目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 配信コンテンツ
  3. 小池百合子都知事、神宮のマウンドで「剥離骨折」 ただの骨折との違いを医師解説

小池百合子都知事、神宮のマウンドで「剥離骨折」 ただの骨折との違いを医師解説

 公開日:2024/08/08

東京都の小池百合子知事(72)が、6日に明治神宮球場(東京)で行われたプロ野球の始球式(東京ヤクルトスワローズvs阪神タイガース)にて、膝関節を剥離骨折していたことを、東京都が発表しました。剥離骨折は気付くのが遅れて適切に治療を行わないと、関節が変形することもあるため注意が必要です。ここでは、剝離骨折の治療方法や治療中の過ごし方について解説します。

※この記事はMedical DOCにて【「剥離骨折」の痛みの特徴はご存知ですか?治療中におすすめの栄養素もご紹介!】と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

プロフィールをもっと見る
大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

剥離骨折とは

考える女性

剥離骨折は通常の骨折とどう違うのですか?

剥離骨折とは外部から受けた衝撃によって、靭帯や腱の結合部分から骨が剥がれて生じる骨折です。医療の現場では、裂離骨折と呼ばれることもあります。
骨折にはさまざまな種類が存在しており骨折の原因や程度、骨折部分が皮膚から露出しているかなどによって分けられています。
一般的な骨折は骨が折れている状態を指すのに対して、剥離骨折は骨の一部が欠けて剥がれ落ちている状態です。
また剥離骨折は、症状によっては骨折したことに気付きにくい場合があります。例えば突き指だと思っていたが症状が改善しなかったため、医院を受診して初めて骨折に気付くケースも珍しくありません。

何が原因で剥離骨折してしまうのでしょうか?

剥離骨折は外的な要因によって、骨の衝突や摩擦が生じることが主な原因です。指や肘を強くぶつける、ハンマーで作業中に誤って指を叩いてしまったなどのように、強い衝撃が加わったときによく発生します。
また同じ意味として捉えられる裂離骨折は、骨と付着する筋肉が急激に萎縮するのが主な原因です。
スポーツなどを行った際、骨と付着する筋肉が急激に萎縮してしまうと、骨が耐え切れなくなって骨折を生じます。
なお剝離骨折は、手足の関節などに発生しやすいとされています。加えてカルシウム不足や高齢者のように、骨が脆くなっていると発生しやすい傾向です。

剥離骨折の疑いのある症状を教えてください。

剥離骨折は骨折の状態などによって、症状が異なる場合があります。症状によっては激痛により救急搬送される人もいる一方で、打撲と勘違いして時間が経ってから気付くケースも少なくありません。
特に体を強くぶつけたときなどは、ぶつけた痛みの方を強く感じることがほとんどです。ぶつけた痛みが治まってもなお、鈍い痛みが続く様であれば剥離骨折の可能性があります。
また剥離骨折と同じ意味で捉えられる裂離骨折は、成長期に発生しやすいことが特徴です。
現在成長している骨盤などには骨が弱い箇所があり、激しい運動をしたときに裂離骨折を起こしてしまうケースがよくみられます。そのためスポーツで体を動かしたあと、骨盤に強い痛みや動きにくさを感じたときなどは、裂離骨折が発生している可能性があります。
そのためスポーツで体を動かしたあと、骨盤に強い痛みや動きにくさを感じたときなどは、裂離骨折が発生している可能性があります。

感覚障害や歩行困難になる可能性もあると聞いたのですが…

剥離骨折をした場合、骨折した箇所の痛みや腫れなどが主な症状です。打撲などが原因の場合には、皮下出血がみられることもあります。
ただし症状によっては、日常生活に支障をきたすこともあるため注意が必要です。
骨折した部分の痛みがあまりにも強いときは、該当箇所をスムーズに動かすことができません。さらに症状が重い場合には感覚障害や歩きにくさ、立っていることさえ困難になる場合があります。
そのようなリスクを減らすためにも、疑わしい症状に気付いたときは早めに医院を受診しましょう。

剥離骨折の診断・検査内容

説明する医師

剥離骨折の診断方法を教えてください。

医院を受診すると、はじめに問診が行われます。問診では痛みが生じた経緯や患部の診察を行い、現状をチェックするのが一般的です。
診察から剥離骨折が疑われる場合には、症状に応じて画像検査が行われます。主にはレントゲン検査やCT検査、およびMRI検査などです。
検査を行うことで骨のずれや細かい状況を確認し、今後の治療方針などが決定されます。

剥離骨折の際はどんな検査をしますか?

