歯の健康に悪い食べ物・飲み物を歯科医が解説 「甘いもの」と上手に付き合うポイントは?
むし歯予防の大敵といえば、砂糖たっぷりの「甘いもの」が頭に浮かぶと思います。また、私たちが普段から健康のために摂取している食品の中にも、歯に悪影響を与えるものが存在します。今回は歯の健康に悪い食べ物・飲み物、甘いものとの付き合い方、歯の健康に良い生活習慣を「NINE DENTAL 心斎橋PARCO」の竹山先生にお聞きしました。
監修歯科医師:
竹山 旭(医療法人NINE NETWORK NINE DENTAL 心斎橋PARCO)
目次 -INDEX-
歯の健康に悪い食べ物・飲み物を歯科医が解説 体の健康に良いと言われる〇〇も歯にはダメージ大だった!?
編集部
歯の健康に悪い食べ物や飲み物といえば、砂糖たっぷりの「甘いもの」が真っ先に頭に浮かびます。
竹山先生
全くその通りで、砂糖を含む甘い食べ物・飲み物がむし歯を作ることは科学的にみても明らかです。固形物に気を取られがちですが、甘い飲料も歯の健康にはよくありません。
編集部
具体的に、歯の健康に悪い食べ物や飲み物はありますか?
竹山先生
見落としがちなのは「酸性の飲食物」です。甘いものが歯に良くないことは皆さんご存じですが、ただその甘いものが直接歯に影響を与えるわけではありません。実際はお口の中の細菌が糖分を代謝して、その代謝物の1つである酸が歯を溶かしていきます。つまり、むし歯で歯が溶ける直接的な原因は「酸」なわけです。
編集部
甘いものに加えて、「酸」も歯の健康にはダメージが大きいのですね。具体的なものに、どのような食べ物や飲み物が挙げられますか?
竹山先生
皆さんが好んで飲まれる炭酸飲料もその1つです。酸性を示す指標に「pH(ペーハー)」というものがありますが、歯はpH5.5以下になると溶けていきます。炭酸飲料のpHは2.3ぐらいなので、炭酸飲料は多量の糖に加えて、酸性度が強いことも歯にとってダブルパンチとなります。また、健康のために良かれと飲んでいる食酢やスポーツドリンク、乳酸菌飲料なども酸性度が強いため注意が必要です。
編集部
「お酢は体に良い」ということから近年はお酢の入った健康飲料も人気ですが、歯の健康にはダメージが大きいということでしょうか?
竹山先生
はい。お酢系の健康飲料はとくに壮年期の人たちに人気がありますが、常飲されている人の中にはむし歯とは別に酸で歯が溶ける「酸蝕症」の人も多くみられます。また、健康飲料つながりで言うと、子ども用の野菜ジュースも良かれと与えがちですが、永久歯より溶けやすい乳歯にとって遊離糖を含む飲料のダメージは計り知れません。このように「体の健康に良い」と言われる飲食物の中には、歯の悪影響を及ぼすものも存在しています。とくに、日常的に摂取するものは回数やタイミング、量を考えて摂取していかなければ取り返しがつかなくなるため注意が必要です。
むし歯にならないための食生活 歯科医が薦める「甘いもの」との付き合い方
編集部
歯の健康に悪いとわかっていても、やはり「甘いもの」を摂りたくなります。何か工夫できることはありますか?
竹山先生
飴やキャラメルのように、お口の中に長時間残るものも好ましくないです。そのため、目安として「パクパク食べてゴックンできるもの」、短時間で摂取できるものを選んでいただきたいと思います。
編集部
「甘いもの」は子育て中のお父さん・お母さんにとっても悩みの種だと思います。小さな子どもへの甘いものの与え方について、アドバイスがあれば教えてください。
竹山先生
少し極端ですが、むし歯予防を徹底したいのであれば、甘いものを与えないのも方法の1つだと思います。子どもにとって甘いものは最高に幸福感を味わえるものですが、その幸福感を一度知ってしまうと忘れられなくなって、駄々をこねたり泣き出したりしてしまいます。とくに、濃度の高い甘いものは可能な限り覚えさせない方がいいと考えます。
編集部
とはいえ、子どもに甘いものをまったく与えないというのも難しいと思うのですが。
竹山先生
甘みを感じる食べ物は自然界にも数多く存在します。例えば、サツマイモなどの穀類、バナナ・リンゴなどの果物がその代表格です。このような自然界に存在する食べ物から甘みを感じられるようにしておくと、味覚も発達しますし体の健康にもプラスになります。したがって、子どものうちは自然界に存在しないお菓子やケーキなどは極力与える必要はないと考えます。仮に与えるとしても日常的に与えるのではなく、お誕生日など何かの対価となる「特別なもの」として与えていただきたいです。
お口の健康は生活習慣とも深い関係が? むし歯・歯周病にならないための生活習慣
編集部
ここまで食生活を中心にお話しいただきましたが、普段の生活習慣の中にも歯の健康に良いもの・悪いものはありますか?
竹山先生
お口の中が乾燥しやすい生活習慣は、歯に悪いと言えるでしょう。唾液の分泌は自律神経に支配されていますが、興奮状態を作る交感神経が優位に働くと、お口の中は乾きやすくなります。例えば、ストレスもその要因の1つで、ストレスがたまるとお口が渇きやすくなります。また、自律神経を整えるためには、十分な睡眠時間を確保することも重要です。
編集部
「ストレスをためない」「睡眠を十分にとる」というのは体の健康だけでなく、お口の健康においても必要なのですね。そのほかに、注意したい生活習慣はありますか?
竹山先生
喫煙は粘膜の血流を悪くするため、歯ぐきには大きなダメージになります。歯ぐきが下がる、あるいは歯周病が進行するリスクが高まるため、喫煙の習慣は見直した方がいいでしょう。さらに、歯磨きについても自己流や耳学問でおこなった結果、磨きすぎて歯ぐきが下がってしまうというトラブルも近年は増えています。歯医者さんで自分にあった正しいケアを指導してもらうことも大切です。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
竹山先生
むし歯予防においては糖分の量や摂り方を工夫する以外にも、フッ化物(フッ素)の活用が非常に有効です。フッ化物は世界的に認められた唯一の科学的なむし歯予防法で、日本でもここ最近、世界基準の配合量になったフッ化物配合歯磨剤が使用できるようになりました。糖分のコントロールと一緒にぜひ取り入れていただきたいと思います。
編集部まとめ
甘いものはむし歯予防の大敵です。また、歯の健康を守るうえでは甘いもののほかに、酸を含む飲食物にも注意が必要なようです。とくに「健康に良い」と謳われる食品については成分などをよく確認したうえで、回数やタイミング、量などに配慮しながら摂取していきましょう。
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