チバユウスケさん逝去 闘病した「食道がん」の原因・発症しやすい人の特徴を医師が解説
ロックバンド「The Birthday」のボーカル&ギターのチバユウスケさん(55)が、11月26日に逝去したことを所属バンドの公式サイトが発表しました。ミッシェル・ガン・エレファントのボーカルとしても活躍(2003年解散)。今年4月に、食道がんの治療に専念するために音楽活動を休止し、休養することが所属レコード会社の公式サイトより伝えられていたものの、このたび帰らぬ人となりました。
男性の罹患率が高い食道がんは初期では自覚症状がほとんどないという特徴があり、早期発見・早期治療がとても重要です。食道がんは、飲酒と喫煙の習慣のある男性が特に発症しやすく、死亡率も男性の方が高いです。食道がんについて病態・症状・治療法などについて解説します。「自分は大丈夫」と思わず、食道がんの発症リスクを下げるためにも、ぜひ参考にしてください。
※この記事はMedical DOCにて【「食道がんの原因」はご存知ですか?発症しやすい人の特徴・症状も医師が解説!】と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。
監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
目次 -INDEX-
「食道がん」とは?
食道がんは、食道というのどと胃をつなぐ細長い管状の臓器(食べ物の通り道になります)の粘膜にできる悪性の腫瘍のことです。胸部中部食道という、食道の中央付近にできることが多いですが、食道の上部や下部、また胃との境目の部分にもできます。
男女別では男性に多く、年齢別では70代後半〜80代前半に多いとされています。
食道がんの主な原因
食道がんの発生には、さまざまな要因が関与していますが、喫煙と飲酒が主な原因となります。喫煙と飲酒の両方を習慣的に行う方はさらにリスクが高いとされています。また、野菜や果物の摂取が少ない、栄養状態が悪いなどの食生活の乱れも、食道がんの発生につながると考えられています。
ここでは、食道がんの原因について詳しく見ていきましょう。
喫煙
日本に限らず、世界中で喫煙が食道がんの原因となることが報告されています。2010年の米国の公衆衛生局の報告では、喫煙者は非喫煙者に比べて食道がんになる確率が7〜8倍も高いという結果でした。2004年の国際がん研究機関の報告では、喫煙はヒトに対する発がん性が認められるグループ 1に分類されています。
飲酒
アルコールは肝臓でアセトアルデヒドという発がん性の物質に分解されますが、アジア人の中にはこれをさらに分解する酵素が生まれつき弱い方がいます。そのためアセトアルデヒドが体内に溜まりやすくなり、食道がんのリスクが高くなります。日本人でお酒を飲む人の食道がんのリスクは、飲まない人に比べて3倍という報告があります。
熱いもの、辛いもの
食道の細胞は刺激されることで、遺伝子がダメージを受けやすくなります。熱いもの、辛いものは食道の粘膜に炎症を起こし、食道の細胞が傷みます。このダメージが繰り返されることで、細胞は自己修復できなくなり、がん細胞に変化します。
栄養不足と食習慣
ビタミンやミネラルが不足すると、食道の細胞に必要な栄養を与えられません。栄養が不足すると、食道の細胞は弱くなり、外部からの刺激に対抗できなくなります。また、食道の細胞は、正常な分裂や修復ができなくなります。
果物や野菜を十分に摂取しない食習慣は、食道がんの発生に影響を与える可能性があります。
食道がんになりやすい人の特徴
食道がんになりやすい人の特徴について、わかりやすく説明します。
喫煙と飲酒の両方の習慣
喫煙と飲酒は、食道がんの最大の危険因子です。喫煙は、タバコの煙に含まれる有害物質が食道の細胞に直接触れることで、がんを引き起こします。飲酒は、アルコールが分解されたアセトアルデヒドが食道の細胞にダメージを与えることで、がんを引き起こします。
喫煙と飲酒の両方をする人は、どちらかだけをする人よりも、食道がんになるリスクが高くなります。
男性
食道がんの男女比は男:女 = 約5.4:1と男性に多く発症します。その理由は、ライフスタイルや生活習慣の違いにあります。男性は女性よりもタバコを吸う割合が高く、またアルコール消費も多い傾向にあります。これらの習慣は食道がんのリスクを著しく増加させます。
高齢者
食道がんは40代後半から罹患率(新たな患者の発生率)が上昇し、70代後半から80代前半が最も罹患率が高くなっています。これはタバコやアルコールなどのストレスに長時間晒されることで、食道の細胞にダメージが蓄積し、正常な細胞ががん細胞に変異してしまうためと考えられています。
逆流性食道炎
逆流性食道炎とは胃酸の逆流によって食道が傷づくことで、長期的または繰り返し起こることで食道の粘膜が胃の粘膜に置き換わるバレット食道という状態になります。バレット食道は1年あたり0.1%-0.6%の割合で食道がんを発生するとされており、逆流性食道炎やバレット食道と診断された場合は、年1回程度の定期的な内視鏡検査が推奨されます。
食道がんの代表的な症状
食道がんは、初期のうちは症状がないため気づきにくい病気です。ただしがんが大きくなってくると、食べ物や飲み物が飲み込みにくくなることがあります。しかし、それだけではなく、声のかすれが出たり、胸や背中に痛みがでたり、体重が減少したりします。そして、症状が出てきたときには、食道がんは進行していることが多いです。
飲食物のつかえ感、体重減少
