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インプラントは妊娠中・出産後に受けない方がいい? 治療のタイミングやリスクを歯科医が解説!

 公開日:2024/11/13

現在、妊娠を考えている女性にとって、インプラント治療を受けるタイミングは気になるポイントの1つです。「妊娠中や出産後にインプラント治療を受けても大丈夫なのか」「治療中に妊娠が判明した場合はどうすればいいのか」など、不安に思う人も多いでしょう。そこで今回は、妊娠を計画している、もしくは育児中の人に向けて、インプラント治療の考え方や開始のタイミング、注意点などを「こばやし歯科クリニック」の小林先生に解説していただきました。

小林 実

監修歯科医師
小林 実(こばやし歯科クリニック)

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大阪歯科大学卒業。大阪、京都の歯科医院での勤務を経て、「こばやし歯科クリニック」を開院。「美容院に通うような感覚で治療・メンテナンスが受けられる歯科医院」をコンセプトに、快適に通院できる環境づくりに取り組んでいる。日本臨床歯科学会大阪支部相談役。日本顎咬合学会、日本歯科保存学会、日本顕微鏡歯科学会の各会員。

妊娠中のインプラント治療は控えるべき? 治療中に妊娠がわかったら? 治療の可否やリスクについて

妊娠中のインプラント治療は控えるべき? 治療中に妊娠がわかったら? 治療の可否やリスクについて

編集部編集部

妊娠中にインプラント治療を受けることはできるのでしょうか?

小林 実先生小林先生

一般的には、母体・胎児の安全面を考慮して妊娠前、もしくは出産後におこなうことをおすすめしています。ただ、医学的には絶対禁忌ではなく、妊娠安定期であれば問題ないとされています。ここで重要となるのは、インプラント治療そのものというより「妊娠中の外科処置(手術)をどのようにとらえるか」という点です。

編集部編集部

妊娠中の外科処置に、何かリスクがあるのでしょうか?

小林 実先生小林先生

妊婦さんが最も気になるポイントに、術前のレントゲン検査やCT検査による放射線被ばく、麻酔薬の使用、術後の抗生物質の投与のリスクが挙げられます。これらは基本的に安定期であれば、とくに問題ないとされていますが、そのリスクがゼロかと言われるとそうは言い切れません。また、妊娠中は出血や痛み、治療中の姿勢、長時間の治療による母体へのストレスも考慮すべきです。

編集部編集部

そうすると、やはり妊娠中にインプラント治療を受けるのは避けた方がよさそうですね。

小林 実先生小林先生

噛めない状態で妊娠期間を過ごすより、適切な栄養摂取のためにインプラント治療をするという考え方もあると思います。しかし、やはりインプラント治療は外科処置を伴うので、患者さんがそのリスクを十分に理解し、受け入れたうえで判断していくことが大切です。妊婦さんの心理面を考えると、この時期に積極的に受けたいと思う人は少ないでしょうし、最終的には治療の必要性と潜在的なリスクのバランスを慎重に検討することが重要となります。

編集部編集部

もし、インプラント治療中に妊娠がわかった場合、以後の治療はどうしたらいいですか?

小林 実先生小林先生

ポイントは、インプラントを埋め込む外科処置がすでに終わっているのかどうかです。妊娠が発覚する前にすでに外科処置が終わっている場合は、その後の治療は妊娠中でも問題なく進めることができます。一方で、まだ外科処置が終わっていない段階であれば、以後の治療については産婦人科医と相談しながら、慎重に検討する必要があります。

出産後にインプラント治療を開始するタイミングは?授乳中でも問題ない?

出産後にインプラント治療を開始するタイミングは?授乳中でも問題ない?

編集部編集部

出産後は、すぐにインプラント治療を受けることは可能なのでしょうか?

小林 実先生小林先生

外科処置に伴うリスクを十分に考慮することが重要です。とくに、授乳中は投薬による影響について十分に配慮しなければなりません。また、出産直後は体力の消耗が激しく、体調がすぐれないことも多いので、急を要さない場合は体調が万全になってからの方がいいでしょう。

編集部編集部

では出産後、どのタイミングで治療をはじめるのがおすすめですか?

小林 実先生小林先生

個々の状況によって異なりますが、まずは「自由になれる時間が確保できるか」という点が重要になってきます。インプラント治療は時間を要するため、赤ちゃんのケアと両立できるかをよく考えることが大切です。週に1回か2回、コンスタントに通院できるかどうかがカギとなります。

編集部編集部

うまく時間が確保できず、治療期間が長くなってしまった場合に何か影響はあるのでしょうか?

