「ALS(筋萎縮性側索硬化症)の3つの原因」はご存知ですか?【医師監修】
公開日:2025/11/29

ALS(筋萎縮性側索硬化症)になりやすい人の特徴とは?メディカルドック監修医がALS(筋萎縮性側索硬化症)の原因・検査方法などを解説します。
※この記事はメディカルドックにて『「ALS(筋萎縮性側索硬化症)になりやすい人」の特徴はご存知ですか?医師が解説!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
神宮 隆臣(医師)
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熊本大学医学部卒業。熊本赤十字病院脳神経内科医員、熊本大学病院脳神経内科特任助教などを歴任後、2023年より済生会熊本病院脳神経内科医長。脳卒中診療を中心とした神経救急疾患をメインに診療。脳神経内科疾患の正しい理解を広げるべく活動中。診療科目は脳神経内科、整形外科、一般内科。日本内科学会認定内科医、日本神経学会専門医、日本脳卒中学会専門医、日本脳血管内治療学会専門医、臨床研修指導医の資格を有す
目次 -INDEX-
「ALS(筋萎縮性側索硬化症)」とは?
ALSは筋萎縮性側索硬化症の略称です。ALSでは、運動ニューロンが障害されることで、全身の筋力が弱っていく進行性の疾患です。筋萎縮性側索硬化症という名前は、脊髄の中の側索を運動神経が通っており、ALSでは側索が萎縮することで名づけられました。症状が進行すると、手足が動かなくなり、寝たきりになります。また、飲み込みや呼吸の筋力も衰えるため注意が必要です。根本的な原因ははっきりとは解明されていません。そのため、根本的な治療法もない疾患です。近年、原因に関して迫るような研究もありますし、治療法の選択肢も増えてきました。しかし、残念ながら確実に進行し、致死的経過をたどる神経難病です。 今回はそんなALSのお話です。ALS(筋萎縮性側索硬化症)の主な原因
ALSの発症の正確な原因は分かっていませんが、現段階で分かっていることをいくつか示します。SOD-1
日本において家族性ALSで最も異常がみられる遺伝子が、SOD-1です。日本では、家族性30%前後でSOD-1に異常を認めると報告されています。このSOD-1は、酸化ストレスを処理する酵素の遺伝子です。酸化ストレスのみならず、細胞内の小胞体ストレスや細胞死にも関連していると考えられています。このような複合的な要因でSOD-1に関連する家族性ALSは発症すると考えられています。 この酸化ストレスは、孤発性ALSの発症にも関連しているといわれます 。TDP-43
孤発性ALSを発症した方を調べると、特殊な染色で染まる異常な構造が神経細胞内に見つかりました。その正体が、TDP-43というタンパク質でした。機能としては、細胞の維持に重要なRNAに関連することが分かりました。RNAの機能が障害され、孤発性ALSを発症すると考えられていますが、詳細は分かっていません。グルタミン酸毒性
孤発性ALSを発症する原因の仮説のひとつがグルタミン酸毒性です。グルタミン酸は神経伝達物質のひとつで、過剰になると興奮毒性を引き起こします。最終的に細胞死を誘発します。また、近年の研究では、グルタミン酸が過剰になっている原因として、先行してAMPA受容体が過剰発現したり、易興奮性となったりすることが関わっているとも言われています。これらについてはまだ 、正確には解明されておらず、仮説のひとつにしかすぎません。今後の研究に期待がもたれます。ALS(筋萎縮性側索硬化症)の検査法
ALSの特徴的な症状を確認することと似ている症状を引き起こす鑑別疾患を除外する必要があります。そのために実施される検査の代表を挙げます。神経診察
ALSは運動ニューロンが障害される疾患です。運動ニューロンは上位運動ニューロンと下位運動ニューロンがあり、それらの症状を確認することが診断には必須となります。神経診察を行い、脳神経、頚髄、胸髄、腰仙髄の領域にどのような症状がみられるかを確認します。症状が典型的な場合は、診察のみでもほぼ診断することも可能です。 典型的な上位運動ニューロン症状としては、病的反射や萎縮筋の腱反射亢進などです。下位運動ニューロン症状としては、筋萎縮や筋力低下が挙げられますが、線維束性収縮があるかを最も重要視します。電気生理学的検査
代表的な検査として、針筋電図検査および神経伝導検査はほぼ検査が行われます。 針筋電検査は、症状が運動神経の障害なのか筋肉の障害なのかを明らかにするために行われます。細い針を筋肉に刺して電気的な活動を記録します。運動神経の障害である場合には、急性のものか慢性のものかまで評価を行います。また、神経診察で特徴的な所見がない場合は、針筋電図の検査所見が代用できる場合があります。 神経伝導検査は、ALSらしさを検査するというよりは、似たような症状を引き起こす脱髄性ニューロパチーを除外するために行います。 基本的には、脳神経内科のある病院での検査になります。MRI
ALSでも、頭部MRIのFLAIR画像で錐体路が高信号、SWIで運動野の低信号などの異常が見られます。しかし画像検査を行う主な理由は、鑑別疾患を除外するために行われます。そのため、頭部および脊髄のMRIはほぼ全例で実施されます。 頭部MRIは脳血管障害や前頭側頭型認知症、多発性硬化症などの脱髄性疾患を除外することができます。 脊髄MRIは、多発性硬化症などの脱髄性疾患、脊髄空洞症、脊髄症などを鑑別します。「ALS(筋萎縮性側索硬化症)になりやすい人」についてよくある質問
ここまでALSになりやすい人などを紹介しました。ここでは「ALSになりやすい人」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
ALSになりやすい人の職業はありますか?
神宮 隆臣 医師
コンタクトスポーツの職業選手など頭部外傷を多く受傷する可能性がある方は多いといわれます。しかし、頭部外傷とALSの関連は一定した意見がなく、慎重な判断が必要です。
ALSの予防法について教えてください。
神宮 隆臣 医師
残念ながら、ALSの原因は分かっておらず、正確な予防法はありません。発症に関わる因子の中で、性別や年齢はどうしようもありません。現時点でわかっている予防方法としては、喫煙者が禁煙することと、非喫煙者は今後喫煙しないようにすることが挙げられます。
編集部まとめ
ALSは進行性の神経難病のひとつです。いまだに根本的な原因は分かっていません。それでも、原因を解明しようと世界中で研究が行われています。今回の内容が少しでも筋萎縮性側索硬化症の理解に役立てば幸いです。「ALS(筋萎縮性側索硬化症)」と関連する病気
「ALS(筋萎縮性側索硬化症)」と関連する病気は20個ほどあります。 各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。脳神経内科の病気
「ALS(筋萎縮性側索硬化症)」と関連する症状
「ALS(筋萎縮性側索硬化症)」と関連している、似ている症状は8個ほどあります。 各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。関連する症状
- 手足に力が入らない
- 筋肉が痩せる
- 筋肉がピクつく
- ろれつが回らない
- 喋りにくい
- 声が続かない
- 鼻声になった
- 飲み込みにくい