「予防歯科」と「歯科検診」の違いはご存じですか? 目的やメリット・デメリットも歯科医が解説!
一般的な歯科検診とは異なり、予防歯科には「お口の健康維持に積極的に取り組む」という側面があります。しかし、その重要性や具体的なメリットについては、まだ十分に理解されていない面もあるようです。そこで今回は、予防歯科の目的やメリット・デメリット、さらに年代別のアプローチ法について、「やまだ歯科クリニック」の山田先生に解説していただきました。
監修歯科医師:
山田 崇雅(やまだ歯科クリニック)
目次 -INDEX-
「予防歯科」と「歯科検診」はどう違うの? 予防歯科の目的と重要性について
編集部
いわゆる「予防歯科」は、一般的な歯科検診とどう違うのでしょうか?
山田先生
予防歯科と歯科検診の大きな違いは、その目的です。予防歯科は口内を良い状態に維持することを目的にしているのに対し、歯科検診は悪いところをあぶり出す・見つけ出すことを目的としています。そのため、両者については、患者さんの意識や求めるものが大きく異なるのも特徴です。例えば、予防歯科を受ける方の多くは、お口の健康を積極的に維持しようというスタンスで来院されます。それに対して歯科検診の場合は、一般的に「とりあえず行かないと」という感じで受診する患者さんが多いように感じます。
編集部
予防歯科の重要性について、もう少し詳しく教えていただけますか?
山田先生
むし歯や歯周病は一度進行してしまうと、治療をしても元の健康な状態に戻らないため、現状をいかにキープするかが非常に重要になります。しかし一方で、こうした予防の重要性は若いうちはなかなか気づきにくいものです。どちらかというと、60歳になって「あの時やっておけばよかった」と後悔する人が多く、気づいたときには遅かったというケースも少なくありません。
編集部
では、予防歯科に取り組むタイミングについて、何かアドバイスはありますか?
山田先生
今、行動を起こすかどうかで、5年後、10年後のお口の状態が大きく変わっていきます。60歳を過ぎて「あの時やっておけばよかった」と後悔する前に、今から予防に取り組むことが重要です。この記事を読んだ今が、まさに「あの時」であることを頭に留めておきましょう。
予防歯科にはどんなメリットがある? 全身の健康への影響は?
編集部
予防歯科を受けることで、具体的にどのようなメリットが期待できますか?
山田先生
予防歯科はまだ症状がない段階から始められ、その過程で健康に関する知識が増えることが一番のメリットだと思います。体の健康は知識があって守られるものですから、専門家から正確な情報を得られるというのは大きな価値があるといえます。
編集部
なるほど、まずは知識を得ることが重要なのですね。そのほかに、どのようなメリットがありますか?
山田先生
一般的な知識を得たうえで、次に個々の状態にあわせた情報や資料、予防プランを提供してもらえるのも大きなメリットです。これにより、むし歯や歯周病になる前に予防ができますし、仮にむし歯や歯周病になっても軽度の段階で食い止めることができます。
編集部
一方で、予防歯科は「何も症状がない段階で始める」という点にハードルの高さを感じるのですが、その点はいかがでしょうか?
山田先生
そうですね。たしかに「痛くもないのに、なぜ歯医者に行かないといけないのか」と腰が重くなりがちなのが、予防歯科のデメリットとも言えます。ただ、それも結局のところ、予防歯科の重要性を知らないから「面倒くさい」と感じるのだと思います。少し面倒だと感じても、その先の目的や意義が理解できたら、文句を言いながらも通院する人がほとんどです。したがって、正しい知識を得ることが、予防歯科のデメリットを克服するカギになるでしょう。
編集部
予防歯科に通うことは、全身の健康にも何か良い影響があるのでしょうか?
山田先生
はい、全身への影響も大きいと思います。特に歯周病に関しては近年、心筋梗塞や脳卒中、認知症など全身の病気との関連が指摘されています。一方で、患者さんの中には、このような全身への影響をまだ知らない人も多いようです。大病を患って初めて歯周病との関連を知り、「もう少し歯の健康に気をつけておけば」と後悔する人は少なくありません。
編集部
そのあたりは、年齢層によっても受け取り方が違うかもしれませんね。
山田先生
そうですね。例えば、50代くらいだと親の介護がすでに始まっていて、自分の親の状態を見て「ああはなりたくない」と感じている人もいらっしゃると思います。「若いうちからお口の健康に気を付けていれば、今の状態を防げたのかも」という気づきを得れば、ご自身の今後を大きく変えるきっかけになるかもしれません。また、近年は民間の生命保険会社も歯の健康に注目しており、永久歯の本数で保険料が割引されるサービスも話題になっています。
編集部
歯の健康が保険料に影響するとは驚きですね。
山田先生
歯の健康は単に食事を楽しむだけでなく、全身の健康、さらには経済的な面でも重要になってきています。これからは、自分の資産を守る意味でも、歯の健康を保つことが大切になってくるでしょう。
年代別でみる予防歯科の重要性 子どもと大人で予防歯科はどう変わる?
編集部
大人と子どもでは、予防歯科のアプローチの仕方にも違いはあるのでしょうか?
山田先生
違いはあります。簡単に言うと、子どもの場合は発達と成長の促進、成人、特に高齢者の場合は口腔機能低下の防止が重要になっていきます。
編集部
子どもの予防歯科について、もう少し詳しく教えてください。
山田先生
子どもの予防歯科については近年、従来のむし歯予防に加えて、「口元の健やかな成長」という新しい視点が注目されています。具体的には、歯並びや噛み合わせ、そして顔の骨格全体のバランスが取れた発達を促すことが、小児における予防歯科の主流となっています。もちろん、すべての子どもが完璧な歯並びを実現できるわけではありませんが、早期から予防的なアプローチを行うことで、将来的な問題を軽減できる可能性が高まるでしょう。
編集部
では、大人や高齢者の場合はどうでしょうか?
山田先生
成人や高齢者の場合、予防歯科の最大の目標はお口の機能低下を防ぐことです。具体的には、誤嚥性肺炎や寝たきりを防ぎ、健康寿命を延ばしていくことが焦点となります。したがって、今後はむし歯や歯周病だけでなく、「お口の老化」にも注目していくことが重要です。
編集部
お口の老化とは、具体的にどのような状態を指すのでしょうか?
山田先生
高齢者の場合、「むせやすい」「飲み込みにくい」というのを主訴に歯科医院を受診するケースも多いのですが、これではかなり遅いと言えます。そうなる前に、唾液の出方や舌の動き、飲み込み方に変化がないかを予防歯科で定期的にチェックしてもらうことが、機能低下を防ぐカギとなります。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
山田先生
この記事を読んでいる人の多くは、高い予防意識を持っていると思います。私が一番伝えたいのは、人生をかけて「この先生」という歯科医を1人見つけてほしいということです。予防歯科の本質は「問題が起こる前に対処すること」ですから、将来を予測し、今は見えない問題でも的確に指摘できる歯科医が理想的です。そういう先生に出会えたら、その歯科医と二人三脚で、長期的な視点でお口の健康維持に取り組んでいただきたいと思います。
編集部まとめ
予防歯科はお口の健康を積極的に維持していく重要な取り組みです。将来に起こり得るトラブルを予測してこれらを未然に防ぐほか、全身の健康にも良い影響を与えていきます。痛みなどの症状がないのに歯科医院に行くのは面倒と思いがちですが、予防歯科を今始めるか否かで、5年後、10年後のお口の状態は大きく変わっていきます。ぜひ本記事をきっかけに、予防歯科の第一歩を踏み出していきましょう。
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