貧血の症状や原因、治療方法とは?
貧血(読み方:ひんけつ)とはどんな病気なのでしょうか?その原因や、主にみられる症状、一般的な治療方法などについて、医療機関や学会が発信している情報と、専門家であるドクターのコメントをまじえつつ、Medical DOC編集部よりお届けします。
この記事の監修ドクター:
相澤 摩周 医師 医療法人相沢内科医院 院長
貧血とは
貧血とは、赤血球の数やヘモグロビン(酸素を運ぶ赤血球中のタンパク質)の量が少ない状態をいいます。
赤血球には、肺から酸素を運び、全身の組織に届けることを可能にしているヘモグロビンというタンパク質が含まれています。赤血球数が減少したり、赤血球中のヘモグロビンの量が少なくなったりすると、血液は酸素を十分に供給できなくなります。組織に酸素が十分に供給されないと、貧血の症状が現れます。
貧血の症状
貧血の症状は、貧血の重症度や進行の速さによってさまざまです。
貧血が軽度で、進行が遅い場合は、安静にしていると症状が全くあらわれないこともありますが、運動している時にだけ症状があらわれることもあります。
主な症状としては、疲労感や脱力感を覚えたり、顔色が青白くなったりすることです。
貧血が重度の場合は、安静にしていても症状があらわれることがあります。血管の破裂による出血などで貧血が急に進んだ場合は、貧血の程度が軽度であれ重度であれ、症状が強くあらわれます。疲労感や脱力感、顔色が青白い、に加えて、気が遠くなる、めまい、のどの渇き、発汗、脈が弱く速くなる、呼吸が速くなるなどの強い症状があらわれます。
特に脚の血行が悪くなっている場合や、肺や心臓に特定の病気がある場合は、運動中に痛みを伴った筋けいれんが下腿に発生したり、息切れや胸痛などの症状があらわれたりすることがあります。一部の症状からは、貧血の原因の手がかりも得られることがあります。例えば、黒いタール状の便、血尿や血便、または喀血(咳とともに血が出る)がみられる場合、出血が貧血の原因であることが疑われます。濃い色の尿または黄疸(皮膚や白眼が黄色がかった色になる)がみられる場合、赤血球の破壊が貧血の原因となっている可能性が疑われます。手や足の灼熱感やチクチク感があれば、ビタミンB12欠乏症の可能性が疑われます。
貧血の原因
貧血の原因には以下のものが挙げられます。
(1)鉄欠乏性貧血
もっとも多いのは鉄欠乏性貧血です。ヘモグロビンの材料は鉄ですので、鉄が不足すると働きのよくない赤血球になってしまいます。働きが悪いと酸素をうまく全身に運ぶことができなくなり、息切れ、疲れやすさが起こります。
男性や、閉経後の女性の鉄欠乏性貧血の原因として最も多いものは消化管出血です。便が黒い、便が赤いなどの症状がありましたら消化器内科に相談しましょう。(2)そのほかの栄養欠乏
胃切除術後、萎縮性胃炎などに伴うビタミン欠乏、アルコール多飲、栄養不良に伴う葉酸欠乏、さらに珍しい原因としては銅欠乏が貧血を起こすことがあります。
亜鉛欠乏もしばしば見られますが、亜鉛欠乏単独で貧血になることは非常に珍しいことです。(3)慢性の病気が原因
貧血全体の3分の1程度が「慢性疾患に伴う貧血」に分類されます。慢性腎臓病、関節リウマチ、甲状腺疾患などが原因となりますので、これらの病気の診断も必要です。(4)血液の病気
上記の(1)~(3)が注意深い診察で除外できた場合、再生不良性貧血(血液を作る工場である骨髄の機能が低下する)、骨髄異形成症候群(血液を作る工場である骨髄で正常な血球が作れなくなる)、白血病(腫瘍化した異常な白血球が大量に増殖し正常な血液が作れなくなる)、多発性骨髄腫(骨髄で免疫細胞の一種である形質細胞が腫瘍性に異常増加し正常の血液産生を妨げる)などの血液疾患の診断を進めます。それでも原因がはっきりしない高齢の方の貧血は加齢に伴うテストステロン(男性ホルモン)の減少、潜在的な炎症などによる貧血で、「説明不能の貧血」と総称されます。65歳以上の貧血のうち2~3割程度がこの分類に入ります。原因のわからない貧血も少なくないということです。
高齢者の場合には、消化器系のがんや胃潰瘍の疑いがあることがあります。
貧血の検査法
貧血は、血液検査により、血液中の「赤血球数」「ヘモグロビン」「ヘマトクリット」などを調べて診断します。
これらの基準値は性別や年齢によっては異なりますが、数値によって、貧血の重症度(軽度・中度・重度)や分類がわかります。
貧血の治療方法
貧血の原因疾患がある場合には、それに対して適切な治療を行います。それ以外の場合には、食生活の改善や鉄分の補給などにより、改善をはかります。鉄分を補給することで、1~2週間程度でヘモグロビン量が増加し始めますが、途中で治療を止めてしまうと、貧血を再発することが多いので、通常、3~4ヶ月程度かけて錠剤などで鉄分の補給を行います。副作用がある場合には、注射やシロップ剤を使用するケースもあります。