「脳梗塞」を発症した際に「食べてはいけない物」はご存知ですか?【医師解説】

脳梗塞を発症した際に食べてはいけない物とは?Medical DOC監修医が脳梗塞の原因となる可能性の高い食べ物などを解説します。
※この記事はMedical DOCにて『「脳梗塞」を発症した際に「食べてはいけない物」はご存知ですか?医師が徹底解説!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
神宮 隆臣(医師)
目次 -INDEX-
「脳梗塞」とは?
脳梗塞とは、脳卒中のなかで血管が詰まることで発症する病気の総称です。
一般的に脳卒中は、突然の「顔のゆがみ」、「しゃべりにくい、ろれつが回らない」、「片側の手足がしびれる、力が入らない」などの症状を引き起こします。血管が詰まって発症する脳梗塞も同様の症状を引き起こします。
脳梗塞は、その原因に応じて、大きく3つに分類されます。心房細動や急性期心筋梗塞が原因で起こる「心原性脳塞栓症」、動脈硬化が原因で生じる「アテローム血栓性脳梗塞」と「ラクナ梗塞」です。それぞれの分類に応じて若干の違いがありますが、今回は脳梗塞と食事に注目してお話していきます。
脳梗塞を発症した際に食べてはいけない物
まずは、脳梗塞を発症した場合です。基本的には、病院に入院することになるかと思いますが、軽症の場合は早めに自宅に帰る場合もあるでしょう。注意すべき食べ物を紹介します。
納豆
納豆は、脳梗塞を発症した時に控えるべき食べ物の代表です。ワルファリンという抗凝固薬(血液サラサラ)はビタミンKを阻害することで効果を発揮します。納豆にはビタミンKが大量に含まれており、ワルファリンの作用を弱めてしまいます。ワルファリンを処方されているかたは、必ず避けるようにしましょう。
入院中の場合は、食事として納豆を提供しない病院が増えています。そうでなくとも、ワルファリンを処方されているかたには納豆が提供されなくなっています。もし、おかずが足りないなどで納豆を追加する場合は、自分が飲んでいる薬の内容を確認し、医師や看護師、管理栄養士などにご確認ください。自宅で療養されるかたは、ワルファリンを処方されている場合は避けるよう注意します。
緑黄色野菜
緑黄色野菜もビタミンKを大量に含む食品です。日常的に摂る食品で注意が必要なものは、ほうれん草、ブロッコリー、キャベツなどです。ワルファリンを処方されている場合も、納豆と違い、これらの食品を避ける必要はありません。しかし、普段と違い大量に摂った場合は効果が弱まってしまいます。食べすぎてしまった場合はかかりつけの先生に相談しましょう。
注意すべき食品としては、野菜ジュースや果物ジュース、青汁です。これらには大量に緑黄色野菜が含まれている場合があるので注意してください。ワルファリンを処方されているかたは、控えるほうが良いでしょう。
グレープフルーツ
健康に良いとイメージもあるグレープフルーツですが、脳梗塞を発症した際は控えたほうがよいでしょう。グレープフルーツは、脳梗塞の際に使用されるシロスタゾールの作用を増強してしまいます。グレープフルーツ自体を大量に食べることはあまりないですが、ジュースになると簡単に量を摂ることになるので注意しましょう。
脳梗塞の原因となる可能性の高い食べ物
脳梗塞が食べ物で直接原因となることはありません。しかしながら、生活習慣病を介して脳梗塞の発症に関わることは十分に考えられます。それでは原因の可能性となる食べ物を話していきましょう。
脂身の多い食肉
はじめは脂質に関係する食品です。3大栄養素といわれる炭水化物、タンパク質、脂質の中で、脳梗塞を考えるうえで、脂質は最も重要です。脂質は身体の中でエネルギー貯蔵に関わるだけでなく、ホルモンの産生に関わったり、細胞膜の形成に関わったり重要な働きを担っています。そのため、毎日摂る必要がありますが、脂質の質と量には気を付ける必要があります。食肉の中でも脂身の多い牛肉や豚肉は飽和脂肪酸を多量に含みます。そのため、LDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)を増やします。その結果として、脂質異常症を引き起こします。LDLコレステロールは血管の壁を障害し、動脈硬化を進行させ、脳梗塞の発症に関わります。脂身の多い食肉を避け、できるだけ赤身のものを選びましょう。どうしても脂身の多い食肉を使う場合は、脂身を切り落としたり、残したりするとよいでしょう。
加工肉食品