剥離骨折が疑われた際に行われる画像検査は、現在の状態に応じて段階的に進めていきます。患部を画像で確認することで、症状の細かい把握・分析が可能です。
剥離骨折が疑われる場合、まずはレントゲン検査を行うことが一般的です。
レントゲン検査では、骨折の有無や骨がずれていないかを確認します。ただしレントゲン検査のみでは、詳細な診断がつかない場合があります。
このようなときにはCT検査やMRI検査など、より精密な検査が必要です。

検査時間の目安が知りたいです。

レントゲン検査の場合、X線撮影が行われます。更衣の時間を除くと、およそ数分で検査は終了です。ただし撮影枚数や特殊な撮影が必要なときなどには、時間を要することがあります。
CT検査は用いる機器や手法によって、検査時間が異なります。検査に10~15分ほどかかる場合もありますが、MDCT(multidetector-row CTの略称)検査と呼ばれるものであれば数分で検査は終了です。
MRI検査では検査内容によって異なりますが、検査は40~70分ほどかかります。検査中は動いてはいけないため、トイレなどはあらかじめ済ませておく必要があります。

剥離骨折の治療方法や治療中の過ごし方

治療中の女性

剥離骨折の治療方法はどんなものがありますか?

剥離骨折の治療には、大きく分けて3つのものが挙げられます。
まずは、骨折が疑われるような出来事が起きたときの応急処置です。応急処置を施すことで、症状の緩和やその後の治療に良い影響を与える可能性があります。
剥離骨折が疑われるときは、患部を冷やす・患部を圧迫するなどの処置が有効です。
医院を受診した場合、軽症のときは主に保存的治療が行われます。
保存的治療とは、ギプスなどを用いて、患部が動かないように固定する治療法です。痛みが強いときは、併せて鎮痛剤が処方されます。
なおケースとして多くはありませんが、骨のずれや骨折の程度によっては手術が必要です。加えて腱や靭帯に損傷がみられるときは、併せて治療を行います。

治療方法にも色々あるのですね。完治するまでどのくらいかかるのでしょうか?

適切な治療を行った場合、4~6週間ほどで軽い運動であれば開始できます。
ただし痛みが緩和したからといって急に激しい運動をしてしまうと、完治までの期間が長引いてしまいかねません。痛みが引いたからと焦らず、患部の状態を確認しながら徐々にペースを上げていきましょう。
骨の修復が順調に進めば、2~3ヶ月ほどでスポーツにも復帰が可能です。
なお上記の期間は、治療が順調に進んだ場合の目安です。骨折の程度や治療中の過ごし方によっては、完治までに時間を要する場合があります。

治療中の過ごし方の注意点を教えてください。

剥離骨折の治療中は、健康的な生活を心掛けることが大切です。骨の修復を促すためにも食生活や運動など、日常生活にも気を配りましょう。
まず治療中の食生活は、バランスの良い食事を心掛ける必要があります。骨折したときは骨の形成を促す、タンパク質・カルシウム・ビタミンDなどを意識的に摂取するのが効果的です。
しかし骨に良いからといって過剰に摂取してしまうと、栄養が偏ってしまい他の病気を併発しかねません。加えて骨折中は運動不足になりがちなため、カロリーオーバーにも注意が必要です。早期の復帰を目指すためには、カロリーなどの食生活に気を配りましょう。
剥離骨折の治療中であっても、医師の許可がある場合には入浴も可能です。入浴は血流を促してくれるため、骨の癒着にも良い影響を与えます。
ただしギプスを着用しているときは、ギプスを濡らさないように注意が必要です。ビニール袋でギプスごと患部を覆うなど、ギプスが濡れない工夫を施しましょう。
また痛みが治まって来たら、適度な運動も有効です。体を動かすと全身の血流も良くなるため、骨の癒合を促す効果にも期待できます。
骨折したからといって全く動かないと筋力の低下にもつながるため、痛みが少ないときは適度に運動を行いましょう。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

剥離骨折は、靭帯や筋肉、腱などの骨格組織が急激に収縮することで骨がはがれ落ちる骨折を意味します(医学的には「裂離骨折」と呼称されています)。
一般的には、スポーツや交通事故、転落外傷などに付随して生じ、患部の疼痛症状や腫脹所見、皮下出血を認めます。
骨折部位によって、患部周囲の感覚障害や歩行能力低下を来しますので、発症した際には、患部アイシングなどの応急処置をした後に、専門医療機関を受診することが重要です。
症状緩和に有効的に働く応急処置には、患部の安静を保つ、アイスパックなどにより患部を冷却する、外傷部位を圧迫して心臓よりも高い位置に挙げておく方法などが考えられます。
保存的治療としては、ギプスやシーネなどの専用器具を用いて局所的に患部固定し、腫れて痛み症状が顕著な場合には鎮痛薬内服なども上手く活用することが勧められます。
万が一、骨折片のずれが強いケースや機能障害が顕著な例では手術治療を検討します。
骨のみならず腱や靭帯も合併して損傷している際には、これらの損傷部位も同時に手術で修復することが考えられます。

編集部まとめ

足が治った男性
剥離骨折は症状が分かりづらく気付きにくいため、治療が遅れてしまうことも少なくありません。

しかし適切に治療を行わなければ、変形治癒や関節の変形などの後遺症が残る可能性もあります。

場合によっては関節がスムーズに動かなくなるなど、機能障害を引き起こしかねません。

剥離骨折を完治させるためには、早期治療を行うことが大切です。骨折が疑われるような違和感を覚えたときは自己判断せず、できる限り早めに医院を受診しましょう。

この記事の監修医師

注目記事