虫歯を放置することで起こる病気とは?
更新日:2023/03/27

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執筆歯科医師: 佐藤 正敬(日本歯周病学会認定医)
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東京歯科大学卒業。日本歯周病学会認定医、日本口腔インプラント学会会員。
虫歯の状態と進行度について
虫歯は歯科用語では齲蝕(うしょく)と言います。齲蝕の原因は細菌が作り出す酸が歯質を溶かすことにあります。我々人間が食事をして排泄をするのと同じように、細菌は口腔内の食渣(食べ残し)などを栄養源として、結果的に酸を産生し、その酸が歯質を溶かしてしまうのです。齲蝕はその進行度で大きく分けると以下の4つの段階に分かれます。 C1:齲蝕がエナメル質に限局している C2:齲蝕が象牙質まで進行している C3:齲蝕が歯の神経まで到達している C4:齲蝕により歯質の大半が喪失している歯は内部に歯髄(歯の神経)があり、その周りを象牙質が覆い、さらにその上をエナメル質が覆っています。つまり齲蝕の進行度はC1からC4にかけて重症になっていきます。
C1:齲蝕がエナメル質に限局している
エナメル質は人体で最も硬い組織であり、神経はありません。つまり、C1の段階では痛みなどの症状は起こりませんし、エナメル質は再石灰化(歯の自己修復)を起こすため、状態によってはしっかりと歯磨きを行い、再石灰化を促すことで治療が必要にならないこともあります。痛みはありませんが、歯と歯の間にC1が発生した場合は、歯と歯の間に食べ物が挟まりやすくなったり、フロスがその部分で切れたりほつれたりすることがありますので、気になった場合は歯医者さんを受診することをお勧めします。C2:齲蝕が象牙質まで進行している
エナメル質の下に位置する象牙質には、神経が通っています。そのため冷たいものや甘いものでしみる症状(誘発痛)が出てきます。虫歯の治療を行う大半がこのC2の状態であり、齲蝕の発生した部位や大きさによって、コンポジットレジン(白いプラスチック)や、インレー(銀の詰め物)での治療が必要になります。C3:齲蝕が歯の神経まで到達している
C3では神経まで齲蝕が到達することで、激しい痛みが伴います。C2の状態とは違い、拍動性の痛みが何もしなくても発現します(自発痛)。ここまでくると、歯の神経を保存することは困難になり、神経を除去し根の中を清掃、殺菌する治療(根管治療)が必要となってきます。根管治療をした歯は経年的に破折しやすくなるため、最終的には歯に被せ物を装着し治療終了となります。C4:齲蝕により歯質の大半が喪失している
C4まで進行すると歯の神経は完全に死滅し、症状としては何も痛くなくなります。C4の状態では、残存歯質が不足し、歯の保存が困難になる事が多く、大半の場合は抜歯となります。「急性齲蝕」と「慢性齲蝕」という分け方
また、齲蝕にはC1~C4の分類とは別に急性齲蝕と慢性齲蝕という分け方があります。急性齲蝕は急速に歯髄に向かって進行し、痛みがでるもので、若年者によくみられます。逆に慢性齲蝕は進行が緩やかで、エナメル質と象牙質の境目に沿って進行するため痛みが出にくいのが特徴です。慢性齲蝕は比較的高齢者でみられます。このように、虫歯はその進行度によって症状や治療法は様々であり、年齢によって進行するスピードが違うのも特徴です。