前述の脂身の多い食肉に通じますが、加工肉食品にも注意が必要です。ベーコンやソーセージ、ウインナーなどの食品はジューシーさを出すために、脂質が大量に含まれています。飽和脂肪酸も多いため、脳梗塞の原因となります。さらに、塩分も多く含まれます。塩分を大量に摂取すると血圧が上昇します。血圧が上昇すると心臓や血管への負担が増え、動脈硬化が進行します。脂質と塩分が含まれていることで、脳梗塞の原因となりえる食品です。可能な限り避けましょう。近年では、健康志向から、脂質や塩分を極力控えた加工肉食品も出てきています。どうしても摂取する場合は、そのようなものを選択することも一つの手段です。
トランス脂肪酸を多く含む食品
脂質のなかでもう一つ避けるべきものがトランス脂肪酸です。トランス脂肪酸は不飽和脂肪酸に分類されます。自然界にも微量存在しますが、大部分は食品加工の際に生成されます。このトランス脂肪酸も飽和脂肪酸と同様にLDLコレステロールを上昇させてしまいます。そのため、同様の理由で脳梗塞の原因となりえます。トランス脂肪酸を多く含む食品としては、ショートニングを使用した食品(ケーキやクッキーなど)、揚げ物、スナック菓子、インスタント麺などがあげられます。ショートニングやスナック菓子は避けるようにしましょう。インスタント麺は乾麺や生麺に替えることで脂質を抑えることができます。揚げ物に関しては、エアーフライヤーを用いるなど調理法を工夫しましょう。
清涼飲料水
炭酸飲料などの清涼飲料水には大量の砂糖が使用されています。食事以外に手軽にカロリーが摂れてしまいます。満腹感も得られないので通常の食事に加えて余分なカロリーとなることで、体重が増加し、肥満となります。肥満は様々な生活習慣病や心血管系疾患の原因になります。結果として、脳梗塞を引き起こすといわれます。近年では、ゼロカロリーの飲料も増えています。砂糖ではなく、人工甘味料が添加されています。人工甘味料はカロリーこそありませんが、近年の研究では、インスリンを放出する作用があることが分かってきました。つまり大量に摂ると体重が増えてしまいます。清涼飲料水は避ける、ゼロカロリーの製品も楽しむ程度に摂るようにしましょう。無糖の炭酸水やお茶などが普段の飲み物としては適切です。
高GI値食品
主食として切っても切れない糖質ですが、脳梗塞発症の観点からは注意が必要です。近年では一般にも浸透してきた、GI(Glycemic Index)値に注目します。GI値が高い食品は、摂取後速やかに吸収され、急峻な血糖値上昇を来します。血糖値を下げるために大量のインスリンが放出され、インスリン抵抗性が増えたり、脂質異常症を来したりすることで脳梗塞を引き起こす可能性があります。高GI値食品は精製された小麦からできているパンやパスタ類が該当します。白米も比較的高い食品ですが、我々日本人にとって全く食べないことは難しいでしょう。玄米や雑穀米を混ぜたりするとよいでしょう。量を減らすことも有効です。
「脳梗塞で食べてはいけないもの」についてよくある質問
ここまで脳梗塞で食べてはいけないものなどを紹介しました。ここでは「脳梗塞で食べてはいけないもの」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
脳梗塞の再発を防ぐ食べ物について教えてください。
神宮 隆臣 医師
日本人にとって取り入れやすいものとしては和食です。和食は低脂質でバランスに優れます。魚類も多いので取り入れてみてはいかがでしょう。
脳梗塞の予防や治療中の際に、納豆を食べてはいけないのでしょうか?
神宮 隆臣 医師
ワルファリンを飲んでいなければ制限する必要はありません。
脳梗塞を発症しやすい性格はありますか?
神宮 隆臣 医師
脳卒中の危険因子となるような性格の特性として、神経症傾向が高いことが可能性としてあげられます。神経症傾向とは、気分屋で緊張しやすいというものです。
編集部まとめ
直接脳梗塞の原因になったり、予防したりする食品はありません。ただし脳梗塞は食生活や生活習慣と深く関わります。少しずつ整えていき、健康的な生活を心がけましょう。
「脳梗塞」と関連する病気
「脳梗塞」と関連する病気は10個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
循環器科の病気
- 心房細動
- 心筋梗塞
- 卵円孔開存症
- 下肢静脈血栓症
脳神経内科の病気
脳梗塞に関連する病気は多岐にわたります。主に生活習慣病や心血管に関係するものが多いです。
「脳梗塞」と関連する症状
「脳梗塞」と関連している、似ている症状は8個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 言葉が出にくい
- ろれつが回らない
- 顔がゆがんでいる
- しびれる
- 片側の手足が動かしにくい
- 意識が悪い
- 様子がおかしい
- 歩けなくなった
このような症状がある場合、または何か気になることがある場合には脳神経内科へご相談ください。