「インプラント周囲炎」の対処法はご存じですか? 再治療の有無や予防のポイントも歯科医が解説!
費用も時間もかかるインプラントを10年、20年と長持ちさせるためには、治療後の「インプラント周囲炎」への警戒が必要です。インプラント周囲炎の原因や症状、かかった場合の治療法などを「オカダ歯科クリニック」の岡田先生にお聞きしました。
監修歯科医師:
岡田 素平太(オカダ歯科クリニック)
目次 -INDEX-
せっかく入れたインプラントがグラグラに? 治療後に起こる「インプラント周囲炎」とは?
編集部
まず、インプラント周囲炎について教えてください。
岡田先生
口内の細菌の感染によって、インプラントの周囲を取り囲む骨(歯槽骨)が溶けてしまう疾患です。インプラント周囲炎はその前段階として、インプラント周囲の粘膜に炎症が起こる「インプラント周囲粘膜炎」を生じます。インプラント周囲粘膜炎がさらに進行するとインプラント周囲の骨が破壊され、インプラントの動揺や脱落を引き起こしていきます。
編集部
インプラント周囲粘膜炎やインプラント周囲炎を発症すると、どのような症状が表れますか?
岡田先生
インプラント周囲の歯ぐきに腫れた感じがある、あるいは歯を磨く時に出血があるなどがよくみられる症状です。さらに進行すると、インプラント周囲に痛みが出ることもあります。
編集部
インプラント周囲炎の原因は何ですか?
岡田先生
多くは口腔衛生状態によるものです。治療後、セルフケアやメンテナンスの不足でインプラント周囲が不潔な状態が続くと、インプラント周囲粘膜炎を発症します。とくに、口内に歯周病がある人や歯周病が原因で歯を失った人は要注意です。歯周病の治療が終わらないままインプラントを埋入してしまうと、インプラント周囲炎のリスクが非常に高くなります。
インプラント周囲炎は治療で治せる? インプラントの「再治療」が必要になるケースとは?
編集部
インプラント周囲炎は治療で治せるのでしょうか?
岡田先生
治せるケースと治せないケースがあります。目安の1つとして、CT検査をしてインプラント周囲の骨が1/3以上残っている場合は、外科的な処置によってインプラントを温存できる可能性があります。一方で、垂直的にも水平的にも半分以上、骨が破壊されているケースはインプラントの撤去が必要です。
編集部
インプラント周囲炎では、具体的にどのような治療をおこなうのでしょうか?
岡田先生
骨の破壊が少ないケースでは、レーザーを使ってインプラント表面を綺麗にして、そこに骨補填剤をいれて骨の再生を促していきます。このような外科処置が難しい、あるいは患者さんが希望されない場合は、インプラントの形態を修正して歯ブラシをしやすくする処置をおこなうこともあります。
編集部
インプラント周囲炎で骨の破壊が進んで抜去するケースでは、抜去した後にもう一度インプラントを入れる治療をおこなうのでしょうか?
岡田先生
患者さんがもう一度インプラントを希望される場合は、インプラントを抜去した後に人工骨や骨補填剤をいれて、骨の再生を図ります。ただし、前回の治療よりも骨が少なくなっているため、再治療ではある程度の骨造成や軟組織の移植が必要になります。
編集部
インプラントの再治療を希望しない場合は、ほかの治療法を検討するのでしょうか?
岡田先生
そうですね。患者さんがインプラントを希望されない場合は、ブリッジや入れ歯のいずれかを検討していきます。
治療後は「インプラント周囲炎」に要警戒! 予防法やセルフケアのポイントについて
編集部
インプラント周囲炎を予防するために、治療後はどのような点に注意したらいいでしょうか?
岡田先生
ご家庭でのセルフケアの徹底に加え、治療が終わった後も定期的にメンテナンスを受けることが非常に重要です。
編集部
治療後も歯科医院に通院するべきなのですね。
岡田先生
はい。インプラント周囲炎を予防するうえでは、その前段階のインプラント周囲粘膜炎をいかに早く見つけるかが非常に重要なポイントとなります。それを見極めるためには3カ月に1回の通院では少ない、というのが個人的な見解です。患者さんの全身状態や埋入したインプラントの本数によっては、1カ月に2回ほど通っていただく場合もあります。
編集部
それほどまでに、治療後はインプラント周囲炎に警戒が必要なのですね。
岡田先生
インプラントは口内に入る異物なので、天然歯のような防御反応や自分で病気を治すシステムがそもそも備わっていません。したがって、最初に入れた状態を長く維持するためには、メンテナンスしか方法がないわけです。さらに付け加えると、自身の歯を失ったということはお口の中に何らかの原因があることも忘れてはいけません。歯を失う原因はインプラントを失う原因と直結しているわけですから、いま一度「なぜ、歯を失ったのか」をよく考えていただければと思います。
編集部
セルフケアにおけるポイントがあれば教えてください。
岡田先生
インプラント周囲粘膜炎やインプラント周囲炎を予防するうえでは、インターデンタルブラシ(歯間ブラシ)を使っていただくことが重要です。インプラントとインプラントの間、もしくはインプラントと歯の間を意識しながら、丁寧に汚れを落とすようにしてください。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
岡田先生
インプラントは非常に優れた治療オプションである一方で、「諸刃の剣」のような側面も持っています。インプラントを10年、20年と長く良好な状態に維持するためには、歯科医師や歯科衛生士に全てを任せるのではなく、患者さんを含めた三者一体で取り組むことが非常に重要です。インプラントは異物(人工物)であること、さらに自分が歯を失った理由なども忘れないようにしながらメンテナンスに取り組んでいきましょう。
編集部まとめ
インプラントの動揺(グラグラ揺れる)や脱落(抜け落ちる)の原因になるインプラント周囲炎は、治療後にもっとも警戒すべき疾患であることがわかりました。最大の原因が口腔清掃の不良であることから、治療後はセルフケアの徹底に加えて、歯科医院に定期的に通院しながらメンテナンスを受けることが重要です。インプラント治療を受ける際は、治療後も長期的に管理を積極的におこなってくれる歯科医院を選びましょう。
医院情報
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診療科目 | 歯科 |