マウスピースの効果とは?歯列矯正・就寝中・ホワイトニングそれぞれの効果について解説
「マウスピースはどのような効果があるの」「マウスピースは矯正以外にも効果があるの?」と気になる人もいるでしょう。
マウスピースを装着するだけで、歯列矯正や歯ぎしりの対策など、あらゆる悩みを解決でき心強いでしょう。
ただ、歯科医院で作るため診察料やマウスピースの精度など、高額になるのではと考える人も多いです。
この記事では、マウスピースの効果や費用などを詳しく解説します。マウスピースの装着を考えている人は参考にしましょう。
監修歯科医師:
熊谷 靖司(歯科医師)
目次 -INDEX-
そもそもマウスピースとは?
そもそもマウスピースとは、口に装着する器具で、歯列矯正や口腔内の治療などで使われています。
睡眠時無呼吸症候群や呼吸障害の治療では、マウスピースで口腔内の気道を開くことで、呼吸が楽になります。
矯正用マウスピースは、歯列矯正をサポートする器具として使われています。
一般的に、歯に痛みがある場合や歯列矯正では、歯科医師の診断のもとマウスピースをつくります。
一時的に使いたい場合や、歯ぎしり対策などには市販品を使用する人もいるでしょう。
マウスピースを目的に合わせて効果的に利用することで、それぞれの悩みを解決に導くのです。
マウスピースの効果は?
マウスピースの効果は主に4つあります。
自身の悩みやマウスピースを着ける目的について、どのような効果が得られるのか参考にしましょう。
歯列矯正
最も認知度が高いマウスピースの効果に、歯列矯正があります。歯列矯正は、歯並びを整えるために使用します。
これまでは、ワイヤーによる歯列矯正が一般的でしたが、マウスピースの方法も普及しています。
マウスピース矯正では、歯列を整えるだけではなく咬合や口腔内の筋肉や骨も、正しい形状へと改善できます。
正しい場所へと整えるために圧力がかかりますが、歯列矯正をすることで歯周病や歯肉病なども予防できます。
マウスピース矯正は透明の器具もあるため、矯正器具が見えにくく周りからの見た目が気になる人にもおすすめです。
仕事の都合で歯列矯正ができない人も、透明なマウスピースなら人目を気にせず使用できるでしょう。
就寝中の歯ぎしり対策
マウスピースは就寝中の歯ぎしりや食いしばりにも対策できます。
歯ぎしりや食いしばりは、非常に強い圧力がかかります。歯と歯が擦れると、歯が削れ擦り減り、詰め物も欠けてしまう可能性があります。
また、顎に負荷がかかるため顎関節がずれたり痛みが生じたりと、顎関節症になる恐れもあります。肩こりや頭痛などの症状も現れるでしょう。
マウスピースを装着すると、噛む力を弱めて、顎や歯にかかる負担を和らげる効果があります。
歯ぎしりによる影響はさまざまあるため、早めに歯科医師に相談するといいでしょう。
ホワイトニング
ホワイトニングは歯科医院で行うのが一般的でしたが、自宅でもマウスピースを使用してのホワイトニングが可能になりました。
マウスピースにホワイトニングの薬剤を注入し、歯に装着するとホワイトニングの効果を得られます。
自宅でできるため、ホワイトニングのために通院を重ねる必要はありません。
ただ、市販のホワイトニングだと自分の歯に合ったマウスピースではないため、ホワイトニングの薬剤が全体にいきわたらない可能性があります。
薬剤が偏ってしまうと白さにムラができる可能性があります。
綺麗にホワイトニングをするのであれば、歯科医院で自分の歯の形状に合ったマウスピースを作ってもらい、適切な薬剤を処方してもらうといいでしょう。
歯列矯正後の保定
マウスピースは歯列矯正後の保定にも利用します。歯列矯正後に使うマウスピースを「リテーナー」といいます。
歯列矯正後は、歯の位置が定まっていないため、元に戻りやすい傾向にあります。リテーナーを装着すると、整えられた歯列を維持し、歯の戻りを防ぐことが可能です。
リテーナーは決められた時間に装着する必要があります。実際の装着時間や期間は個人差があるため、医師の診断を守るようにしましょう。
マウスピースによる歯列矯正の効果は?