小林 実先生小林先生

治療期間が延びても、インプラント治療自体に支障が出ることはありません。ただ、継続した治療が必要なので、体調面を含めてコンスタントに通院できるタイミングや環境が整っているかはよく考えておいた方がいいでしょう。お子さんのお世話を誰かに頼れる環境が整っているのが理想的ですが、それが難しい場合もあるかもしれません。したがって、治療スケジュールについては担当歯科医とよく相談して決めていくようにしてください。

妊娠を計画中のインプラント治療 治療をするのは妊娠前? それとも出産後?

妊娠を計画中のインプラント治療 治療をするのは妊娠前? それとも出産後?

編集部編集部

現在、妊娠を計画されている患者さんに、インプラント治療を受けるタイミングについて、どのようにアドバイスしていますか?

小林 実先生小林先生

先にもお話ししたように、レントゲンやCT撮影、術後の投薬などを考えると「妊娠前」に済ませておくのが理想的です。これはインプラント治療に限らず、親知らずの抜歯など外科治療全般に当てはまります。繰り返しになりますが、医学的には安全と言われていても、やはりリスクが全くないとは言えません。ご自身の心理的な負担を考えても、妊娠前に済ませておく方が、妊娠中や出産後の不必要なリスクを避けられると思います。

編集部編集部

仮に、妊娠する直前や妊娠中に歯を失ってしまった場合、インプラント治療の代わりとなる治療はあるのでしょうか?

小林 実先生小林先生

インプラントのほかにも、ブリッジや入れ歯で代わりの歯を補うことができます。ブリッジ・入れ歯については外科処置が必要ないため、仮に妊娠しても安定期であれば問題なく治療がおこなえます。ただ、ブリッジは残っている健康な歯を削らなければならなかったり、入れ歯は噛みにくかったりとマイナス面もあるので、慎重に選択していくことが大切です。

編集部編集部

患者さんが出産後にインプラント治療を希望した場合、その間、歯のない部分はどのように対応するのでしょうか?

小林 実先生小林先生

妊娠期間中は取り外し式の入れ歯を選択するか、もしくは暫間的な処置として仮の歯を接着剤で固定する方法があります。これらの方法でとりあえず見た目や機能を保っておいて、出産後に改めて本格的な治療をおこなうことも可能です。

編集部編集部

出産後にインプラント治療を希望する場合、妊娠期間中におこなうべきケアや準備などはありますか?

小林 実先生小林先生

インプラント治療をする・しないに関係なく、妊娠中の口腔ケアは母体や胎児の健康に関わる重要事項です。妊娠中は女性ホルモンの影響で、歯ぐきに炎症が起きやすい状態になります。とくに、妊娠中の歯周病は早産や低体重児出産のリスクとなり得るため注意が必要です。したがって、インプラント治療のためだけでなく、お母さんと赤ちゃんの双方の健康のために、妊娠中はこれまで以上に口腔ケアに取り組んでいただきたいと思います。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

小林 実先生小林先生

女性にとって自身のお口の健康を維持することは、生まれてくる赤ちゃんの健康や健やかな成長にも深く関わっていきます。自身のお口の健康を維持するうえで、インプラント治療が必要と思われる場合は、ぜひ前向きに検討してみてください。それはきっと、お子さんの将来にも良い影響を与えるでしょう。妊娠中や出産後も、定期的な歯科健診と適切なケアを心がけ、母子ともに健康な生活を送っていただきたいと思います。

編集部まとめ

妊娠中や出産後のインプラント治療については、安全性を第一に考え、時期や方法を慎重に選択することが大切です。原則として妊娠中の治療は避け、妊娠前か出産後に治療することが推奨されます。もし、治療の途中で妊娠が判明した場合は、以後の治療や出産後の再開時期について、担当歯科医や産婦人科医とよく相談しましょう。妊娠中のお口の健康は、お母さんと赤ちゃんの双方の健康に直結します。自身のお口の健康で疑問なこと、不安なことがある場合は、ためらわずに歯科医院を受診し、専門家に相談しましょう。

医院情報

こばやし歯科クリニック

こばやし歯科クリニック
所在地 〒531-0076 大阪府大阪市北区大淀中2-2-7キリンパークサイド1F
アクセス JR「福島駅」 徒歩7分
診療科目 歯科

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