸液による初期治療を行います。
    血圧を上昇させる薬(カテコーラミン)を投与する場合もあります。
    必要に応じて人工呼吸器や血液浄化治療などによって全身管理を行います。
    また、敗血症の治療としては血小板輸血や新鮮血漿の投与、ガンマグロブリンなどの抗炎症作用がある製剤の投与も行われる場合があります。
    その他、必要に応じて人工呼吸器や人口透析などによって全身管理を行います。
    このように、敗血症は生命を脅かす組織障害や臓器障害を来す疾患ですので、集中治療室での全身管理と治療が必要です。
             

血症の予防策はどのようなものですか?

敗血症を予防する方法としては、以下3つが重要です。

 

  1. 1. ワクチン接種
    肺炎球菌ワクチンやインフルエンザワクチンなど、感染症予防のためのワクチン接種 。ワクチンについて詳細な情報や接種のタイミングは、医師に相談しましょう。
  2. 2. 衛生を保つ
    普段から手洗いうがいを心掛け、けがをした場合には傷口をしっかり洗うなどの衛生管理をしっかり行う。
  3. 3. 初期に対応する
    敗血症は時間とともに進行しますので、悪化を防ぐためには早期に気付くことが重要です。
    敗血症の症状の特徴は、悪寒やふるえ、身体の疼痛や不快感、冷たく湿った皮膚症状、意識低下、息切れ、頻脈などですので、これらの症状の有無に気を付けましょう。
    また日常で心掛ける敗血症の予防策は、以下になります。

    • 自身と家族の手洗いをしっかり、頻回に行う
    • 人混みや風邪などの感染がある人との接触を避ける
    • 毎日の入浴やシャワーにより全身の清潔を保つ
    • 皮膚の乾燥や肌荒れを予防するローションの使用する
    • 歯磨きや歯茎の手入れは柔らかい歯ブラシを使用する
    • 食器や歯ブラシなどの器具を他人と共用しない
    • 肉や卵を食べる際に、殺菌処理を行い調理する
    • 生野菜やフルーツを丁寧に洗う
    • ペットや家畜の糞尿に触らない
    • 手袋をして動物の排泄物を触れた後でも、速やかに手洗いを行う
    • 庭の植栽の手入れ時に手袋を着用する

敗血症の後遺症はどのようなものですか?

敗血症は多くの場合治療により完全に治癒しますが、集中治療を要するほかの疾患同様、一部の患者さんでは、長期の影響として後遺症が残ります。
後遺症の症状として見られるのは、不眠、寝付きにくい、睡眠不足、悪夢、幻覚、パニック、筋肉の動きにくさ、関節痛、認知機能の低下、自尊心や自己信念の喪失、腎不全、呼吸機能など臓器機能の障害、治療により手足を切断するなどにより四肢を失うなどです。

敗血症からの回復ステップはどのようなものですか?

敗血症からの回復期は、通常入院中にリハビリを開始します。
リハビリ初期段階では、入浴や座る、立つ、歩く、トイレなど、補助を受けながらゆっくりと動いたり、身の回りのことを行ったりすることから始めます。
リハビリの最終目標は、可能な限り健康な状態であったときと同じ状態に戻ることです。
リハビリは、焦らず少しずつ活動を高めてゆき、疲れたら休憩を取ります。

編集部まとめ

敗血症はいつ、誰にでも、ちょっとした感染症の後に発生することがあり、体のいかなる部位にも影響を与える可能性があります。

敗血症から回復した人の多くは元通りの生活に戻っていますが、恒久的に臓器障害を残す場合もあります。

例えば、もともと腎機能が低下している人が、敗血症が原因でさらに腎機能が低下し、障害透析が必要になる場合があります。

敗血症は救急疾患ですので、気になる症状があれば早めに医療機関を受診してください。

※この記事はMedical DOCにて【「敗血症」とは?原因・症状についても詳しく解説!】と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。

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