歯列矯正はワイヤーで行うのが一般的でしたが、マウスピースの利用では次の3つの効果が挙げられます。
- 軽度のすきっ歯を矯正する
- 軽度の出っ歯を矯正する
- 軽度の乱杭歯を矯正する
歯の状態で当てはまるものがあれば、参考にしましょう。
軽度のすきっ歯を矯正する
マウスピースでは軽度のすきっ歯を矯正できます。すきっ歯は歯と歯の隙間が空いている状態です。
下唇を噛んで前歯を外へおしたり、下の先で前歯を裏からおしたりする癖によって、すきっ歯になる可能性が高くなります。
マウスピース矯正は、軽度であれば、個人差はあるものの1年から1年半ほどで矯正できるでしょう。
マウスピース矯正に悩む人は、歯科医師に相談してみるといいでしょう。
軽度の出っ歯を矯正する
マウスピース矯正では、軽度の出っ歯を矯正できます。遺伝や指しゃぶりのような歯が前に出てしまう習慣がある場合、出っ歯になりやすいです。
出っ歯の状態を見極め、マウスピース矯正が適応範囲内かどうかを確かめる必要があり、軽度であれば矯正できるでしょう。
マウスピース矯正が可能かどうかや、適切な矯正方法についても、医師に相談した上で矯正を始めましょう。
軽度の乱杭歯を矯正する
乱杭歯(らんくいば)は軽度であればマウスピースで矯正が可能です。
乱杭歯は遺伝によるものや、顎が小さく歯列が乱れてしまうなど、さまざまな原因が考えられます。
マウスピース矯正では、矯正期間は個人差がありますが、歯列を整えられるでしょう。
乱杭歯の状態について一度医師に相談した上で、矯正を始めましょう。
就寝中のマウスピースの効果は?
就寝中にマウスピースを着用する効果は次の4つがあります。
- 歯ぎしりで歯がこすれるのを防げる
- 食いしばり対策ができる
- 顎関節への負担を和らげる
- 歯茎の炎症を和らげる
睡眠時は無意識で歯に負担がかかっている可能性があるため、歯に違和感や痛みが出て気付く人もいます。
睡眠時に歯ぎしりや食いしばり等を行っていないか思い起こしてみましょう。
歯ぎしりで歯がこすれるのを防げる
就寝中にマウスピースを装着すると歯ぎしりで歯がこすれるのを防ぐ効果があります。
歯ぎしりは無意識的に行っていますが、歯が擦り減ったり欠けたりする恐れがあるため、注意が必要です。
睡眠時に歯ぎしりを防ぐ方法には、マウスピースの装着がいいでしょう。
歯ぎしりをしてもマウスピースを削るため、歯に直接負荷をかけずに済みます。歯ぎしりによる擦り減りや欠けがある場合は、早めに歯科医院で診察してもらいましょう。
食いしばり対策ができる
マウスピースを装着すると、就寝中の食いしばりの対策が可能です。食いしばりは上下の歯による圧力で、歯が欠けたり削れたりする恐れがあります。
食いしばっているときの圧力は非常に強く、頭痛や歯痛を伴う可能性があるので注意が必要です。
マウスピースを装着すると、食いしばった場合にも直接歯と歯がぶつかりません。マウスピースが負担を軽減してくれるため、歯へダメージを与えずに快適に就寝できるでしょう。
顎関節への負担を和らげる
マウスピースを装着して就寝中の歯ぎしりや食いしばりを防ぐと、顎関節への負担を和らげる効果があります。
顎関節へ負担を加えてしまうと、食べ物を噛むときに痛みを感じたり、口を開けたり閉じたりするときにカックンと音が鳴ったりします。
他にも頭痛・肩こり・めまい・目の疲れなど、さまざまな症状が現れます。就寝中の歯ぎしりや食いしばりはマウスピースを装着して軽減するといいでしょう。
歯に直接負荷がかからないため、顎関節への負荷も和らげます。もし既に顎関節への違和感や痛みがある場合は、早めに歯科医院で診察を受けるといいでしょう。
歯茎の炎症を和らげる
就寝中にマウスピースを装着すると歯茎の炎症を和らげる効果があります。
これまで解説した歯ぎしりや食いしばりは、歯茎への炎症ももたらす恐れがあります。
歯ぎしりや食いしばりによって強い圧力を受けた歯は、ぐらついたり削れたりします。その際に、歯が揺さぶられて歯茎が炎症を起こしてしまうのです。
マウスピースを装着すると、歯ぎしりの問題を改善でき、歯茎の炎症も和らげるでしょう。
マウスピースによるホワイトニングの効果は?
