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顎変形症の症状や原因、治療方法とは?

 更新日:2023/03/27

顎変形症(読み方:がくへんけいしょう)とはどんな病気なのでしょうか?その原因や、主にみられる症状、一般的な治療方法などについて、医療機関や学会が発信している情報と、専門家であるドクターのコメントをまじえつつ、Medical DOC編集部よりお届けします。

この記事の監修ドクター:
杉本 圭介 歯科医師 杉本歯科クリニック 院長

顎変形症とは

顎変形症とは上あご(上顎骨)や下あご(下顎骨)の形や大きさの異常、両者のアンバランスによって咬み合わせの異常(咬合不正)と顔の変形などの症状を示すものです。顎変形症の発生には遺伝的な要素が強いと言われていますが、ほとんどは原因不明です。指しゃぶりや舌の突出癖なども発生要因とする説があります。多くはあごの成長のアンバランスによるものと考えられ、小児期では異常に気付かず、思春期のあごが急成長する時期に症状が明らかとなります。

引用:日本形成外科学会
http://www.jsprs.or.jp/general/disease/other/other_02.html

杉本圭介 歯科医師 杉本歯科クリニック 院長ドクターの解説
顎変形症は骨格性の変形です。上下の顎の骨が成長しすぎていたり、逆に正常な大きさまで成長しなかったりして、前後、左右にずれが生じている状態です。顎変形症は遺伝の影響が大きいと考えられています。後天的な影響としては、成長期の噛み合わせが原因で顎の成長が抑制されることもあるでしょう。また、ブラキシズム(歯ぎしりや食いしばりといった口の中の悪習慣)が顎の成長に悪影響を与えるケースも考えられます。変形は成長に伴って徐々に現れ、10代後半ごろまで続くことが一般的です。 顎変形症を予防するには、下顎が前に出ているケースはチンキャップ(就寝中などに装着して顎を後ろに移動させる装置)を使って成長を抑制する方法もあります。しかし遺伝の影響が強いケースでは十分な予防効果が期待できないので、成長期を過ぎた後の治療で対応することになります。

顎変形症の症状

顎変形症になると、噛み合わせが悪いために食べ物が噛めなくなったり、口の中の変形によって言葉が正しく発音できなくなったりします。同時に、顔の形に変形を生じるために、おおきな精神的ストレスを抱え込む場合もあります。

引用:日本頭蓋顎顔面外科学会
http://www.jscmfs.org/general/disease04.html

杉本圭介 歯科医師 杉本歯科クリニック 院長ドクターの解説
顎変形症は、名前が「顎関節症」と似ていますが、2つはまったく違う病気です。顎関節症の症状は、顎関節や筋肉の痛み、顎関節の音、運動障害など、顎関節に起因するものです。一方、顎変形症は顎の骨格そのものがアンバランスになっている状態を指し、炎症に伴う痛みや腫れなどを伴うものではありません。ただし、顎変形症の人が顎関節症になるというケースは珍しくありません。顎変形症の人は往々にして噛み合わせが悪いため、顎関節症につながりやすいのです。そのほかに、噛み合わせが悪い影響で、首や肩などの筋肉が張ったりこったりする可能性もあります。

顎変形症の原因

顎変形症の原因はさまざまですが、多くの場合、あきらかな原因はわかっていません。しかし、身内にも同じような症状の人がいたり、人種の違いによって生じやすい顎変形症があったりすることから遺伝的な影響が大きいと考えられています。このような場合は、一般的にあごの変形は成長に伴って思春期以降に徐々に明らかになります。
一方、原因として分かっているものとして、唇裂・口蓋裂などの生まれつきの顔・あごの病気、そして顔・あごの骨折などがあります。生まれつきの病気が原因のあごの変形は幼児期・小児期からすでに明らかになっていることもあります。

引用:日本頭蓋顎顔面外科学会
http://www.jscmfs.org/general/disease04.html

顎変形症の検査法

頭部X線規格写真、パノラマX線写真、口腔内写真、顔面規格写真、3次元CTおよび歯列模型などの資料をもとに、分析・顎口腔機能診断を行い治療方針を決定します。

引用:東京大学医学部附属病院 口腔顎顔面外科・矯正歯科
https://plaza.umin.ac.jp/~oralsurg/disease_04.html

杉本圭介 歯科医師 杉本歯科クリニック 院長ドクターの解説
顎変形症の検査は上記のようなものが一般的です。特に有効なのは三次元CTの検査で、顎変形症の顎の状態を前後、上下、左右のあらゆる方向から立体的に把握することができます。「頭部X線規格写真(セファログラム)」とは、規格に沿ったレントゲン写真を撮影できる機械で、治療前後に撮影すると変化を比較しやすいことが特徴です。「パノラマX線写真」は顎全体を横長に展開するように撮影できる機械です。

顎変形症の治療方法

咬合不正や顔面変形があごの変形によるものと診断されれば、骨切り術というあごの骨を切る手術を行います。多くの場合は手術前に矯正歯科での歯並びの治療を行うことがすすめられています。

手術前の矯正治療には1年以上の日数を要することも少なくありません。手術では口の中から上顎骨や下顎骨を切って、最も望ましい位置に移動して固定します。全ての操作は口の中から行いますので、顔に傷が残ることはありません。

固定には金属製(チタン製など)や吸収性の小さなプレートやスクリューを用います。手術後には正しい咬み合わせを保持するための後療法を行います。

引用:日本形成外科学会
http://www.jsprs.or.jp/general/disease/other/other_02.html

杉本圭介 歯科医師 杉本歯科クリニック 院長ドクターの解説
顎変形症の治療を始めるタイミングは、成長期を過ぎて顎の成長が終わってからです。年齢的には18歳頃が目安ですが個人差が大きいです。一般的には女の子の方が成長は早いでしょう。顎の成長が続いているうちは、治療を開始しても見通しが立ちにくい恐れがあります。一般的な治療の流れは上記の通りです。例えば下顎が出ている場合(下顎前突症)は、下顎枝矢状分割術や下顎垂直骨切り術を適用することが一般的です。また、比較的軽度な変形であれば、マルチループテクニックという方法で矯正治療を用いて手術なしで症状改善を図れるケースもあります。

この記事の監修ドクター

この記事の監修歯科医師