「歯科用CAD/CAM」の基礎知識と知っておきたい注意点を歯科医が解説!
見た目(審美性)や耐久性に優れるセラミック治療では、従来の方法に加えて近年は歯科用CAD/CAMを応用した「セレック」も注目を集めています。今回はセレック治療と従来のセラミック治療との違いやメリット・デメリットなどを「南歯科医院」の南先生に解説していただきました。
監修歯科医師:
南 昌宏(南歯科医院)
目次 -INDEX-
歯科用CAD/CAMシステム(セレック)って何? 従来のセラミックとどう違う?
編集部
歯科用CAD/CAMシステム(セレック)とは、どんな治療なのでしょうか?
南先生
簡単に言うと、セラミックの詰め物や被せ物のデザイン設計から製作までをコンピューター上でおこない、即日で患者さんのお口の中に装着できるシステムです。このようなシステム自体の歴史は古く、1980年代半ばから歯科の臨床に導入されて以降、今ではセラミックからプラスチックまで、材料的にも幅広く応用されています。
編集部
治療の流れを簡単に教えてください。
南先生
歯を削った後、患者さんのお口の中を専用のスキャナーで読み取り、そのデータを元にコンピューター上で詰め物や被せ物の形をデザインします。次に、デザインした形通りに機械がセラミックブロックを削り、完成したものを患者さんのお口に装着します。この一連の作業を院内で全てやると、歯を削るところから修復物の装着までを即日でおこなうことが可能です。なお、詰め物や被せ物の形態がデザイン的に複雑な場合は、データをクラウド上で技工所に送り、歯科技工士の手を借りて作製することもあります。
編集部
従来のセラミック治療とはどのような点が違うのでしょうか?
南先生
従来のセラミック治療は歯を削った後に歯型を取り、それを石こう模型にして歯科技工士が作製するため、完成までに数日かかってしまいます。一方で、歯科用CAD/CAMシステムの場合はセラミックの詰め物や被せ物を最短で1日、通院したその日に装着できる点が従来の治療との大きな違いです。また、「光学印象」といって、専用のスキャナーで患者さんの歯型を読み取るので、従来の治療にあるような「型取り」の必要がありません。
「即日治療」「型取り不要」のほかにも歯科用CAD/CAMシステム(セレック)のメリットはある?
編集部
歯科用CAD/CAMシステムがほかの治療法と比べて優れている点は何ですか?
南先生
従来の治療のように歯を削ってから型取りをして後日修復物を入れるとなると、装着するまでに削った面が汚染されるため、どうしても接着力が落ちてしまいます。このような「接着」の観点で見ると、削って即日に修復物が入るセレックは非常に有利です。また、後日の来院までに「仮歯が取れる」といったトラブルがないのもメリットと言えます。
編集部
「即日で治療できる」というのは、そのような利点もあるのですね。そのほかにもメリットはありますか?
南先生
従来の治療にある「型取り」の必要がないため、歯医者さんの型取りが苦手な人でも比較的楽に治療が受けることができます。また、多数歯のむし歯の治療では、一つひとつの修復物を歯科技工士に作ってもらうと、やはりどうしてもコストがかかってしまいます。そのような意味では、近年の歯科用CAD/CAMシステムは全顎のデータを扱えるので、コストが抑えられるのもメリットだと思います。
歯科用CAD/CAMシステム(セレック)にもデメリットはある? 寿命はどのぐらい?
編集部
一方で、歯科用CAD/CAMシステムにもデメリットはあるのでしょうか?
南先生
より高い審美性を追求するセラミックの被せ物については、やはり歯科技工士が時間をかけて作製する修復物の方がクオリティは高いと言えます。とくに、前歯を1本だけ治療するようなケースの場合、コンピューターがデザインを提案するセラミックは、審美性のクオリティという点で限界があることは否めません。
編集部
そのほかに、歯科用CAD/CAMシステムによる治療を受けるにあたって注意したいことはありますか?
南先生
歯科医院によって導入する機材やシステムが異なるため、同じ歯科用CAD/CAMシステムでも受診する歯科医院によって製作工程や対応できる症例などに違いがあります。例えば、ブリッジなど連続した被せ物などは、歯科用CAD/CAMシステムで対応できる医院とできない医院があるため注意が必要です。また、設計から削りだしまで全て自院でできる場合もあれば、技工所にデータを送って作製してもらう場合があるため、事前によく確認しておきましょう。
編集部
実際のところ、歯科用CAD/CAMシステムによる治療はどのぐらい長持ちするのでしょうか?
南先生
従来のセラミックとほぼ変わらないので、10年間の生存率でいうと85~90%です。ただし、歯科用CAD/CAMシステムに限らず、どんな修復物も治療後のセルフケアの状況や、歯科医院のメンテナンスの頻度で寿命も変わります。修復物を長持ちさせるためには、毎日のセルフケアを徹底するほか、3~6カ月に1回は歯科医院でメンテナンスを受けることが大切です。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
南先生
歯科用CAD/CAMシステムの技術は進化しており、近年はセラミック修復のほかに、インプラントのデザインや矯正治療にも応用が広がっています。したがって、今後はこのCAD/CAMシステムが歯科医療の主流となってくるでしょう。
編集部まとめ
歯科用CAD/CAMシステムは従来の治療のような「型取り」の必要がなく、最短1日でセラミックの修復物がお口に入る画期的な治療とのことでした。製作の過程の多くをコンピューター上でおこなえるため、従来のセラミック治療よりもコストが抑えられるという利点もあります。一方で、前歯などより審美性が追究される被せ物については、歯科技工士が時間をかけて製作する従来のセラミック治療の方が有利な場合もあるようです。それぞれの特徴をよく理解し、自分に合った治療法を選択していきましょう。
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