マウスピースによるホワイトニングの効果は次の2つがあります。
- 歯を自然な白さにする
- 後戻りの少ないホワイトニングが可能
ホワイトニングを目的としてマウスピースの利用を考えている人は、参考にするといいでしょう。
歯を自然な白さにする
マウスピースを装着すると、歯を自然な白さにする効果があります。
マウスピースにホワイトニングの薬剤を塗布し、歯に装着してホワイトニングできる仕組みです。
この薬剤は、歯の黄ばみを分解するため、自然な白さに仕上げられるのです。
歯列矯正をしながらホワイトニング効果も得られるマウスピースがあるため、同時に効果を得たい場合は医師に相談してみるといいでしょう。
後戻りの少ないホワイトニングが可能
マウスピースによるホワイトニングは、継続して行うと後戻りが少なく効果がより実感できます。
物によって効果は異なりますが、1日2時間ほどを2週間前後使用すると効果を実感できるでしょう。
歯の黄ばみを分解して白くするためにも、効果が見られるまで継続して行い後戻りしないようにしましょう。
マウスピースタイプのリテーナー(保定装置)の効果は?
マウスピースタイプの保定装置をリテーナーというと前述しましたが、具体的には次の2つの効果があります。
- 歯列矯正後の後戻りを予防する
- 歯の周囲の組織をなじませる
歯列矯正を検討している人や、これからリテーナーを使用する人は参考にしましょう。
歯列矯正後の後戻りを予防する
リテーナーは歯列矯正後の歯の後戻りを予防する効果があります。歯列矯正後は骨が柔らかく、歯が元の位置に戻りやすい状態です。
リテーナーを装着すると、歯が後戻りをするのを防ぎ、美しい歯列に定着するのをサポートできます。
歯が後戻りしないように、リテーナーを装着する時間や期間について医師の指示を仰ぐようにしましょう。
歯の周囲の組織をなじませる
リテーナーを装着すると、歯の周囲の組織をなじませる効果を得られます。歯列矯正では、歯だけではなく歯の周囲の組織も変化するため、矯正後の状態で定着を図る必要があります。
歯の周りの骨や歯と歯茎を結ぶ繊維など、歯の周囲の組織全体がなじむように、リテーナーで正しい位置に固定しましょう。
マウスピースは歯科医院のものと市販のものどちらがいい?
マウスピースは歯科医院と市販品で購入ができますが、どちらがいいか迷う人も多いでしょう。マウスピースを着ける目的を考え、どこで入手するか選択しましょう。
例えば、歯ぎしりにより歯が欠けてしまっている場合や、歯列矯正を目的としている場合は、歯科医院がいいでしょう。
歯科医院では、口腔内の型をとり模型化して、自分の歯に合ったマウスピースを作れます。模型は、自分の歯の形状や口腔内の細かな皺も反映します。
細かい口腔内の状態や噛み合わせに合わせて作られるため、より効果の高いマウスピースが出来上がるでしょう。
一方、ひとまず就寝時の歯ぎしりを改善したいという場合は、市販品を選んでも問題ないでしょう。
市販品は自分でマウスピースを作るため、安く済ませられますが、歯科医院よりも精度や耐性は低いです。
自分の歯に合ったマウスピースを作れないため注意が必要です。歯ぎしりの圧力を直接歯に与えないように、マウスピースを装着するといいでしょう。
しかし、既に歯が削れている場合や歯肉に影響が出ている場合は、早めに歯科医院を受診しましょう。
マウスピースは自分の歯の形状に合っている方がいいのかや、金銭面も踏まえて、目的に合わせて選ぶといいでしょう。
マウスピースの費用はいくらくらい?
