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妊娠すると歯周病になりやすくなるってホント?

 更新日:2023/03/27

こんにちは。千葉県市川市行徳にございます、杉澤デンタルクリニック行徳の杉澤幹雄(日本歯周病学会認定医)と申します。
 
冒頭ではございますが、結果から申し上げますと妊娠すると歯周病になりやすくなります。では、どうして妊娠すると歯周病になりやすくなるのでしょうか?
その原因は?
治療法は?
生まれてくる赤ちゃんへの影響は?
など、妊娠中の歯周病について書いていこうと思います。

執筆歯科医師
杉澤 幹雄(日本歯周病学会認定医)

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《自己紹介》
杉澤デンタルクリニック行徳 院長の杉澤幹雄です。歯周病の専門的な治療を行ってきましたので、その知識と経験を活かして、歯の土台となる歯茎や骨からしっかりと健康な状態にしていくことを大切にしています。歯周病をそのままにした状態で、歯だけきれいにしても長持ちしません。まずは歯を支えている土台からきれいにし、いつまでも健康な歯を使い続けられるようにしましょう。

 妊娠すると歯周病になりやすくなる原因

 歯周病原細菌の好む女性ホルモンが増加するため

妊娠中は女性ホルモンが多く分泌されます。この女性ホルモンの一つであるエストロゲンなどを栄養源とする歯周病原細菌(Prevotella intermediaなど)が歯肉溝において増殖します。また、妊娠中の免疫応答の変化も重なり歯肉における炎症が大きくなることが考えられています。
また、エストロゲンは歯肉の細胞を刺激し、敏感になった歯肉の細胞は少しの刺激で炎症が生じやすくなります。もう一つの女性ホルモンであるプロゲステロンはプロスタグランジンという炎症の引き金となる因子の分泌を促進します。
このように妊娠中は特定の歯周病原細菌が増殖しやすく、また女性ホルモンの影響により歯肉の炎症が生じやすくなるのです。この疾患を妊娠性歯肉炎と言います。

 生活が不規則になりがちなため

妊娠中はつわりや食欲の増減があるため、今まで定まっていた生活習慣が乱れがちです。食べる時間が長くなったり、食事の回数が増えたり、就眠前のブラッシングができなかったりすることで、口腔内の衛生状態が不安定になりやすくなります。
歯周病は生活習慣病の一つであり、今まで規則正しく口腔内の衛生状態が保たれていたのに、妊娠によって乱れお口の衛生状態が悪くなることにより歯周病原細菌が増殖し歯周病になりやすくなってしまいます。

 妊娠中の歯周病の症状

妊娠中の歯肉の炎症は主に歯肉からの出血により自覚することが多いです。妊娠中のブラッシング時に毎回出血するようになったら妊娠性歯肉炎を強く疑います。痛みなどの症状は少ないため、歯を磨く際の出血が続いたり、歯肉が腫れ強く赤みを呈するようになったら妊娠性の歯肉炎の治療が必要です。

 妊娠中の歯周病の予防・治療

妊娠性の歯肉炎は主に歯茎だけに炎症が進行し、その他の歯周組織にまで炎症は及んでおりません。よって、歯を支える顎の骨が溶けたりすることはありません。しかし、この状態が続いてしまうと、歯肉に限局した歯肉炎から歯周組織全体に炎症が波及し顎の骨が吸収される歯周炎へと発展する恐れがあります。そのため妊娠中でも歯肉炎を予防または治療をする必要があります。

 妊娠中の歯周病の予防

毎日のブラッシングが最も大事になります。プラークや歯石が付着していないと妊娠中だからといって歯肉炎になることはありません。しかし、妊娠前に比べて歯肉の炎症が生じやすいことを気にすることでいつもより丁寧にブラッシングするように心がけましょう。口腔内細菌は睡眠時に増殖しますので、就寝前のブラッシングは特に念入りにブラッシングすることが大切になります。

 妊娠中の歯周病の治療

ブラッシングを頑張っても歯肉からの出血が止まらない場合はブラッシングでは取れない歯石が付着していることが考えられます。歯石がブラッシングを邪魔して細菌の塊であるプラークが残存しているため、歯肉の炎症が治りにくい状況が考えられます。この場合は歯科医院にて口腔内の歯石をきれいに取り除く必要があります。
一般的に歯石を取り除く治療は麻酔が不要の場合が多いため、妊娠中でも問題なく行うことができます。しかし、歯石が多量に付着していたり、歯石を取り除くのに痛みを伴う場合は妊娠安定期(おおよそ妊娠15~27週)に行われることが多いです。その時は、かかりつけの産科の先生や歯科医師に十分相談することをお勧め致します。

 妊娠中の歯周病への罹患により、低出生体重児および早産のリスクが大きく上がる

妊娠中において歯周病になることで、低出生体重児および早産のリスクが大幅に上がることが報告されています。
そもそも低出生体重児とは2500g未満の体重で生まれた赤ちゃんであり、妊娠22~37週(正式には22週から36週6日まで)の出産を早産と言います。妊婦における早期低体重児出産の危険率は歯周病が大きく高く、そのリスクは健常者(歯周病でない)と比べ7倍高いと報告されています。このリスクは一般でいうアルコールや喫煙、高齢出産に比べるとはるかに高いリスクなのです。

 まとめ

妊娠中は歯周病細菌の特性や妊娠中の生活習慣の変化などから歯周病に罹患しやすい時期に当たります。また、産後も今まで通りの生活に戻るためにはまだまだ時間がかかるため、妊娠中の歯周病を放置しているとさらに歯周病が進行してしまう危険が高くなります。また、妊娠中の歯周病の罹患は早産および低体重児出産のリスクも大きく高くなり安心安全な出産を脅かす病気でもあります。痛みなどの症状もなく気が付きにくい病気ではありますが、ブラッシング時の出血などは大きなサインになります。ブラッシング時の出血が続くようでしたら、早めの歯科医院受診を強くお勧め致します。
 
また、歯周病は歯周病原細菌の感染による病気です。もちろん赤ちゃんがすぐ歯周病になることはありませんが、虫歯菌も含め、生まれてきた赤ちゃんへの細菌感染は最低限にしたいものです。そのためにもご出産前にはお父さんも含め家族全員がきれいな口腔衛生であることが望まれ、そのためにも妊婦中の家族全員の歯科検診を受診されることも強くお勧め致します。

この記事の監修歯科医師