親知らずを抜くタイミングを歯科医が解説 親知らずを抜くならいつが最適? 必ず抜歯しないといけないの?
親知らずについては「いつ抜くべきか?」「本当に抜く必要があるのか?」といった疑問をもっている人も多いのではないでしょうか。もし、歯医者さんで「抜いた方がいい」と指摘された場合、親知らずの抜歯はできるだけ早めに、若いうちにしておく方がメリットは大きいようです。今回は親知らずを抜くタイミングや抜歯基準、さらに抜歯で起こり得るリスクについて、コンパスメディカルグループ「医療法人社団コンパス」常務理事の越智先生に解説していただきました。
監修歯科医師:
越智 英行(コンパス内科歯科クリニック赤羽)
目次 -INDEX-
親知らずを抜くタイミングはいつが最適? 放置せず悪化する前の適切な時期に抜歯した方がいい理由を歯科医が解説
編集部
親知らずを抜く必要がある場合、やはり早く抜いた方がいいのでしょうか?
越智先生
はい、できるだけ早いうちに抜いておくことをおすすめします。歯科医から「抜いた方がいい」と指摘された親知らずについては、症状の有無にかかわらず10代後半~20代前半で抜歯しておいた方がいいでしょう。
編集部
できれば早いうちに、年齢が若いうちに親知らずを抜いておくべき理由やメリットを教えてください。
越智先生
親知らず周囲の腫れや痛みのほか、親知らずのむし歯や手前の歯のむし歯など、親知らずにまつわるトラブルを回避できるからです。また、若い時期はまだ骨が柔らかく、すんなりと抜きやすい場合が多いことや、免疫力や回復力が高く傷の治りが早いのも利点と言えます。一方で、年齢を重ねるほどすんなりと抜けず、骨を多く削らなければならないなど抜歯の侵襲度は高くなる傾向があります。そうすると、術後の腫れや痛みが出るリスクも高くなるため、親知らずはやはり若い時期に抜いておいた方が身体的・心理的負担も少ないと言えるでしょう。
編集部
抜いた方がいい親知らずをそのまま放置した場合、どのようなリスクがありますか?
越智先生
親知らずはもともと歯ブラシが当てにくいうえに真っすぐに生えることが少なく、斜めに生えている親知らずでは歯ブラシで清掃できない空間が必ず生じてしまいます。これにより不衛生な状態が長く続くとむし歯になりやすいほか、「智歯周囲炎」という親知らず周囲の炎症を生じて痛みや腫れを繰り返してしまいます。さらに、その影響が隣接する永久歯にも及んでしまい、最悪のケースでは親知らずと隣の歯の2本とも残せなくなることもあるため注意が必要です。
歯科医が親知らずを抜くかどうかの判断基準 横や斜めに生えていると抜歯の可能性は高くなる
編集部
親知らずは、必ず抜かなければならないのでしょうか?
越智先生
ほとんどの場合、抜くことをおすすめします。たしかに、抜かなくてもいい場合もありますが、ケースとしてはそれほど多くありません。
編集部
具体的にどのような親知らずであれば、抜かずに残しておけますか?
越智先生
ほかの永久歯と同じように上下とも真っすぐに生えていて、歯としての機能を果たしており、清掃状態も良好であれば抜かずにそのまま使うことができます。また、顎の骨に完全に埋まっている親知らずも、むし歯などのリスクが限りなく低いため、抜かないことが多いですね。
編集部
以上の条件を満たさない場合は、抜いた方がいいということですね。
越智先生
そうですね。見かけ上では親知らずが生えていないように見えても、その多くは歯ぐきの中に埋もれた状態で横向きや斜め向きに生えているのがほとんどです。このような親知らずは残すことにメリットはなく、反対にデメリットやリスクの方が大きいため、基本的に抜歯となります。また、真っすぐに生えている親知らずでも、すでにむし歯や歯周病になっていたり、歯ぐきがかぶさって腫れや痛みを繰り返したりする場合は抜歯をおすすめします。
親知らずの抜歯で起こり得るリスクや注意点を歯科医が解説
編集部
親知らずを抜いた後、腫れや痛みはありますか? もしある場合、痛み・腫れのピークはいつ頃でしょうか?
越智先生
親知らず抜歯後の腫れや痛みについては、個人差が大きいですね。一般に、歯を分割したり、骨を削ったりなど複雑な親知らずの抜歯については術後に腫れや痛みの出る可能性が高いでしょう。腫れや痛みのピークは抜歯後1~3日で、1週間程度で落ち着くのがほとんどです。下の親知らず抜歯では、ほかにも内出血により青あざが生じる場合があります。ただ、その場合も時間の経過とともに薄くなって広がり、2週間程度であざは引いていきます。
編集部
抜歯後の腫れ・痛みのほかに、親知らずを抜歯した際に起こり得るリスクがあれば教えてください。
越智先生
1つは「ドライソケット」です。ドライソケットとは親知らずを抜いてできた穴にかさぶたが乗らず、骨がむき出しになる状態のことを言います。ドライソケットになると長期間にわたって強い痛みが続くほか、飲食物による物理的な刺激が加わると激痛が生じやすくなります。
編集部
そのほかにも、親知らずの抜歯のリスクや副作用はありますか?
越智先生
抜歯後の傷口に細菌感染が起こると、通常よりも傷の治りが遅くなって、膿や腫れが出やすくなります。また、下の親知らずが太い神経に近いところに位置している場合、抜歯中に神経に傷害や力が加わると術後の唇周囲や顎先、歯ぐきに麻痺やしびれを起こすことがあります。
編集部
抜歯後の「ドライソケット」や「麻痺・しびれ」を回避するためには、どのような点に注意したらいいのでしょうか?
越智先生
ドライソケットは抜歯後にできる「かさぶた」が剥がれることで生じます。したがって、抜歯してから数日は口を強くゆすぎすぎないこと、傷口にむやみに触れないことが大切です。また、喫煙は傷の治りを妨げるため、タバコを吸っている人は禁煙するのが望ましいでしょう。加えて、お酒についても腫れを強くしないために、抜歯後4~5日は控えることをおすすめします。
編集部
抜歯後の麻痺・しびれを避けるためには、抜歯に際してどのような点に注意したらいいですか?
越智先生
抜歯後の麻痺やしびれについては、最初の診断の段階で歯科医による的確な診査・診断が重要になります。歯科用CTなど設備が整っている、親知らずの抜歯の実績が豊富な歯科医が在籍しているなど、安心できる歯科医院を探してみましょう。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
越智先生
親知らずは腫れたり痛くなったりするとすぐには抜けず、炎症が治まるのを待つ期間が生じるなど、かえって治療が長引いてしまいます。したがって、痛みや腫れが出る前に一度歯医者さんでレントゲンを撮ってもらい、親知らずの有無や位置、生え方などを確認してもらいましょう。
編集部まとめ
親知らずは10代後半~20代前半で抜歯しておく方が、すんなりと抜けて痛みや腫れも少なく、傷口の回復も早いというメリットがあります。「上下とも真っすぐ生えている」「骨の中に完全に埋まっている」など抜かなくていい親知らずもありますが、症例としてはあまり多くないようです。自身のお口に中に親知らずがあるのか、抜いた方がいいのかがまだ判明していない人は、一度歯医者さんで詳しい検査を受け、早めの抜歯を検討していきましょう。
医院情報
所在地 | 〒東京都北区赤羽南1丁目19-10 プリミエール藤田1階 |
アクセス | JR「赤羽駅」 徒歩5分 |
診療科目 | 歯科、小児歯科 |