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突然、片方の顎が痛みはじめた…どんな病気が考えられる?

 更新日:2023/03/27
突然、片方の顎が痛みはじめた…これってどんな病気が考えられる?

顎が痛むとしたら、まず考えられるのは、「顎(がく)関節症」でしょう。しかし、顎の関節は左右にあります。片側だけが痛むことなんて、あり得るのでしょうか。また、全身疾患の可能性も含め、考えられる病気の棚卸しを、「いしはた歯科クリニック」の石幡先生にお願いしました。

石幡一樹先生

監修歯科医師
石幡 一樹(いしはた歯科クリニック 院長)

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昭和大学歯学部卒業。東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科部分床義歯補綴学分野修了。歯科医院勤務後の2012年、埼玉県久喜市に「いしはた歯科クリニック」開院。口腔全体を一単位と考え、噛み方や顎の使い方の指導などもおこなっている。歯学博士。日本顎咬合学会認定医。日本補綴歯科学会、日本顎関節学会、日本歯周病学会などの各会員。歯科領域の講演多数。

普段の食事が関係している可能性「大」

普段の食事が関係している可能性「大」

編集部編集部

片方の顎だけが痛むときって、親知らずの影響でしょうか?

石幡一樹先生石幡先生

いいえ、さまざまな原因が考えられます。おそらく、「一般的な病気なら“左右双方”が痛むはず」という自己判断をなされたのでしょう。しかし、片方の顎だけに炎症や病気が発症することは、十分にあり得ます。

編集部編集部

おおまかに、どんな病気が疑われますか?

石幡一樹先生石幡先生

歯や顎の病気」、「耳の病気」、「耳下腺炎も含めた感染症」、「ストレスなどによる心因性の痛み」、「それ以外」に大別されるでしょうか。ちなみに、顎(がく)関節症による痛みも、片方だけで生じる場合があります。

編集部編集部

先生の領域となると、「歯や顎の病気」ですよね?

石幡一樹先生石幡先生

はい。耳の手前にある顎の関節を外から触っていただいて、痛む箇所と一致していそうなら、おそらく顎関節症なのでしょう。その場合は、歯科を受診して詳しく調べてもらってください。

編集部編集部

片方だけって、程度の問題でしょうか? いずれ両側が痛みだすのですか?

石幡一樹先生石幡先生

顎の片方だけが痛む場合、その原因のほとんどは、左右いずれかの口で多く噛む「片噛み」です。そのため、痛みは両方向へ広がらず、片方に集中するのでしょう。時間とともに悪化することさえ考えられます。早々に噛み方の改善を図らないといけません。

編集部編集部

「片噛み」をしているかどうかは、自分でわかりますか?

石幡一樹先生石幡先生

下顎を左右に動かしてみてください。動かしやすい側、あるいは、より大きく動く側があったとしたら、そちら側での「片噛み」をしていると思われます。また、一番大きく口を開けたところからゆっくり口を閉じてきた時にずれる側も同様です。加えて、「片噛み」には先天的なクセ以外に、歯科治療などの後天的な要因も考えられます。

歯科医院ができること

歯科医院ができること

編集部編集部

続けて、「歯と顎の病気」の治療方法について、詳しく教えてください。

石幡一樹先生石幡先生

「片方の顎だけ痛みを伴う」症例についてですね。わかりました。まずは、おっしゃっていたような、親知らずが悪さをしているケースでしょう。むし歯や、抜歯跡の奥が再感染したことによる痛みも考えられます。総じて、痛む箇所と、親知らずや治療跡が一致していたら、歯や歯ぐきの問題なのでしょう。これらの症状には、それぞれ、治療方法が確立されています。

編集部編集部

顎の病気の治療方法についても知りたいです。

石幡一樹先生石幡先生

当院で取り入れているのは、下顎を「動かしやすい方向と反対側へ動かす」トレーニングです。あるいは、意識して反対側の口で噛む練習ですね。昔からのクセがなかなか抜けきれない人には、顎の位置を動かしづらい側で固定するマウスピース治療も検討していきます。動かしやすい側の筋肉を伸ばすストレッチ効果が期待できます。

編集部編集部

一方、感染症が顎のような内部に起きることもあるのですか?

石幡一樹先生石幡先生

あり得ます。経緯としては、血液やリンパ液を通るルートと、歯の奥から入り込むルートです。感染症の場合は、痛みのほかに、発熱や患部の腫れなどを伴います。また、おたふくかぜを経験していない場合、初感染したのかもしれませんね。

編集部編集部

あと、「心因性の痛み」の話も出ていましたね?

石幡一樹先生石幡先生

はい。ストレスは、顎関節症や口腔顔面痛の原因になり得ます。口腔顔面痛を扱える歯科医師はそれほど多くないので、精神科や大学病院を紹介されるケースが一般的だと思われます。

自分でできる、受診までの緩和措置

自分でできる、受診までの緩和措置

編集部編集部

受診が必要とのことでしたが、それまでも応急処置があれば教えてほしいです。

石幡一樹先生石幡先生

下顎を痛い側と反対方向に動かして、口を開け閉めしてみてください。それだけでも顎の音や痛みが軽減する可能性があります。また、食事の時に痛みのあるサイドとは反対側に下顎を動かして、痛みのないサイドで噛むようにしてください。

編集部編集部

ほかにもあれば、ぜひ教えてください。

石幡一樹先生石幡先生

痛みを感じる側の顎を下にして寝ないことですね。動かしやすい側の筋肉を圧迫してしまうのが理由です。また、顎を動かす筋肉は、こめかみの部分にもあります。この部分のこりと偏頭痛を混同しているかもしれませんのでご注意ください。こめかみを揉んで、こりを感じるようなら、顎の動かし方が関係しているかもしれません。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージがあれば。

石幡一樹先生石幡先生

痛みを我慢する必要は、どこにもありません。また、市販薬でクセまでは治せません。「片噛み」は誰しもが無意識でしている習慣であるにも関わらず、思いのほか身体に悪影響を及ぼします。例えば、口が開かなくなるといった症状が考えられます。加えて、楽器の演奏や運動も、顎の状態をおかしくする一因になり得ます。ぜひ歯科医院で、早めの対策を講じていきましょう。

編集部まとめ

食べ物を左右どちらかの口で偏って噛んでしまう「片噛み」。片顎の痛みを歯科領域に限って紐解くと、思わぬ“日頃の習慣”が浮き出てきました。石幡先生によると、いずれ顔の左右バランスさえ崩しかねないそうです。下顎の可動域を確かめるといった、早期発見に努めてみましょう。

 

耳が痛い症状、ストレスに関してもっと詳しく知りたい方は、こちらの記事を参照してください。

医院情報

いしはた歯科クリニック

いしはた歯科クリニック
所在地 〒346-0003 埼玉県久喜市久喜中央1-3-19
アクセス JR「久喜駅」 徒歩3分
診療科目 歯科

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