マウスピースの費用は、歯科医院で作るか市販でつくるかによって異なります。一般的な相場は次の通りです。
- 歯科医院で歯の治療のために作成する場合:3,000~6,000円程度
- 歯科医院で歯列矯正のために作成する場合:全体で60~100万円程度
- 市販品の場合:1,000~2,000円程度
歯科医院で作成する場合は、歯の治療に関わるマウスピースは保険適用となり、3割の負担です。
ただし、歯列矯正は保健適用外のため、高額になります。また、歯並びの状態によっても金額が異なるため、一度歯科医院で相談するといいでしょう。
また、上記の金額はマウスピースの料金のため、歯科医院で診てもらった際には診察料金も追加でかかります。
定期的に通院するとその都度お金がかかるため、予算や目的に合わせて、どこでつくるか考えましょう。
マウスピースの効果について知りたいなら
マウスピースの効果について知りたいなら、かかりつけの医師に相談するといいでしょう。
実際に歯を診察し、状態を見て目的に合わせた提案を受けられます。
市販よりも歯科医院の方が、自分の歯の形状に合ったマウスピースを作れるため、高い効果を得られるでしょう。
また、歯列矯正・ホワイトニング・歯ぎしり対策など、求めている効果を伝えると、適切なマウスピースを提案してもらえます。
医師に相談をして、自分に合った最適なマウスピースで悩みを解決しましょう。
編集部まとめ
マウスピースには、歯列矯正・就寝中の歯ぎしり対策・ホワイトニング・歯列矯正後の保定などさまざまな効果があります。
自分の悩みを改善するために、どのようなマウスピースがいいか見極める必要があります。
歯科医院では、歯の状態を診てもらい自分に合ったマウスピースを作ってもらえるため、高い効果を得られるでしょう。
市販品は、歯科医院と比較して低価格で作れ、就寝時の歯ぎしりや噛みしめ等の対策ができます。
どのように作ったらいいのか悩んだ際には、かかりつけの医師に相談してみましょう。
参考文献
- マウスフォームドタイプのマウスピース装着後の身体症状アンケート調査|神奈川歯科大学リポジトリ
- 睡眠時無呼吸症候群の診断と治療における医科歯科連携
- マウスピース型矯正装置 「トランスクリア」と拡大矯正装置で患者さんに寄り沿った医療NBM(Narrative-based Medicine)の矯正を
- 歯ぎしりと食いしばり
- 歯ぎしり・食いしばり|牟礼南デンタルオフィス
- マウスピースでの「ホームホワイトニング」の費用・特徴を歯科医師が解説|hanaravi歯科矯正blog
- 歯科矯正材料の近年の進化と未来展望
- すきっ歯を矯正で治す!マウスピース矯正によるすきっ歯の治療例・費用・期間を紹介|hanaravi歯科矯正blog
- 保育園児に対する口腔機能向上訓練の構音機能の効果について|CiNii
- 教育セミナー1 歯科・口腔外科の展開-口腔ケアからいびき治療,顎骨壊死手術まで-
- くさび状骨欠損を伴う深い歯周ポケットが改善した一症例
- ホワイトニングの実際|松本歯科大学リポジトリ
- マウスピースでの「ホームホワイトニング」の費用・特徴を歯科医師が解説|hanaravi歯科矯正blog
- 若年者へのPOI 2ピースインプラントの臨床応用―リテーナーの重要性について―|日本口腔インプラント学会誌
- 市販のマウスピース矯正は危険!歯科矯正は矯正専門の歯科医院で|hanaravi歯科矯正blog
- 歯医者で作るマウスピースの価格はどう決まるのか?|医療法人 おくだ歯科医院