食道がんが進行してサイズが大きくなり食道が狭くなると、食べ物や飲み物が飲み込みづらくなり、食事や水分がとれなくなります。また、食べ物が通らなくなったことが原因で、嘔吐してしまうこともあります。ただし食道がん以外にも、逆流性食道炎、食道アカラシアなどの病気でも同様の症状が出ることがあります。飲食物のつかえ感や体重減少が生じた場合には早めに医療機関を受診しましょう。診察を受ける場合は、消化器内科を受診しましょう。
声のかすれ、咳
声のかすれや咳があるときには、加湿して暖かいものを摂ってみましょう。食道がんが進行して気管や肺まで達すると、刺激によって咳や痰の症状が現れます。声帯の動きをコントロールする神経(反回神経)にがんがおよぶと、声がかすれる症状(嗄声:させい)も現れます。
ただし、声のかすれや咳の症状が出るのは、食道がんだけではありません、喉頭炎、声帯結節や声帯ポリープなどの病気でも起こることがあります。咳がひどい場合には呼吸器内科、のどの症状が強ければ耳鼻咽喉科を受診しましょう。それらが否定される場合には消化器内科で診察を受けてください。
胸の違和感、胸や背中の痛み
胸の違和感、胸や背中の痛みが続くときは、身体を休めてみましょう。食道がんが進行して食道の外膜を超えると、胸や背中に痛みを生じるようになります。
ただし食道がんだけでなく、逆流性食道炎、胃潰瘍や胃炎、心筋梗塞や狭心症などの病気でも起こることがあります。胸の違和感、胸や背中の痛みが続く場合には、心疾患の可能性もあるため早急に内科を受診しましょう。
食道がんの予防法
食道がんを予防するためには、規則正しい生活を送ることが効果的です。予防法について、具体的に紹介します。
禁煙・禁酒または量を減らす
日本人では食道がんのリスクが、喫煙と飲酒によってそれぞれ約3倍になります。また、飲酒と喫煙は食道がんのリスクを高め合うため、両方の習慣がある場合には食道がんに注意してください。日本の男性の食道がんの8割は、タバコやお酒が原因だと言われています。そして、タバコやお酒をやめることで、食道がんになる確率が半分以下になります。
また、禁煙や禁酒は、食道がんだけでなく、他のがんや生活習慣病の予防にも有効です。喫煙や飲酒をすぐにやめるのは難しいかもしれませんが、少しずつでもよいので健康のために挑戦してみましょう。禁煙や節酒、禁酒の方法やサポートについては、医師や専門機関に相談してください。
食事生活を見直す
食生活に注意することは、食道がんの予防に効果的です。まずは、熱いものや辛いものなどのいわゆる刺激物は頻度を減らすか、避けるようにしましょう。
逆に、野菜や果物などの食物繊維やビタミン、ミネラルが豊富な食事がおすすめです。野菜や果物の摂取量が多いと、喫煙や飲酒していても食道がんのリスクが下がったという報告があります。
定期的な健診を受ける
症状がない場合に保険診療は受けられませんが、定期的な健診を受けることで、自分の健康状態を客観的にチェックできます。アルコールや喫煙による影響も含め、自分の身体の評価をしてみましょう。
また、予防ではなく早期発見という意味で、健診での胃カメラ検査やバリウム検査は効果的です。食道がんは、初期のうちは症状がないことが多いので、健診が診断に繋がるかもしれません。
「食道がんの原因」についてよくある質問
ここまで食道がんの原因を紹介しました。ここでは「食道がんの原因」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
熱いものを飲むと食道がんになりやすいのでしょうか?
和田 蔵人 医師
熱いものだけが原因ではありませんが刺激物は食道がんの要因のひとつになります。熱いもので食道の細胞に繰り返し負担がかかると、がん細胞が発生する可能性があります。
ストレスが原因で食道がんを発症しますか?
和田 蔵人 医師
ストレスが直接的に食道がんの原因になるという科学的な根拠はありません。ただし、ストレスが食生活や生活習慣に影響を与えることで、間接的に食道がんのリスクを高める可能性があります。ストレスは身体にいい影響は与えないため、ため込まないようにしましょう。
食道がんを予防する食べ物・飲み物を教えてください。
和田 蔵人 医師
食道がんを予防する食べ物・飲み物は、野菜や果物がおすすめです。野菜や果物には、発がんを防ぐ成分が含まれています。野菜や果物をたくさん食べると、食道がんのリスクが半分以下になるという報告があります。
編集部まとめ
食道がんは、初期段階では症状がほとんどありません。進行すると飲食物のつかえ感、声のかすれなどの症状が現れます。主な原因は喫煙や飲酒です。
予防するためには、生活習慣を見直しましょう。食道がんは、早期発見が治療の鍵となります。異常を感じたら放置せず早めに医師の診察を受けてください。
「食道がんの原因」と関連する病気
「食道がんの原因」と関連する病気は14個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
血液内科の病気
アレルギー科の病気
「飲食物のつかえ感」は、食道や咽頭に異常がある場合や、ストレスが原因で起こることがあります。これらの病気の中には、様子見で改善することが多いものもあります。ただし、症状が長く続いたり、他の症状も伴っていたりする場合には、医療機関を受診しましょう。
「食道がんの原因」と関連する症状
「食道がんの原因」と関連している、似ている症状は5個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 胸やけ
- 胃やみぞおちの痛み
- げっぷ
- のどの乾燥感
- 声のかすれ
「飲食物のつかえ感」のほかにこれらの症状がある場合にも「逆流性食道炎」「食道アカラシア」「咽頭がん」などの疾患が考えられます。複数症状がある場合には、消化器科や内科を受診することをおすすめします。
参考文献