胸膜炎とは?痛みが出る?症状・原因・診断方法
胸膜炎とはどんな病気なのでしょうか?その原因や、主にみられる症状、一般的な治療方法などについて、医療機関や学会が発信している情報と、専門家であるドクターのコメントをまじえつつ、Medical DOC編集部よりお届けします。
この記事の監修ドクター:
村上 友太 医師(東京予防クリニック)
胸膜炎とは
胸膜炎とは、さまざまな原因で胸膜が炎症をおこす疾患です。胸膜炎は、胸水のたまらない乾性胸膜炎と胸水のたまる湿性胸膜炎に大別されます。
私たちの胸の中には、肋骨や前胸部にある骨(胸骨)などで構成された筒形のような胸壁があり、この内部に心臓や肺が入っています。胸膜とは、肺を包む膜のことです。
胸膜は2枚で、1枚目の胸膜は肺側にあり、2枚目の胸膜は胸壁側にあります。2枚の胸膜の間を胸膜腔と呼びます。炎症がおきていないときの胸膜腔はほとんどすき間がなく、見た目には1枚の膜のように見えます。胸膜腔にはごく少量の胸水があり、この胸水の役目は肺と胸壁が呼吸のたびにこすれ合わないように、クッションのような働きをすることです。
このように、私たちの呼吸を円滑にするために重要な働きをする胸膜が炎症を起こすと、さまざまな症状や弊害がおきてきます。
胸膜炎を生じると多くの場合、2枚の胸膜の間に胸水が多量に溜まります。
胸膜炎の症状
肺を包む胸膜に炎症が起きると、呼吸器の症状が出ます。2枚ある胸膜のうち、胸壁側にある胸膜には痛覚が存在します。そのため、深く息を吸うたびに胸に痛みが出ることがあります。空咳(痰の出ない咳)や発熱も出現します。胸水も徐々に増えると、呼吸困難や峡部圧迫感も出てきます。
たとえば、胸膜炎の原因が感染症であれば胸の痛みや発熱が、がんであれば呼吸困難が主症状になるなど症状の出現にそれぞれの特徴があります。全体的に見て胸膜炎の諸症状は、ほかの呼吸器疾患の症状と類似(非特異的)しています。
胸膜炎の原因
胸膜炎は呼吸器関係だけでなく、ほかの疾患も発症の原因になります。胸膜炎を発症しやすい原因となる疾患は肺炎や結核などの感染症、肺がん、転移性がん、悪性胸膜中皮腫、全身性エリトマトーデスや関節リウマチなどの自己免疫疾患などです。
また、抗がん剤のブレオマイシン、抗てんかん薬のバルプロ酸ナトリウム、抗不整脈薬のアミオダロンなどの薬剤でも、薬剤性の胸膜炎の原因になることがあります。薬剤による胸膜炎はまれですが、近年、生物学的製剤や抗がん剤の使用が増えており、薬剤性の胸膜炎の罹患率が増加するのではと推測されています。
胸膜炎の検査法
いろいろな疾患が原因となって胸膜炎になるわけですが、胸膜炎の有無の検査法は原因が何であれ、共通しています。胸部X腺写真や胸部CT検査で胸水の有無を判定。胸水があれば、注射器で胸水の一部を採取して検査し、さらなる精密な情報が必要であれば、胸膜の一部を採取して生検します。
感染症や炎症の有無や程度を調べるには、血液検査が有用です。そのほか胸膜炎が薬剤によるものであると推測されれば、原因薬剤を調査します。
診断がつかない場合には、胸膜の一部を取る生検という検査が行なわれることがあります。生検は、体表から刺して行う方法と胸腔鏡という内視鏡で中を観察しながら行う方法があります。
胸膜炎の治療方法
検査で胸膜炎が確定されると治療に入りますが、治療の軸となるのはやはり、胸膜炎の原因となる治療です。がんであれば、適した抗がん剤や放射線治療などを施し、感染症であれば抗生物質などを投与。
それらと並行して、胸膜炎の治療が行われます。胸水が原因で呼吸困難があれば、胸水を針などで抜きます。胸膜腔に管を入れ、胸水を持続して外部に排出する治療がありますが、それが行われるのは胸水量の増加によって強い呼吸困難、頻脈や血圧低下など重篤な症状が出現したときです。
薬剤性の胸膜炎の場合は、原因薬剤の投与を中止し、胸膜炎の治療を行います。
胸水量が多いときは息苦しくなるため、胸膜の間に管を挿入し胸水を体外に抜く処置を併用します。癌性胸膜炎の場合はさらに胸膜を癒着させる処置(胸膜癒着術)を行うことがあります。
胸膜炎の予防方法
まずは、胸膜炎を起こすような疾患にかからないことです。万が一かかってしまったら、当疾患を悪化させないようにしっかりと治療しましょう。また、薬の副作用に注意して小さなサインを見逃さず、できれば医師や薬剤師に報告してください。
喫煙している人はぜひ禁煙しましょう。悪性疾患や膠原病をお持ちの方は、病気のコントロールが胸膜炎の予防につながるので、適切な治療を受け続けることが大切です。